COVID-19と脳炎/脳症、髄膜炎②

By , 2020年5月15日 8:51 午前

2020年5月2日に書いたCOVID-19と脳炎/脳症、髄膜炎の続きです。

Neurological Complications of Coronavirus Disease (COVID-19): Encephalopathy. (Cureus. 2020.3.21 published online)

症例は74歳男性、心房細動、心原性脳塞栓症、パーキンソン病、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、蜂窩織炎の既往がある。患者は、発熱、咳で救急外来を受診したが、COPDの増悪を疑われて帰宅した。しかし、24時間以内に、頭痛、精神症状、発熱、咳といった症状の増悪で再診した。患者はオランダから米国について7日後であったが、精査のため入院した。胸部画像検査ではすりガラス陰影がみられた。精神症状が数日間続くため、神経内科に紹介された。指示理解は不良だったが、四肢は動かし、刺激への反応もあった。頭部CTは陳旧性の病変のみで、急性期病変はなかった。左側頭葉に陳旧性梗塞による脳軟化があった (論文本文では左、図の説明では右と記載。図のCT写真に左右を示すマークはない)。脳波は全体的に徐波で左側頭葉に鋭波を伴う局所的な徐波を認めた。脳軟化に伴う潜在的なseizureの可能性と、右側頭葉 (論文本文では右、図の説明では左側頭葉) のてんかん波があることから、抗てんかん薬が開始された。髄液細胞数増多はなく、蛋白は68だった。症状が進行し、COVID-19の検査は陽性だった (どこから検体を採取したかは記載なし)。呼吸不全を発症し、挿管された。予後は不良と考えられる。

左右を取り違えたような記載が数カ所あり、またどこから採取した検体でCOVID-19を調べたのかも記載がありません。彼らが根拠とする脳波所見も、既存の陳旧性脳梗塞巣による遅発性てんかんの可能性が残り、脳症と断定はできないと思います。読んでモヤモヤする論文でした。

Transient cortical blindness in COVID-19 pneumonia; a PRES-like syndrome: Case report. (J Neurol Sci. 2020.4.8 published online)

38歳男性、5日間続く発熱で入院。胸部CTですりガラス陰影があり、鼻咽頭スワブでのSARS-CoV-2 RT-PCR陽性だった。入院し、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、オセルタミビルで治療した。呼吸機能が悪化し、ICUに入室した。ICU入室5日目、急性錯乱状態となった。血圧高値も数時間続いた。同時に、患者は両眼の視力低下を訴えた。神経学的には、アパシーがあり、指示理解が不良だった。瞳孔は両側2 mmで対光反射は正常だった。両眼視力は高度低下し、手動弁や光覚弁レベルだった。頭部MRIでは左優位の両側後頭葉、前頭葉皮質下白質、及び脳梁膨大部にT2強調像/FLAIR/拡散強調像高信号を認め、PRES (posterior reversible leucoencephalopathy) が示唆された。ヒドロキシクロロキンを中止し、デキサメサゾン 24 mg/dayを開始した。ステロイド2回目の投与で、患者は指示に従えるようになり、視力も完全に回復した。ステロイドは漸減中止した。2週間後に行われた頭部MRIでは病変は完全に改善した。

COVID-19に合併したPRESの報告。論文の考察ではPRESとなった原因は不明で片付けていますが、全身性の炎症、ヒドロキシクロロキンによる薬剤性といった可能性が気になるところです。SARS-CoV-2に合併した中枢神経障害では、ウイルスによる直接浸潤、自己免疫学的機序以外にもこうした病態も考えないといけないのですね。

Lessons of the month 1: A case of rhombencephalitis as a rare complication of acute COVID-19 infection. (Clin Med (Lond). 2020.5.5 published online)

症例:40歳男性。高血圧症と閉塞隅角緑内障の既往がある。発熱や進行性の呼吸苦が10日間あり、3日間の咳、喀痰、下痢があった。受診時、神経学的異常所見はなかった。胸部画像検査では右下肺にconsolidationがあった。上気道 (鼻/咽頭) のスワブを用いたPCRでSARS-CoV-2が検出された。患者は入院3日目に歩行障害を訴えた。その後24時間で、複視、動揺視、四肢失調、右上肢感覚障害、吃逆、飲食時の流涎が出現した。神経学的には、軽度の両側顔面麻痺、両側への舌運動障害、右への舌偏倚、全方向で上向き眼振、右優位の上肢 (軽度) と下肢 (中等度) の失調がみられた。緊急MRIで、脳幹~頸髄に異常がみられ、脳幹脳炎/脊髄炎と診断した。髄液検査では細胞数増多や蛋白上昇はなかった。髄液採取量が少なかったので、SARS-CoV-2 PCRは行えなかった。抗MOG抗体と抗アクアポリン4抗体は結果未着である。この患者は急性発症の肝障害も合併していた。しかし、神経症状も肝障害も徐々に改善し、11日後に退院した。ガバペンチンで多少吃逆は改善したが、眼振と動揺視、失調は残存した。

MRI

髄液でのSARS-CoV-2 PCRが出来ていないのが残念で結果が気になります。コロナウイルスは脳幹にも到達しやすいと考えられるので、ウイルスによる炎症でも不思議はないですが、自己免疫学的機序という可能性も残ります。論文の考察に山梨大学のCOVID-19髄膜炎に言及されていましたが、論文著者は「武漢からの報告」と記していて、誤解がありそうでした。

SARS-CoV-2 can induce brain and spine demyelinating lesions. (Acta Neurochir (Wien). 2020.5.4 published online)

54歳女性、前交通動脈瘤の外科的治療歴がある。自宅で意識障害を発症した。病院到着時、GCS12 (E3M6V3) で、局所神経脱落症状はなかった。頭部CTで異常なく、SARS-CoV-2のRT-PCRが陽性だった (※採取部位の記載はないが、後に髄液で調べているので、おそらく今回は鼻咽頭スワブ)。数時間で臨床的に悪化し、挿管された。脳波では右前頭側頭葉から始まり、対側大脳半球に広がる2つのseizureが観察された。ラコサミド、レベチラセタム、フェニトインで治療した。頭部MRIでは、脳室周囲白質に拡散強調像の異常や造影効果を伴わないT2強調像異常信号を認めた。同様の病変が、延髄移行部と頸髄背側にみられた。多発性硬化症精査のための検査では異常なかった。髄液SARS-CoV-2は陰性だった。デキサメサゾン 20 mg/dayを10日間、10 mg/dayを10日間投与し、肺病変は急速に改善した。7日目に気管切開し、15日後に呼吸器の離脱が行われた。

MRI

多発性硬化症を除外したとしていますが具体的にどこまでやって除外したのか、視神経脊髄炎関連疾患の抗体は測定しているのかなどの記載がないのが気になります。あと、本文では頭部MRIについてT2強調像と拡散強調像、造影検査についての記載のみなのに、掲載された図にはFLAIRしか載っていないので、本文に記載されたモダリティーの画像も見たかったです。ステロイド治療で画像や神経所見がどう改善したかも知りたいです。

Visits: 197 | Today: 0 | Total: 105990

Post to Twitter


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy