第6回上肢の神経機能回復セミナー

By , 2013年6月23日 12:14 PM

2013年6月21~22日に開催された第 6回上肢の神経機能回復セミナーに参加してきました。

脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科や、機械工学の専門家などが集まり、科の垣根を越えて活発な議論が行われました。田舎の一都市で開かれた小さな会にも関わらず、例年通り米国脳卒中学会の理事 Goldestein先生 (DUKE大学教授)、日本脳卒中学会の前会長篠原幸人など錚々たるメンバーが集まりました。

6月21日 (金) の演題で個人的に興味深かったのは、塚本浩先生が講演された「上肢の末梢神経エコー」でした。末梢神経エコーは一昔前にブームがあったのですが、いつしか下火になっています。しかし、ここ 10年くらいで probeが改良され、腕神経叢や神経根まではっきりと見ることができるそうです。交通外傷での引き抜き損傷なども非常に評価がしやすいとのことでした。私は過去に、往診で診療していた関節リウマチ末期の患者さんが正中神経領域の感覚障害/筋力低下・筋萎縮を呈した症例を経験しました。診察所見上も神経伝導検査からも典型的な手根管症候群だと思ったのですが、レントゲンを撮ってみると、手関節の亜脱臼による正中神経圧迫でビックリしました。末梢神経エコーだと、こういう症例も一発で見抜けるのでしょうね。川平和美先生の「促通反復療法の併用療法による麻痺改善促進」も面白い講演でした。いわゆる川平法に電気刺激や経頭蓋磁気刺激を併用し、素晴らしい成績を残しておられました。

この日の夜の打ち上げでは、この会恒例となった Everlyの演奏が聴けました。最近では、川平慈英氏や V6? というメンバーの誰か (芸能情報疎くてすみません) でやっているミュージカルなどとジョイントして活躍しているそうです。

その後少人数で飲んだ時、隣の席が福島県立医大の宇川義一教授でした。気さくに話してくださって、オフレコトークを散々楽しみました。震災の話題も結構しました。寝たきりの患者さんを大勢転送しなければならないときに、途中で誰が誰だかわからなくなってしまう可能性があるそうです。そういうときに、トライアスロンで使用するペンで患者さんに名前やカルテ番号を書いておけば、皮膚が欠損しない限りは取り違えがないという話を聞いて、なるほどと思いました。

最後に、ホテルで某先生と飲みました。彼はローマの 1000床くらいの病院に留学中で、イタリアの医療について色々と教えてくれました。

・イタリア人はとにかくずさん。Infection control doctor以外、病院で感染防護の手洗いを励行している職員を見たことがない。医療の内容も結構アバウト。

・何をしているかわからない職員がかなりいる。食堂に入るためのネームカードを発行してもらいに事務所に行くと、10:00~12:00しか開いていない。10時に行ってみたけれど開いていない。11時 30分くらいに行ってみると開いていたけれど、そのままコーヒーを飲みに出かけるところだったそう。

・患者さんがカルテコピーを持って自分の健康情報を管理している。

・医療費は高くないが、金を惜しむ人が多い。検査をしているときに、「検査する神経を一本減らしてくれ」と言ってきたり、「レポートを作ってもらう金がないから、口頭で所見を教えてくれ」なんて言ってくることもあるそう。

・研究目的の検査はタダなので、基本的にみんな喜んで受ける。研究で検査がしたくなったら、医者が患者宅に電話すると、断られることはほとんどないらしい。

6月22日 (土) は前日と会場が変わっていたのを把握していなくて、前日の会場に行って、少し遅刻してしまいました。最初は宇川義一先生の「QPS (quadripulse stimulation)」でした。QPSは、 4台の刺激装置を用いて、4連発の単相性磁気刺激を一単位とし、これを 5秒間隔で 30分行うものです。5 ms間隔での 4連発 QPS5, 50 ms間隔での4連発 QPS50では、運動野に与える効果がかなり違い、彼らはこれを用いて脳の可塑性を調べる研究を精力的に行なっていました。また、とある神経疾患で、治療薬投与後では QPS後の LTP/LTDが改善したデータを提示され、興味深く拝見しました。QPS50に因んで、48 ms間隔で 4連発刺激をする QPS48という名前のユニット (AKB48風) を組んで売り出したら、磁気刺激の知名度も上がるのではないかというアホなことを思いついたのですが、口に出すと関係者から殴られそうなので、ここだけのネタにしておきます (^^;

大島秀規先生は「神経機能障害に対する神経刺激療法:その現状とリハビリテーションへの応用の試み」という講演をされました。Spinal cord stimulation (SCS) による難治性疼痛の治療などの話が興味深かったです。講演が終わって、パーキンソン病のジストニアについて質問すると、「neuromodulationで腰曲がりは良くなるけれど、首下がりと Pisa症候群は良くならない」という返事でした。

Goldstein先生は、「Update on Reperfusion Therapy for Acute Ischemic Stroke」と題して、rt-PA及び血管内治療について講演されました。SYNTHESIS Expantion Trial, IMS-III,MR-RESCUEの結果から見ると、急性期の血管内治療はなかなか思わしい成績ではないようです。

知り合いの医師達が最もインパクトを受けていたのは岸拓弥先生の「脳をターゲットにした循環器治療」という講演でした。彼らは本来の圧受容器反射と同様に機能するバイオニック圧受容器システムを組み込むことで圧受容器不全ラットの圧受容器機能を代替し、ラットの起立性低血圧を改善しました (何と、ラットに tilt試験!)。また、ラットの頸動脈洞を隔離し、頸動脈洞圧に定常圧を入力することで圧受容器反射異常モデルを作り上げ、圧受容器反射が左心房の容量不耐性に大きく関与していることを突き止めました。圧受容器が具体的にどのように生体に影響を与えているかはよく知らなかったのですが、この発表を聞いて唸らされました。

この日の打ち上げが終わった後、東京医科歯科大学血管内治療学分野の根本繁教授、日本大学の大島秀規先生達と飲みに行きました。脳卒中の話などを中心に、グデングデンに酔っ払うまで語り合って楽しかったです。また来年のこの会が楽しみです☆

(参考)

上肢の機能回復セミナー1 (2009年)

上肢の機能回復セミナー2 (2009年)

上肢の機能回復セミナー3 (2009年)

第3回上肢の機能回復セミナー1 (2010年)

第3回上肢の機能回復セミナー2 (2010年)

第4回上肢の機能回復セミナー (2011年)

第5回上肢の機能回復セミナー (2012年)


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy