南相馬にて

By , 2012年8月12日 12:15 PM

大学病院の職を辞して南相馬市立総合病院での勤務を始めた神経内科医小鷹先生の近況が、医療ガバナンス学会に寄稿されていました。考えさせられた言葉、心を動かされる言葉が多くありました。一部引用しますが、是非リンク先を読んでいただきたいと思います。

Vol.507 福島の医療現場から見えてきたもの

離職する看護師の夫は末期癌であった。そして、多発性硬化症の患者の母親は、震災後に自ら命を絶っていた。現状を目の当たりして、私は考えを是正せざるを得なかった。「何かを始めたい」と意気込んでは来たものの、”医療復興”というのは、システムを創造したり、パラダイムを変換したりすることではなかった。

むしろ丁寧に修繕するとか、再度緻密化するとか、改めて体系化するとか、有機的に規模を拡大するとか、人を集めてそれらを繋ぐとか、そういうことが医療の復興であった。

 

Vol.517 福島での意味

そういうことを考えると、世の中というものも「偶然その場に遭遇し、意外にも手を差し伸べることになり、行きがかり上そうなった」という行為の集まりで成 り立って欲しいと願う。「たまたまそこに出くわしてしまったが故に、巻き込まれて、なんだか知らないけどいろいろやってしまった」という、言ってみれば、 そういう合理的でないものに人は動かされるし、意味付けは後からなされるものである。

“意味”とは、ある価値に則った合理性のことだが、意味があることの方が正しくて、そうした価値観でしか物事が動かない世の中よりも、偶然居合わせてしまった状況で、意味を度外視して行動できる世の中の方が、ずっと暮らしやすいような気がする。(略)

医師の私が言うのも気が引けるが、人助けや人命救助なんてものに、さしたる意味など考えない方がいいのかもしれない。意味を超えた行為だから、人はどんな現場でも、それを実行することができるし、理由など考えずに仕事に没頭できるのである。

 

Vol.541 福島で足りないもの

離職する看護師の夫は末期癌であった。そして、多発性硬化症の患者の母親は、震災後に自ら命を絶っていた。
私の想像を遙かに凌駕する凄まじい、あまりにも壮絶な現実があった。苦悩を表に出さない態度の一方で、自暴自棄や抑うつ状態を理解して余りある圧倒的惨劇が、この地には横たわっていた。
私は想いを修正せざるを得なかった。不運に直面する人たちを前に、他人任せで悠長なことを言っていられるのか。この地で起こり得る心身の衰弱に対して、どう反応していけばいいのか。

 

Vol.556 福島での暮らし

勝手な言い方をすれば、福島に限らず社会というものは、そもそも劣悪である。しかし、どれほど劣悪であれ、私たちはその中で生き延びていかなくてはなら ず、その中で社会を再生・構築していくしかない。できることなら誠実に、前向きに、着実に。重要な真実や意義は、むしろそこにある。

 

Vol.565 福島の病院が、初めての研修医を迎えて

私たちの医療には解答がない。だから、正解を学ぶことはできないし、規範を教える術もない。
ここで学ぶことは、もちろん、医療技術を向上させるとか、医学的知識を増幅させるとか、そういうことを目指すことに異論はないが、それよりも”自分は何が できないか”を理解し、自分にできないことは、誰にどのように支援されればそれが達成できるのか。「そういう人に支持されなければ、有効に自分の学びが活 かされることはない」ということを体感することなのである。
一手先、二手先を見据えて「自分にできないこと」と、「自分にできること」とを、きちんとリンケージすることなのである。

 

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4 Responses to “南相馬にて”

  1. 小鷹昌明 より:

    はじめまして。
    元、獨協医科大学、現在、南相馬市立総合病院神経内科の小鷹昌明でございます。
    いつも、私の記事にご関心をいただき、ありがとうございます。
    とても感謝しております。

    医療の現実を伝えるべく、日々、時間があれば文章を綴っています。
    これからも、福島の医療現場を中心に、できるだけ想いを発信して参ります。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。

    小鷹昌明

  2. migunosuke より:

    小鷹昌明先生御侍史

     コメントありがとうございます。私が福島で働いていた頃、抗ガングリオシド抗体測定でもお世話になりました。

     先生の文章は共感することや気付かされることが多く、いつも楽しみにしております。

     何か、私で力になれることがあれば、その際はご連絡ください。

     今後ともよろしくお願い致します。

    • 小鷹昌明 より:

      お返事ありがとうございます。
      人(看護師・ケアマネ・MSW・介護士・保健師)、物(介護施設・福祉施設)、財政、すべて不足しており、行き場のない障害者が溢れております。
      在宅に戻るしかない患者家族は疲弊しております。
      惨状を語っていても発展性はないのですが、何かお知恵を拝借できればありがたいと存じます。

  3. migunosuke より:

    小鷹昌明先生御侍史

     お返事、遅くなって申し訳ありません。

     私が中通りで働いていた頃でさえ、医療・介護リソースは不足しており、病棟には行き場のない高齢者がたくさんおりました。また、農繁期に、家で介護ができないために、入院させようと救急車を呼ぶ家族もたくさん見てきました。震災以降、どのような状況になっているか、想像に余りあります。

     どうすれば良いものか、どのような考えも陳腐に響くように思え、あれこれ考えて綴っては消してを繰り返しております。

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