ドーピング

By , 2008年8月16日 8:10 AM

β blockerってドーピングになるんですね。初めて知りました。競馬だとβ stimulantが禁止薬物なのに、作用が逆の薬が人間では規制されるのは興味深いです。

 北朝鮮キム・ジョンス、ドーピング違反でメダルはく奪
8月15日14時25分配信 YONHAP NEWS

【北京15日聯合】北京オリンピックの射撃で銀メダルと銅メダルを獲得した北朝鮮のキム・ジョンスが、禁止薬物検査で陽性反応を示したとしてメダルをはく奪された。国際オリンピック委員会(IOC)が15日、記者会見で発表した。
キム・ジョンスのサンプルからは、ベータ遮断剤の一種であるプロプラノロールの陽性反応が現れたという。ベータ遮断剤は心臓への負担を減らし血圧を下げるのに有用な薬物だ。

キムは9日に男子エアピストルで3位、12日の50メートルピストルでは韓国のチン・ジョンオに次いで2位だった。キムの失格で、エアピストルの銅メダルはターナー(米国)が、50メートルピストルの銀メダルは譚宗亮(中国)が受け取ることになった。

β blockerは慢性心不全や高血圧の治療で比較的良く使います。脈拍数を落としたり血圧を下げるという作用の他に、気管支を収縮させる副作用があるので、一般的にはスポーツには利がなさそうです。しかし、この選手の競技種目を見て納得しました。手が震えては的に当たらないので、それを防ぐ目的で使用したのですね。実は、β blockerには震えを止める作用があるのです。私は、本態性振戦という震えの病気で、しばしばこの薬を処方します(というか、一般的に第一選択薬です)。

ちなみに緊張したときの震えに、どのβ blockerも有効なのではなく、β2作用が大事なのです。したがって、β1選択性が高いメインテートやセロケン、テノーミンなどは、心不全の治療には有用でも、震えを止める作用はほとんどありません。むしろ、震えに対してはアルマールやインデラルといったβ2遮断作用を持つ薬剤を用いるべきです。ドーピング(?)豆知識でした。

徐脈性不整脈や喘息の方には、命に関わる副作用を起こすので、禁忌であることを忘れてはいけません。また、気管支を収縮させる作用もあるので、マラソンなどの競技にはマイナスの影響を及ぼすことは容易に想像できます。


(注)医療関係者以外の方へ
blocker=遮断薬
stimulant=刺激薬
それぞれ受容体に対する作用を意味しています。

Post to Twitter


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy