本当はやさしい臨床統計

By , 2010年3月14日 9:14 PM

「臨床医による臨床医のための 本当はやさしい臨床統計 一流論文に使われる統計手法はこれだ! (野村英樹/松倉知晴著、中山書店)」を読み終えました。

統計の教科書を読むのは初めてですが、内容が高度な割にすっきりとまとめていて、飽きずに読むことができました。

本書の長所は、各解析パターンで使われる頻度の多い統計手法を分類し、その後各々を説明していることです。

例えば、時系列を扱う論文を 「CLo(C)K論文」と命名します。これらは「Cox比例ハザードモデルにおける相対ハザードの算出」「Log-rank検定」「Kaplan-Meierの生存曲線」の頭文字を取ったもので、丁度「時計」の意味になるようになっています。また、表を扱う論文は「Table FCx」論文と命名され、「Fisherの直接確率検定」「Cochran-Mantel-Haenszel検定」「x^2検定」の頭文字です。

このように何を解釈したい時にどの統計を用いる明らかにした後、個々の統計手法の原理を説明します。

本書の最終章は医療ツールとしての統計の扱い方です。例えば、プラバスタチンでの心血管イベント抑制を示した WOSCOPでは、相対リスクが 31%減少したと宣伝されます。相対リスク減少率を言い換えれば、内服していなくてイベントを起した人のうち、内服していればイベントを起こさずに済んだと思われる人の割合です。31%と言われれば滅茶苦茶効くように思えますが、ここにトリックがあります。そこで別の指標で評価してみると、何人がプラバスタチンを飲んだら 1人イベントを起こさずに済むかという治療必要数 (number needed to treat; NNT) は 162人なのです。つまり、せっせと内服しても (観察期間内に) 心血管イベント抑制の恩恵に蒙れるのは、162人に 1人いう結果なのです。売るために、どちらの数字を宣伝したくなりますか?プラバスタチンが良い薬か悪い薬かとは別で、提示された数字を鵜呑みにしてはいけないというのが勉強になるところです( もちろんNNTですら万能の指標ではありません)。

統計の本は初めてだったので、目から鱗なことも多く、勉強になりました。今まで論文を読んでいても、「有名雑誌なのだから、統計方法で嘘をつくことはしないだろう」と思って統計方法の所はとばして読んでいましたが、次からはきちんと目を通してみたいと思いました。

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