てんかん発作とアンモニア

By , 2008年5月25日 9:45 AM

高アンモニア血症はてんかん発作や意識障害の原因となることがあるため、てんかんの患者を診たときに、採血でアンモニアもチェックしておくことがあります。その時に、高アンモニア血症を伴っているものの、明らかに「「高アンモニア血症→てんかん」ではなくて、「てんかん→高アンモニア血症」であった経験を持っている医師は少なくないでしょう。そうした経験から、私は意識消失で搬送されてきた患者を診たときに、念のためアンモニアと CPKをチェックしておいて、アンモニアか CPKが高かったら、「てんかんだった可能性が少し高いのかなぁ。脳波はとりあえず必要だなぁ。」としています。経験則ですけれど。

何故、てんかん発作で高アンモニア血症が起こるのか?

肝内シャントを証明して考察した論文はありますが、このようなケースで全例肝内シャントが存在するわけではなし、どうしてかなぁーっと思っていましたが、最近面白い論文を読みました。防衛医大からの論文です。

 Yanagawa Y, et al. Hyperammonemia is associated with generalized convulsion. Internal medicine. 47: 21-23,2008

This study demonstrated that hyperammonemia is associated with GC (※GC; Generalized convulsion). Convulsions are accompanied by severe muscle contraction. Active skeletal muscle becomes a major source of ammonia during exercise by deamination of adenosine monophosphate to inosine monophosphate in a cyclical process called the purine nucleotide cycle. This is why GC induces hyperammonemia.

合理的な説明です。疑問が氷解しました。過激な運動に伴って、筋肉でAMP→IMPの脱アミノ化反応が起これば、アンモニアが発生します。これがてんかんに伴う高アンモニア血症の原因です。ここには、書いてないのですが、てんかん発作翌日に、しばしば尿酸が高値になっているという神経内科医が持つ経験も、purine nucleotide cycleが回った結果として説明可能ですね。

  In this study, no significant correlation was observed between ammonia level and PH, base excess, creatine kinase or lactate dehydrogenase

今回の論文では CPKとアンモニア値は相関しないようです。症例数が少ないため統計学的な問題があるのと、採血のタイミングも影響しているようです。

「高アンモニア血症によるてんかん」と「てんかんによる高アンモニア血症」の鑑別は、経験的に肝疾患があるかどうかでつけられますが、てんかん発作を抑えた後、前者であればアンモニア値は高値ですが、後者であれば経時的にアンモニア値が下がってくるのも鑑別点となります。

さて、てんかん発作が抑えられた後、どのくらいの時間アンモニアが高値を示すか、書いた論文がありました。

Liu KT, et al. Postictal transient hyperammonia. Am J Emerg Med 26; 388.e1-2, 2008

Transient hyperammonemia was in these patient sent to the ED (※ED; emergency department) because of generalized tonic-clonic epilepsy. We believe that the transient hyperammonemia may have been the result of heavy muscle exercise during the episode of epilepsy. The levels of serum ammonia returned to reference range within 3 hours, and this may be due to rapid metabolization by the liver. The hyperammonemia noted did not seem to be of hepatic origin.

3時間という数値は、Yanagawa氏らの論文にも登場しますが、一つの目安のようです。

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