カオスから見た時間の矢

By , 2006年10月22日 2:26 PM

「カオスから見た時間の矢(田崎秀一著、講談社ブルーバックス)」という本を読み終えました。非常に内容の難しい本でしたが、未知の世界を知ることが出来ました。本のテーマは、「原子や分子や、場合によっては微視的運動が可逆的なのに、それらが集まった巨視的物体はなぜ不可逆的に振る舞うのか?」というものです。読むのには、最低限高校物理くらいの知識は必要そうです。

第1章では、気体分子の運動が示されますが、これはビデオでみると順再生なのか逆再生なのか我々は知ることができません。つまり逆転した運動が起こっても不思議ではなく、分子の衝突は可逆と言えます。

第2章では、微視的運動を巨視的規模で扱える現象が示されます。それはスピン・エコーという現象で、現在MRIなどに応用されているものです。この実験では、10の19乗個もの核磁石が相互しながら行う実験も可逆であることが示されます。

第3章は、ギッブスの見方です。これは統計集団として気体を扱うというものです。ダイレクトメールの例が示してあります。つまり、ダイレクトメールを送ったとき、個々の受け手の反応はわからなくても、集団としての振る舞いがわかればよいというものです。

第4章はカオスです。カオスというと、我々は文学的な表現での「混沌」としか知りません。しかし明確な定義がしてあります。
「『吾々の眼にとまらないほどのごく小さい原因が、吾々の認めざるを得ないような重大な結果をひきおこすことがあると、かかるとき吾々はその結果は偶然に起こったという』このような運動をカオスと呼ぶ」
わかりやすい例では、パチンコ玉の振る舞いが予測出来ないのも、我々が知り得ない初期条件の微妙な違いによるもので、カオス的と言えます。このパチンコ玉は分子同士の衝突と置き換えられます。

こういった知識を元に、拡散、分布といった概念を、パイこね変換というモデルで考察します。正直、この辺で落ちこぼれてしまいました。しかし、個々の分子運動は可逆的であっても、カオス的に振る舞うため、集団としては不可逆的となり、時間の矢の向きが読み取れるようになると理解しました。

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