アメリカ旅行(2012年9月28日〜10月5日)

ニューヨーク第2日目

 9時頃にベッドを抜けだして、身支度を整えてから、ホテル近くの「自然史博物館」に向かった。

 「自然史博物館の中はとても広かった。目を引いたのは、エリア毎に異なった文化を紹介した展示だ。民族衣装とか、狩りや農業に使った道具が展示されていた。気の利いたことに、エリア毎にその文化の音楽を BGMとして流しているのだ。たとえばロシア文化のエリアだとロシア音楽だし、アフリカ文化のエリアだとアフリカ音楽だ。アジア文化のエリアでは、アイヌ文化まで紹介していたのが驚きだった。

人類の骨

 この博物館のもう一つのウリのひとつは、膨大な数の骨の化石だ。恐竜の骨の化石を元の形に組み上げ、それから想像される生きた姿の絵とともに展示されていた。恐竜とは言っても、ヒトと作りは同じだ。頭蓋骨があって、脊椎があって、肋骨があって、骨盤があって、四肢の骨がある。四肢の骨においても、上腕骨とそれに連なる橈骨、尺骨、そして手の骨、大腿骨とそれに連なる脛骨、腓骨、そして足の骨という構造は、ヒトと恐竜で変わらない。違うのは尻尾があるかどうかくらいだ。ふと興味を持って、進化のどの段階で、前腕が橈骨と尺骨、下腿が脛骨と腓骨で支えられるようになったのかをチェックしながら化石を観察してみた。すると、魚ではこれらの骨の原型はみられないけれど、海から陸に上がったばかりの、オオサンショウウオのような形の生き物では、既にこのような骨の作りになっていることがわかった。ほとんど全ての化石がこのような作りになっている。ところが、ウサギに似た生き物で、下腿の骨が一本しかないものがあるのに気付いた。化石の発掘の段階で失われてしまったのかもしれないけれど、マンモス象では脛骨と腓骨がかなり密着して、まるで一本のようになっているのを見ると、これらの骨が癒合するような進化を遂げた生物も存在するのかなと漠然と思った。私にこの手の知識がなくてよくわからないので、いつか詳しい人と話す機会があったら、聞いてみようと思う。

 私が他に興味を持ったのは、人類の進化を扱った展示コーナーだ。原人の骨格標本が展示されていて、進化の過程をたどって見られるようになっている。それだけではなく、頭蓋骨だけを模型にして一枚のパネルに展示したものもある。やはり現代人とは頭蓋骨の形が際立って異なる。博物館のショップでは「EVOLUTION THE HUMAN STORY (Alice Robert著)」という本が売っていて思わず衝動買いしかけたけれど、値段が書いていなかったので思いとどまった。重そうな本だし、買うにしても日本に帰ってからネットで買った方がよいだろう。

 博物館からは、徒歩でリンカーン・センターへ移動。かの有名なジュリアード音楽院などを含んだ、音楽の一大施設だ。コンサートホールの前には、ニューヨーク・フィルを率いたかの有名なバーンスタインに因んだ「バーンスタイン通り」がある。ホールに入ると、展示コーナーがあり、ちょうどニールセンの特集をやっていた。

 ワインを飲むうちに開演時間を迎え、演奏が始まった。前半は、ブラームス作曲クラリネット五重奏曲。クラリネット Pascual Martinez Forteza, 第一ヴァイオリン Sheryl Staples, 第二ヴァイオリン Michelle Kim, ヴィオラ Cynthia Phelps, チェロ Carter Breyによる演奏だ。かなり抑制的に演奏されていて、もう少し情熱的に演奏した方が、ブラームスっぽいのになぁ・・・と思いながら聴いた。でも、素晴らしい演奏だった。解釈に不自然な点がまったくなく、時差ボケと相まって、あまりの心地よさに思わず眠りに落ちてしまった。

リンカーンセンター

 睡魔と戦うために、休憩時間にブラック・コーヒーを飲んでから、後半のシェエラザードを聴いた。指揮 Alan Gilbert、ニューヨーク・フィルによる演奏だ。この曲は、各パートにソロがあるのだけど、ソロが滅茶苦茶うまくてびっくりした。また、難しいリズムをクリアに演奏してのけた打楽器の技術にも舌を巻いた。終わった後は、観客総立ちでスタンディング・オベーションだった。

 コンサートが終わると、会場前の広場にバミュ先生が待っていてくれて、二人で飲みに出かけた。2年間ニューヨーク留学をしていたバミュ先生は、(道に迷いながら!) 色々なところを案内してくれた。

 最初に連れて行ってくれた店が、Grand Central Oyster Barだ。ここでワインを二本空けて語り合った。酔った男たちが向かったのは、近くにある Soba Tottoというお店。地酒が充実していて、その中で磯自慢の 4合瓶を頼んだ。途中から記憶がないけれど、最後に頼んだ蕎麦が旨かったのは覚えている。飲みきれなかった 4合瓶は持って帰って良いそうで、私が日本から持ってきた土産のツマミと共に、バミュ先生に持って帰ってもらうことにした。バミュ先生、素晴らしいお店でごちそうして頂いて、ごちそうさまでした。

 この日は泥酔したせいか、ぐっすり眠ることが出来た。


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