新型インフルエンザ東京上陸

By , 2009年5月21日 6:57 AM

新型インフルエンザが東京でも確認されました。

 東京、川崎で感染確認 同じ学校の女子生徒

5月20日23時27分配信 産経新聞

新型インフルエンザの感染が20日、東京都と川崎市でも確認された。近畿圏以外での国内感染の確認は初めて。滋賀県でも感染が確認されており、国内広域に感染が広がっていることになる。厚生労働省や東京都、川崎市などによると、感染が確認されたのは、いずれも川崎市高津区の私立洗足学園に通う東京都八王子市在住の女子生徒(16)と、川崎市在住の女子生徒(16)。生徒らは19日に米国から帰国しており、近畿で拡大している感染ルートとは異なるルートで感染したとみられる。

東京都によると、八王子市在住の生徒は今月11~18日まで、同じ学校の生徒5人と英語教師1人とともに米ニューヨークに滞在。19日に成田空港に帰国した。帰国の機内ですでに発熱症状を訴えていたが、機内検疫の簡易検査では陰性だった。

帰宅後に、症状が収まらなかったため、20日に八王子市内の医療機関を受診。簡易検査で陽性反応が出たため、都健康安全研究センターの遺伝子検査(PCR)を行い、20日夜に感染が確認された。すでに感染症法に基づく入院措置がとれらており、発熱やせきがあるが快方に向かっているという。

渡米した生徒らには、すでに自宅からの外出自粛要請がされている。帰国後に高校には登校していない。

これとは別に、同日、滋賀県で新型への感染が確認されたのは大津市の男子大学生(23)。渡航歴はないが15~17日にかけて神戸市を訪れていた。

これで感染が確認されたのは兵庫、大阪に続いて5都府県となった。厚労省などによると20日夜時点の兵庫県143人、大阪府117人、東京都、神奈川県、滋賀県が各1、成田での検疫で確認された4人を合わせ計267人になった。

また、厚労省は20日、国立感染症研究所と神戸市保健所が行った感染者43人の症状分析結果を公表した。分析は「季節性と症状が類似しており、全例を医学的に入院させる必要はないことが示唆される」と結論づけている。週内にとりまとめる予定の行動計画の改訂の中に、分析結果を反映させ、地域ごとに柔軟な対応策がとれるようにする。

分析結果によると、感染者の平均年齢は17歳。男女比は男1に対して女1.3。90%以上に38度以上の高熱があり、抗ウイルス薬を投与したところ、42例は「入院の必要なし」と判断された。

関西だけで患者が発生していて、関東にはいないというのはあまりに不自然ですし、私が外来をしに行っている病院でも新型インフルエンザ疑いの方が入院していましたので、時間の問題とは思っていました。

昨日のテレビ番組でコメンテーターが、「大阪、神戸にしか患者がいないのは、実は感染能力が低いのではないか?」とコメントしていましたが、バカも休み休み言って欲しいものです。専門外の誤った知識を垂れ流すという意味で、こうしたコメンテーターは無益というより害があるのではないかとすら思います。

今回の新型インフルエンザ騒動を通じて見えてきたことがいくつかあります。

まず、感染拡大はどうやっても防げないということ。発生国での初期の封じ込めが失敗すれば、各国に広まることを防ぐ手段はありません。水際作戦もほとんど意味がありませんでした。致死率が 50-70%くらいとされる鳥インフルエンザ H5N1が今回並の感染力を持って広まったら、多くの日本人が死んでいくのを見ることになりそうです(「引きこもり」が実は一番安全だったりして・・・)。今回の騒動に、感染拡大のシミュレーションとしての意味合いはあったと思います。

次に、必要な物資の確保が大変ということ。インフルエンザ迅速診断キットや抗インフルエンザ薬がなくなる医療機関が出てきました。今後は、検査が出来ない施設が拡大するでしょう。また、マスクも店頭から姿を消しました。しかし、マスクが足りないときには、「ペーパータオルで代用する」ことを提唱している方もいます。

予想した通り、医療機関もパンク寸前です。全例入院とするとベッドがなくなることが明らかになり、軽症患者は家に帰すことになりそうです。まぁ、致死率が低いものだったら、家で寝てるのが一番ということになります。一方で、これが鳥インフルエンザだったら、全身管理が必要な重症患者が増えるでしょうが、やはりベッドは足らないんでしょうなぁ。人工呼吸器が足らない事態もありそうです (先日、基幹病院で救急当直をしていて、人工呼吸器を装着しようとしたら、「もう院内にはありません」と言われてしまいまい、BiPAPで乗り切ったことがありました)。

情報をどう集めるかも大切です。多くの医療従事者は WHOや CDCのサイトから情報を得ていました。厚生労働省 新着情報配信サービスというのもあって、利用している医療従事者もいるようでした。New England Journal of Medicine (NEJM) という臨床系最高峰の医学雑誌には、4月 15日から 5月 5日までの患者についてまとめた論文が、5月 7日に掲載されました。異例の早さです。国内のブログで、産科医療のこれからのように、インフルエンザ関連の記事をまとめて掲載しているところがありました。上記の NEJMの記事もまとめていて、参考になりました。私にとって、とても有用だったのが、感染症専門メーリングリストです。国内を中心に医療従事者 2000人が参加しています。そのメーリングリスト「Idaten」では、最新の話題や感染症専門家の見解の他、連日各地の現場の状況が生々しく流れていました。海外で医療をされている方の投稿もあり、カナダやアメリカでの情報もいち早く知ることが出来ました。医療従事者の方は、入会しておくと良いかもしれません。

それにしても、今回のインフルエンザ騒動で若者の患者の殆どがタミフルを処方されていますが、季節性インフルエンザと同程度の致死率といっても、みんなタミフルを希望するんですね。異常行動の話が吹っ飛んでしまいました。

最後に、感染の確率を減らせても、防ぐ手段がないということになると、必ず病院感染が問題になります。インフルエンザの潜伏期の患者家族が見舞いに来ることだってあるでしょうし、救急当直をしてインフルエンザ患者に接触した医療従事者も病棟に出入りする訳です。近いうちに、「インフルエンザ院内感染」という記事が話題になると予想しておきます。

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