抄読会

By , 2012年12月29日 8:17 AM

12月25日は医局の抄読会でした。24日の当直の合間に配布資料を作っていたところ、22時頃少し席を離した隙に作業中のファイルが全部消えるというアクシデントに見まわれ、そこから徹夜で仕上げました。Windows7、勝手に OSをアップデートして再起動するの、やめて欲しいです。

さて、読んだのは多発性硬化症について、2012年11月27日に Nature communicationsに掲載された論文です。

Fibrinogen-induced perivascular microglial clustering is required for the development of axonal damage in neuroinflammation

Cx3cr1 GFP/+マウス (ケモカイン Cx3cr1は非免疫細胞ではミクログリアなどに発現しており、種々の免疫細胞を誘導する) に実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) を誘導して、2量子顕微鏡で観察しました。その結果、「血液脳関門の破綻→血管周囲にフィブリンが検出される→ミクログリアに Cx3cr1陽性の cluster形成がみられる→臨床症状の出現がみられる」ことがわかりました。つまり、症状が出来る前からミクログリアには変化があるということです。そして、初期にフィブリンが検出されるのは、多発性硬化症の病理所見に合致します。興味深いのは、局所にフィブリノゲンを注射すると Cx3cr1の cluster形成や軸索損傷が誘導できるのに対して、CD11/CD18結合 motifに変異を入れたフィブリノゲンを注射するとこれらが起こらないことです。また抗凝固薬 Hirudinを投与してフィブリン形成を阻害しても、これらの Cx3cr1の cluster形成や軸索損傷は抑制できます。多発性硬化症での炎症に対して、フィブリンは何か大事な役割を担っているのかもしれませんね。

動物実験レベルでの話なのでまだ何とも言えませんが、多発性硬化症に対して、抗凝固薬や CD11b/CD18に対する分子標的治療薬などが用いられる時代は来るのでしょうか?

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