Covid-19の話

By , 2020年5月1日 9:40 PM

2020年1月1月に、Facebookで知り合いの検疫官が「平和だなぁ・・・」という趣旨の書込みをしていたので、私は「そんなこと言っていると、発熱の中国人が先生の前に現れますよ。」とコメントを書込み、下記のリンクを貼り付けておいたのでした。

中国で原因不明の肺炎患者相次ぐ 武漢で27人発症、政府が調査

2019/12/31(火) 15:57配信

 【北京共同】中国湖北省武漢市当局は31日、市内の医療機関で27人がウイルス性肺炎を発症したと発表した。感染源など詳しい原因は不明で、中国政府は感染状況を把握するため、専門チームを現場に派遣。発症の疑いがあれば報告するよう医療機関に求めている。中国メディアが伝えた。

病院は患者の隔離措置を取った。武漢市当局は患者が多く出た市内の海鮮市場を中心に調査、ウイルスの特定を急いでおり、原因が判明すれば公表する方針。人から人への感染は確認されていないという。

中国当局は、2003年に大流行したSARS発生との見方について「現時点で原因は不明」と否定している。

その時は、軽い気持ちでしたが・・・いまや世界がCovid-19で大変なことになっています。

専門外の人間が大声で騒ぐことの醜さは、ワイドショーを見ていて骨身にしみているので、ノイズとなるような情報発信はせずウォッチャーとして静観しておりました。情報は玉石混交ですが、一般向けで私が信頼を置いているのが下記のソース達です。

忽那賢志先生のYahoo!記事

忽那先生とは、一緒に講演会で喋ったり (DVD化されました)、彼がNHKでドクターG!に出る時に少しだけお手伝いをしたり (クレジットに名前入れてくれました) と個人的なつながりが少しあります。最近では、「3月のライオン」の著者とのtwitterでの運命的な出会いが話題となりました。学問的にも、非常に尊敬できる専門家です。

高山義浩先生のFacebook記事

行政と専門家と臨床医の視点で、一般人がわかりやすいように噛み砕いて説明してくれています。

さて、当初は「神経合併症はないのか」とホッとしていたこの感染症がですが、脳卒中、髄膜炎、Guillain-Barre症候群など多彩な合併症を呈することが明らかになってきています。次回の更新以降、簡単に触れていこうと思います。

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約3年ぶり

By , 2020年5月1日 9:39 PM

201782日にブログを更新して以降、放置状態が続いていました。著書の執筆その他で、ブログを更新する気分にならなかったというのがあります。これまでのことをざっと振り返りたいと思います。

2017年は10815日にドイツ旅行をしました。毎年ヨーロッパ旅行はしていたのですが、私が働いている病院に見学にきたドイツ人を原発近くの避難区域に連れて行ったら、遊びに来いということで、この年はドイツとなったのです。

その旅行では、フランクフルトに到着後、ベルリンに向かいコンサートへ。1010日にPhilharmoie Berlinでモーツァルトのカルテット、ブラームスのゼクテット、メンデルスゾーンのオクテットを聴いたのですが、Modigliani Qartettが演奏したモーツァルト弦楽五重奏曲第4番が絶品でした。その後、ハイデルベルクに行き、ドイツ人医師と飲みました。そのドイツ人医師との会話で良く覚えているのが、私が「夏休みが6週間というのは本当か?」と聞いたら、「本当だよ。日本人が1週間というのは本当か?」と答えられました。普段は、朝730分から16時過ぎまでの勤務で、当直が月5回とのことでした。さらに、「そんなに恵まれているのに、どうしてドイツの医者はストライキなんかするんだ?」と聞いたら、「ドイツ人はストライキが好きなんだ」との返事で、爆笑しました。さて、ハイデルベルクを発った後は、マルクトブライトでアルツハイマーの生家を訪れ、帰り道にヴュルツブルクでレントゲン博物館に行きました。帰国前にフランクフルトでもう一度、先のドイツ人医師と寿司屋に行きました。知らずに取った宿が、売春婦の多い繁華街で治安が悪く、怖い思いをしました。

2018210日は、LUGDUNUM Bouchon Lyonnaisで食事。その時の女性と42930日に岡山県の私の実家に挨拶に行き、825日に入籍しました。91618日沖縄旅行、次いで92228日イタリア旅行でした。妻は出会ったときは11歳下の初期研修医で、2018年の4月に都内の大学病院の小児科に入局しましたが、結局半年足らずで福島県についてくることになりました。

結婚式は2019714日にサン・パウというスペインレストラン挙げました。岩田誠先生が祝辞をくださり、プロ棋士の橋本崇載八段が乾杯の挨拶をしてくれて、ヴァイオリニストの成田達輝さんは祝福の演奏動画 (結婚行進曲を独奏にアレンジ) を贈ってくださいました。結婚式翌日から、71523日、スペインにハネムーンに行きました。マドリード、バルセロナ、バレンシア、マラガと回りましたが、一番印象に残っているのが、バレンシアのホテル「ラス アレナス バルネリオ リゾート」に泊まった日です。綺麗なビーチでゴロゴロして過ごして、こんなに時間がゆっくり流れる日常がこの世にあるのかと感じました。

2020年は415日に中外医学社から単著で神経学の本を出版しました。加えて、5月下旬頃にめまいについての翻訳本が出版される予定です。今年は、数年越しで準備してきたことが、次々と世に出ていく年となります。

唯一の懸念が、新型コロナウイルス感染症 (covid-19) です。2020年頭に中国の武漢に大流行した後、世界中に広まりました。日本でも東京、札幌、大阪、京都、名古屋、福岡など、大都市を中心に流行が止まらず、非常事態宣言が発令されました。福島では、現時点で70名ほどの感染報告があります。他人との接触を最低限にすることが求められる感染症なので、経済に与える影響も深刻です。医療機関では、マスクやガウンが足りなくなっています。私の従兄弟がもともと輸入業をしていたこともあり、私も従兄弟が海外から買い付けた医療資材を医療機関と繋ぐボランティアを最近始めました。N95は妻が過去に研修した病院や千葉県東部の基幹病院、あるいは福島県の病院と話が進み、防護服は香港で買い付けの話を進めているところです。一日も早い収束を願っています。

(追記)

約3年ぶりにブログを更新する前に、wordpressのplug-inを更新したら、サイトにアクセスできなくなりました。Counterize IIというplug-inが原因だったようです。アクセス解析のplug-inを入れかえたら、アクセスできるようになりました。ただし、これまでのアクセスログは失われました。更新していた頃は 400~800/day, 更新をやめてからも200 /dayくらいのアクセスはあったようです。友人の馬券おやじ氏に修復頂き、やっと更新できると思ったら、ブログのデータベースが古すぎたのか書き込みできず。データベースのアップデートを行いました。しかし問題解決せず、テキストエディタに問題があるということがわかりました。これも馬券おやじ氏が直してくれて、晴れて更新となりました。

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近況と発熱と

By , 2017年8月2日 7:05 PM

バタバタしていて、ブログ更新がなかなかできていません。読んだ論文の紹介を続けるのはなかなか難しそうです。その分、出来上がる教科書を楽しみにしていただければ。

5月4日~7日

岡山県の実家に帰省しました。両親とも70歳を越え、そろそろ終活を考えているようでした。まだ親孝行していないのに、申し訳ないです。せめて、孫の顔をみせてやりたいなと思います。未だ結婚の予定はないのですが・・・。

5月9日

ちょっとしたきっかけで、国家試験用の問題週 Question Bankに眼を通すことがあったのですが、髄液検査について問う問題で「検査後の安静」が正解とされていました。2006年の JAMA論文では、安静に意味はないばかりか、統計学的有意差はないものの頭痛が増える傾向があるというメタアナリシスが示されています。そのことを Facebookで書いたら、Question Bankのバイトをしている医師から「次回の改訂で手を入れる」という連絡をいただきました。私は髄液検査後はすぐに動いて良いと説明しています。これを期に、根拠のない風習が改善されていくことを望みます。

5月14日

5月一杯で閉店することになった shogi-barへ。その後、ハッシーと3時頃までサシ飲みしました。

5月31日

飲み会帰り、道路と歩道の間に張ってあるチェーンに足を取られて転倒し、顔面を強打。左顔面に傷を残しました。眼鏡も壊れ、作り直しになりました。安全のためのチェーンが却って危険という一例。

6月9-11日

京都で開かれた米国内科学会日本支部総会に行きました。例年のように前泊して、なか原で食事。申込んだのは下記のセッションです。

6月10日
10:00-11:30 1-C1-1 C1会場 最新論文20選2017年度版:忙しいあなたのために(平岡 栄治)
11:50-12:40 1-C5-2LS C5会場 (ENGLISH)Noon Lecture  Don’t Be Tongue-Tied! Tips for Speaking Up at an International Conference (Lunch included)(Noboru Hagino)
13:00-14:30 1-C3-3 C3会場 女性の腹痛 診断がなかなかつかないその腹痛、どう付き合う?(後藤 美賀子)
6月11日
9:20-10:50 2-C1-1 C1会場 “できる内科医のための認知行動療法(CBT)入門” エピソード3(木村 勝智)
14:00-15:30 2-C1-2 C1会場 内科医のための結核診療入門(大藤 貴)

特に、上田あきら先生による “Don’t Be Tongue-Tied! Tips for Speaking Up at an International Conference” と題されたセッションにカルチャーショックを受けました。

6月17日

白河総合診療アカデミーに参加。飲み仲間である麻生飯塚病院の清田先生と少し話しました。

6月21日

都内で編曲したシトコヴェツキー自身による、バッハのゴルトベルク変奏曲のトリオ版を都内のヤマハホールで聴きました。素晴らしい演奏でした。前半の “3声のインヴェンション BWV 787-801 (J.S. Bach)” はいまいちでしたが、後半のゴルトベルク変奏曲は圧巻でした。この曲はイギリスからパート譜を買い寄せており、上手なヴィオラ弾きがいたら、やりたいと思っています (チェロは確保済み)。

6月26日

福島市音楽堂でモルゴーア・クァルテットを聴きました。ドビュッシーの「弦楽四重奏曲第1番ト短調作品10」で始まり、エマーソン・レイク&グレック・レイクの「タルカス」、キース・エマーソン、グレッグ・レイク&ピート・シンフォールドの「悪魔の経典#9」が演奏されました。アンコールはサティの「ジムノペディ」、グレッグ・レイクの「Still…Your Turn Me On」、ロバート・フィリップ「Peace – An End」でした。「タルカス」や「悪魔の経典#9」はリズミックなノリノリの曲だったのですが、ライブ感がすごかったです。このクァルテットは福島出身のメンバーがいることもあって、結成初期から毎年福島県でのコンサートを続けているそうで、福島市音楽堂はまさにホームでした。震災の2011年には、6月に被災者慰問コンサートもされているようです。このプログラムで満員になるというのは、彼らが福島にクラシック文化を育ててきたということになるんでしょうね。

7月2日

知人が経営する甚三紅に行きました。素晴らしい料理、日本酒をいただきました・・・が羽目を外しすぎました。

7月8日

都内ブレーメンハウスで、ジョン・チャヌ氏のサロンコンサートを聴きました。コンサートを通じて、ヴァイオリンで歌うとはどういうことかを教えられました。クロイツェル・ソナタではおぼつかないところも少しあったけれど・・・。

7月14日

阿武隈急行の企画「あぶQビアガー電」に行きました。これは、阿武隈急行内でビールを飲み、あぶくま駅となりの建物でバーベキューをして戻ってくる企画です。経営難とも噂される阿武隈急行も色々頑張っているんですね。また来年も行きたいです。

7月21日

ホテルはまつで、岩田誠先生が認知症について講演されました。認知症の方にどう接するかという話で、こういう視点の話はなかなか聴けないので、とても貴重だと思います。下記の本に内容がまとまっていますので、是非様々な方に読んで頂きたいです。

脳を守ろう――脳梗塞・認知症を予防するために (岩波ブックレット) 

臨床医が語る 認知症と生きるということ

臨床医が語る認知症の脳科学

上手な脳の使いかた (岩波ジュニア新書)

7月24~29日

北九州の産業医大に、「産業医学基礎研修会集中講座」を受けに行きました。私は定期的に福島第一原発の近くで総合内科外来をしており、原発作業員を診療することが多く、産業医学に興味を持ったためです。労務環境をいかに安全にするかという話に、自分は医学の一面しか知らなかったんだなぁと勉強になりました。会場で、東京時代に教えた学生に会いました。懐かしく思いました。

6月17日に清田先生に会った時、「僕はその日に産業医大に講演に行っているから会おうよ」と言われ予め飲む約束していたのですが、彼は救急科の教授から飲み会に誘われたという流れ、なぜか私が産業医大の救急部の飲み会に参加することに。知り合いが増えるのは楽しいものです。

この遠征の間に、岩田誠先生の「ホモ ピクトル ムジカーリス―アートの進化史」という本を読み終えました。科学的思考を用いながら、科学という枠を離れた内容。こういった分野にまで教養のある人間になりたいです。

8月1日

発熱しました。とはいっても、max 37 ℃台後半で、鼻汁、軽い咽頭痛、右頸部リンパ節腫脹、咳、痰といった症状です。最近多忙だったことを思い、8月2日は仕事を休みました。発熱に関しては、その都度ブログに書くようにしています。ブログ内検索をすると、発熱の頻度がわかるためで、個人的興味です。

10月上旬に夏休みが取れそうで、どこに行こうかと考えています。ドイツに行きたいなと思いつつ、原稿書きが終わらなければ、文豪のようにどこかの温泉に 1週間閉じこもって執筆活動に勤しみたいとも考えています。一名でも泊まれそうな良い温泉ないですかねぇ。だいたい 2名以上からなんですよね・・・。

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夢の話

By , 2017年6月9日 11:19 AM

抄読会で、”The neural correlates of dreaming” という論文を読みました。抄読会用の資料は下記です。

The neural correlates of dreaming

Nature newsでも紹介されています。

夢を見ることに特異的な脳活動パターン

 この論文の要点は以下です。

・REM期でもNon-REM期でも夢をみている (ただし REM期の方が多いようだ)。
・夢をみているときは、後頭ホットゾーンの低周波数活動が低下している。
・夢を思い出せるときは、ホットゾーンを中心に高周波数活動が増加している。
・夢の内容によって、高周波数活動の増加する部位が異なる。

 学生時代、夢は REM期に見るものだと習ったので、それを覆す内容で驚きでした。でも、授業中などに少しまどろんだだけで夢をみることもあるので、Non-REM期に夢を見ていると考えれば、その現象も理解できます。神経内科医としては、今後 REM睡眠行動異常と絡めた研究が出てこないか、注目したいと思います。

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水族館めぐり

By , 2017年4月30日 3:25 PM

教科書のある章を書くことになったり、単著での執筆依頼が舞い込んできたり、学会での公開討論をしなければならなくなったり、次々と新しい仕事が振ってきて相変わらずバタバタしていますが、プライベートだけは死守するようにしています。2月18日、仙台での内科学会東北地方会の後、宮城県立美術館でルノワール展を見ることができました。ゴールデンウィークは、5月3日の当直を終えてから帰省しようと思います。実家ではすることもないので、昼は仕事が捗りそうです。

3月18-20日の三連休、初日は秋田県で全科当直でしたが、そのあと水族館めぐりをすることができました。

3月19日(日)

秋田 (12:10)→ JR男鹿線→ 男鹿 (13:05)

トヨタレンタカー男鹿店で車を借りてドライブしようと思って予約していたのですが、レンタカーショップは船越駅から車で 5分というところにあるんですね。男鹿駅に着いてから気付き、折り返しの電車も 1時間くらい待たされるとのことで、男鹿駅からレンタカーショップまでタクシーで行きました。

何とかレンタカーを借りてドライブ開始。県道59号線を走り男鹿半島を南側からぐるりと廻ると、潮干狩りができるような砂浜があったかと思えば、山の中腹からむき出しの岩肌を見下ろしたり、舞台島と呼ばれる特徴的な岩があったり、移りゆく海沿いの景色がとても綺麗でした。ただ、山の途中にはゲートがあって、冬は通り抜けできなくなるようです。

舞台島

舞台島

山の中腹からの海

山の中腹からの海

そして目的の男鹿水族館へ。ハタハタとか、男鹿の海の特集が良かったです。水槽内では、亀の甲羅の上に同じ魚がずっといました。この魚は全然動いていなかったけれど、生きていたのでしょうか。

魚

別の展示では、シロクマが首を振りながら後退しては前進するのを繰り返していました。10分以上ずっとしていて、自分の影と遊んでいるのかなと思ったのですが、その後に読んだウェブニュースを見るとシロクマにおけるというのが問題になっているらしく、不安になりました。

シロクマ

シロクマ

水族館を楽しんだ後は、なまはげ館をちょっとだけ覗いてレンタカーを返しました。レンタカーショップの方が、駅まで送ってくださいました。

男鹿駅 (17:53)→JR男鹿線→秋田駅 (18:52)

その日はアルバートホテル秋田泊。遊食さい賀で秋田の郷土料理と、地酒を楽しみました。まったり飲んでいたのに、途中で一番偉い女将っぽいのが登場して仕切りだしてから雰囲気がきつくなったのが残念。

3月20日(月)

秋田駅 (9:15) →特急いなほ→ 鶴岡駅 (11:06)

鶴岡駅からバスで市立加茂水族館に行こうとおもったのですが、接続が悪かったので、タクシーを使うことにしました。駅前の観光案内所では、「観タク」というのがあり、「クラゲ展示種類数世界一の水族館コース」を選ぶと、2時間貸し切り (6300円) でした。これだと、水族館で 1時間以上過ごすことができます。

水族館に入って、レストランに行くと、クラゲラーメンというのがありました。クラゲは独特の食感でした。クラゲ展示コーナーでは、ノーベル賞で一躍有名になったオワンクラゲを始め、数多くのクラゲが展示されていました。出生日数毎に並んだ水槽で、クラゲが生まれてから成長していく過程が観察できる試みも素晴らしかったです。笑ったのは出目金の水槽。オスメスの判別法で、「オスは腹部をこすると精液が出ます」って。性別を確認されるたびに射精させられる出目金かわいそう。

ウリクラゲ

ウリクラゲ

シンカイウリクラゲ

シンカイウリクラゲ

鶴岡駅で日本酒「くどき上手」を買い込み、羽越本線に乗り込みました。余目まで 1時間くらい時間があると思っていたら、すぐ着いてしまい、降りそびれました。そのまま酒田駅へ。酒田駅前で散策した後、折り返しの電車に乗り込みました。最上川が綺麗でした。

酒田駅 (15:28) →JR羽越本線→余目 (15:45), 余目 (16:01)→JR陸羽西線→新庄 (16:51), 新庄 (17:12)→山形新幹線つばさ

最上川

最上川

 

 

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ILAE発作及びてんかん分類2017

By , 2017年3月25日 8:38 AM

2017年3月、ILAE (International League Against Epilepsy) から新しく発作分類とてんかん分類が発表された。

Instruction manual for the ILAE 2017 operational classification of seizure types. (2017.3.8 published online)

Operational classification of seizure types by the International League Against Epilepsy: Position Paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. (2017.3.8 published online)

ILAE classification of the epilepsies: Position paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. (2017.3.8 published online)

以下、簡単に要約する。なぜこの分類になったかとか、用語の定義などは原著参照のこと。

<発作の分類>

1981年分類から新しくなった点。

  1. “部分 (partial)” の語を “焦点 (focal)” に変えた。よって、部分発作は焦点発作と呼ばれるようになる。
  2. 発作型は “focal onset (焦点発作)”, “generalized onset (全般発作)”, “unknown onset (不明)” に分けられる。
  3. “Unknown onset” は将来さらに分類できるかもしれない。
  4. 焦点発作の分類に覚醒 “awareness” を用いる。
  5. 認知障害 (dyscognitive), 単純部分発作、複雑部分発作、心因性、二次性全般化の語は用いなくなった。
  6. 焦点発作で新たに加わった発作型は、自動症 (automatics), 自律神経 (autonomic), 行動停止 (behavior arrest), 認知機能 (cognitive), 情動 (emotional), 運動過多 (hyperkinetic), 感覚 (sensory), 焦点発作から両側性強直間代発作への移行 (focal to bilateral tonic-clonic seizures) を含む (下記の figure拡大バージョン参照)。弛緩性 (atonic), 間代性 (clonic), 点頭てんかん (epileptic spasm), ミオクローヌス性 (myoclonic), 強直性 (tonic) 発作は焦点発作の場合も全般発作の場合もありうる。
  7. 全般発作で新たに加わった発作型は、眼瞼ミオクロニアを伴う欠神発作 (absence with eyelid myoclonia), ミオクローヌス性欠神発作 (myoclonic absence), ミオクローヌス性強直間代性発作 (myoclonic-tonic-clonic), ミオクローヌス性弛緩性発作 (myoclonic-atonic), 点頭てんかん (epileptic spasms) である。

基本バージョンはこちら。

Basic version

Basic version

拡大バージョンはこちら。

Expanded version

Expanded version

流れとしては、まず発症時の状態で焦点発作 (旧部分発作) か全般発作かを検討する。目撃者がいなかった場合など、どちらかわからない場合は、今回から「不明 (unknown onset)」という分類が可能になった。個人的な意見だけど、治療の際に焦点発作でも全般発作でも対応できる抗てんかん薬を選択するという点で意味を持ってくるのかもしれない。焦点発作は、覚醒障害の有無により更に分類する。従来の「複雑部分発作」は「覚醒障害 (意識障害) を伴う焦点発作 (focal impaired awareness seizure)」と呼ばれるようになる。発作をさらに運動症状で発症したか、あるいは非運動症状で発症したかで分類し、細分化することもある。従来の二次性全般化は、「焦点発作から両側性強直間代発作への移行 (focal to bilateral tonic-clonic seizures)」として扱われる。

なお、発作型はできるところまで分類すれば良い。焦点発作でも、覚醒の障害があったかどうかわからないときは、単に「焦点発作」とだけ記せば良い。これらの分類については、厳格さよりも実用的であることを重視したため、”operational classification” という名前になっている。

<てんかんの分類>

発作型を診断した後、それを基にてんかんのタイプを診断する。てんかんのタイプは焦点性てんかん (focal epilepsy), 全般てんかん (generalized epilepsy), 全般てんかんと焦点性てんかんの合併 (combined generalized, and focal epilepsy epilepsy), 不明 (unknown epilepsy) に分類される。全般てんかんでは、典型的には脳波で全般性の spike-wave activityがみられるだろう。全般性強直間代発作で脳波が正常な場合は注意が必要である。この場合、myoclonic jerkや家族歴など補助的な根拠が大事になる。てんかんのタイプの次にてんかん症候群の診断をおこなうが、てんかん症候群の診断ができない場合は、てんかんのタイプが最終の診断になるかもしれない。てんかんのタイプとしてよくしられているのは、小児欠神てんかん、West症候群、Dravet症候群などがあるが、ILAEがこれまでてんかん症候群の正式な分類を出していないことには留意すべきである。

特発性全般てんかんという語は不適切だという意見もあるが、小児欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、覚醒時全般性強直間代発作 (覚醒時大発作のこと) については、特発性全般てんかんの語は許容できる。

ILAE classification of the epilepsies

ILAE classification of the epilepsies

今回の分類を読んだ感想。確かに、1981年に提案された ILAE発作分類や、1989年に提案された ILAEてんかん・てんかん症候群分類が抱える矛盾点をある程度解決しているといえる。でも、それらの分類が使いやすくて、とても浸透しているので、今回の分類が臨床現場で受け入れられるかはよくわからない。過去には、2010年に発表された発作分類及びてんかん分類の改訂版は普及しなかった訳だし。

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最近の医学論文【下】

By , 2017年3月24日 9:27 PM

(最近の医学論文【中】より続く)

Ocular Flutter in the Serotonin Syndrome. (2016.11.3 published online)

46歳の女性が興奮 (agitation) のため救急外来に搬送されてきた。到着時、38.6℃の発熱と頻脈 (心拍数 169 /分) があった。患者は興奮しており、眼球粗動がみられた。また、下肢の筋強剛と腕のミオクローヌスがあった。腸音は亢進し、皮膚は冷たく、発汗を伴っていた。内服薬はベンゾジアゼピン、venlafaxine (SNRI) であった。彼女は指示されたよりも多く venlafaxineを内服していた。症状と無い履歴からセロトニン症候群が疑われた。ミダゾラムが投与され、気管挿管されたが、眼球粗動は続いていた。患者は ICUに入室し、数日後に死亡した。

SSRIや SNRIを処方することはたまにあるが、セロトニン症候群の経験はまだない。しかし、いつ遭遇するかわからないので、勉強しておかないと。論文サイトの眼球粗動の動画が印象的だった。

Assessing the Risks Associated with MRI in Patients with a Pacemaker or Defibrillator. (2017.2.23 published online)

MRI検査の適応がありながら、MRI非対応の心臓ペースメーカーや除細動器を植え込んでいる患者に、1.5Tの MRIを用いて検査をし、その安全性を前向き研究で確認した。植え込み式除細動器のうち pacing dependentの患者は除外している。適切なプログラミングがされていなかった植え込み式除細動器でジェネレーターの動作が確認できなかった以外、1000名のペースメーカー患者と 500名の植え込み式除細動患者で大きなトラブルはなかった。数件、小さなトラブルがあった。この研究でおこなったような条件なら、1.5テスラの MRIで大きな問題は起きないようだ。

この論文を読んで、10年前に読んだ教科書に、「いや・・・ほとんどめったに・・・ただただ気が進まずに行うことがある。我々の施設ではおよそ5年ごとに、ペースメーカー装着患者の差し迫った臨床上の問題で他の画像検査では十分でないために、MRIが必要とされる状況が生じる。このようなまれな状況では、我々は以下のプロとコールで安全に検査を施行してきた。①検査が医学的に必要なことを主治医が述べている声明書を取得する。(略)④うまくいくように祈る。」と書いてあったのをブログで紹介したことを思い出した。

Association of Intensive Blood Pressure Control and Kidney Disease Progression in Nondiabetic Patients With Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. (2017.3.13 published online)

非糖尿病性の慢性腎臓病 (CKD) で厳格な血圧コントロールをしたら、進行が防げるかというメタアナリシス。通常の血圧コントロールは 140/90 mmHg未満で、厳格な血圧コントロールは 130/80 mmHg未満とした。フォローアップ期間の中央値は 3.3年だった。その結果、年間の GFR変化率、血清クレアチニン倍増ないし GFR 50%低下、末期腎不全、複合腎アウトカム、総死亡において、両群間に有意差はなかった。ただし、非黒人および蛋白尿量が多い患者では、厳格な血圧コントロールでの CKD進行リスクが低い傾向があった。

厳格な血圧管理の有効性は低いかもしれないとはいえ、血圧の管理自体を否定する結果ではないのだろう。

Serum creatinine elevation after renin-angiotensin system blockade and long term cardiorenal risks: cohort study. (2017.3.9 published online)

RAS系阻害薬 (ACE阻害薬と ARB) 開始後の血清クレアチニン上昇と長期間の心腎リスク (末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡) のコホート研究。海外のガイドラインでは、血清クレアチニンが 30%上昇したら、RAS系阻害薬は中止するように推奨されているらしい。この研究では、RAS系阻害薬を投与された 122363名のうち 1.7%でクレアチニンが 30%上昇していた。女性、高齢者、心腎疾患合併、NSAIDs/ループ利尿薬/カリウム保持性利尿薬の使用に多かった。クレアチニン上昇の 30%上昇は全アウトカムの調整罹患率比に相関があった。

クレアチニン上昇とアウトカム

クレアチニン上昇とアウトカム

図をみると、クレアチニン上昇とアウトカムとの量相関関係が一目瞭然。たとえクレアチニン 10%上昇でも心腎リスクが上昇するというのはビックリ。これからは、ACE阻害薬とか ARBを処方したら、クレアチニンの上昇がないか気を配らないと。

Autologous Induced Stem-Cell-Derived Retinal Cells for Macular Degeneration. (2017.3.16 published online)

加齢性黄斑変性症に対する iPS療法の報告。2名が治療対象として選ばれ、1名に iPS療法が施行された 。iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞は術後 1年後も正常であった。視力は改善も悪化もなかった。もう 1名は copy numberの異常が確認され抗 VEGF療法への反応も若干あったため移植されなかった。移植しなかった細胞は解析に回され、ラットを用いた実験では、腫瘍の形成はみられなかった。

iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞移植の安全性を示したという意味で、記念碑的な論文だと思う。私は幹細胞医療も眼科領域も専門外でよくわからなかったのだけれど、術後 1年経過して視力が改善も悪化もしないというのはどういう意味なのだろう。加齢性黄斑変性症が進行しなかったため効果があったということなのか、それとも改善しなかったというのは効果がなかったということなのか。論文に説明がないので、よくわからない。”However, we have yet to evaluate the extent of photoreceptor function of RPE graft in Patient 1.” と書いてあるから、効果に対する評価はこれから色々とおこなわれていくのだろう。

NEJM誌の同じ号に、幹細胞クリニックで脂肪由来の幹細胞移植を受けて失明した 3名の加齢性黄斑変性症患者の症例報告がある。今回日本から報告された iPS療法のように十分な科学的裏付けがあり安全性に細心の注意を払っておこなっているところはよいけれど、そうではないところは怖いなと思う。

Clarifying a “PenicillinAllergy: A Teachable Moment. (2017.2.1 published online)

患者さんがペニシリンアレルギーと深刻したとき、皮膚テストをしてみると 80-90%はアレルギーではないらしい。ペニシリンアレルギーの患者にどう対応するかという下記の図が勉強になる。

ペニシリンアレルギー

ペニシリンアレルギー

DPPX antibody-associated encephalitis: Main syndrome and antibody effects. (2017.3.3 published online)

DPPXは Kv4.2カリウムチャネルの制御蛋白である。2013年以降の DPPX抗体関連脳炎 9名を後方視的に検討。発症年齢の中央値は 57歳 (36-69歳)。全ての症例で、強い体重減少や下痢が先行した。その後に、認知機能障害、記憶障害、中枢神経興奮性 (過剰驚愕症、ミオクローヌス、振戦、けいれん発作)、脳幹や小脳機能障害が出現した。疾患のピークは 8ヶ月 (1-54ヶ月) であった。全例、IgG4および IgG1 DPPX抗体が陽性であった。クラスター化した神経では、抗体は DPPXクラスターと Kv4.2蛋白の減少の原因となったが、これらは抗体の除去により可逆的だった。67%の症例に、体重減少 (中央値 20 kg)/胃腸症状、認知機能-精神機能低下、中枢神経興奮性の三徴がみられた。過去の報告と併せた 39症例のうち、35例の予後が評価可能だった (8名は免疫療法を受けていない)。60%は十分ないし軽度の改善、23%は改善なし (大部分は無治療)、17%が死亡した。

近年、脳炎の原因抗体が沢山されていて、把握がなかなか困難となってきているけれど、強い体重減少や下痢の先行というキーワードは特徴的なので覚えておこうと思う。

Delayed tacrolimus leukoencephalopathy, a rare and reversible cause of dementia. (2017.1.10 published online)

タクロリムスを投与している患者に起こる急性白質脳症としては、PRESが一般的だが、遅発性慢性の経過をとる白質脳症も報告されている。頭部MRIで造影効果があり、タクロリムスを中止すると改善するらしい。

Neurological Autoantibody Prevalence in Epilepsy of Unknown Etiology. (2017.2.6 published online)

原因不明のてんかん患者の連続症例で、自己抗体を検索した研究。112名のうち、34.8%で何らかの自己抗体が検出された。2つ以上の自己抗体が検出されたのは 7名で、3名が 抗TPO抗体+抗VGKC抗体、2名が抗GAD65+抗VGKC抗体、1名が抗TPO抗体+抗GAD65抗体、1名が抗Hu抗体+抗GAD65抗体だった。112名のうち、抗TPO抗体が 15名 (13.4%)、抗GAD65抗体が 14名 (12.5%)、抗VGKC抗体が 12名 (10.7%; うち 4名が抗LGI抗体)、抗NMDA抗体が 4名 (3.6%) であった。抗TPO抗体および低値の抗VGKC抗体を除いてさえ、てんかんの原因と考えられる自己抗体が検出された患者が 23名 (20.5%) 存在した。自己抗体が存在するか予測するのに APE (antibody prevalence in epilepsy) スコアが有用だった。自己抗体が検出された 23名のうち APE 4点以上が 82.6%であり、抗体が陰性なのに APE 4点以上だったのは 19.1%のみだった。自己抗体が陽性の患者は、発作のアウトカムが良く、発作頻度の減少は免疫抑制療法の使用と関連があった。

APE score

APE score

Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica. (2017.3.23 published online)

坐骨神経痛に対するプレガバリン (商品名リリカ) の効果を調べたランダム化比較試験。8週間 (および 52週間) の観察で、プレガバリンによる疼痛スケール、障害、QOLなどの改善はなく、副作用 (めまいなど) が多かった。

Auditory training changes temporal lobe connectivity in ‘Wernicke’s aphasia‘: a randomised trial. (2017.3.4 published online)

脳卒中で感覚性失語症をきたした患者に対する介入。30名の慢性期患者を対象に (1) “Earobics” というソフトウェアを用いた音韻性トレーニング、(2) ドネペジルによる薬物療法の効果を調べた。ドネペジルは、二重盲検、プラセボ対照、クロスオーバーデザインで評価した。その結果、音韻性トレーングは重度の障害の患者の言語理解を特に改善した。ドネペジルは、逆に悪化させるという予想外の結果だった。ドネペジルなど認知機能改善薬は、神経薬理学的作用と遂行機能の間に逆U字状の関係が指摘されており、聴覚野のアセチルコリン刺激が十分高い状況でドネペジルを入れることが逆効果だったのではないかと著者らは考察している。また、ドネペジルは言語理解よりもむしろ言語の表出に効果があるのではないかという検討もなされている。

Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. (2017.2.14 published online)

米国内科学会による腰痛の診療ガイドライン。

RECOMMENDATION 1:

Given that most patients with acute or subacute low back pain improve over time regardless of treatment, clinicians and patients should select nonpharmacologic treatment with superficial heat (moderate-quality evidence), massage, acupuncture, or spinal manipulation (low-quality evidence). If pharmacologic treatment is desired, clinicians and patients should select nonsteroidal anti-inflammatory drugs or skeletal muscle relaxants (moderate-quality evidence). (Grade: strong recommendation).

RECOMMENDATION 2:

For patients with chronic low back pain, clinicians and patients should initially select nonpharmacologic treatment with exercise, multidisciplinary rehabilitation, acupuncture, mindfulness-based stress reduction (moderate-quality evidence), tai chi, yoga, motor control exercise, progressive relaxation, electromyography biofeedback, low-level laser therapy, operant therapy, cognitive behavioral therapy, or spinal manipulation (low-quality evidence). (Grade: strong recommendation).

RECOMMENDATION 3:

In patients with chronic low back pain who have had an inadequate response to nonpharmacologic therapy, clinicians and patients should consider pharmacologic treatment with nonsteroidal anti-inflammatory drugs as first-line therapy, or tramadol or duloxetine as second-line therapy. Clinicians should only consider opioids as an option in patients who have failed the aforementioned treatments and only if the potential benefits outweigh the risks for individual patients and after a discussion of known risks and realistic benefits with patients. (Grade: weak recommendation, moderate-quality evidence).

ごく簡単に要約すると、”急性および亜急性の腰痛は、治療にかかわらず時間とともによくなる。まずは温める、マッサージなどの非薬物療法を選択するべきである。もし薬物療法が必要なら、NSAIDsや筋弛緩薬を用いる。慢性の腰痛では、最初に非薬物療法を選択し、非薬物療法への反応が不十分なら薬物療法を考慮すべきである。NSAIDsが第一選択薬で、トラマドールやデュロキセチンが第二選択薬となる。”
普段外来をしていると、腰痛を訴える高齢者は少なくないし、必要な知識だと思う。

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最近の医学論文【中】

By , 2017年3月24日 9:26 PM

(最近の医学論文【上】より続く)

Assessment of Safety and Efficacy of Safinamide as a Levodopa Adjunct in Patients With Parkinson Disease and Motor Fluctuations: A Randomized Clinical Trial. (2017.2.1 published online)

MAO-B阻害薬である safinamideの第三相試験。Safinamideはジスキネジアのない on時間を 9.3時間から 1.42時間延長した。プラセボ群では 9.06時間から 0.57時間延長した。ジスキネジアは、safinamide群 14.6%, プラセボ群 5.5%だった。そして、FDAが 2017年3月21日承認

セレギリン、ラサギリンに続く薬剤。他の薬剤との直接比較がどうなのか知りたいところ。

Blood-based NfL: A biomarker for differential diagnosis of parkinsonian disorder. (2017.2.8 published online)

血液で、パーキンソン病とそれ以外のパーキンソン症候群 (atypical parkinsonian disorders; APD) を鑑別できないかという試み。パーキンソン病では neurofilament light chain (NfL) は上昇しないが、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症候群では上昇することを用いた。パーキンソン病を APDと鑑別する感度/特異度は、 Lund cohortで 82%/91%, London cohortで 80/90%, Early disease cohortで 70/80%だった。NfLは髄鞘化大径線維の変性のマーカーであり、脳卒中、頭部外傷、APD, 筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭葉変性症などで上昇することが知られている。パーキンソン病では上昇しない。軸索変性が重度でなく、また広範ではないことが原因ではないかと推測されている。

NfL

NfL

血液検査で、精度良く鑑別できるのは大きな利点だと思う。

Development of a Biochemical Diagnosis of Parkinson Disease by Detection of α-Synuclein Misfolded Aggregates in Cerebrospinal Fluid. (2017.2.1 published online)

パーキンソン病患者の髄液中の微量の α-synucleinを protein misfolding cyclic amplification (PMCA) で検出することで、感度 88.5% (95%CI 79.2-94.6%), 特異度 96.9% (95%CI 89.3-99.6%) の診断精度をえられるという報告。

PMCAは 2014年に報告された論文で尿中のプリオン蛋白を検出するのに用いられた方法で、これがパーキンソン病の髄液 α-synucleinで報告されたというのは、α-syculeinとプリオン蛋白との類似性の現れなのかもしれない。

Predictors of survival in progressive supranuclear palsy and multiple system atrophy: a systematic review and meta-analysis. (2017.3.1 published online)

進行性核上性麻痺や多系統萎縮症の予後予測についての systematic review & meta-analysis。進行性核上性麻痺では、予後不良因子として、Richardson型、初期の嚥下障害や認知機能障害が挙げられる。多系統萎縮症の予後不良因子は、重度の自律神経障害、初期から自律神経障害と運動症状の合併が挙げられる。そのほか、進行性核上性麻痺と多系統萎縮症で、早期からの転倒も予後予測因子だった。

この論文で勉強になったのは、予後予測因子そのものより、各研究での生存曲線。いずれの疾患も、約5~10年で半数、10~15年で大部分が亡くなるという結果が一目瞭然。

Predictors of survival in PSP and MSA

Predictors of survival in PSP and MSA

Safety and efficacy of ozanezumab in patients with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. (2017.1.28 published online)

筋萎縮性側索硬化症に対する分子標的治療薬 ozanezumabの第二相試験。SOD1G93A mouseに効果を示した Neurite outgrowth inhibitor A (Nogo-A) に対するモノクローナル抗体 ozanezumabは ALS患者に対して、プラセボ比較で効果を示すことができなかった。

論文の考察でも少し触れられているけれど、SOD1をターゲットに薬剤を開発しても、SOD1変異がない大部分の ALS患者では効果がないということなのだろうか・・・。SOD1変異のあるヒトを対象とした臨床試験をおこなったらどうだろうかと、ふと思った。

Zika virus infection and Guillain-Barré syndrome: a review focused on clinical and electrophysiological subtypes. (2016.10.31 published online)

ジカウイルスによる Guillan-Barre症候群の総説。AIDPタイプが多い、顔面の麻痺を伴うことが多い、入院時に抗asialo-GM1抗体が 31%に検出されるがジカウイルス抗原と asialo-GM1の関連を示すエビデンスはない、などの点がポイント。

Genetic heterogeneity of motor neuropathies. (2017.3.1 published online)

運動ニューロパチーの遺伝的多様性を調べたイギリス北部の大規模コホート研究。105名の内訳は、distal hereditary motor neuropathy (dHMN) 64名、axonal motor neuropathy (Charcot-Marie-Tooth disease type 2) 16名、hereditary motor neuropathy plus 25名であった。原因遺伝子は 35.6%で同定された。遺伝子の内訳と、鑑別を考えるときの手がかりは下記。

Genetic heterogeneity of motor neuropathies

Genetic heterogeneity of motor neuropathies

Netrin-1 receptor antibodies in thymoma-associated neuromyotonia with myasthenia gravis. (2017.3.1 published online)

胸腺腫、neuromyotonia, 重症筋無力症のある 3名の患者の血清を用いて免疫沈降法をおこなった。沈降したタンパク質 182のうち、コントロール群の血清と反応したタンパク質などを除外した後、細胞表面タンパク質が 9種類残った。Neuromyotoniaの患者サンプルを用いて、cell-based assayをおこない、Contactin-associated protein 2 (Casper2), Deleted in colon cancer (DCC), Netrin uncoordinated-5A receptor (UNC5A) の 3つの抗体が同定された。抗Netrin抗体 (DCC, UNC5A) 陽性患者はいずれも胸腺腫があった。

Serum antibody-positive patients

Serum antibody-positive patients

Venn diagram

Venn diagram

胸腺腫合併の重症筋無力症や neuromyotoniaで、抗Netrin-1抗体が陽性になることがあるらしいという話。覚えなくてはいけない抗体がどんどん増える。

Long-term survival in paraneoplastic Lambert-Eaton myasthenic syndrome. (2017.3.1 published online)

肺小細胞癌患者は、Lambert-Eaton筋無力症候群 (LEMS) を合併した方が予後がよさそうという報告。Lead time biasでは説明できないらしい。原因はよくわかっていないけれど、LEMSで検出される抗VGCC抗体が腫瘍の増殖にとってマイナスに働いているのではないかと推測されている。

肺小細胞癌とLEMS

肺小細胞癌とLEMS

Cerebellar Ataxia and Hearing Impairment. (2017.2.1 published online)

51歳男性。マラソンをして 1ヶ月もしないうちに進行性の歩行障害が出現した。また難聴を訴えが、他人の話したことを解釈するのが難しいようだった。浮動性めまいや膀胱直腸障害はなかった。バランス障害をきたすような家族歴は無かった。弁護士としての勤務は可能だった。神経学的には軽度の小脳失調はあったが、ミオクローヌスやパーキンソニズムはなかった。MoCAは 28/30点だった。頭部MRIは異常がなかった。髄液は正常で、14-3-3蛋白も正常範囲内だった。傍腫瘍症候群の抗体は陰性で、脳波も正常だった。1ヶ月後、車椅子生活となり、正確変化がみられた。小脳失調が悪化し、姿勢反射障害もみられたが、ミオクローヌスはなかった。けいれんが出現して入院した。精神症状が悪化し、無言となった。脳波も徐波となった。頭部MRIでは拡散強調像を含めて異常なかった。

診断はクロイツフェルト・ヤコブ病。感覚性失語を伴う急速進行性の失調が診断の手がかりとなる。鑑別診断は、亜急性失調+末梢性難聴として、傍腫瘍症候群、そのほか成人発症 CAPOS (cerebellar ataxia, pes cavus, optic atrophy, and sensorineural hearing loss) 症候群など。しかし、末梢性難聴がないことや、けいれんがあったことから考えにくい。亜急性の失調としては、ビタミンB1欠乏やビタミンE欠乏が挙げられるが、これらは正常だった。頭部MRIでも Wernicke脳症を示唆する所見はない。ビタミンB1を補充しても改善はなかった。橋本脳症のようなステロイド反応性脳症も考えたが、抗TPO抗体は陰性であり、ステロイドパルスも無効であった。通常耳鳴りや回転性めまいを伴わない聴力低下や聴覚過敏は、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病の初期症状として報告されている。髄液14-3-3蛋白、脳波、拡散強調像の感度/特異度は高い (髄液14-3-3蛋白 92/80%, 脳波での周期性同期性放電 67/86%, 拡散強調像 83-92/87-95%) が、いずれも正常な場合があり、特に初期症状が小脳失調の場合に多い。これらは無言無動状態となってさえみられないことがある。この患者の剖検では、視床、海馬、小脳歯状回に海綿状変性があり、ウエスタンブロットで異常プリオンタンパクの存在が確認された。病理学的には thalamic CJD / sporadic familial insomniaに合致する所見であったが、このような表現型ではなかった。

主要検査所見が全て陰性である triple negative CJDは小脳失調で発症するタイプにみられやすいことを 2016年12月31日のブログで書いておきながら、すっかり忘れていた。復習が必要。

The prion model for progression and diversity of neurodegenerative diseases. (2017.2.23 published online)

神経変性疾患の原因タンパク質が個体内あるいは個体間で伝播するというプリオン仮説の総説。研究の現状や、治療 (免疫療法、RNA干渉)。

prion仮説

神経変性疾患のprion仮説

ラボで基礎実験をしていた時代、TDP-43のプリオン仮説を唱えている先生の講演を聞いて以来、注目している仮説。

最近の医学論文【下】

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最近の医学論文【上】

By , 2017年3月24日 9:23 PM

論文を読んでいて、ちょっとおかしな点があったので酔った勢いで知り合いに連絡を取って、レターを書いたら、脳卒中の某 top journalに通りました。普段は酔った勢いで失敗してばかりですが、プラスに働くこともあるんですね。あと、編集中の雑誌が出版間際なのですが、原稿落ちの危機にあって 5日間で総説一本書き上げました。普段読んだ論文をブログ記事にしているため、ブログ内検索しながら引用すべき文献を見つけられて、結構楽でした。忙しいけれど、こうして書いておくと、何かの役に立ちますね。

Effectiveness and safety of reduced dose nonvitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study. (2017.2.1o published online)

腎障害、年齢、体重などにより、NOACは減量して用いる。減量して用いた患者でのコホート研究 (propensity scoreを使用) が BMJ誌に掲載された。その結果、虚血性脳卒中及び全身性塞栓症リスク (%/year) は、アピキサバン 4.8,ダビガトラン 3.3, リバロキサバン 3.5, ワルファリン 3.7だった。ワルファリンとの比較では、効果に関するハザード比は、アピキサバン 1.19 (95%CI 0.95-1.49), ダビガトラン 0.89 (0.77-1.03), リバロキサバン 0.89 (0.69-1.16) だった。主要安全性アウトカムは、アピキサバン 0.96 (0.73-1.27), ダビガトラン 0.80 (0.70-0.92), リバロキサバン 1.06 (0.87-1.29) だった。

通常量だと NOAC間で効果に差がなくアピキサバンの出血リスクが低そうという結果だったが、減量量に関していえば、アピキサバンは効果が劣る、ダビガトランの出血リスクが低いということで、ダビガトランに軍配があがりそうだ。

Optimal Timing of Anticoagulant Treatment After Intracerebral Hemorrhage in Patients With Atrial Fibrillation. (2016.12.20 published online)

心房細動のある患者が脳出血を発症した場合、いつ頃から抗凝固療法を再開すればよいかを調べたコホート研究。脳出血発症 7~8週間後から再開すると、効果とリスクの比が最もよさそうだ。

Cardioembolic Stroke. (2017.2.3 published online)

Atrial Fibrillation and Mechanisms of Stroke: Time for a New Model. (2017.1.19 published online)

③と④は同じ著者による論文。心房細動では説明できない心原性脳塞栓症が多いことがわかってきていて、心房心筋症や心房の線維化など、心房基質の異常というモデルが注目されているという内容。2017年1月9日のブログ記事で詳しく紹介した論文と似た内容。

Histopathological Differences Between the Anterior and Posterior Brain Arteries as a Function of Aging. (2017.2.14 published online)

脳バンクの 194剖検脳を用いて、脳の前方循環と後方循環の動脈の病理組織学な違いを検討。後方循環の動脈は前方循環と比べて、壁が薄く、エラスチンが少なく、求心性の内膜肥厚が強かった。前方循環と比べると、脳底動脈は内弾性板に囲まれた動脈の面積が大きく (動脈拡張を示唆する)、椎骨動脈はエラスチンの欠損、求心性内膜肥厚、非アテローム硬化性狭窄が強かった。若者では椎骨動脈の石灰化が前方循環よりも強かったが、加齢とともにこの差は目立たなくなった。

前方循環と後方循環の脳梗塞の違いを比較するときに役に立ちそうな報告だと思う。

Intravenous Thrombolysis in Unknown-Onset Stroke: Results From the Safe Implementation of Treatment in Stroke-International Stroke Thrombolysis Registry. (2017.2.7 published online)

発症時刻不明で血栓溶解療法をおこなった症例と、発症 4.5時間以内に血栓溶解療法をおこなった症例を比較した。その結果、発症時間不明の脳卒中では、発症4.5時間以内とくらべて、症候性出血は増えなかった (調整オッズ比 1.09, 95%CI 0.44-2.67) が、死亡が増え (調整オッズ比 1.58, 95%CI 1.04-2.41)、良好なアウトカム (mRS) は減少した (調整オッズ比 1.29, 95%CI 1.01-1.65)。

mRS at 90 days

mRS at 90 days

発症時刻不明の脳卒中症例で、頭部CTで early signが出ていなかったり、頭部MRIの拡散強調像での高信号域が狭かったりすると、私は「まだ発症してすぐなんだろうな」と思いながら、血栓溶解療法は結局やらない (というか、基本的に発症 4.5時間以内というのが確認できる症例じゃなきゃ、やっちゃダメだし)。発症時刻不明の脳卒中で血栓溶解療法をすると、発症 4.5時間以内の症例に比べて予後が悪くなるというのは予想できる結果だったけど、どの程度というのがわかって勉強になった。

Association of Preceding Antithrombotic Treatment With Acute Ischemic Stroke Severity and In-Hospital Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation. (2017.3.14 published online)

心房細動の既往のある急性期虚血性脳卒中患者 94474名を対象として、発症前におこなわれていた治療と脳卒中の重症度 (NIHSS 16点以上を中等度~重症脳卒中と定義) を後方視的に調べた。脳卒中発症前に 7.6%が治療域 (INR≧2) のワルファリン、8.8%が NOACsを内服していた。83.6%は治療域の抗凝固療法を受けていなかった。13.5%はワルファリンを内服していたが治療域でなく、39.9%は抗血小板薬単独であり、30.3%は何の抗血栓治療も受けていなかった。CHA2DS2-Vasc 2点以上で抗凝固療法をおこなっていなかった理由の内訳は、記載なし 65.8%, 出血リスク 16.3%, 転倒リスク 10.3%, 終末期 6.2%, 患者の拒否 4.3%などだった。交絡因子で調整後、発症前に抗血栓療法がおこなわれていた患者では、中等度~重症脳卒中 (調整後オッズ比 治療域のワルファリン 0.56 [95%CI 0.51-0.60], NOACs 0.65 [0.61-0.71], 抗血小板薬 0.88 [0.84-0.92]) および院内死亡 (調整後オッズ比 ワルファリン 0.75 [0.67-0.85], NOACs 0.75 [0.72-0.88], 抗血小板薬 0.83 [0.78-0.88]) のオッズが低かった。

神経内科医になって、心房細動があるのに抗凝固療法をされずに心原性脳塞栓症で運ばれてくる患者さんを日々みて切々と感じていたのは、「なぜこの方は抗凝固療法をされていなかったのだろう。ひょっとしたら防げていたかもしれないのに。」ということ。おそらく NOACsが発売になり製薬会社がプロモーションの一環として抗凝固療法の必要性の啓蒙活動をするようになったこと、CHADS2あるいは CHA2DS2-Vasc scoreが知られるようになり抗凝固療法の適応がわかりやすくなったことが原因で、最近では適切に抗凝固療法が行われている症例が増えていると思う。そして、きちんと予防治療されている患者では、仮に虚血性脳卒中を発症しても軽くすむことが多いというデータ。抗血小板薬でも中等度~重症脳卒中および院内死亡の低下とこれだけ相関があるというのは少し驚きだった。

Validating the HERDOO2 rule to guide treatment duration for women with unprovoked venousthrombosis: multinational prospective cohort management study. (2017.3.17 published online)

誘因のない静脈血栓塞栓症において、女性の 51.3%が HERDOO2 (Hyperpigmentation, Edema, or Redness in either leg; D-dimer level ≥250 μg/L; Obesity with body mass index ≥30; or Older age, ≥65 years) の low riskに分類された。この場合、5-12ヶ月の短期間で抗凝固療法をやめても再発率は低かった (3.0% per patient year, 95% confidence interval 1.8% to 4.8%)。HERDOO2高リスク女性および男性では、治療を中止すると 8.1%  (95%CI 5.2% to 11.9%) per patient yearの再発があり、抗凝固療法を続けた場合は 1.6% (95%CI 1.1-2.3%) per partient yearの再発リスクだった。

HERDOO2

HERDOO2

いつまで抗凝固療法をつづけるかの指標として便利なので覚えておきたい。

 

Tumefactive demyelination following treatment for relapsing multiple sclerosis with alemtuzumab. (2017.2.8 published online)

症例は 39歳の女性。24歳時に再発緩解型多発性硬化症と診断。Glatiramer acetate→fingolimod→natalizumabで治療してきて、JC virusが陽性となったことを転機に alemtuzumabに変更。4ヶ月後、脱髄病巣による腫瘤形成がみられた。著者らは、リンパ球の populationが劇的に変化したためではないかと推測している。

Alemtuzumabは、種々の副作用のため米国では承認が延長された過去があり、最近副作用絡みの報告が専門誌に散見されるので、かなり注意して使わないといけない薬剤だと思う。

Treatment effectiveness of alemtuzumab compared with natalizumab, fingolimod, and interferon beta in relapsing-remitting multiple sclerosis: a cohort study. (2017.2.10 published online)

再発寛解型多発性硬化症について、alemtuzumabと他の薬剤を比較したコホート試験。年間再発割合は、alemtuzumab 0.19 vs interferon beta 0.53, alemtuzumab 0.15 vs fingolimod 0.34, alemtuzumab 0.20 vs natalizumab 0.19だった。障害のアウトカムでは、alemtuzumabは interferon beta, fingolimod, natalizumabと比較して有意差はなかった。alemtuzumabは障害の改善において、 interferon beta, fingolimodと差はなく、natalizumabより劣った。

Alemtuzumabや natalizumabの再発抑制効果は高いことはよくわかるけれど、いずれも副作用が気になるところ。重症例向けの薬剤なのだろうな・・・。

Long-term Outcomes After Autologous Hematopoietic Stem Cell Transplantation for Multiple Sclerosis. (2017.2.20 published online)

多発性硬化症に対する自家造血幹細胞移植の長期成績。281名の患者、追跡の中央値 6.6年の報告。78%が進行型の多発性硬化症だった。末梢血幹細胞の mobilizationをしたときの EDSSスコアの中央値は、6.5だった。8名 (2.8%, 95%CI 1.0-4.9%) が移植後 100日以内に死亡した。EDSSスコアによる評価で悪化がなく 5年間過ごせたのは 46%だった。移植後の神経学的疾患進行に関する因子は、高齢、進行型、2種類以上の疾患修飾薬を使用した既往であった。ベースラインの EDSSスコアが高い患者では、全生存の悪化と関連があった。

移植治療は侵襲の大きな治療で、約3%が移植に関連して亡くなるが、うまくいけば約半数の患者で明らかな進行なく過ごせるという、ハイリスク・ハイリターンの治療。

Neurodegeneration in multiple sclerosis and neuromyelitis optica. (2016.9.28 published online)

多発性硬化症と視神経脊髄炎の神経変性についての総説。多発性硬化症では髄鞘が障害されやすいけれど、視神経脊髄炎では軸索が障害されやすいことを説明した図がわかりやすい。

MS and NMO

MS and NMO

 

Possible liver injury added to label of Biogen MS drug (2017.1.25)

2017年2月22日に本邦でも発売開始となった フマル酸ジメチル (商品名 テクフィデラ) だが、米国では 添付文書に肝障害の副作用について記すことになったらしい。フマル酸ジメチルで重度の肝障害をきたした症例が複数報告されており、販売するバイオジェンのスポークスマンによれば、23万人治療して、14例だったとのこと。発症時期は数日~数ヶ月で幅があるらしい。

最近の医学論文【中】

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Romdraculas

By , 2017年2月28日 5:31 AM

路上演奏に飛び入りで参加した韓国人ウッドベーシストが話題になっています。

【鳥肌】路上演奏に飛び入り参加を申し出た青年。最初はナメていたバンドマンたちだが、、

私が気になったのは、路上演奏していたジプシー演奏家の方で Romdraculasというグループのようです。ヴァイオリニストが良い味を出しています。

CDは手に入らなかったのですが、Youtubeでいくつか演奏を聴くことが可能です

・CZARDAS por ROMDRACULAS DE FIRENZE

チャルダーシュはジプシー音楽の定番ですね。

・I Will Survive (Cover) – Romdraculas

私にとって “I will survive” といえば Igudesman & Jooなのですが、Romdraculasも素晴らしいです。

・Rom Draculas

こちらは、ジャズのスタンダード・ナンバーの “minor swing” から始まり、途中でモーツァルトの交響曲第40番第1楽章がアレンジされます。そこで拍手。

ちなみに、私が最も好きなジャズ・ヴァイオリニストであるステファン・グラッペリが、ギタリストのジャンゴ・レインハルトと演奏した “minor swing” も youtubeで聴くことが可能です。

・Minor Swing – Django Reinhardt & Stéphane Grappelli

ジャンゴといえば、モダン・ジャズ・カルテットのジョン・ルイスが「ジャンゴ」を作曲していて、私はステファン・グラッペリが演奏する「ジャンゴ」を聴いたのが、彼にハマったきっかけです。

・Django Reinhardt & Stephane Grappelli – Django (動画はラインハルトではなく別のギタリスト)

話が随分と脱線してしまいました。とはいえ、いずれもお勧めの動画なので是非ごらんください。

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