Category: 医学一般

最近の医学論文 後編

By , 2017年2月1日 6:23 PM

前編】より

BE-FAST (Balance, Eyes, Face, Arm, Speech, Time): Reducing the Proportion of Strokes Missed Using the FAST Mnemonic. (2017.1.12 published online)

脳卒中の早期発見の啓蒙活動に、海外では FASTをよく用いる。これは、Face, Arm, Speechの略で、これらの異常があれば脳卒中の可能性があるとするもの。ただし、これでは 14.1%を見逃してしまう。そこで、Balance, Eyesという、バランスの異常と視覚症状を加えると、見逃しが 4.4%に減少するのではないかという報告。

BE-FASTだとゴロが良いので、脳卒中早期発見の啓蒙に使えるのではないかと思う。ただ、バランスの異常は、発熱でふらついていても起こりそうだから、特異度は低くなりそうだけれど・・・。

Incidence and outcome of functional stroke mimics admitted to a hyperacute stroke unit. (2016.8.28 published online)

脳卒中と誤診されるような紛らわしい病態を stroke mimicsと呼ぶ。脳卒中としてロンドンの超急性期脳卒中ユニットに入院した症例 1165名を対象に、stroke mimicsについて調べた。実際に脳卒中だったのは 904名 (77.6%)、medical mimicsは 163名 (14%)、functional mimics (≒心因性) は 98名 (8.4%) だった。Medical mimicsでは過去の脳卒中による機能障害、てんかん、片頭痛などが多かった。

medical mimics

medical mimics

こんなに心因性って多いのかなぁ・・・とも感じるけれど、著者らの所属に “Department of Neuropsychiatry” “Institute of Psychiatry, Psychology and Neuroscience” というのがあるので、精神疾患を持つ患者のかかりつけが多いのかもしれない。

Impact of Rehabilitation on Outcomes in Patients With Ischemic Stroke: A Nationwide Retrospective Cohort Study in Japan. (2017.1.20 published online)

虚血性脳卒中で入院した患者のリハビリ効果を調べるために、データベースを用いて 100719名を解析。リハビリ早期開始 (入院後 3日以内)、リハビリ強度 (単位数) について、Barthel index改善の有無を評価。早期開始による Barthel indexの改善は odds ratio 1.08 (95%信頼区間 1.04~1.13), 強化リハビリ療法 > 5単位/dayによる Barthel indexの改善は odds ratio 1.87 (95%信頼区間 1.69~2.07) であった。

解析に用いた数が大きいので有意差自体は出やすくなっている。しかし Barthel indexの改善に対する Odds比 1.08とか、リハビリを早期に始めるメリットって、この程度なのかと思った。一方で、リハビリ強度については、綺麗な量相関関係があり、しっかりとリハビリは頑張った方が良さそうだ。

YAMATO Study (Tissue-Type Plasminogen Activator and Edaravone Combination Therapy). (2017.1.24 published online)

日本からの報告。血栓溶解療法の前にエダラボンを投与しても、後にエダラボンを投与しても、再開通率や症候性脳卒中、mRSでの転帰に有意差はなかった。

個人的には、エダラボンの効果自体が微妙だと思っている (全くゼロじゃないだろうけれど、薬価に見合うだけのことはないのでは・・・) ので、予想範囲内の結論。エダラボンが本当に有効なのかについて、これまでの臨床試験はベースラインが揃っていなかったり、ブラインド化されていなかったりするので、きちんとしたデザインの RCTが行われることの方に関心がある。

Abstract 18462: Proton Pump Inhibitor Use Increases the Associated Risk of First-Time Ischemic Stroke. A Nationwide Cohort Study (2016.11.11 published online)

プロトンポンプ阻害薬 (PPI) が脳梗塞のリスクを高める (incidence rate ratio (IRR) of 1.21 (95% CI 1.16-1.27; P-value <0.0001)) という報告。

元々、AHA/ASA虚血性脳卒中予防ガイドライン2014の 2195ページには “Recently, evidence has emerged that proton pump inhibitors (PPIs), such as esomeprazole, may reduce the effectiveness of clopidogrel. However, a large population study from Denmark suggested that PPIs themselves may increase the risk of cardiovascular events, so that when they are used with clopidogrel, the PPI may be the culprit.” という記載があり、PPIで心血管イベントが増えるかもしれないとされていたけれど、それを裏付ける結果。最近、PPIの副作用についての論文が増えている。

Potential Signals of Serious Risks/New Safety Information Identified by the FDA Adverse Event Reporting System (FAERS): July – September 2016 Report

FDAより、NOACsで血管炎の恐れとの安全情報。

ダビガトランとシンバスタチンの併用には注意

プラザキサとリポバスの併用で、出血リスクが高まる (OR 1.46[1.17-1.82]) らしい。詳細はリンク先のブログ記事参照。

WarfarinAssociated Nonuremic Calciphylaxis. (2017.1.11 published online)

ワルファリンに関連した非尿毒症性 Calciphylaxisの報告。著者らの 3例に加えて、15例の文献的検討。Calciphylaxisは腎不全に関連して起こることが近年話題になっているが、腎不全がなくてもワルファリン内服に関連して発症することが極めて稀ながらあるらしい。治療は抗凝固療法やチオ硫酸ナトリウム (デトキソール) などが用いられ、18例中 15例が生存した。古典的 Calciphylaxisの死亡率が 50~80%とされているのと比較すると予後は良好だった。

Facebookでこの論文について書いたら、リウマチ科医の先生から「vasculitis mimicsとして有名」と教えて頂いた。

Pharmacologic Treatment of Hypertension in Adults Aged 60 Years or Older to Higher Versus Lower Blood Pressure Targets: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians and the American Academy of Family Physicians. (2017.1.17 published online)

アメリカ内科学会とアメリカ家庭医学会より、高齢者の血圧管理についてのガイドラインが公表された。GRADEシステムで作成されている。

Recommendation 1:ACP and AAFP recommend that clinicians initiate treatment in adults aged 60 years or older with systolic blood pressure persistently at or above 150 mm Hg to achieve a target systolic blood pressure of less than 150 mm Hg to reduce the risk for mortality, stroke, and cardiac events. (Grade: strong recommendation, high-quality evidence). ACP and AAFP recommend that clinicians select the treatment goals for adults aged 60 years or older based on a periodic discussion of the benefits and harms of specific blood pressure targets with the patient.
Recommendation 2:ACP and AAFP recommend that clinicians consider initiating or intensifying pharmacologic treatment in adults aged 60 years or older with a history of stroke or transient ischemic attack to achieve a target systolic blood pressure of less than 140 mm Hg to reduce the risk for recurrent stroke. (Grade: weak recommendation, moderate-quality evidence). ACP and AAFP recommend that clinicians select the treatment goals for adults aged 60 years or older based on a periodic discussion of the benefits and harms of specific blood pressure targets with the patient.
Recommendation 3:ACP and AAFP recommend that clinicians consider initiating or intensifying pharmacologic treatment in some adults aged 60 years or older at high cardiovascular risk, based on individualized assessment, to achieve a target systolic blood pressure of less than 140 mm Hg to reduce the risk for stroke or cardiac events. (Grade: weak recommendation, low-quality evidence). ACP and AAFP recommend that clinicians select the treatment goals for adults aged 60 years or older based on a periodic discussion of the benefits and harms of specific blood pressure targets with the patient.
要するに、「何もない高齢者では収縮期血圧 150 mmHg以下、心血管イベントのリスクが高ければ 140 mmHg以下を目標にするが、個々の症例で利益と害をよく考えて決める」というもの。高齢者の血圧を下げすぎないのは最近のトレンドだが、やはり脳血管障害予防はある程度下げるほうが効果的ともいわれているので、妥当な結論ではないかと思う。ただ、細かい数字については色々議論があるようで、2017年1月30日の JAMAにはもう少し異なる提案が掲載されていた。

Hypertension

降圧基準の提案 (JAMA)

米国糖尿病学会から糖尿病の標準医療 2017年版が公開された。主な変更点はこちら

Management of Sepsis and Septic Shock. (2017.1.19 published online)

敗血症の治療ガイドラインである Surviving Sepsis Campaignが改定された。主要な推奨項目は下記 (抜粋)。

・敗血症と認識してから 1時間以内に、想定される病原体を全てカバーした広域抗菌薬を投与。

・解剖学的な感染源のコントロールを可能な限り速やかに行う。

・毎日、培養結果や臨床的改善を基に抗菌薬を de-escaltionすることを検討。

・敗血症性の低血圧がある場合、3時間以内に 30 ml/kgの晶質液を輸液。

・昇圧剤を要する敗血症性ショックでは、平均血圧 65 mmHgを目標とする。

・昇圧薬としては、ノルアドレナリンを第一選択薬とする。

・敗血症関連 ARDSでは、一回換気量 6 ml/kg、プラトー圧 30 cmH2O以下を目標とする。

→こちらの過去のブログ記事も参考に:入れる、締める、叩く!

Transient smartphone blindness: Relevance to misdiagnosis in neurologic practice. (2017.1.18 published online)

2016年に NEJM誌に報告された transient smartphone blindnessについて。メカニズムは、一般人向けのサイトに詳しい。それ自体に害はないのだけれど、頭部MRIで小血管病巣と思われる白質病変が散在していたため、多発性硬化症と誤診されてしまったという報告。

Ibrutinib monotherapy in relapsed/refractory CNS lymphoma: A retrospective case series. (2016.11.18 published online)

原発性中枢神経リンパ腫 (PCNSL) あるいは二次性中枢神経リンパ腫の対する Ibrutinibの後方視的ケースシリーズ 14名。いずれも、難治例 (12名) もしくは再発例 (2名)。最良の治療効果は、完全寛解が 3名、部分寛解が 4名。最終的には、5名死亡、6名が疾患活動性がありながら生存、3名が寛解を維持 (8, 8, 12ヶ月) であった。

Improved Muscular Weakness During Asthma Exacerbation. (2017.1.3 published online)

48歳男性、小児期からの筋力低下で、針筋電図や、血清CKレベルなどは正常。喘息発作のため、アルブテロールおよびステロイドの吸入を行ったところ、筋力が改善し、階段をのぼったり、数 km歩いたりできるようになった。

診断は先天性筋無力症。DOK7変異による先天性筋無力症では、サルブタモール吸入 (10 mg/day) で症状が改善することが知られているようだ。機序は不明だが、MuSKシグナル経路の障害を軽減することによる終板構造の安定化が仮説と唱えられているらしい。

AbbVie Initiates Phase 2 Clinical Trial Programs for ABBV-8E12, an Investigational Anti-Tau Antibody, in Early Alzheimer’s Disease and Progressive Supranuclear Palsy (2017.1.25)

AbbVie社が初期アルツハイマー病患者と進行性核上性麻痺患者を対象に、抗タウ抗体 ABBV-8E12の第二相試験を開始するらしい。

進行の遅い患者も多いので、52週間進行を観察して有意差を示せるかなぁ・・・という気はするけれど、薬剤の機序的にとても期待している。

Burnout, career satisfaction, and well-being among US neurologists in 2016. (2017.1.25 published online)

神経内科医の燃え尽き (burnout)、仕事満足度などについてのサーベイランス。米国神経内科学会の会員を対象とし、40.5%から回答を得られた。平均年齢は 51歳、65.3%が男性。少なくとも 60%が燃え尽きの症状を自覚していた。燃え尽きのリスクと関連していたのは、労働時間/週、夜間オンコール/週、外来患者数/週、事務仕事量だった。サポートスタッフ、仕事の裁量権、意義のある仕事、年齢、てんかんのサブスペシャリティがリスク低下と関連していた。アカデミア (Academic practice) の神経内科医は臨床 (clinical practice) の神経内科医と比較して、燃え尽き率が低く、満足度が高く、QOLも高かった。燃え尽きは、仕事満足度の低さと強く相関していた。

私はまだ燃えてすらいないダメ医者ヽ(´ー`)ノ

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最近の医学論文 前編

By , 2017年2月1日 6:21 PM

なんとか2月の3講演のスライドを完成させ、和文総説も前倒しで終えました。ガイドラインの資料もほぼ完成して、委員のチェックが終わればパブコメです。

今回の論文チェックは 1ヶ月分だから楽かなとおもったら、面白い論文が多すぎて、2回に分けました。

Ocrelizumab versus Interferon Beta-1a in Relapsing Multiple Sclerosis. (2016.12.21 published online)

多発性硬化症 (一次性進行型を除く) に対して、オクレリズマブとインターフェロンβ1aを比較した 2つの第三相試験 (OPERA I/II) をまとめた報告。Double-dummyで double-blindとのこと。オクレリズマブは、CD20陽性 B細胞に対するモノクローナル抗体である。オクレリズマブ群は、600 mgを 24週間毎に経静脈投与した。一方、インターフェロンβ1a群は 44 ug週 3回の皮下注射を 96週間続けた。その結果、主要エンドポイントである年間再発率は OPERA I試験でオクレリズマブ群 0.16, インターフェロンβ1a群 0.29 (オクレリズマブ群で 46%低い, p<0.001) で、OPERA IIでオクレリズマブ群 0.16, インターフェロンβ1a群 0.29 (オクレリズマブ群で 47%低い, p<0.001) であった。両試験を併せると、12週間後に障害が進行した患者の割合は、オクレリズマブ群でインターフェロンβ1a群に比べて有意に低かった (9.1 v.s. 13.6%, hazard ratio 0.60, 95%信頼区間 0.45~0.81, p<0.001)。また24週間後についても同様であった (6.9 v.s. 10.5%, hazard ratio 0.60, 95%信頼区間 0.43~0.84, p=0.003)。ガドリニウム造影病変の平均個数は、オクレリズマブ群で 0.02個、インターフェロンβ1a群で 0.42個であった。注射関連反応がオクレリズマブ群の 34%でみられた。重症感染は、オクレリズマブ群 1.3%で、インターフェロンβ1a群 2.9%であった。悪性腫瘍はオクレリズマブ群 0.5%で、インターフェロンβ1a群 0.2%だった。

ベースラインで半数以上の患者の EDSSが 0という、比較的軽症者を対象とした試験。経静脈投与の薬剤の方が、皮下注射で用いるインターフェロンなどより効果が高いというのは、他の薬剤でもそうなので驚くような結果ではない。むしろ驚いたのは次の文章。スポンサーとズブズブの臨床試験じゃないか・・・。”The sponsor, F. Hoffmann–La Roche, designed the trial in consultation with members of the ORATORIO trial steering committee. Data were collected by the site investigators, queries were responded to by site personnel, and the data were analyzed by the sponsor; the aggregated and individual results of the participants were reviewed by the sponsor and steering committee.”, “A subgroup of authors, which included academic authors and authors who are employees of the sponsor, drafted the manuscript, and all the authors approved the final version and made the decision to submit the manuscript for publication. Medical-writing assistance was funded by the sponsor.” という記載。あと、注射関連反応が 34%にみられた (一方でインターフェロンβ1aは10%) ということは、そこで盲検化が崩れたりはないのだろうか・・・。

Ocrelizumab versus Placebo in Primary Progressive Multiple Sclerosis. (2016.12.21 published online)

多発性硬化症の一次進行型を対象に、オクレリズマブとプラセボを比較した第三相試験。732名の一次進行型多発性硬化症患者を、2:1でオクレリズマブ 600 mgかプラセボに割り付け。薬剤の経静脈投与は 24週間ごとに、少なくとも 120週間もしくは事前に定められた数の障害進行イベントが起こったときまでとした。主要エンドポイントは 12週間の時点で障害の進行が確認された患者の割合とした。その結果、12週での障害が進行した患者の割合は、オクレリズマブ群 32.9%で、プラセボ群 39.3%だった (Hazard ratio 0.76, 95%信頼区間 0.59~0.98, P=0.03)。24週ではオクレリズマブ群 29.6%で、プラセボ群 35.7%だった (Hazard ratio 0.58, 95%信頼区間 0.58~0.98, P=0.04)。120週での timed 25-foot walk (25フィート歩行の時間) の悪化は、オクレリズマブ群 38.9%で、プラセボ群 55.1%だった (P=0.04)。T強調像での病変は、オクレリズマブ群で 3.4%減少に対し、プラセボ群では 7.4%増加した。

一次進行型の多発性硬化症に効果が証明された薬剤は存在しないので、もし有効であれば凄いことだと思う。同じく CD20阻害薬であるリツキシマブは、有効性を証明できなかった (OLYMPUS trial) とのこと。この臨床試験も、同じ号に掲載されたインターフェロンβ1aとの比較同様、次の文句が並ぶ。”The sponsor, F. Hoffmann–La Roche, designed the trial in consultation with members of the ORATORIO trial steering committee. Data were collected by the investigators and analyzed by the sponsor; the results were reviewed by the sponsor and steering committee.” “The first draft of the manuscript was written by the first and last authors, with medical writing assistance funded by the sponsor.”

An observational study of alemtuzumab following fingolimod for multiple sclerosis. (2017.1.10 published online)

フィンゴリモドを中止して 12ヶ月以内にアレムツズマブを開始すると、多発性硬化症の疾患活動性が高くなることを示唆する 9症例の報告。アレムツズマブに先行してフィンゴリモドが投与されていた 36例中 9例なので、実は多いのかもしれない。

多発性硬化症の新薬は次々と生まれていて、組み合わせ次第では様々なことが起きるのではないかという気がする。これは氷山の一角ではないだろうか。

Severe B-cell-mediated CNS disease secondary to alemtuzumab therapy. (2017年2月号)

41歳男性にアレムツズマブの初回投与を行った後、症状の急激な増悪があり、頭部MRIで造影される新規病変が 20ヶ所出現していた。メチルプレドニゾロン 7000 mgの静脈内投与を行ったが改善なく、免疫吸着療法が奏功した。病勢を安定させるため、リツキシマブを追加した。その後、症状は安定し、新規病巣の出現もない。

アレムツズマブを使う機会はそうそうないけれど、こういうこともあるのかと。しかし、そこでリツキシマブを使うとは、かなり勇気が必要だっただろうなぁ・・・。

Soluble CD27 Levels in Cerebrospinal Fluid as a Prognostic Biomarker in Clinically Isolated Syndrome. (2017.1.3 published online)

臨床的イベントが 1回のみで、まだ多発性硬化症と呼べないものを clinically isolated syndromeと呼ぶが、将来多発性硬化症になる患者ではそうでない患者と比べて髄液中の可溶性 CD27が高いという報告。

確かにそうかもしれないけれど、個々の症例で将来多発性硬化症を発症するかどうかの予測に使えるほどはっきり分離できる結果ではないと思った。

MOG antibody-positive, benign, unilateral, cerebral cortical encephalitis with epilepsy. (2017.1.16 published online)

東北大学からの報告。てんかんを伴う片側性皮質性脳炎で抗MOG抗体を測定したところ陽性であった。そこで、24例の原因不明の成人ステロイド反応性脳炎で抗MOG抗体を測定した。その結果、さらに 3名が抗MOG抗体陽性であった。全例男性で、年齢中央値 37歳 (23~39歳)、主要な症状は全般性てんかん発作であった。2例では片側性の良性視神経炎があった。全例、頭部MRIで片側の大脳皮質が FLAIRで高信号となっており、それらは腫脹し、SPECTでの血流増加に合致した所見であった。髄液では、単核球優位の中等度の細胞数増多と軽度の蛋白上昇があったが、ミエリン塩基性蛋白の上昇はなかった。他の抗体は陰性で高用量のメチルプレドニゾロンが有効で、MRIでの病巣は消失した。再発はなかった。

頭部MRIで片側皮質の FLAIR高信号を伴う自己免疫性脳炎では、抗MOG抗体の測定が必要・・・というのは勉強になった。

Anti-LGI1 encephalitis is strongly associated with HLA-DR7 and HLA-DRB4. (2016.12.27 published online)

悪性腫瘍非合併の抗LGI1抗体による脳炎患者 25名の HLAを調べたところ、HLA-DR7が 88% (コントロール群 19.6%)、HLA-DR4が 100% (コントロール群 46.5%) であった。著者らは、HLA-DR7や HLA-DR4を欠く抗LGI-1抗体脳炎では、悪性腫瘍の疑いがあるかもしれないとしている。

Characteristics in limbic encephalitis with anti-adenylate kinase 5 autoantibodies. (2017.1.6 published online)

抗AK5抗体陽性脳炎 10例の纏め。平均年齢中央値 64歳 (57~80歳)、けいれん発作を伴わない前向性健忘、ときどき無力症 (asthenia) や気分障害の先行がある。癌との関連はない。全例、MRIで両側の海馬以上信号があった。髄液検査では、軽度の細胞数増多、IgG index上昇、オリゴクローナルバンド、タウ上昇 (Aβやリン酸化タウは正常) がみられた。1例を除き、免疫療法は効果がなく、高度な前向性健忘が残存した。2例では重度の認知機能低下が進行した。MRIでその後海馬萎縮がみられた。In vitroでは 抗AK5抗体の役割を同定することはできなかった。

高齢者の前向性健忘を伴う脳炎で、当初 FLAIRで海馬の異常信号があり、やがて萎縮するという、似たような症例の経験がある。この報告と異なっていたのは、てんかんを合併していたこと。昔働いていた病院なのだけど、この疾患だったのかどうか気にかかる。

Efficacy, safety, and tolerability of lacosamide monotherapy versus controlled-release carbamazepine in patients with newly diagnosed epilepsy: a phase 3, randomised, double-blind, non-inferiority trial. (2016.11.24 published online)

新規抗てんかん薬ラコサミドの第三相試験。16歳以上の新規てんかん患者が対象。介入群はラコサミド (100→200 mg/day, 発作があれば max 600 mg/dayまで増量)、対照群はカルバマゼピン徐放錠 (200→400 mg/day, 発作があれば max 1200 mg/dayで増量)。主要エンドポイントは 6ヶ月連続で発作消失。6ヶ月の治療を継続できたのは、ラコサミド群 74% (327名)、カルバマゼピン徐放錠群 70% (308名) だった。6ヶ月間の発作抑制は、ラコサミド群 90%、カルバマゼピン徐放錠群 91%で、絶対リスク差 -1.3% (95%信頼区間 -5.5~2.8%)、だった。ラコサミドはカルバマゼピン徐放錠に非劣性だった。

有害事象の総数は両群でそれほど大きな違いはないが、ラコサミド群では浮動性めまいが多く、カルバマゼピン徐放錠では倦怠感、皮疹、傾眠、肝機能障害が多い傾向にあった。

副作用

副作用

Monotherapy treatment of epilepsy in pregnancy: congenital malformation outcomes in the child. (2016.11.7 published online)

妊婦への抗てんかん薬単剤療法の Cochrane reviewが公開されている。包含基準を満たした 50の臨床試験のうち、31試験で meta-analysisをおこなった。その結果、大奇形のリスクが最も低かったのはレベチラセタムとラモトリギンであった (キモの部分は “There was no increased risk for major malformation for lamotrigine (LTG). Gabapentin (GBP), levetiracetam (LEV), oxcarbazepine (OXC), primidone (PRM) or zonisamide (ZNS) were not associated with an increased risk, however, there were substantially fewer data for these medications.For AED comparisons, children exposed to VPA had the greatest risk of malformation (10.93%, 95% CI 8.91 to 13.13).”)。しかし、特異的な奇形についてのデータには乏しく、内科医はリスクと治療の有効性について、患者とよく話し合うべきである。(日本語要約)

薬剤選択について従来の結論と大きな違いはないが、こういう質の高い研究で示された意義は大きい。さまざまな抗てんかん薬の直接比較をおこなっているのだが、抗てんかん薬は種類が多く、比較には様々な組み合わせがあるため、解析を見ると Comparison 66までおこなっていて、大変な努力が必要な研究だと思った。

Rhabdomyolysis Associated with Levetiracetam Administration. (2016.12.31 published online)

レベチラセタム静脈内投与後に横紋筋融解症をきたした 27歳女性の報告。レベチラセタム単剤で治療を始めた後に出現し、無症候性で血清 CKの最大値は 49539 U/lだった。これまでレベチラセタムに関連した横紋筋融解症は 4例報告されている。全例 13~29歳で、CKは 986~29136 U/lだった。4名中 3名では併用薬があり、単剤だった 1名の CKは 986 U/lだった。

よく使う薬剤なので、極めて稀ではあっても、知っておきたい副作用。

Glucocorticoid-associated worsening in reversible cerebral vasoconstriction syndrome. (2017.1.17 published online)

可逆性脳血管攣縮症候群は、繰り返す雷鳴頭痛を呈し、約 1/3~1/2に虚血や出血を合併する。中枢神経原発血管炎 (primary angiitis of the CNS; PANCS) との鑑別を要する。mRS 3点を超えるアウトカム不良は 5~14%とされている。著者らは、後方視的に臨床的あるいは画像上の増悪をきたす要因を調べた。その結果、ステロイドを投与された患者の 37%で臨床的な悪化があった (ステロイド非投与では 5%)。また、臨床的悪化のあった患者で退院時の mRS 4-6の予後不良の割合は、ステロイド投与群で ステロイド投与群 47%、非投与群 17%だった。ベースラインの重症度で、ステロイド投与群が非投与群より軽症であったわけではなく (むしろベースラインの画像ではステロイド投与群の 35%が正常で、非投与群では全例異常があった)、ステロイド投与から症状増悪まで、ほとんどが 2日以内だった。SSRIで症状や画像上の悪化がみられたが、退院時の障害スコアへの影響はなかった。カルシウム拮抗薬やトリプタン製剤は、頭痛や増悪の予防に効果はなかった。

後方視的な研究だが、かなり説得力のある報告である。PANCSだった困るという理由で安易にステロイドを使ってしまうと、予後を悪化させる恐れがあるというのは、臨床医にとってジレンマとなるかもしれない。

Genetic epidemiology of amyotrophic lateral sclerosis: a systematic review and meta-analysis. (2017.1.5 published online)

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の遺伝子についての systematic reviewおよび meta-analysisをおこない、ヨーロッパ人とアジア人を比較している。ヨーロッパ人では C9orf72変異が多く、日本人では SOD1変異が多い。

それぞれの頻度については、図を見ると一目瞭然。

Genetic epidemiology of ALS

Genetic epidemiology of ALS

Pain in amyotrophic lateral sclerosis. (2016.12.8 published online)

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) と疼痛についての総説。ALSでは様々なタイプの疼痛がある。頻度については研究によりばらつきが大きい。軽度のことが多いが、中等度以上の疼痛もみられる。メカニズムとしては、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、中枢性感作がある。治療法について、2013年のコクランレビューでは RCTなしとしている。著者らは、疼痛で用いる薬剤を次のように推奨している。

・神経障害性疼痛 (四肢):Gabapentin (First line), Pregabalin (First line), 三環系抗うつ薬 (First line)

・筋痙攣 (下肢、手、腹部):Quinine sulphate (First line), Gabapentin (Second line), Mexiletine (First line), Dronabinol (Second line), Levetiracetam (First line)

・痙性 (下肢):Levetiracetam (First line), Baclofen髄注 (Second line),Baclofen内服/tizanidine/dantrolene/benzodiazepines (NA)

・体動困難に起因する疼痛:NSAIDs and paracetamol (First line), Opioids (Second line), Cannabis (Second line)

・四肢の麻痺 (肩痛, 関節痛):リドカイン・ステロイドの関節内注射 (First line)

ALSと疼痛

ALSと疼痛のタイプ

ALSで疼痛を訴える患者さんはたまにいるので読んでみたけれど、やはりわかっていないことが多いみたい。治療薬としては NSAIDs/アセトアミノフェンもしくは神経障害性疼痛についての薬剤がメインになるというのは予想通り。

後編】へ続く

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心房の線維化

By , 2017年1月9日 5:30 PM

2017年1月5日の抄読会で、心房の線維化についての論文を読みました。2016年12月31日のブログで簡単に紹介した論文です。

心臓の植え込み式レコーダーの普及とともに、心原性脳塞栓症と思われる症例の前に、必ずしも心房細動が先行していないことがわかってきました。どうやら、心房細動がなくても、心原性脳塞栓症を発症することがあるようなのです。

著者らは、心臓MRIの知見を元に、それが心房の線維化によるものではないかと考察しています。つまり、心房の線維化が、心房細動を引き起こすこともあれば、心房細動を介さずに直接脳梗塞の原因になることもあるというのです。

私は、これまで「心房細動→血栓形成→心原性脳塞栓症」というのが主な流れだと思っていたので、非常に驚きました。

論文を要約した資料を下記に貼っておきます。

New perspectives on atrial fibrillation and stroke.

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最近の医学論文

By , 2016年12月31日 4:35 PM

12月中旬の講演、12月25日のガイドライン作成会議に向けた資料作りなどでバタバタしており、またもや纏めて論文チェックする羽目に。例によって備忘録です。チェックした論文はこうしてどこかに書いておかないと、「○○みたいな雰囲気の論文読んだ気がしたけれど、なんだっけ」と後日モヤモヤした気分を味わうことになります。他の同業者は、その辺どうしているんでしょうかねぇ・・・。

何とか年内に終わらせたくて、当直明けの睡魔と戦いながら 1日で読んで纏めたので、今回もちょっと雑です。

Association of Albumin Levels With Outcome in Intravenous Immunoglobulin-Treated Guillain-Barré Syndrome. (2016.12.27 published online)

Guillain-Barre症候群で免疫グロブリン大量療法 (IVIg) 後に低アルブミン血症である場合、重篤で機能予後も良くないのかもしれない。主な理由として、代謝の亢進、産生低下、血管低下性の亢進が挙げられる。免疫グロブリンによる直接作用も考えられるが、IVIgによる IgGの増加とアルブミン低下に相関はなく、どの程度の影響しているかは不明。

GBSとアルブミン

GBSとアルブミン

Guillain-Barré syndrome after surgical procedures. (2016.11.23 published online)

Guillain-Barre症候群 208名のうち、外科手術後 8 週間以内に発症したのは 31名 (15%) であった。術後 Guillain-Barre症候群の初発症状の中央値は、術後 19日であった。手術は胃腸、心臓、整形外科手術が多かった。術後 Guillain-Barre症候群では、悪性腫瘍の合併 (61%)、自己免疫疾患 (29%) が多かった。

Autoimmune choreas (2016.12.1 published online)

表1に後天性の舞踏病の原因一覧が纏まっている。個人的には、高血糖/低血糖、脳血管障害で多い印象だが、感染後の原因不明の舞踏病で困ったことがあり、その時にこういう手元にあったら良かったと思った。

Autopsy validation of 123I-FP-CIT dopaminergic neuroimaging for the diagnosis of DLB. (2016.12.9 published online)

レビー小体型認知症 (DLB) において、ドパミン作動性ニューロンを SPECTで評価。Reference standardには剖検を用いた。SPECTの感度 80%, 特異度 92%だった (臨床診断の感度 87%, 特異度 72%)。DLBの 10%は SPECTで正常だった。

Bortezomib for treatment of therapy-refractory anti-NMDA receptor encephalitis. (2016.12.21 published online)

2016年8月のブログ記事で、抗NMDA受容体抗体脳炎で bortezomibが奏功した 2例を報告した JAMA Neurology論文を紹介した。今回は、Neurology誌より、5例中 4例で臨床的効果があったとの報告。将来的に、有力な治療オプションとなるような予感。RCTが望まれる。

Causes of progressive cerebellar ataxia: prospective evaluation of 1500 patients. (2016.12.13 published online)

進行性の小脳失調 1500例の内訳。かなり人種差があるように思うけれど、どのような疾患を考えなければいけないか参考になる。孤発性が 80%を占めた。孤発性のうちGluten ataxiaが 25%、特発性が 24%であった。

進行性小脳失調原因内訳

進行性小脳失調の原因内訳

Cerebellar Ataxia and Hearing Impairment. (2016.12.5 published online)

症例問題。解答はクロイツフェルト・ヤコブ病 (CJD)。診断のための検査精度 (感度/特異度) は髄液 14-3-3蛋白 92%/80%, 脳波での PSD 67%/86%, MRIでの拡散強調像 83~92%/87~95%とされている。ポイントは、古典型で特に特発性小脳失調が初発症状の場合、これらが陰性である場合があり、場合によっては全て陰性ということもあること。

Study Suggests Alzheimer and Parkinson Disease Are Not Transmitted Through Blood Transfusion. (2016.12.21 published online)

アルツハイマー病やパーキンソン病の原因蛋白質が伝播するというプリオン仮説というのが知られているが、輸血で伝播することはどうやらないようだ。

Chemoprevention of colorectal cancer in individuals with previous colorectal neoplasia: systematic review and network meta-analysis (2016.12.5 published online)

大腸癌 (colorectal neoplasia) 既往患者の再発予防についての systematic review & network meta-analysis。アスピリン以外の NSAIDsの効果が最も高いが、安全性と効果のバランスという意味では、アスピリンが良いようだ。

大腸がん予防

大腸がん予防

Coagulation Testing in Acute Ischemic Stroke Patients Taking Non-Vitamin K Antagonist OralAnticoagulants. (2016.11.29 published online)

NOACsは、薬剤による凝固への影響を直接測定することが難しく、その結果として血栓溶解療法が回避されることが多いという論文。

Direct comparison of dabigatran, rivaroxaban, and apixaban for effectiveness and safety in non-valvular atrial fibrillation. (2016.9.28 published online)

2016年11月23日のブログ記事で、高齢者を対象として、非弁膜症性心房細動にダビガトラン (150 mgを 1日 2回) を使用した場合とリバロキサバン (20 mgを 1日 1回) を使用した場合を比較したコホート研究について紹介した。Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixabanの直接比較をしたコホート研究も出ていたようだ。

いずれも、非弁膜症性心房細動における脳卒中ないし全身性塞栓症に有意差はなし。重大な出血について、apixabanは dabigatran (HR 0.50), rivaroxaban (HR 0.39) より少なかった。Rivaroxabanは dabigatranより重大な出血 (HR 1.30) と頭蓋内出血 (HR 1.79) が多かった。

リバロキサバンにとって辛いデータが次々と出ているようだ。

New perspectives on atrial fibrillation and stroke. (2016.8.24 published online)

2014年の NEJMに、心臓植え込み式レコーダーイベントトリガー式記録装置による長期間記録で心房細動の検出頻度が高まるという論文が 2報同時に発表されたのは記憶に新しい。

こうしたモニタリングにより、脳塞栓症を発症したとき、必ずしも心房細動が先行していないことがわかってきた。

最近の研究では、どうやら左房の線維化が影響しているらしい。

Stroke paradox with SGLT-2 inhibitors: play of chance or a viscosity-mediated reality? (2016.11.28 published online)

糖尿病治療薬 SGLT-2阻害薬で脳卒中のリスクが高まる可能性が指摘されている。SGLT-2阻害薬によるヘマトクリット上昇、ひいては血液の粘性亢進との関連が示唆される。

Differentiating lower motor neuron syndromes. (2016.12.21 published online)

下位ニューロン症候群の鑑別。

lower-motor-neuron-syndrome

lower-motor-neuron-syndrome

Ensuring Staff Safety When Treating Potentially Violent Patients. (2016.12.27 published online)

暴力を振るう可能性のある患者を治療する際、どのようにスタッフの安全性を確保するのかという総説。

First-in-human assessment of PRX002, an anti-α-synuclein monoclonal antibody, in healthy volunteers. (2016.11.25 published online)

Parkinson病を代表として、さまざまな神経変性疾患の原因となる α-synucleinへのモノクローナル抗体 PRX002。健常人を対象とした第一相試験で、安全性、忍容性は良好だった。

α-Synuclein binds to TOM20 and inhibits mitochondrial protein import in Parkinson’s disease. (2016.6.8 published online)

パーキンソン病の病因研究。α-synucleinはミトコンドリア外膜蛋白の TOM20と相互作用し、結果としてミトコンドリアの機能不全を起こすようだ。

Hypothermia for Neuroprotection in Convulsive Status Epilepticus. (2016.12.22 published online)

てんかん痙攣重積で、脳保護効果を期待して低体温療法を追加してもメリットはないようだ。

New-Onset Seizure in Adults and Adolescents (2016.12.27 published online)

新規発症のてんかん発作についての総説。基本的な事項がよく纏まっている。

Incidence and Etiologies of Acquired Third Nerve Palsy Using a Population-Based Method. (2016.11.17 published online)

動眼神経麻痺の原因にどのような疾患があるか。微小循環障害が多いけれど、その他にも年齢によって様々な疾患を考える必要がある。

動眼神経麻痺

動眼神経麻痺

Myasthenia Gravis (2016.12.29 published online)

NEJM誌に掲載された重症筋無力症の総説。特に真新しいことがあるわけではないけれど、網羅的でよく纏まっている。心筋炎は最近経験したので、とても参考になった。

“Myocarditis is rare but occurs with an increased frequency in patients with myasthenia gravis, as indicated by numerous single case series and reports. However, myasthenia-related clinical heart disease and heart dysfunction are very rare. In population-based studies, myasthenia gravis has not been associated with an increase in mortality related to heart disease. Functional imaging studies have shown minor and subclinical dysfunction. Myocarditis in myasthenia gravis is associated with Kv1.4 muscle antibodies. Antibodies against acetylcholine receptor, muscle-specific kinase, and LRP4 do not crossreact with heart muscle, in contrast to nonjunctional antibodies against Kv1.4, titin, and ryanodine receptor.”

神経内科医は知識の整理に読んでおくべき総説だと思う。

Osteoporosis and Fracture Risk Evaluation and Management. (2016.12.12 published online)

骨粗鬆症と骨折予防についての総説。キモは “Adequate calcium, vitamin D, and exercise involving weight-bearing and resistance are important for bone health at any age and likely contribute to the effectiveness of medications to reduce fracture risk. The Institute of Medicine (now the National Academy of Medicine) recommends calcium intake of 1000 to 1200 mg/d, ideally from foods; calcium supplements may be needed for patients whose diets do not supply sufficient calcium. For vitamin D, 600 to 800 IU/d is recommended for public health purposes, but a supplement of 1000 to 2000 IU/d is reasonable for those at increased risk of osteoporosis; serum 25-hydroxyvitamin D levels higher than 30 ng/mL (to convert to nmol/L, multiply by 2.496) may be the appropriate target in such patients. Walking (or a weight-bearing “walking equivalent” such as treadmill or elliptical) for 30 to 40 minutes at least 3 times per week is ideal (5 sessions per week of aerobic activity is recommended for cardiovascular fitness; additional sessions, if needed could be non–weight bearing, such as swimming or cycling).” で、きちんとビタミンDとカルシウムの補充をし、運動と体重のコントロールをした上で、ハイリスク症例でビスホスホネートなどを考えましょうという点。

Ring-enhancing spinal cord lesions in neuromyelitis optica spectrum disorders. (2016.12.2 published online)

視神経脊髄炎関連疾患 (NMOSD) の脊髄病変では、約1/3にリング状造影効果がみられ、多発性硬化症を除く、他の脊椎疾患との鑑別に有用である。Figure 4の画像所見が勉強になる。A:頸椎症、B:サルコイドーシス、C:dural AVF、D:脊髄梗塞、E:傍腫瘍性ミエロパチー、F:多発性硬化症 (NMOSDの ring enhancementは Fig.2)

脊髄画像

脊髄画像

 

Safety and pain in electrodiagnostic studies. (2016.9.28 published online)

電気生理診断の安全性と疼痛について。針筋電図の疼痛緩和に局所麻酔薬の塗布はあまり意味がないそう。冷却スプレーは効果があるが筋電図所見に影響を与える可能性がある。

一時期、傍脊柱筋の針筋電図で出血を問題視した論文が話題になったが、追試では問題なかったそう。

神経伝導検査は、経皮ペーシングしているとき以外は問題ないとのこと。

電気生理検査の安全性

電気生理検査の安全性

ドイツ科学機構連合とエルゼビア社の交渉が決裂

ドイツの60以上の主要な研究機関は、2017年1月1日からエルゼビア社の出版する雑誌フルテキストへのアクセスができなくなるようだ。

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最近の医学論文 後編

By , 2016年11月23日 7:12 PM

前編】より

A genome-wide association study in multiple system atrophy (2016.11.1 published online)

多系統萎縮症 918名の GWAS解析の結果、疾患と関連した遺伝子座を見つけることはできませんでした。著者らも書いている通り、サンプルサイズが小さすぎたのではないかという気がします。ただし、FBXO47, ELOVL7, EDN1, MAPTは有意差はなかったものの、「怪しい」結果でした。

CoQ10 in progressive supranuclear palsy (2016.8.2 published online)

多系統萎縮症と CoQ10の関連を調べた研究は本邦からいくつかあるようですが (, ) 、著者らは進行性核上性麻痺に対して CoQ10を投与する RCTを行いました。しかし、CoQ10群は進行抑制効果 (12ヶ月後の PSPRSと UPDRSの変化) を示せませんでした。

Diagnostic criteria for Susac syndrome (2016.10.25 published online)

Susac症候群は、脳や内耳や網膜の動脈に自己免疫が介在する障害がおきる疾患で、脳症、局所神経症状、頭痛、聴覚障害、網膜動脈分枝閉塞症などがみられます。今回、診断基準が発表されました。

Susac症候群診断基準

Susac症候群診断基準

Efficacy and safety of rituximab therapy in neuromyelitis optica spectrum disorders (2016.11.1 published online)

リツキシマブは視神経脊髄炎関連疾患に対して有効であることはコンセンサスが得られていますが、今回 46の研究、438名の患者を統合したメタアナリシスが発表されました。リツキシマブは年間再発率を 0.79 (95%CI, -1.08~-0.49)、EDSSを 0.64 (95%CI, -1.18~-0.10) 減少しました。有害事象は 26%にみられ、注射関連 (10.3%)、感染症 (9.1%)、白血病 (4.6%), PRES (0.5%) であり、7名 (1.6%) が死亡しました。著者らは、リツキシマブを第一選択薬とする上で、安全性に警鐘を鳴らしています。

Rituximab for treating multiple sclerosis: Off-label but on target (2016.10.19 published online)

多発性硬化症に対するリツキシマブについての後ろ向きコホート研究。治療期間の平均再発率は、 0.044 (再発寛解型)、0.038 (二次性進行型)、0.015 (一次性進行型) でした。造影病変は 4.6%にみられました (ベースラインでは 26.2%)。進行性多巣性白質脳症を発症した患者はいませんでした。

New Draft MS Treatment Guidelines in US and Europe

ヨーロッパと米国で、それぞれ多発性硬化症のガイドラインが更新されるようです。その草案が公開されています。

Extra-autonomic manifestations in autoimmune autonomic ganglionopathy: a Japanese survey (2016.11.11 published online)

自己免疫性自律神経節障害 (AAG) は、84%で自律神経以外の症状が見られるという熊本大学からの報告。中枢神経病変 (精神症状), 感覚障害、内分泌疾患、自己免疫疾患 (シェーグレン症候群など)、腫瘍 (卵巣腫瘍など) などを合併しうるそうです。

Lessons in uncertainty and humility – clinical trials involving hypertension (2016.11.3 published online)

高血圧患者に対する降圧療法の臨床研究をまとめた総説です。それがどのようにガイドラインに影響を与えてきたかが図によくまとまっています。降圧目標はガイドラインによって少しずつ異なりますが、ある範囲内でおさまっているというのが、よくわかります。

Trials-influencing-blood-pressure-thresholds

Trials-influencing-blood-pressure-thresholds

Management of acute and recurrent gout: a clinical practice guideline from the American College of Physicians (2016.11.1 published online)

痛風発作の治療ガイドラインが米国内科学会から出ました。推奨文は次のとおりです。

Recommendation 1: ACP recommends that clinicians choose corticosteroids, nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs), or colchicine to treat patients with acute gout. (Grade: strong recommendation, high-quality evidence).

Recommendation 2: ACP recommends that clinicians use low-dose colchicine when using colchicine to treat acute gout. (Grade: strong recommendation, moderate-quality evidence).

Recommendation 3: ACP recommends against initiating long-term urate-lowering therapy in most patients after a first gout attack or in patients with infrequent attacks. (Grade: strong recommendation, moderate-quality evidence).

Recommendation 4: ACP recommends that clinicians discuss benefits, harms, costs, and individual preferences with patients before initiating urate-lowering therapy, including concomitant prophylaxis, in patients with recurrent gout attacks. (Grade: strong recommendation, moderate-quality evidence).

痛風治療

痛風治療

More on biotin treatment mimicking Graves’ disease (2016.10.27 published online)

ビオチンの投与は、streptavidin-biotin immunoassayで行われる種々のホルモン検査やビタミン B12などに検査値に影響を与えることがあるので、検査 72時間前には内服をやめるべきだという論文です。ネットで調べると、ビオチンは美容のためのサプリメントでも販売されているようですが、多くは 3~5 mgの製剤で、この研究で表になっているのは検査数時間前に 300 mg内服したものなので、治療で大量投与したのでなければあまり心配しなくても良いのかなと思いました。

Novel HSPB1 mutation causes both motor neuronopathy and distal myopathy (2016.10.31 published online)

Motor neuronopathyと遠位型ミオパチーを合併した家系の報告。非常に珍しい表現型ですね。遺伝子検査で、HSPB1 c.387C>G変異が検出されたそうです。なお、遠位型ミオパチーを起こす DES, CRYAB, MYOT, LBD3, TTN, VCP, FKRP, GNEなどの変異はなかったそうです。鑑別疾患が論文中に挙げられていないので、そのくらい稀なことなのかもしれませんが、どこかでこうした患者をみかけたら、この遺伝子変異が頭に浮かぶようにしておきたいと思いました。

Non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of heart failure in four European countries: nested case-control study (2016.9.28 published online)

NSAIDsが心不全に与える影響についての臨床研究です。14日以内の使用は半年以上前に使用した場合に比べ、心不全での入院を 19%増やすという結果でした。心不全リスクを増やした薬剤は、7種類の NSAIDs (diclofenac, ibuprofen, indomethacin, ketorolac, naproxen, nimesulide, piroxicam) と 2種類の COX2阻害薬 (etoricoxib, rofecovib) で、celecoxibでは増えませんでした。

NSAIDsは腎機能のマイナスの影響を与えるので、心不全を悪化させるというのは感覚的に理解できます。

Optic neuropathy associated with systemic sarcoidosis (2016.8.2 published online)

サルコイドーシスの視神経障害についての研究です。2つの臨床的サブタイプがあり、多くは視神経炎に似た亜急性視神経障害で、残りの 17%はそれよりゆっくり進む視神経障害です。31%は両側性です。眼球内の炎症が、36%に見られます。疼痛は 27%にしかありません。視神経周囲炎や視交叉浸潤が稀にみられます。MRIでは視神経病変が 75%にみられ、31%では炎症の周囲への波及がみられます。ステロイドは視神経障害には効果がありますが、腫瘤性病変にはそうではありません。視覚症状の再発は 25%でみられますが、予後不良因子ではありません。

Promotion of the Unfolding Protein Response in Orexin/Dynorphin Neurons in Sudden Infant Death Syndrome (SIDS): Elevated pPERK and ATF4 Expression (2016.10.29 published online)

乳幼児突然死症候群の原因として、2015年夏頃からオレキシンの異常が指摘されています。今回の研究では、pPERKの凝集がオレキシンの翻訳低下を含め、脳幹での様々な神経機能の低下を引き起こすのではないかと著者らは述べています。

Potential Signals of Serious Risks/New Safety Information Identified by the FDA Adverse Event Reporting System (FAERS) April – June 2016

2016年4~6月に FDAが安全性について監視リストに入れた薬剤の一覧です。神経内科医が日常診療で使う薬だと、抗うつ薬のたこつぼ型心筋症、インターフェロンβの 薬剤性ループス、DPP-4阻害薬の類天疱瘡、第1・2世代抗ヒスタミン薬のけいれん、スタチン (HMG-CoA reductase inhibitors) の間質性肺炎、ジメチルフマル酸徐放錠の薬剤性肝障害あたりでしょうか。

All scientific papers to be free by 2020 under EU proposals

EUは、2020年までに全ての科学論文に無料アクセスできるようになるべきだとしています。実現するかどうかはわからないですが、そうであれば嬉しいですね。

Levetiracetam vs. brivaracetam for adults with refractory focal seizures: A meta-analysis and indirect comparison (2016.5.16 published online)

レベチラセタムはブリバラセタムと比べて効果に有意差はないけれど、浮動性めまいが少し少ないかもしれないという meta-analysisです。ただし、非直接比較という limitationがあります。

Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope (2016.10.20 published online)

失神で入院になった患者のうち、17.3%に肺塞栓症がみつかったというコホート研究。

コレだけ聞くと凄いインパクトではありますが、失神は神経調節性などの原因が多く、通常は帰宅させますよね。注意すべき疾患の中で頻度が高いのが不整脈やてんかん、稀だけど怖いのが肺塞栓症、くも膜下出血、大動脈解離などだと思います。入院になったというのはよほどのことなので、その辺を割引いて解釈する必要がありそうです。

Remission of follicular lymphoma after treatment for hepatitis C virus infection (2016.10.27 published online)

C型肝炎を合併した濾胞性リンパ腫の患者に、sofosbuvirと ribabirinを用いた C型肝炎の治療をしたら、リンパ腫まで消えてしまったという凄い報告。”C型肝炎を対象とした B細胞リンパ腫” 患者を対象とした臨床試験が待たれます。

HCV Drug Warning (2016.11.15 published online)

FDAは、C型肝炎に使用される直接作用型抗ウイルス薬について、B型肝炎ウイルスの再活性化を起こすことがあることを添付文書に枠組みの警告文で記すことを求めまる見込みです。

2013年から 2016年までの 31ヶ月で、そのような症例は 24名報告され、2名死亡し、1名は肝移植を余儀なくされました。

Statin use for the primary prevention of cardiovascular disease in adults: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement (2016.11.15 published online)

USPSTFが、スタチンを心血管疾患の一次予防に用いるためのガイドラインを発表しました。危険因子、10年間の心血管疾患発症リスク 10%を判断材料にするようです。なお、10年間の心血管疾患の発症リスクは、ツール (http://tools.acc.org/ASCVD-Risk-Estimator/) を用いて判断します。

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statin-for-primary-prevenation

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Community acquired pneumonia incidence before and after proton pump inhibitor prescription: population based study (2016.11.15 published online)

プロトンポンプ阻害薬 (PPI) が、慢性/急性腎臓病、急性間質性腎炎、低マグネシウム血症、クロストリジウム腸炎、市中肺炎、骨折のリスクを高めるという報告が、近年相次いでいます。このブログでも 2016年2月20日に紹介しました。PPIによる市中肺炎の増加は薬剤のせいではなく、交絡因子によるものだったという研究結果が、British medical journalより報告されました。著者らは、PPI内服群の方が、併存疾患や逆流性食道炎の重症度などの点で、もともと肺炎を発症しやすい集団だったので、肺炎が増えているようにみえたのだろうと考察しています。

CHCHD10 mutations and motor neuron disease: the distribution in Finnish patients (2016.11.3 published online)

種々の神経疾患やミトコンドリア病のコホート研究に参加した患者を対象として、CHCHD10変異を調べたフィンランドの研究です。

筋萎縮性側索硬化症、ミトコンドリア病 (筋症)、前頭側頭葉変性症、Charcot-Marie-Tooth病2型 (CMT2)、脊髄性筋萎縮症 Jokela型 (SMA Jokela type; SMAJ, 有痛性筋痙攣、線維束性収縮、腱反射低下~消失、CK上昇、手の振戦が特徴) などで CHCHD10変異がみつかりました。CHCHD10変異の中で特に疾患の原因になっている可能性が高いと考えられたのが、c.176C>T (p.S59L) と c.172G>C (p.G58R) 変異でおこるミトコンドリア病と、c197G>T (p.G66V) 変異でおこる SMAJ (過去には CMT2の報告もあり) でした。

CHCHD10は論文の表現では “part of mitochondrial mitochondrial contact site and cristae organizing system (MICOS) complex” となっており、ミトコンドリアに関連した複合体を構成する蛋白質の一つのようですが、変異部位によってミトコンドリア病になったり、SMAの特殊なタイプになったりするのが興味深いと思いました。

Treatment dilemmas in Guillain-Barre syndrome (2016.11.11 published online)

Guillain-Barre症候群におけるジレンマとして、いつ治療すればよいのか、血漿交換と IVIgのどちらを用いるべきか、追加治療は必要あるのか・・・などが挙げられ、それに対するエビデンスの纏めと推奨が記された総説です。Table 5が纏まっています。

summary-of-treatment-dilemmas

Summary-of-treatment-dilemmas in GBS and recommendations

【再発又は難治性の慢性リンパ性白血病対象】「イムブルビカカプセル」(イブルチニブ)薬価収載について

形質細胞疾患に合併する末梢神経障害として、POEMS症候群、原発性マクログロブリン血症 (Waldenstrom macroglobulinemia), 多発性骨髄腫、軽鎖アミロイドーシスが知られています。そのなかでも、原発性マクログロブリン血症は、約 90%の症例に MYD88 L265P変異があることが 2012年に報告されるなど、研究の進歩が著しいです。2015年に New England Journal of Medicineに掲載された報告では、MYD88に結合する BTK (Bruton’s Tyrosine Kinase) の阻害薬である Ibrutinibを用いると、MYD88 L265P変異のある症例ではほぼ 100%治療効果がありました。同年 Blood誌に掲載された総説では、原発性マクログロブリンへの第一選択薬として Ibrutinibを推しています (とはいって、2015年の New England Journal of Medicine論文の著者がその総説を書いているのですが・・・)。Ibrutinibは国内において、慢性リンパ性白血病を対象に薬価収載された (2016年5月) らしく、原発性マクログロブリン血症も早く保険適用になると良いなぁと思いました。

Thymoma associated with autoimmune diseases: 85 cases and literature review (2015.9.25)

胸腺腫に合併した自己免疫疾患のケースシリーズです。胸腺腫がある症例の 55%に自己免疫疾患が合併しており、重症筋無力症が多かったものの、橋本病、Isaacs症候群、Morvan症候群、赤芽球癆、全身性エリテマトーデス、扁平苔癬、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、Good症候群、天疱瘡、自己免疫性肝炎、Graves病、辺縁系脳炎、炎症性筋疾患も少数例ながらありました。

胸腺腫と自己免疫疾患といえば、昔読んだ “The Spectrum of Diseases Associated With ThymomaCoincidence or Syndrome?” という論文がとても印象に残っています。

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最近の医学論文 前編

By , 2016年11月23日 7:12 PM

ガイドライン作成、Cochrane review, 講演会の準備 (1ヶ月平均 2回)、編集中の雑誌の査読に追われ、さらに和文総説の依頼なども飛び込んできて、最新論文のチェックがかなり滞っています。特に講演会は毎回テーマが異なるのでゼロから作らねばならず、かつ 12月中旬の講演会は一人で 6時間神経疾患について喋らなければいけません。と、佐藤優のメルマガの冒頭のような言い訳から始まりましたが、今回は 2ヶ月分まとめ読みしました。全部要約すると膨大な量になってしまうので、さらりと触れる形で備忘録とします。それでも量が多かったので、2回に分けました。もっとコマメにやることができれば良いのですけれどねぇ・・・。

Diagnostic challenges and clinical characteristics of hepatitis E virus-associated Guillain-Barre syndrome (2016.11.7 published online)

Guillain-Barre症候群はさまざまな先行感染の後に発症することが知られています。しかし、E型肝炎についてはこれまで調べられていませんでした。著者らは 73名の Guillain-Barre症候群/或いはその variantに対して、E型肝炎の IgM抗体 (HEV-IgM) を調べました。すると、6名 (8%) で抗体陽性でした。そのうち 4名では ALTが正常上限の 1.5倍以上でした。一方で、ALTが上昇していた患者の側からみると、22名のうち 4名 (18%) で HEV-IgMが陽性でした。HEV-IgM陽性の 6名のうち 2名はサイトメガロウイルスや EB virusの抗体も陽性で、交差反応と考えられました。最終的に、4名 (6%) が、急性 E型肝炎に合併した Guillain-Barre症候群と推測されました。

HEVとGBS

HEVとGBS

肝機能障害を合併していたり、ちょっと特殊なタイプだったりする場合には、Guillain-Barre症候群の原因検索で HEV-IgMをチェックしてみるのはアリかなと思いました。

A clinical tool for predicting survival in ALS (2016.6.4 published online)

著者らは、575名の連続症例のデータを用いて、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の生存予測曲線を作成しました。Limb onset/bulbar onset, あるいはリルゾールの有無により解析しています。ただし、この疾患は個人差が大きいので、個々の症例に適用することは難しいかもしれません。

HIV-associated motor neuron disease (2016.9.24 published online)

以前、ALSと HERV-Kについて書きました。今回、著者らは HIVに感染後、運動ニューロン疾患を発症した 5名のうち 4名の血漿 HERV-Kレベルをモニターしました。抗レトロウイルス療法を受けた 3名は、発症から 6ヶ月以内に症状が改善し、残りの 2名は数年かけて進行しました。血漿 HERV-Kレベルは、抗レトロウイルス治療に反応して低下しました。

HIVで motor neuron diseaseのような症状が出ることがあるというのと、一部の患者では HIVの治療でそれがよくなることがあるというのは知っておこうと思いました。HERV-Kは HIVと同様にレトロウイルスなので、HIVの治療は HERV-Kのウイルス量も減らすのでしょうね。HERV-Kは HIVの Tat蛋白で活性化されるとのことですが、詳細なメカニズムの解明は、今後の研究を待ちたいと思います。

Influence of cigarette smoking on ALS outcome: a population-based study (2016.9.21 published oline)

喫煙が ALSの予後に与える影響についての研究です。生存期間の中央値は、現在の喫煙群で 1.9年、過去の喫煙群で 2.3年、非喫煙群で 2.7年でした。COPDは予後不良の独立した因子でした。

ALSと診断されたら、好きなことをさせてあげれば良いと思っているのですが、思ったより生存期間に差がついていてビックリしました。

Fully implanted brain-computer interface in a locked-in patient with ALS (2016.11.12 published online)

筋萎縮性側索硬化症で閉じ込め症候群となった 58歳の女性患者の硬膜下に電極を植込み、検出される脳の電気活動を用いて、コンピューターを操作してもらう研究が発表されました。電極は左運動野の手の領域に埋め込まれ、また運動野が ALSで侵されるリスクがあるため、左前頭前野にも埋め込まれました。トレーニングの末、彼女は右手を動かすイメージを思い浮かべるなどして、コンピューターを操作できるようになりました。Surface Pro 4で動くプログラムを用いて、自宅用のシステムも作られたそうです。

これまで意思の疎通がとれなかった患者が何を考えているかというのは研究者として興味がありますし、患者の側としても自分の意図を伝えられるというのは凄く大きいですよね。こういうデバイスが臨床現場に普及してくればと思います。

Masitinib in Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS) (2016.4.11)

ALSに対するチロシンキナーゼ阻害薬 Masitinibの承認審査を欧州医薬品庁(EMA)がはじめたそうです。

Polypharmacy in the aging patient (2016.5.8 published online)

糖尿病患者の血糖コントロールを強化した場合、微小血管障害のアウトカム改善は 9年目以降に現れるようです。また、血糖コントロールの強化により重篤な低血糖リスクは 1.5~3倍になります。65歳以上の多くでは、HbA1c  7.5%未満或いは 9%以上だと害がメリットを上回る可能性があります。メトホルミンのように低血糖リスクが低い薬剤で、むしろ HbA1cの下限を決めて治療するのが良いかもしれません。治療薬比較の表が纏まっています。メトホルミンは心血管イベントや死亡を減らし、安く、血糖降下作用も大きいのですね。ただし、腎不全、非代償性心不全には使えないのと、副作用としての消化器症状に注意する必要があります。

glucose-lowering-medication

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Calcium supplementation and risk of dementia in women with cerebrovascular disease (2016.8.17 published online)

カルシウム補充療法を受けている女性では、特に脳卒中の既往があったり画像での白質病変がある場合、脳血管性認知症あるいは混合性認知症のリスクが高まるかもしれないという研究です。

論文の limitationにも書いてありますが、症例数が 98名と研究の規模が小さいことや、観察研究で様々な交絡因子があることが予想されることから、この研究の結果だけでものを語るのは危険だと思いました。

Cancer association as a risk factor for anti-HMGCR antibody-positive myopathy (2016.10.7 published online)

抗HMGCR陽性ミオパチー (anti-3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase autoantibody-positive myopathy) は、スタチン内服との関連がこれまで指摘されていました。しかし、今回のケースシリーズでは、抗HMGCR陽性ミオパチー 33名中 12名 (36%) に癌が見つかりました。一方、スタチンを内服していたのは 21%でした。癌が見つかった患者のうち、92%はミオパチー診断の 1年以内に癌が見つかり、83%は進行癌で、75%は 2.7年以内に癌で死亡しました。

抗HMGCR陽性ミオパチーを見つけたら、癌の存在を考える必要があるのですね。勉強になりました。

Clinical relevance of microbleeds in acute stroke thrombolysis (2016.9.14 published online)

脳梗塞の超急性期治療で rt-PAによる血栓溶解療法を行う時、MRIの T2*や SWIで画像上の微小出血 (microbleeds) がある患者では治療によって出血リスクが増えないのか、私は以前から気になっていました。

著者らは meta-analysisを行い、microbleedsがあると rt-PAによる症候性出血リスクは増加する (OR 2.18; 95% CI 1.12~4.22; p=0.021) ことを明らかにしました。症候性出血は、microbleedsがあった場合 5%, なかった場合 3%でした。なお、rt-PA療法を受けた患者のうち、miclobleedsがあったのは 24%でした。Microbleedsがあると、rt-PAによる出血リスクは増えるけれど、許容範囲内だろうと著者らは判断しています。

Time to treatment with endovascular thrombectomy and outcomes from ischemic stroke: A meta-analysis (2016.9.27 published online)

2015年頃から、虚血性脳卒中に対する血管内治療の良好な成績が相次いで報告されています。使用デバイスの進歩が寄与するところが大きいと推測されています。発症から治療までの経過時間が予後に与える影響について、5つの RCT (MR CLEAN (2015), ESCAPE (2015), EXTEND-IA (2015), REVASCAT (2015), SWIFT PRIME (2015)) を統合して解析したメタアナリシスが報告されました。血栓溶解療法 (rt-PA) に血管内治療を追加すると、血栓溶解療法単独に比べて 3ヶ月後の障害が減少しましたが、発症 7.3時間以降の治療では両群に有意差はありませんでした。治療開始あるいは再灌流の達成が遅れる程、治療効果は悪くなる傾向がありました。

Early start of DOAC after ischemic stroke (2016.9.30 published online)

非弁膜症性心房細動を合併した虚血性脳卒中において、いつから抗凝固療法を始めて良いかはよくわかっていません。そこで、著者らは抗凝固療法を 7日以内に始めた群と、8日以降に始めた群で比較しました。

治療薬の選択に関しては、204名の患者を 4群に分け、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバン、ワルファリンとしました。NOAC/DOACの早期開始群と後期開始群では、NIHSS 1 vs. 7と早期開始群の方が有意に軽症でした。Follow up期間中に、脳出血を着たしたのは 1例だけでした。その患者は、入院時ワルファリンを内服しており、INR 1.7, NIHSSは 8点でした。入院後、ワルファリンは中止され、発症 4日後に再開されました。その翌日に症候性脳出血を起こし、その時の INRは 1.8でした。NOAC/DOACを内服していた患者で脳出血を起こした患者はいませんでした。虚血性脳卒中再発は、早期開始群 5.1%/y, 後期開始群 9.3%/yで有意差はありませんでした。著者らは、虚血性脳卒中の早期に抗凝固療法を始めても、脳出血を起こすリスクは低いと結論しています。

非常に興味深い問題に取り組んだ研究だと思います。しかし、前向きコホート研究なので、早期開始群と後期開始群の割り付けが無作為化されておらず、早期開始群に軽症患者が偏っています。ある程度の重症例に抗凝固療法をいつから始めたら良いかという、最も知りたい疑問を明らかにしてくれる研究デザインではありませんでした。残念です。例えば、NIHSS 1点で画像での梗塞巣が小さいなら、私は躊躇なく早期から抗凝固療法を始めています。

Stroke, bleeding, and mortality risks in elderly medicare beneficiaries treated with dabigatran or rivaroxaban for nonvalvular atrial fibrillation (2016.11.1 published online)

高齢者を対象として、非弁膜症性心房細動にダビガトラン (150 mgを 1日 2回) を使用した場合とリバロキサバン (20 mgを 1日 1回) を使用した場合を比較したコホート研究。後ろ向きコホート研究で、ベースラインは propensity scoreで調整しました。

リバロキサバンは脳塞栓症の減少においてダビガトランと有意差がなく、有意に脳出血、頭蓋外出血を増やしました。また、有意差はないものの、リバロキサバンの方が死亡が多い傾向にありました (HR, 1.15; 95% CI, 1.00-1.32; P = .051; AIRD = 3.1 excess cases/1000 person-years)。特に、75歳以上、あるいは CHADS2 score 2点以上では、リバロキサバンはダビガトランに比べて有意に死亡が増えました。

これはかなり深刻な報告だと思います。リバロキサバンにとってはかなりネガティブなデータです。

Bridging anticoagulation before colonoscopy: results of a multispecialty clinician survey (2016.9.14 published online)

ワルファリンを内服している患者が下部消化管内視鏡受ける時、ワルファリンを中止するとともにヘパリン投与 (heparin bridging) をしたほうが良いかは議論があります。2015年に NEJMに掲載された RCTでは、heparin bridgingで脳梗塞は予防できず、むしろ出血性合併症が増えたという結果でした。実際の現場ではどうしているかを調べたのが今回の研究です。リスクが高くなるに従ってヘパリンを使用する割合は高くなり、中等度リスク (CHADS2 = 3) であっても脳梗塞の既往がある場合は使用することが多いという結果でした。また、診療科により heparin bridgingを行うかどうかにばらつきがありました。

2015年の RCTの結果はともかくとして、リスクが高いと思ったら heparin bridgingはしている人が多いんですね。

Cardiac magnetic resonance imaging: a new tool to identify cardioaortic sources in ischaemic stroke (2016.9.22 published online)

脳梗塞の原因検索で心臓や大動脈を評価するのに MRIを用いる方法の総説。まだ研究段階のようです。

Medical management of intracerebral haemorrhage (2016.11.16 published online)

脳出血の治療についての総説です。現在進行している臨床試験が表になっています。トラネキサム酸や鉄のキレート剤などが含まれていますが、ワクワクする臨床試験はあまりないなぁ・・・と感じました。急性期の降圧については ATACH-IIや INTERACT2が代表的な RCTですが、表があるともっと読みやすかったと思います。

Ticagrelor versus clopidogrel in symptomatic peripheral artery disease (2016.11.13 published online)

虚血性脳卒中の急性期治療でアスピリンに勝てないばかりか呼吸苦での中断も多いチェーンストークス呼吸の原因となりうるといったネガティブなニュースが最近目立つ Ticagrelorですが、このたび ABI 0.8以下の症候性末梢動脈疾患患者を対象に、Clopidogrelとの比較試験が行われました。一次エンドポイントは心臓血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合エンドポイントで、両群間に有意差はありませんでした (Ticagrelor 10.8%, Clopidogrel 10.6%)。出血性合併症も有意差はありませんでしたが、Ticagrelor群の方が副作用による治療中断が多く、その原因が呼吸苦の副作用であった患者は Ticagrelor群全体の 4.8%にものぼりました。

鳴り物入りで登場した Ticagrelorですが、心筋梗塞の治療以外の活躍の機会は今のところあまりなさそうな印象を持ちます。

Effects of ischaemic conditioning on major clinical outcomes in people undergoing invasive procedures: systematic review and meta-analysis (2016.11.7 published online)

周期的に非致死的な虚血を血管床に導入することで、心筋虚血、急性腎障害、脳卒中を含む障害を軽減する “ischaemic conditioning” という手法があります。虚血性心疾患、脳卒中、心臓手術、移植、急性腎障害などで臨床研究がおこなわれているそうです。著者らは、その効果についてのメタアナリシスを行いました。その結果、一次エンドポイントである死亡は、行った群と行わなかった群で有意差がありませんでした。また、アウトカム別では、急性腎障害で唯一有意な治療効果がありましたが、軽症例に限るものと推測されました。脳卒中は治療効果がある傾向はみられましたが、統計学的に有意ではありませんでした。

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Carpal tunnel syndrome: clinical features, diagnosis, and management (2016.11.15 published online)

Lancet Neurologyに掲載された手根管症候群の総説です。神経伝導検査の診断精度については、まず通常の正中神経の運動/感覚の検査を行い、それが正常であれば比較法 (書いていないけれどおそらく 2L-INTや ring finger method) を追加した場合、感度 80~90%, 特異度 > 95%とのことでした。また、最近流行りの神経超音波の診断精度は meta-analysisでは感度 77.6%, 特異度 86.8% (gold standardは臨床所見) でした。直接比較ではないですが、神経伝導検査の方が特異度が高いというのは感覚に合致します。治療として手根管開放術の合併症は 1~25%, 重篤なものは 0.5%未満でした。Common diseaseなのでチェックしておきたい総説です。

Prevalence of polyneuropathy in the general middle-aged and elderly population (2016.9.28 published online)

論文の図を見ると、年齢とともに末梢神経障害が増えることが、一目瞭然です。

prevalence-of-polyneuropathy

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後編】へ続く。

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ノーベル医学生理学賞

By , 2016年10月4日 5:57 AM

2016年の医学生理学賞は、大隅良典先生が受賞されました。昔、近い分野の基礎研究をしていた者として、とてもうれしいです。そういえば、オートファジー絡みの和文総説書いたことあるなぁ・・・。

Press Release

そして、なんと・・・2011年に私が書いたブログでのノーベル医学生理学賞予想は、大隅先生でした。時代を 5年先取りしてしまったぜ (違

ノーベル医学生理学賞 (日々不穏:2011年10月3日)

 今後、PD-1の本庶佑先生、CRISPER/Cas9の石野良純先生・Doudna博士・Charpentier博士などはおそらく受賞することになるのでしょうが、iPSの山中先生のときも話題になってから少し引っ張りましたから、1~2年先なんですかね。
Twitterで大隅先生の講義を受けた方から下記の投稿見つけました。ユニークですね。

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最近の医学論文

By , 2016年9月21日 4:59 PM

不定期に論文のタイトルチェックはしているのですが、なかなか読む時間がとれず、月に 1日まとめて十数本斜め読みしています。例によっての備忘録。

A Randomized Trial of Focused Ultrasound Thalamotomy for Essential Tremor (2016.8.25 published online)

本態性振戦の第一選択薬はプロプラノロールとプリミドンです。日本だと β遮断薬のプロプラノロール (インデラル) が保険適用となっておらず、アロチノロールが保険適用となっています。同様に抗てんかん薬のプリミドンも保険適用となっていませんが、薬価が 30.7円/g程度なので、保険で切られても痛くはありません。プリミドンは錠剤で 250 mg使うと眠気がひどいので、散剤 25 mg程度から開始するのがミソです。その他に、いくつかの 2nd-lineの薬剤があります。第一選択薬になっている薬剤もそれほど効果があるわけではなく、30~50%の方では治療効果が期待できません。

そこで著者らは薬剤 2剤以上に抵抗性の中等度~高度本態性振戦に対して MRI下での超音波視床破壊術の RCTを行いました。3ヶ月後の手の振戦スコアの改善は、実治療群で 18.1→9.6, sham刺激群で 16.0→15.8%でした。実治療群では合併症として歩行障害と感覚障害 (異常感覚) が 36%, 38%に生じました。12月後において残存していたのは、それぞれ 9%, 14%でした。

確かに効果のありそうな治療ですが、合併症もそれなりなので、職業上の理由などでよっぽど困った場合、積極的には行わないかなと思いました。研究の limitationにも、破壊は片側性で同側には効かない、頭頸部、声といった軸方向の振戦には効果が弱いというのがありましたが、その辺もネックになってくると思います。

そういえば、昔、その筋の方で本態性振戦で困っている患者さんを診療していましたが、薬が効かなくて凄みが半減していてかわいそうだったのを思い出しました。

Antiviral Agents Added to Corticosteroids for Early Treatment of AdultsWith Acute Idiopathic Facial Nerve Paralysis (Bell Palsy) (2016.8.23 published online)

特発性顔面神経麻痺 (Bell麻痺) を診たとき、急性期であればステロイド投与が標準的治療となっています。それに抗ウイルス薬 (抗ヘルペス薬) を追加するかは、議論があるところです。

今回のメタアナリシスでは、ステロイド+抗ウイルス薬の方がステロイド単独よりも効果があり、3~12ヶ月後の完全回復をアウトカムとした NNTは 19でした。一方で、抗ウイルス薬単独のみでの投与は、プラセボと比較して有意差はありませんでした。

Bell麻痺と抗ウイルス薬

Bell麻痺と抗ウイルス薬

Zika Virus and the Guillain-Barré SyndromeCase Series from Seven Countries. (2016.8.31 published online)

ジカウイルスに 1000人に感染して 0.24人の Guillain-Barre症候群が生じるという試算があるようですが、実際に 7カ国でジカウイルス流行により Guillain-Barre症候群が増えたという報告です。ジカ熱は若い女性に多いけれど、Guillain-Barre症候群は年齢ととも発症リスクが高くなり、さらに男性の発症率は女性の 1.28倍 (rate ratio, 1.28; 95% CI, 1.09 to 1.50) だったらしいです。

zika-and-guillain-barre-syndrome

Zika-and-guillain-barre-syndrome

Gluconorm (repaglinide) New Contraindication for Concomitant Use with Clopidogrel (2015.7.31 update)

レパグリニド (商品名:シュアポスト) とクロピドグレルの併用で、低血糖リスクが高まり、カナダでは併用禁忌に指定されているようです。以下、Healthy Canadianのサイトから転載。

  • Co-administration of repaglinide and clopidogrel (a CYP2C8 inhibitor) may lead to a significant decrease in blood glucose levels due to a drug-drug interaction.
  • The concomitant use of repaglinide and clopidogrel is now contraindicated.
  • The prescriber information for GLUCONORM (repaglinide) has been updated. The prescriber information for PLAVIX (clopidogrel) is currently being updated. The prescriber information for the generic products will be updated (see Products affected).

神経内科では、脳卒中の二次予防にクロピドグレルを用いることがあるので、他科からレパグリニドが処方されていないかはチェックしておかないといけないと思います。日本では併用注意扱いですが、もう少し注意しておいた方が良いのかもしれません。

Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes (2016.9.6 published online)

妊娠の第2期 (second trimester; 14週0日~27週6日)、第3期 (third trimester; 28週0日以降) の MRIは安全性と考えられているようですが、最もこうした影響に感受性の高いと思われる第 1期 (first trimester; 0週~13週6日) が安全かはわかっていませんでした。そこで著者らは後ろ向きコホート研究を行いました。対象は 2003年4月27日~2015年3月4日までに出産ないし死産した母子です。16歳未満、50歳以上、20週以前の出産は除外されました。1576631の母子ペアが対象となり、うち 152526ペア (9.7%) が除外されました。その結果、第1期のどの時期においても、MRIの曝露により死産や新生児死亡、胎児危険、悪性新生物、視力低下、聴力低下は増えませんでした。一方で、ガドリニウム造影は、どの時期に行ってもリウマチ性、炎症性、浸潤性の皮膚障害や死産、新生児死亡が増加しました。

MRIと奇形リスク

MRIと奇形リスク

ガドリニウム造影剤とリスク

ガドリニウム造影剤とリスク

ということで、妊娠どの時期に MRIを行っても大丈夫そうではあるけれども、可能な限りガドリニウム造影剤は避けるべき・・・というのが結論になりそうです。ガドリニウム造影剤での奇形リスクは絶対的なものではないので、造影剤で検査しなければ診断がつかなくて生命が危険、という場合はメリットがリスクを上回る可能性がありますが、非常にデリケートな臨床的判断になりそうです。

Autoimmune Glial Fibrillary Acidic Protein Astrocytopathy: A Novel Meningoencephalomyelitis. (2016.9.12 published online)

自己免疫性髄膜脳炎の原因となる新しい自己抗体がメイヨークリニックから報告されました。アストロサイトに対する自己抗体です。

抗 glial fibrillary acidic protein (GFAP) 抗体による脳脊髄炎 16例の特徴として、

・発症年齢の中央値は 42歳 (21-73歳)

・性差はない

・頭部MRIでは脳室周囲に血管に沿った線状の造影効果 (linear perivascular enhancement) がみられる。

・頭痛、亜急性脳症、視神経乳頭炎、脊髄炎、姿勢時振戦、小脳失調が主な臨床症状

・髄液での炎症性変化が 93%にみられる

・悪性腫瘍が 3年以内に 38%にみつかる。内訳は前立腺及び胃食道の腺癌、骨髄腫、メラノーマ、消化管カルチノイド、耳下腺多形性腺腫、奇形腫であった。

・高用量ステロイドに反応するが、長期の免疫抑制なしでは再発しやすい傾向にある

というのがあるそうです。頻度としては抗 Yo抗体と同じくらい検出されるそうですから、決しては少なくないですね。MRIでの脳室周囲の線状の造影効果は lymphomatoid granulomatosisなどを思い起こさせますが、この髄膜脳脊髄炎も鑑別に挙げなければいけないというのは覚えておこうと思います。

Cheyne-Stokes Respiration, Chemoreflex, and TicagrelorRelated Dyspnea. (2016.9.8 published online)

Ticagrelorを脳卒中の急性期治療で用いた場合、呼吸苦での内服中断が 1.4%にみられるという論文を以前紹介したことがあります

今回著者らは、心臓収縮能・拡張能が保たれ、呼吸機能が正常で動脈血ガス分析が正常であったにも関わらず、ticagrelor (商品名ブリリンタ) 内服で持続する呼吸苦を訴えた患者に 24時間心肺モニタリングをした結果チェーン・ストークス呼吸が検出された症例を報告しました。Ticagrelorを clopidogrelに変更後、呼吸苦は消失し、呼吸パターンも正常化しました。同様の症例はほかに 3例あったそうです。

ticagrelorと心肺モニタリング

ticagrelorと心肺モニタリング

呼吸機能検査や血液ガス分析で異常が見つからないというのは怖いですね。Ticagrelor内服中の方が呼吸苦を訴えた場合の鑑別として、知っておかなければいけないと思いました。

Development of Interstitial Lung Disease after Initiation of Apixaban Anticoagulation Therapy (2016.4.15 published online)

NOACs内服中の間質性肺炎の報告はいくつかあります。国立循環器病研究センターから、アピキサバン内服中の間質性肺炎のサーベイランスについて報告されました。約 870名内服して 4名 (約 0.45%) が間質性肺炎を発症したそうです。発症者は全例高齢で腎機能障害のある日本人男性で、非弁膜症性心房細動のため内服していました。4名中 3名は喫煙者で、3名には肺疾患の既往がありました。呼吸苦は 3名では薬剤開始 1週間のうちに始まり、1名は 90日で始まりました。全例 mPSLパルス療法を受け、3名は人工呼吸器を要しました。2名は改善しましたが、2名は呼吸不全で死亡しました。1名は血中濃度が測定されており、390 ng/ml (健常者では ~130 ng/ml) でした。著者らは、高齢でハイリスクの患者にアピキサバンを開始するときは、呼吸機能を慎重にモニターする必要があるとしています。

考察に、日本のサーベイランスでは、2016年2月時点でアピキサバン 49名、リバロキサバン 100名、ダビガトラン 68名に間質性肺炎が報告されているそうです。いずれも処方機会の多い薬剤ですので、気をつけようと思いました。

The antibody aducanumab reducesplaques in Alzheimer’s disease. (2016.8.31 published online)

とても話題になった論文。アルツハイマー病のアミロイドβに対する治療は行き詰まっている中で、aducanumabが用量依存的にアミロイドβを減らし、進行を遅らせたというのは、画期的な結果でした。これまでアミロイドβに対するモノクローナル抗体が失敗続きだったことについて、著者らは抗体が脳の標的蛋白質に結合する能力が不足していたことや、患者選択が悪かったからではないかと推測しています。論文内容自体は、2015年3月の国際会議で発表されたのとほぼ同じだと思うので、それを纏めたブログを御覧ください。

この論文は画期的ではありますが私は 2点ほど懸念しています。一つは副作用で、10 mg/kg群では、32人中 10人 (31%) が副作用で治療を中断しています (プラセボ群では 10%)。最も多かったのは ARIA (血管原性脳浮腫 (アミロイド関連造影異常、amyloid-related imaging abnormality)) , 次いで頭痛です。ARIAは 10 mg/kg群の 47%でみられました。

もう一つは、データそのものについてです。Aducanumabがアミロイドβを排除してくれる抗体なので、用量依存的にアミロイドプラークが減少するという figure 2 a-cの結果は納得できます。しかし、認知機能を評価する CDR-SB (figure 3a) の変化については違和感があります。Aducanumabの用量が増えるに従って、認知機能の低下が直線的に抑制されるということはありうるのでしょうか。認知機能には多数の要因が関与してくるので、もっと複雑な振る舞いをするのではないかという気がしますけれど・・・。あと、MMSEのデータ (figure 3b) で、 52週後の MMSEの変化はプラセボ -3点、aducanumab 6 mg/kg群で -2点程度なのですが、臨床的に MMSEが 1点違うのは誤差のようなもので、ほとんど効果は実感できないと思います。

figure 2

figure 2

figure 3

figure 3

ということで、期待はしているけれど、第 3相試験の結果を見るまでは、手放しでは喜べないなと思っています。

Worldwide Thyroid-Cancer Epidemic? The Increasing Impact of Overdiagnosis (2016.8.18)

検査法の進歩に伴うと推測される甲状腺癌の過剰診断が近年問題となっています。この論文の図を見ると、ここ 20年間でいかに甲状腺癌が増えているか良くわかります (特に韓国)。ただ、甲状腺癌と診断された数が著増しても、死亡自体は増えておらず、見つける必要のなかった癌 (放置してもほとんど進行しない癌) を見つけている可能性があります。論文では 2ヶ所福島に触れられた部分があり、特に結語の “Finally, the enormous increase in thyroid-cancer incidence in South Korea subsequent to opportunistic ultrasonography-based screening sends a strong warning about data interpretation in the context of large-scale after radiation exposure from exceptional events like the nuclear accident in Fukushima.” というメッセージは重要だと思います。

thyroid-cancer

thyroid-cancer

原発事故後の福島でのスクリーニング検査についてですが、検査法の進歩のため甲状腺癌自体が過剰診断されるようになってきている中、過去との比較すると著増してしまうのが目にみえてしまうので、原発事故と関係ない地域との比較が大事なんですが、実際そうされていないのでなかなか解釈が難しいですね。

この論文とは関係ありませんが、甲状腺疾患についてのまとまった総説が 2016年8月29日に出ていて勉強になります。

MRI criteria differentiating asymptomatic PML from new MS lesions during natalizumab pharmacovigilance  (2016.8.16 published online)

多発性硬化症に対する免疫抑制療法の進歩に伴い、副作用としての進行性多巣性白質脳症 (PML) が問題となってきています。特にリスクの高い薬剤がナタリズマブです。PMLは多発性硬化症と同じく白質を主座とする疾患なので、発見が遅れがちです。

そこで、著者らは多発性硬化症と PMLを鑑別するための MRI基準を作成しました。点状の T2病変、皮質灰白質病変、傍皮質 (juxtacortical)白質病変、灰白質と白質に隣接し向かう不明瞭あるいは混在した病変、病巣サイズ 3 cm以上、造影増強効果あり、は 全て PMLを示唆しました。局所様病変 (local lesion appearance)、脳室周囲の病変は多発性硬化症の新規病巣を示唆しました。多変量モデルでは、点状の T2病変、皮質灰白質病変で PML、局所様病変、脳室周囲の病変で多発性硬化症の新規病巣とすると、感度 100%, 特異度 80.6%でした。

PMLと多発性硬化症の鑑別

PMLと多発性硬化症の鑑別

Discontinuing disease-modifying therapy in MS after a prolonged relapse-free period: a propensity score-matched study. (2016.6.13 published online)

多発性硬化症では、再発を抑えるためインターフェロン製剤などの疾患修飾薬を用います。しかし長期間再発がない患者で、疾患修飾薬を中止して良いかはよくわかっていません。

そこで、著者らは 5年以上再発がない患者を対象として propensity score-matchingを用いて研究を行いました。その結果、薬剤を中止した患者と継続した患者では、再発するまでの期間に有意差はありませんでしたが、障害 (disability) が進行するまでの期間は、中止者で有意に短いという結果でした。

Intensive Blood-Pressure Lowering in Patients with Acute Cerebral Hemorrhage (2016.6.8 published online)

脳梗塞急性期は脳循環を保つため血圧はあまり下げないように治療します。一方で、脳出血の場合は複雑です。血圧が高いほうが脳循環は維持されるでしょうが、その分出血には悪影響になるかもしれません。どのくらいの血圧で管理するかは議論があります。

著者らは、血腫の容積 60 cm3未満、GCS 5点以上の患者 1000名を対象に、収縮期血圧を 140~179 mmHgで管理した通常治療群と、収縮期血圧 110~139 mmHgで管理した強化治療群に分けて評価しました。ベースラインの収縮期血圧は約 200 mmHgでした。その結果、90日後の死亡や後遺症は両群間で差はありませんでした。患者振り分け 72時間以内に起こった治療に関連した有害事象は、通常治療群 1.2%, 強化治療群 1.6%でした。振り分け 7日以内の腎有害事象は、通常治療群 4.0%, 強化治療群 9.0%でした。

90日後のmRS

90日後のmRS

脳出血急性期に血圧を下げるのは、それほどガチにならなくても良さそうということですね。

Efficacy of Folic Acid Therapy on the Progression of Chronic Kidney Disease (2016.8.22 published online)

慢性腎臓病 (CKD) の治療は RAS系を主体とした降圧療法が一般的ですが、十分に効果があるとは言えません。高ホモシステイン血症が悪影響とされますが、ビタミンB12と葉酸を内服したスタディーでは効果がないばかりかむしろ有害でした。著者らはビタミンB12なしで葉酸のみだったらどうかということを考えました。

そこで著者らは 150104名の中国人 (平均 60歳) をエナラプリル 10 mg/日のみ内服した群と、エナラプリル 10 mg/日と葉酸 0.8 mg/日を内服した群に分け、RCTを行いました。中央値 4.4年間追跡した結果、葉酸を追加した群では、腎障害の進行が有意に抑制されました。

この研究のみで結論を出すのは早計ですので、今後の追試の結果を待ちたいと思います。

Comparison of sensitivity and specificity among 15 criteria for chronic inflammatory demyelinatingpolyneuropathy. (2013.12.11 published online)

慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の診断基準はたくさんありますが、どの精度が最も良いか直接比較した研究はありません。そこで著者らはレトロスペクティブにカルテを用いて比較を行いました。その結果、最も感度・特異度が良かったのは EFNS・PNS診断基準でした。感度/特異度は、EFNS・PNS definiteで 73.2/90.8%, EFNS・PNS probableで 78.5/86.8%, EFNS・PNS possibleで 87.5/68.4%でした。

Drugs That May Cause or Exacerbate Heart Failure: A Scientific Statement From the American Heart Association. (2016.9.11 published online)

心不全を増悪させる原因となりうる薬剤の一覧表が、AHAから論文化されています。神経疾患に用いる薬としては、カルバマゼピン、プレガバリン、三環系抗うつ薬、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、エルゴタミン (現在では既に使わない薬ですが・・・) などがリストアップされていました。

Unilateral Gottron Papules in a Patient Following a Stroke: Clinical Insights Into the Disease Mechanisms and Pathophysiology of Cutaneous Dermatomyositis (2016.9.1 published online)

症例は 60歳代の皮膚筋炎の女性。脳卒中のため右片麻痺だったのですが、その 2年後に左手にだけ Gottron徴候が出現しました。自己炎症で働く接着分子の CD44v7は、機械的な伸展で誘導され、osteopontinとともに皮膚筋炎の皮膚に Gottron徴候を生み出すそうです。著者らは、麻痺のため右側を使わなかったので、右手には Gottron徴候がなかったのではないかと推測しています。

興味深い仮説とそれを支持する症例報告ですね。

Patient outcomes up to 15years after stroke: survival, disability, quality of life, cognition and mental health. (2016.7.22 published online)

脳卒中後、15年後までの予後についての報告です。2625名の患者のうち、15年後まで生存していたのは、21%でした。生存者の 61%が男性で、脳卒中発症年齢の中央値は 58歳、33.8%が自宅で生活していました。15年目の時点で、認知機能障害が 30%、鬱が 39.1%、易怒性が 34.9%にみられました。

Trial Reporting in ClinicalTrials.gov — The Final Rule (2016.9.16 published online)

臨床研究は ClinicalTrials.govに登録して行うのが国際的に一般的です。その最終ルールが公開されたようです。

University of Tokyo to investigate data manipulation charges against six prominent research groups (2016.9.20)

東京大学での研究不正疑惑。Science誌でもニュースとして取り上げられました。

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Bagpipe

By , 2016年8月27日 8:45 AM

バグパイプ内で増殖した菌で管楽器奏者が死亡したという報道がありました。

バグパイプ内の菌で男性死亡? 管楽器奏者に警鐘

AFP=時事 8月24日(水)6時52分配信

AFP=時事】英国で、バグパイプの内部に繁殖していた菌を吸い込み続けた男性が死亡した事例が報告された。報告を行った医師らは管楽器奏者に対し、楽器を定期的に掃除するよう呼び掛けている。

英医学誌「ソラックス(Thorax)」に掲載された記事によると、死亡した61歳の男性は毎日バグパイプを演奏しており、7年間にわたり乾性のせきと息苦しさに悩まされていた。

だが、バグパイプを自宅に置いてオーストラリアへ3か月間旅行に出掛けた際だけ、症状が急速に緩和されたという。

これを受けて主治医らがバグパイプ内を調べたところ、湿気のこもった留気袋や音管、マウスピースに、多様な菌類が繁殖していたことが分かった。

男性は治療のかいなく2014年10月に死亡。検視の結果、肺には重度の損傷が見つかった。

菌類を吸い込んだバグパイプ奏者の死亡例は、この男性が初めてとみられる。男性が患っていた過敏性肺炎の原因は、この菌だった可能性があるという。

記事では、「管楽器奏者は、楽器を定期的に清掃することの重要性と、その潜在リスクについて認識する必要がある」と警鐘を鳴らしている。【翻訳編集】 AFPBB News

実際の論文は下記になります。

Bagpipe lung; a new type of interstitial lung disease?

バグパイプの中から検出された真菌は、”Paecilomyces variotti, Fusarium oxysporum, Penicillium species, Rhodotorula mucilaginosa, Trichosporon mucoides, pink yeast and Exophiala dermatitidis” でした。論文にある figureをみると、「うわーっ、やばい」という感じが伝わってきます。

bagpipe

bagpipe内の真菌

ちなみに、今回検出された菌の多くは、過敏性肺炎の起因菌としてこれまで報告されているもののようです。そのため、これらの真菌を慢性的に吸入していたことが、過敏性肺炎の引き金になったのではないかと推測されています。

論文の考察には、サクソフォン奏者トロンボーン奏者での真菌による過敏性肺炎の症例が引用されています。サクソフォンの症例では、”Ulocladium botrytis” と “Phoma sp” がサクソフォンから検出され、これらの真菌に対する血清特異的抗体が陽性でした。トロンボーンの症例では、たくさんの “Mycobacterium chelonaeabscessus group” 、”Fusarium sp (真菌)”、それとわずかな “Stenotrophomonas maltophilia” 及び大腸菌が培養されたようです。トロンボーンの報告中に、さらに 7名の金管楽器奏者の楽器からの培養結果が表として纏められていて、その菌の多さにビックリします。

金管楽器と菌

金管楽器と菌

こういう報告を読むと、金管楽器が菌管楽器とならないように、持ち主はきちんとした手入れが大事ですね。ちなみに、私の知り合いは、”bagpipeじゃなくて bugpipeだな” って言っていました。誰ウマ。

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最近の医学論文

By , 2016年8月18日 6:51 PM

例によって、最近の論文が中心の備忘録です。

Bortezomib Treatment for Patients With Anti-N-Methyl-d-Aspartate Receptor Encephalitis

抗NMDA受容体脳炎は、治療に難渋することが少なくないが、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ (商品名:ベルケード) が奏功した 2例の報告。

症例 1は 30歳代前半の黒人女性。卵巣奇形腫がみつかり手術、それに加えて血漿交換、リツキシマブ、シクロフォスファミド、ステロイド大量療法で改善なし。7ヶ月人工呼吸器管理となっていた。CD19陽性細胞は消失。血漿交換、ステロイド、免疫グロブリン大量療法を受けた後、わずかに改善した。ボルテゾミブ 1.3 mg/m2を 1, 4, 8, 11日目に皮下注射 (アシクロビル, cortimoxaoleを併用) したところ、忍容性は良好で有害事象もなかった。数カ月後、症状や抗体価は著明に改善し、軽度の高次脳機能障害のみ後遺症として残存した。

症例 2は、20歳代前半の白人女性。卵巣奇形腫はみつからなかった。血漿交換をうけて改善し、職業訓練に復帰することができた。しかし、20ヶ月後、再発。血漿交換及びリツキシマブは効果がなかった。CD19陽性細胞は消失。ステロイド、血漿交換、免疫グロブリン大量療法は効果がなかった。ボルテゾミブは症例 1と同じレジメンで使用したところ、忍容性は良好で、有害事象もなかった。後遺症として軽度の記憶障害などを残すのみで著明に改善し、再発もない。

以下個人的な感想。抗NMDA受容体脳炎について、2011年の Lancet Neurologyに書かれた総説の治療戦略はよくまとまっているけれど、これほど効果がありそうなら、将来的にはボルテゾミブも加わってくるかもしれない。その前に、きちんとした臨床試験が必要だけど。

A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis.

自己免疫性脳炎を起こす疾患と自己抗体や診断基準がまとまっていて読みやすい。ただ、figure 1の診断アルゴリズムは、各種自己抗体の結果がでるのに数週間かかることを考えると、臨床的には使えないかもしれない。自己抗体とそれに対応する疾患 (table 1) は使えそうなので備忘録として貼っておく。

自己抗体

自己抗体

International consensus guidance for management of myasthenia gravis

重症筋無力症の “international consensus guidance”。エキスパートの意見のためかガイドラインではなくてガイダンスという表現が使われている。「寛解」などいくつかの用語の定義が 示された後に、治療法が箇条書きで書かれている。重症筋無力症が heterogeneousであるためか、薬剤の投与量には言及されていないが、治療戦略を立てる上での基本となることが纏まっている。

Lack of KIR4.1 autoantibodies in Japanese patients with MS and NMO

多発性硬化症や視神経脊髄炎に対する KIR 4.1抗体について、日本からの報告。この抗体は、当初すごく注目されたけれど、再現性が示されていない。日本人を対象に ELISAと LIPS (luciferase immunoprecipitation system) で調べたけれど、やはり使えなさそうだという結論。

KIR4.1

KIR4.1

KIR4.1については、2016年春の講演で少し触れたので、その時のスライドを貼っておく。

多発性硬化症 スライド1

多発性硬化症 スライド1

多発性硬化症 スライド2

多発性硬化症 スライド2

多発性硬化症 スライド3

多発性硬化症 スライド3

Multicentre comparison of diagnostic assay: aquaporin-4 antibodies in neuromyelitis optica

視神経脊髄炎関連疾患における抗アクアポリン4抗体の assay法についての論文。診断精度の問題で、新ガイドラインでは cell-based assayを推奨しているけれど、specialist centerでは免疫組織化学法やフローサイトメトリーも同じくらいだという結果。Table 2に assay法の一覧と、figure 5に診断精度の図が纏まっている。

診断精度の図

診断精度の図

Progressive Brain Atrophy in Super-refractory Status Epilepticus

超難治性てんかん重積患者に伴う脳萎縮を調べるため、発症 2週間以内に撮った MRIと、それから 1週間以上あけて 6ヶ月以内に撮った MRIを比較した。方法として、5 mmスライスのFLAIR画像で脳室と脳の比 (ventricular brain ratio; VBR) を調べた。Inclusion criteriaを満たしたのは 19名であり、てんかん発作を抑制するために中央値 13日間の麻酔薬管理を必要とした。VBRの変化率の中央値は 23.3%、脳萎縮は麻酔薬の投与期間に相関していた。

Psychotic disorders induced by antiepileptic drugs in people with epilepsy

抗てんかん薬には、副作用として精神症状 (抗てんかん薬誘発の精神症状 antiepileptic drug induced psychotic disorder; AIPD) が出現するものがある。著者らは、どのような患者で精神症状をきたしやすいかを調べた。てんかんでも精神症状をきたすことがあるので、抗てんかん薬による精神症状と診断するためのアルゴリズムは figure 1、精神疾患の診断基準は table 1の通りとした。その結果、抗てんかん薬誘発の精神症状は、女性、側頭葉病変、レベチラセタムの使用で有意に多かった (特にレベチラセタムのオッズ比は 21.676!)。カルバマゼピンは内服により逆に精神症状が減少した。

抗てんかん薬と精神症状

抗てんかん薬と精神症状

レベチラセタムは初回から治療量で使える薬剤で、薬剤相互作用や皮疹などの副作用が少なく、使われる頻度が非常に増えているけれど、精神症状はてんかんを治療する医師は絶対知っておかないといけない副作用だと思う。

Randomized Trial of Thymectomy in Myasthenia Gravis.

対象は 18歳~65歳、MGFA分類 II-IV, 発症 5年以内で抗AChR抗体陽性の重症筋無力症患者。介入は胸腺切除術+プレドニゾンの隔日内服で、対照はプレドニゾンの隔日内服。主要アウトカムは、 3年後の QMGスコア (ブラインド化して評価) と 3年間に要したプレドニゾンの平均用量 (time-weighted)。

介入群 (胸腺切除+プレドニゾン) では、対照群 (プレドニゾン) と比べ、QMGスコアが低く (6.15 vs. 8.99, P<0.001)、プレドニゾンの平均投与量も少なかった (隔日 44 mg vs. 60 mg, P<0.001)。また、介入群の方が免疫抑制剤アザチオプリンを必要とした症例が少なく (17% vs. 48%, P<0.001)、増悪による入院も少なかった (9% vs. 37%, P<0.001)。治療による合併症に有意差はなかった。

主要アウトカム

主要アウトカム

抗AChR抗体陽性の重症筋無力症で胸腺切除術を行うのは一般的だが、実はこの論文が、初めて行われた RCTであることを知って驚いた。75年前、胸腺腫のない重症筋無力症に対して胸腺切除術の効果が報告された後、観察研究はいくつもあるが、 RCTは行われていなかったらしい。抗AChR抗体陽性の重症筋無力症に胸腺切除術が有効であるという RCTでのエビデンスを示した点で、歴史的な論文になると思う。なお、抗MuSK抗体陽性の重症筋無力症は別なので要注意。

Spt4 selectively regulates the expression of C9orf72 gene sense and antisense mutant transcripts

ALSと C9orf72の話は、これまで何度もブログで紹介した。転写延長因子 Spt4の阻害により、C9orf72のセンスとアンチセンスの伸長した転写産物や転写された 2量体ペプチド (DRP) を減少させ、動物モデルでは神経変性を抑えることができた。Spt4のヒトオルソログである SUPT4H1のノックアウトにより、患者細胞でやはりセンスとアンチセンス RNA凝集体の産生低下と DRPタンパク減少がみられた。

この論文の通りだとすると、SUPT4H1は C9orf72異常の ALSでは治療法開発のターゲットの一つはなるのかもしれない。それ以外の原因による ALSでどうなのかはわからないけれど (日本人では C9orf72の GGGGCC反復伸長による ALSは少ない)。

Enteroviral Postencephalitic Parkinsonism With Evidence of Impaired Presynaptic Dopaminergic Function

日本脳炎、セントルイス脳炎、西部ウマ脳炎、東部ウマ脳炎、ウエストナイル熱、EBウイルス、インフルエンザA型、そのほかコクサッキーBやエコーウイルスのようなエンテロウイルス後に起こることが報告されている。これらのウイルスは、脳皮質、視床、脳幹、脊髄を侵す一方で、黒質を好んで侵すことも報告さている。黒質病変による脳炎後パーキンソニズムは、これまで 1915~1928年に流行した嗜眠性脳炎 (von Economo脳炎) で報告されてきた。

今回、著者らはエンテロウイルスによりレボドパ反応性のある脳炎後パーキンソニズムをきたした症例の MRIや PETを評価し報告した。初回の頭部MRIでは、脳幹のびまん性の異常信号がみられたが、1年後に撮像した MRIでは、黒質の非対称性 (右優位) の破壊的変化がみられた。Fluorine F 18–labeled fluorodopa PETでは、線条体に持続性の取り込み低下がみられた。著者らによると、脳炎後パーキンソニズムでドパミン系のシナプス前機能の障害を証明した研究は、この論文が初めてである。

Time- and Region-Specific Season of Birth Effects in Multiple Sclerosis in the United Kingdom

生まれた月と多発性硬化症の発症に相関があるというイギリスでの研究。日照との関連が推測されている。

誕生月と多発性硬化症

誕生月と多発性硬化症

多発性硬化症の再発の季節性については、これまで色々と指摘されている (以前講演で使ったスライドを下に示す)。生まれた月まで関連が・・・というのが、もし本当ならばびっくり。

多発性硬化症と緯度

多発性硬化症と緯度

Stroke outcomes with use of antithrombotics within 24 hours after recanalization treatment

今回著者らは、再灌流療法後の抗血栓療法を 24時間以内に行う早期開始 (early intiation) と 24時間以降に行う通常管理 (standard management) を前向き組み入れ試験で比較した。抗血栓療法をどのように行うかは脳卒中治療医に任せたが、多くの症例で初回投与時には loading dose (アスピリン 300 mg) が用いられた (抗血小板薬 2種類併用や抗凝固薬の使用もあり)。

患者の内訳は、経静脈治療 34%, 経動脈治療 (血管内治療) 32%, 経静脈+経動脈治療 34%であった。早期開始群では全出血は少なかったが、症候性出血や機能予後 (mRS) は早期開始と通常管理で差はなかった。再灌流 12時間以内の超早期開始では、出血性変化のオッズ比の増加はなかった。再灌流の方法による臨床的アウトカムに差はなかった。

再灌流と抗血栓療法

再灌流と抗血栓療法

現在、血栓溶解療法を行った後、基本的には 24時間は抗血栓療法を行わないのが一般的で、日本のガイドラインにもそのように記されている。一方で、抗血小板薬を内服をしている患者に血栓溶解療法をした方が、内服していなかった患者に比べて出血リスクは高くなるが、機能予後は良かったという報告もある。今回の研究は、再灌流療法後に抗血栓療法を始めるタイミングについて、一石を投じるかもしれない。ただ、発症から治療開始までの時間や心房細動の有無など大事な項目でベースラインの群間に差があるのが気になるところ。

Predictive value of ABCD2 and ABCD3-I scores in TIA and minor stroke in the stroke unit setting.

一過性脳虚血 (TIA) 後の脳卒中リスクを予測ツールとして、ABCD2 scoreなどは現在広く受け入れられており、一般の外来や救急外来では評価は確立している (scoreについての日本語解説はこちらを参照)。今回、脳卒中ケアユニット (stroke care unit; SCU) に入院した発症 24時間以内の TIAや minor stroke (NIHSS 4点未満) 患者を対象に前向きコホート研究で ABCD2や ABCD3-Iを評価した。ABCD2 scoreの感度・特異度は、過去のメタアナリシスと似た結果だった。個々のスコアをみると、年齢 (A)、血圧 (B)、糖尿病 (D) は早期あるいは 3ヶ月後の脳卒中と相関しなかった。一方で、臨床症状 (C)、症状持続時間 (D)、同側の頸動脈狭窄 (D)、拡散強調像高信号域 (D) は SCU settingにおいて重要であった。

ABCD3-Iと個々のコンポーネント

ABCD3-Iと個々のコンポーネント

Human neural stem cells in patients with chronic ischaemic stroke (PISCES): a phase 1, first-in-man study.

不死化した神経幹細胞 CTX03を用いて、オープンラベルで安全性と忍容性を調べた第 1相試験。CTX03は、中大脳動脈閉塞モデルのラットでは、用量依存的な運動感覚機能の改善が確認されている。

対象は NIHSS 6点以上、mRS 2-4点、脳梗塞発症から 6~60ヶ月経った 60歳以上の男性。頭蓋骨に穴を開け、脳梗塞と同側の被殻に投与した。臨床データと頭部画像を 2年間追跡した。主要評価項目は安全性 (合併症と神経学的変化) とした。

13名の男性 (平均 69歳、 60-82歳) が組み入れられ、 CTX-DPの投与を受けた。治療前の NIHSSの中央値は 7点 (6-8点) であり、脳卒中からの平均経過期間の平均は 29ヶ月 (SD 14) だった。3名の男性が皮質下梗塞のみで、 7名は右大脳半球の梗塞だった。免疫学的あるいは投与細胞による有害事象はなかった。その他、手技や併存疾患による有害事象があった。刺入部位付近の FLAIR高信号が 5名で認められた。2年後の NIHSSの改善は 0-5点 (中央値 2点) だった。

以下、個人的感想。慢性期脳梗塞に対する幹細胞治療は、2016年6月2日 Stroke誌に骨髄由来培養幹細胞 SB623の第 1/2相試験が発表されたばかりで、競争が過熱している。SB623も CTX03も baselineの NIHSSが 一桁後半で、改善効果は 2点程度という点は、単純比較はできないけれど効果は似ている印象を受ける。注意しなければいけないのは、両試験とも評価者がブラインド化されていない点である。オープンラベル試験で評価項目が NIHSSのようにソフトエンドポイントだと、結果に臨床試験担当者や被験者の意図が混入しやすい。また、いずれの製剤も頭蓋骨に穴を開けて培養細胞を注入しなければならず、それなりに侵襲はある。

一方で、本邦では静脈投与可能な製剤の治験が行われている。以前、2009年に本望先生の講演を聴いた時は効果としては期待できそうな印象を持ったが、ようやく形になってきているようだ。この治療のネックは患者本人から骨髄を採取しなければならない点だろう。こちらは、SB623や CTX03と異なり、急性期~亜急性期の脳梗塞が対象のようだ。

私は脳梗塞に対する幹細胞治療については全然詳しくないけれど、いくつかある方法のなかでネックとなってくるのは、(1) どのような細胞を用いるか (その都度患者由来の細胞から培養して作製するより、既成品の方が便利)、(2) どのような投与経路とするか (経静脈投与が望ましい)、(3) 薬価、なのではないかと思う。

NICE recommends ticagrelor with aspirin for three years post-MI

イギリスでは心筋梗塞治療のファーストラインとして、アスピリンに加えて ticagrelor 90 mg 1日 2回を 12ヶ月追加し、その後アスピリンを継続する施設が多い。NICEの新しいガイダンスの草稿では、12ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある患者や心筋梗塞や脳卒中をさらに起こすリスクの高い状態が続く患者に対して、アスピリンに加えて ticagrelor 60 mg 1日 2回を 3年間続けることを推奨している。Ticagrelor 90 mgと 60 mgの間に中断が起きないようにすべきである。3年以上のアスピリンとの併用は、効果や安全性についてのデータが不十分であり推奨しない。

ちなみに、ACCとAHAも 2016年に共同で、冠動脈疾患後の抗血小板薬 2剤併用についてのガイドラインを出しており、JACCCirculationに掲載されている。

Recommendations for the Management of Strokelike Episodes in Patients With Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis, and Strokelike Episodes

ミトコンドリア脳筋症の一つである MELASの脳卒中様症状についての総説。Arginineや citrullineによる治療などについて解説している。いずれも RCTは行われていないが、著者らは次のような治療を推奨している (文献的根拠に乏しく、expert opinionという印象)。

<Short-term Therapy>

脳卒中様発作に対しては、arginine hydrochlorideを loading doseで静脈内投与すべきである。Arginineの至適用量は不明だが、0.5 g/kgを症状発症 3時間以内に急速投与することが推奨される。脳卒中様発作が見られた時、画像診断が有用だが、そのために arginineの投与が遅れるべきではない。脳循環を保つため生理食塩水を急速投与すべきで、血糖値が正常なら代謝を正常化させるために可能な限り早くブドウ糖を含む輸液を投与すべきである。精神症状がある場合は、非痙攣性てんかん重積ではないか、脳波を評価すべきである。なぜなら、MELASでは精神症状の原因としてしばしばみられるからだ。

<Ongoing Therapy>

Arginineを急速投与した後、0.5 g/kgの 24時間持続投与を 3-5日間続ける。Arginineの維持量をどの程度続ければよいかの臨床的エビデンスはないが、ミトコンドリアの専門家の多くは少なくとも 3日間は続けることを推奨している。臨床症状が 3日以上続くようなら、卒中が進行しているか画像評価し、5日間 arginine治療を続けることを検討すべきである。嚥下の安全性が確認され、経口摂取ができそうなら、静脈内投与と同量 (1-to-1 dose) の L-arginine内服に移行するかもしれない。

<Prophylaxis>

MELASの患者が最初の卒中を経験したら、脳卒中様発作を減少させるため、予防的に arginineを投与すべきである。経口で投与量 0.15~0.30 g/kg/day 分3が推奨される。

Climate influence on Vibrio and associated human diseases during the past half-century in the coastal North Atlantic

温暖化に伴い、北大西洋や北海でビブリオが増えている。報道では生牡蠣を介した感染が懸念されている。日本の生牡蠣はどうなんだろう・・・。

Takayasu’s Arteritis

知り合いの医師らの報告が、New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載された。凄い!

Gastric Anisakiasis

日本からの報告が、同じく New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載されたようだ。アニサキスの症例報告といえば、2013年7月18日に紹介した論文が面白かった。この論文も、figureに著者の胃にいるアニサキスの写真が載っていて有名 (論文内容の日本語紹介はこちら)。

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