医薬品クライシス

By , 2010年1月23日 8:43 AM

「医薬品クライシス 78兆円市場の激震 (佐藤健太郎, 新潮新書)」を読み終えました。

創薬の側から薬を語ったもので、新鮮でした。医師とは全然別の角度から薬を見ているのですが、薬に対する考え方は非常に似ていると思いました。

どこがかというと、「副作用のない薬は存在しない」ということで、どこまでリスクを背負って効果を追及するかというバランスの問題です。安全は求められるものですが、世の中に「絶対」はないのです。タミフルやイレッサの話も本書に登場しますが、私がこれまでブログで書いてきたのとかなり似た意見です。本書に登場する寺田寅彦の言葉、「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」というのがありますが、まさにその通りと思います。

開発現場の話は初めて読む話が多かったです。創薬の困難さは有る程度知っていましたが、「現在、医薬を自前で新しく創り出せる能力のある国は、日米英仏独の他、スイス・デンマーク・ベルギーなど、世界でも十カ国に満たない」とか、「多くの場合ここ (※第III相試験後の審査) に至るまで、プロジェクトの開始から十五年ほどの期間を要するのが普通だ。」というのは、そこまでとは知りませんでした。最近は、研究費の高騰や審査の厳格化などにより、新薬の開発が頭打ちになっているようです。製薬会社の業績悪化は、優秀な人材の喪失につながっているようです。

また、一生に一つも薬を市場に登場させられずに現場をさる研究者が大部分らしいですが、開発した社員も十分評価されていないのが現状らしいです。年間 4000億円売り上げるクレストールを開発した社員が、報酬として当初受け取ったのはわずか 15000円だったそうです。その後会社側は 1450万円を提示したらしいですが、家一軒建たない値段。報われない話です。

さて、居酒屋で飲みながら本書を読んでいて、Twitterで以下のようにつぶやきました。

migunosuke「医薬品クライシス」という本を読みながら酒。面白い
6:51 PM Jan 21st from NatsuLiphone
migunosuke真っ当な内容だと感じましたが、どんな方なんですか?RT @az4u: 佐藤さんの本の読者発見! → RT @migunosuke: 「医薬品クライシス」という本を読みながら酒。面白い
7:27 PM Jan 21st from NatsuLiphone

そしてら、なんと著者からレス。

OrgChemMuse@migunosukeご購読ありがとうございます。以前は某製薬企業にいましたが、今は物書き兼大学の広報をやっている者です。現場の方からの「真っ当な内容」という評価は大変嬉しいです。
11:12 PM Jan 21st from HootSuite migunosuke宛

著者の方のブログも面白いのでお勧めしておきます。

有機化学美術館・分館

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