ヴァイオリン・ソナタ第10番

By , 2009年5月21日 7:30 AM

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは傑作ばかりです。いかに傑作か、名教師カール・フレッシュの言葉をシゲティが本の中に引用しています。

 

ベートーヴェンのヴァイオリン作品 演奏と聴衆のために ヨーゼフ・シゲティ著/谷口幸男訳 音楽之友社

ベートーヴェンのピアノとヴァイオリンのためのソナタは彼の創造の一般的評価の中では従属的な位置を占めている。お粗末な演奏がこの見解をひろめるのにどのくらい貢献したかについては不問に付すことにしよう。

(中略)

だが、完璧な演奏さえなされれば、ピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲や交響曲を聴くときと同じように、聴衆や演奏家はベートーヴェンの天才に呪縛されるに違いないほど、それには多くの美しいものが含まれている。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは 10作品あります。第 1-3番は、モーツァルトの影響を非常に受けていて、愛くるしいところがあるのですが、ベートーヴェンらしい燃えたぎるような感情も発露します。個人的には、第 1番の 2楽章の混じり気のない美しさに切なさを感じます。第 4, 5番は同じ時期に作られ、短調で激しい第 4番と長調で穏やかな第 5番が対照的です。まるで交響曲第 5番「運命」と第 6番「田園」のようです (作曲時期は、交響曲の方が若干後です)。第 4番よりも第 5番の方が圧倒的に聴く機会が多いですが、第 4番も名曲です。以後、「ハイリゲンシュタットの遺書」の頃に第 6-8番を作曲しました。その影響かはわかりませんが、曲にも陰の部分が多いように思います。第 9番 “クロイツェル” は協奏曲並の超大作。ピアノ・ソナタでもそうですが、ベートーヴェンは内面的な方向を模索する前に壮大な曲を作曲しますが、ヴァイオリン・ソナタではそれに当たるものだと思います。第 10番は、内面的な作品。第一主題はとらえどころがなく、私には「忘れていた大切な何かが心の中に去来した感じ」にきこえます。心の動きをなぞるような旋律が続き、ロマン派の先駆けの印象を受けます。私は第 10番が一番好きです。

最近、第 10番全曲の録音が Youtubeにアップされているのを見つけましたので、紹介しておきます。音は綺麗なのですけど、時々音楽が流れていないところがあるのが気になりますが、他に全曲録音がアップされていなかったので。第 10番だと、シュナイダーハンあたりの録音を買って聴いてみると聴きやすいかもしれませんね。

・Beethoven Sonata Nr. 10 for Violin and Piano, I. Mvt.

・Beethoven Sonata Nr. 10 for Violin and Piano, II. Mvt.

・Beethoven Sonata Nr. 10 for Violin and Piano, III. Mvt.

・Beethoven Sonata Nr. 10 for Violin and Piano, IV Mvt.

紀尾井ホールで聴いた F.P.Zimmermann 演奏の第 10番は、この世にある全ての美しいものを凌駕しているように感じ、今でも頭の中に残っています。CD出して欲しいなぁ・・・。

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