「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?

By , 2009年4月3日 6:47 AM

今回紹介する本は、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?~世界一わかりやすい経済の本~(細野真宏著、扶桑社新書)」です。細野さんは、私が大学受験の時にお世話になった数学の参考書を書いており、お世話になりました。彼は社会保障国民会議のメンバーに選ばれているそうです。

公的年金には、大きく分けると国民年金(国民全員が入る土台となる年金)、厚生年金(サラリーマンが入る年金)、共済年金(公務員が入る年金)があります。厚生年金は給料天引きなので、未納が問題となるのは国民年金です。厚生年金は、企業が保険料を半分払っています。

年金は仕送り方式で、納めている世代が積み立てている訳ではなく、納めている世代が払っている分は、高齢者の年金の受け取りに使われます。

・年金のメリット
①払った額より多く受け取れます。現在では国民年金で1.7倍、厚生年金で2.3倍と計算されています。国民年金の場合、2009年度から高齢者が受け取る年金の半分は税金でまかなわれているので、若い世代の負担が軽減されています。
②物価とスライドしているため、物価が上昇しても目減りしません。
③親が年金を受け取ることで、子の親への仕送りの負担が減ります。

ここで、未納問題について整理しておきましょう。国民年金には第1~第3号があります。第1号は学生や自営業で、自分で納付する必要があります。第2号(厚生年金+共済年金)は会社員などで、自分で納付する必要はありません。ややこしいことに、厚生年金や共済年金加入者は、国民年金にも加入していることになります。第3号は第2号の配偶者で、保険料納付の必要がありません。

つまり、未納者というのは、国民年金の第1号(国民年金全体の3割)の一部で、全体の5%に過ぎません。彼らが多少増えようが減ろうが、全体としては大きな問題にはなりません。さらに、年金は納入額より多くの給付額を受け取れます。国としては、未納者には将来給付しなくて済むので、負担が軽減します。

実際に、納付率毎にシミュレーションをしてみると、納付率が違っても、年金財政にはほとんど影響がなかったのです。社会保障国民会議のサイトに「公的年金制度に関する定量的シミュレーション結果について」というリンクがあり、結果を見ることができます。

年金を税方式にすると、消費税を5→10%前後とするくらいの税金が必要となります。2025年度には、医療や介護だけで3~4%分の消費税増税が必要になるとの試算があることを考えると、年金で消費税を上げてしまうと、消費税増税がもっと必要になってきます。

税方式を主張するのは、経団連など財界寄りの人間が多く、日経新聞も後押ししています。彼らにとって税方式になるメリットがあるからです。厚生年金は、被保険者の納付額の半分を企業が肩代わりしています。厚生年金がなくなれば、企業が払う金がなくなります。企業側にとっては願ってもない話です。

時々、「年金制度は未納者が多くて破綻している」などと議論されますが、どのような方式が最も良いのか、上記の内容などを参考にして、議論する必要があります。

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