替え指

By , 2008年3月12日 5:43 PM

3月9日に、大学時代の部活の OBの先生の家に遊びに行きました。

先輩は、私の 7学年上、一緒に付いてきた後輩は、私の 8学年下と、13学年下。年の差飲み会となりました。こうして世代に跨って遊べるのは、喜びです。

先輩は、医者になって最初に買ったものがチェンバロ。芸大の先生から、「何で芸大に来なかったの?」と聞かれたくらい上手です。バッハのチェンバロ曲を色々聴かせてくれます。

先輩の家の「日本酒専用」冷蔵庫の中から、次々と酒を振る舞われ、酔っぱらって、音楽談義になりました。

先輩は昔、ピアノを弾いていたそうなのですが、バッハの音楽に対して余り考えることはなかったそうです。

ご存じの通り、バッハが得意とした対位法という作曲手法では多くの声部を同時に扱いますので、片手だけで2つの旋律を同時に弾かなくてはいけないことがあります。そうすると指が足りなくなりますが、ピアノの場合、ペダルを踏めば音が連続しますので、一旦指を離して弾き直しても、音をつなげることが可能です。

ところが、チェンバロにはペダルがないので、指を離すと音が切れてしまうのです。音が切れると旋律が途切れます(切れたまま知らん顔で演奏している演奏家もいるらしい)。そこで登場するテクニックが替え指です。

例えば、右手である旋律を弾いている場合を考えます。親指でドの音を弾いている時、親指を押さえたまま同じ音を人差し指で押さえて、親指を離します。そうすとドの音は鳴ったままで、親指がフリーになるので、親指でシの音を押させる事が出来るという寸法です。

バッハのフーガだと、このテクニックのオンパレードなのだそうです。実際に見せて頂きましたが、本当にアクロバティックです。でも、そうしたテクニックで、旋律が途切れず、各声部が流れるのです。ピアノではなかなか味わえないチェンバロのテクニックで、感動しました。

その他、チューニングの話にもなりました。チェンバロは、自分で毎回チューニングしないといけなくて、調律法も勉強しないといけないのです。

我々が現在使う調律は A=440~445Hzくらいの音程ですが、バロック時代には、A=390-415Hz前後と低い音程で調律されていたことは有名です。実際に古楽器のCD演奏を聴くと、非常に低いピッチで演奏されています。でも、先輩から聴いて、A=460Hzというとんでもなく高いピッチ、コーアトーンというのがその時代の調律にあることを初めて知りました。

飲んで、楽器を片手に音楽談義なんて、最高の贅沢です。先輩と今度また合奏することになりました。

Post to Twitter


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy