将棋界の真相

By , 2008年10月13日 2:29 PM

「将棋界の真相(田中寅彦著、河出書房)」という本に、日本将棋連盟の歴史や過去の名物棋士達、将棋界の課題などがわかりやすく書いてあり、一気に読破しました。

プロ棋士の基本給はC級2組(最下位の順位戦)で月額17万円弱。これがベースになります。順位戦でのクラスがあがると給与も増え、最高の名人位では100万円を超えます。ここに対局料(数万円~数十万円)やタイトル戦での成績に応じた収入が加わります。フリークラスの棋士には基本給はありません。馬鹿にならないのが指導料です。稽古の収入はかなり高額で、時給として医師の収入よりずっと良いのでびっくりしてしまいました。とはいっても、多忙な合間を縫っての芸事の指導となりますから、ある程度高額なのは仕方ありませんね。相場の表が載っていましたので、一部を掲載します。

段位 月1回稽古(3時間以内) 臨時稽古(3時間程度) 大会審判料(3時間以上)
タイトル保持者
九段 31万5000円
八段 21万円
七段 7万8750円 10万5000円 15万7500円
六段 4万7250 6万3000円 9万4500円
五段 4万2000円 5万2500円 7万8750円
四段 3万6750円 4万2000円 6万3000円

かなりの高額で、プロ棋士を見かけても、おいそれと「一局御願いします」とは言えませんね。男性の棋士の場合、4段以上をプロとして扱うのですが、女流棋士の場合、初段でもプロ棋士ですので、やや安くなります。初段以下の女流棋士の場合、月1回(3時間以内)の稽古で2万6250円が相場となっています。初段以下とは言え、巷のアマチュアが太刀打ち出来るレベルではないので、指導して頂くには丁度いいかもしれませんね。ほら、女性相手だとやる気も全然違ってくるでしょ?(^^;

棋士達は、体力作りのレクリエーションにも熱心なようで、野球はサッカーのサークルも作っているそうです。しかし、サークルの経営状態はかなり苦しいようです。それにまつわる羽生善治氏の知られざる美談があるので引用します。

 第一章 将棋指しは普段何をしているのか

大口寄付をしてくれるのは羽生善治や森内俊之、佐藤康光らのタイトル保持者のトップ棋士たち。キングスに所属し、出場回数が多い藤井猛九段も大口寄付者だ。いつだったか、野球部の苦しい台所事情を羽生に話したところ、無心したわけではないのに、数日後には彼から野球部の銀行口座にそうとうな援助金が振り込まれていていたく感激した。

実は、日本将棋連盟はチェスの団体に変えられそうになったことがあるそうです。それを救ったのが、かの有名な升田幸三棋士でした。升田棋士は、大山名人と並び称される達人です。

 将棋界の新聞食管制度

では将棋連盟の目的は何か。杓子定規に書けば、「将棋道の普及・発展を図り、併せて国際親善の一翼を担い、人類文化の向上に寄与すること」。わかりやすくいえば、将棋の普及である。

ここでちょっと秘話を紹介しよう。戦後、GHQの指示によって日本将棋連盟がチェスの普及組織に変えられそうになったことがある。将棋は相手の駒を取って見方として使う。それは捕虜を虐待する考え方につながるのではないか?いちゃもんをつけられた。

これに真っ向から噛みついたのは升田幸三先生だ。

「捕虜虐待とは何ごとか。チェスは女を盾にして王様を守る。そういうゲームをやれというのなら最後まで戦うぞ」

この升田先生の迫力が利いたのか、マッカーサーも結局、将棋をやめろとは言わなかったが、その名残として私が四段になった頃は、将棋だけでなく、チェスの普及も連盟の定款に入っていた。現在はチェスは削除され、一にも二にも将棋の普及が目的となっている。われわれ棋士は将棋の普及という共通の目的のために集まっている会員の集団ということになる。

こうした話が満載で、将棋に興味を持っている方だと、読んで面白い本だと思います。尤も、将棋の技術的な話は全く書いていませんので、上達には役立たないと思いますが。

最近は、併せて「羽生善治 夢と、自信と。(椎名龍一著、Gakken)」も読みました。こちらは、羽生ファンにお勧めの一冊です。

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