妊婦の尿路感染症

By , 2016年4月6日 6:14 PM

お手伝いに行っている診療所で、第三世代セフェムの経口薬であるメイアクトとフロモックスの採用を中止するようにしてもらっていたのですが、他の医師の指示で復活していました。このことを Facebookで書いたら、知り合いの医師が、「無いと困るやんけ!(ヤブ医の鑑別が困難になる)」とスパイスたっぷりのコメントを返してくださって、そのウイットに笑いました。

何故メイアクト、フロモックスの採用を中止するようにしてもらったかの説明は、下記を御覧ください。

  1. 経口三世代セフェムへの決別(フロモックス、メイアクト、トミロン、バナン、セフゾンなど)、もちろん経口カルバペネムも
  2. 「だいたいウンコになる」抗菌薬にご用心!(要会員登録)

すると、泌尿器科の知り合いがそれを見て、「メイアクトやフロモックスは膀胱炎治療のファーストチョイスとして良く使用します。何故ダメなんですか?」とコメントしてきました。ガイドラインでニューキノロン系薬剤と共に第三世代セフェムも推奨薬としてあることが根拠で、非妊婦ならニューキノロン (私だったら若者の単純性尿路感染症には ST合剤を使うことが多いですけれど・・・)、妊婦なら第三世代セフェムというプラクティスにしているようです。

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

そこで、私は次のように答えました。おそらくこのガイドラインは、効くかどうかをアウトカムとして文献を解釈して作ったガイドラインです。実際に使うときには「耐性菌を防ぐ」ことも考えながら使いますので、単に効くかどうかより、もっと総合的に考えて適切な抗菌薬を選択することになります。「使ってもよい」というのと、実際に「使う」というのは違います。もう一つ、このガイドライン作成者の多くに製薬会社との利益相反があります。そのような場合、推奨薬剤を減らすことが難しくなります (ガイドラインに入っているかどうかで売上が凄く違うのです)。実際に、このガイドラインでは、第一選択、第二選択に多くの薬剤が入っています。

議論の中で、妊娠の可能性があってニューキノロン系薬剤が使えない場合、第三世代セフェムを使わないのなら何を選択するのか問われたので、下記のサイトをお伝えしました。

レジデントのための 日々の疑問に答える感染症入門セミナー〔 第8回 〕 ERに発熱した妊婦と授乳婦がやってきた!

とても勉強になるレクチャーです。施設や地域による耐性菌の割合の違いといった問題はありますが、アモキシシリンやアモキシシリン・クラブラン酸などが使いやすいところですね。あとこの他に、マンデルの教科書で「妊婦の細菌尿」の項目にセファレキシン (ケフレックス) という記載があることもお伝えしました。第一世代セフェムだと、一般的に「グラム陽性菌+PEK (Proteus mirabillis, E.coli, Klebsiella pneumoniae) のグラム陰性桿菌」にスペクトラムがありますが、大腸菌 (E.coli) が主体の膀胱炎とかだと、それをカバーしていて吸収も良く、スペクトラムも比較的 narrowなので選択肢に入ってくるのでしょう。

私は感染症の専門家ではないのですが、やりとりが勉強になったというコメントをあちこちで見かけたので、こちらに書くことにしました。


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