絶対音感

By , 2007年2月21日 10:39 PM

絶対音感という言葉は、正確な定義なしに独り歩きしているところがあります。何だか「絶対」という響きが誤解を生んでいるのではないかと思います。

実際に楽器を演奏する上では、相対音感の方が大事で、これがないとハモらない(周波数比が綺麗にならないし)のですが、絶対音感は相対音感の習得を阻害するとも言われています。つまり、絶対音感があると、自己の内部にある音程を優先して、周囲の音程との関係がおろそかになりやすくなるのです。

具体的には、絶対音感のある人にとっては、440Hz~442Hz周辺が「ラ(A)」、○~△Hzが「ド(C)」と決まっているのです。一方、相対音感では周囲に演奏される音との対比によって周波数が決定します。440-442Hzから遙かに外れる「ラ(A)」もありますし、周囲の音程と周波数がそろう音程は、ケースによって変わってきます。

本当に優れた演奏家は、絶対音感と相対音感両方を持っていることが多いのですが、中途半端な演奏家は両方弱いケースが多々あります。また、楽器の違いもあり、例えば東京フィルでは弦楽器奏者のほとんどが絶対音感を持っているのに対して、管楽器奏者の多くは絶対音感がないそうです。つまり、音楽に絶対に必要な能力ではないということです。また、更に、絶対音感や相対音感で規定される音より更に外れた音が、そのフレーズの文脈の中では心地よかったり、表現につながったり、一概に正しい音程というのは定義出来ません。

絶対音感を検査しようと思うと、ある音を出して、その音が何の音か当ててもらうことになります。しかし、ドレミファソラシとその半音を合わせた計12個の音符から答える訳ですから、確率的に12分の1は正解になります。この正答率が高ければ、絶対音感があるというのですが、問題はどのくらい高ければ絶対音感があるというかです。その定義がうまくなされていないのです。また、純音よりも、倍音を含んだ楽器の音の方が成績が良くなる傾向にあります。

こうした問題に取り組んでいる日本人研究者がいます。新潟大学の宮崎謙一先生です。彼の論文を紹介しているブログがあり、勉強になります。

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