Category: 医学と医療

最近の医学論文 前編

By , 2016年11月23日 7:12 PM

ガイドライン作成、Cochrane review, 講演会の準備 (1ヶ月平均 2回)、編集中の雑誌の査読に追われ、さらに和文総説の依頼なども飛び込んできて、最新論文のチェックがかなり滞っています。特に講演会は毎回テーマが異なるのでゼロから作らねばならず、かつ 12月中旬の講演会は一人で 6時間神経疾患について喋らなければいけません。と、佐藤優のメルマガの冒頭のような言い訳から始まりましたが、今回は 2ヶ月分まとめ読みしました。全部要約すると膨大な量になってしまうので、さらりと触れる形で備忘録とします。それでも量が多かったので、2回に分けました。もっとコマメにやることができれば良いのですけれどねぇ・・・。

Diagnostic challenges and clinical characteristics of hepatitis E virus-associated Guillain-Barre syndrome (2016.11.7 published online)

Guillain-Barre症候群はさまざまな先行感染の後に発症することが知られています。しかし、E型肝炎についてはこれまで調べられていませんでした。著者らは 73名の Guillain-Barre症候群/或いはその variantに対して、E型肝炎の IgM抗体 (HEV-IgM) を調べました。すると、6名 (8%) で抗体陽性でした。そのうち 4名では ALTが正常上限の 1.5倍以上でした。一方で、ALTが上昇していた患者の側からみると、22名のうち 4名 (18%) で HEV-IgMが陽性でした。HEV-IgM陽性の 6名のうち 2名はサイトメガロウイルスや EB virusの抗体も陽性で、交差反応と考えられました。最終的に、4名 (6%) が、急性 E型肝炎に合併した Guillain-Barre症候群と推測されました。

HEVとGBS

HEVとGBS

肝機能障害を合併していたり、ちょっと特殊なタイプだったりする場合には、Guillain-Barre症候群の原因検索で HEV-IgMをチェックしてみるのはアリかなと思いました。

A clinical tool for predicting survival in ALS (2016.6.4 published online)

著者らは、575名の連続症例のデータを用いて、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の生存予測曲線を作成しました。Limb onset/bulbar onset, あるいはリルゾールの有無により解析しています。ただし、この疾患は個人差が大きいので、個々の症例に適用することは難しいかもしれません。

HIV-associated motor neuron disease (2016.9.24 published online)

以前、ALSと HERV-Kについて書きました。今回、著者らは HIVに感染後、運動ニューロン疾患を発症した 5名のうち 4名の血漿 HERV-Kレベルをモニターしました。抗レトロウイルス療法を受けた 3名は、発症から 6ヶ月以内に症状が改善し、残りの 2名は数年かけて進行しました。血漿 HERV-Kレベルは、抗レトロウイルス治療に反応して低下しました。

HIVで motor neuron diseaseのような症状が出ることがあるというのと、一部の患者では HIVの治療でそれがよくなることがあるというのは知っておこうと思いました。HERV-Kは HIVと同様にレトロウイルスなので、HIVの治療は HERV-Kのウイルス量も減らすのでしょうね。HERV-Kは HIVの Tat蛋白で活性化されるとのことですが、詳細なメカニズムの解明は、今後の研究を待ちたいと思います。

Influence of cigarette smoking on ALS outcome: a population-based study (2016.9.21 published oline)

喫煙が ALSの予後に与える影響についての研究です。生存期間の中央値は、現在の喫煙群で 1.9年、過去の喫煙群で 2.3年、非喫煙群で 2.7年でした。COPDは予後不良の独立した因子でした。

ALSと診断されたら、好きなことをさせてあげれば良いと思っているのですが、思ったより生存期間に差がついていてビックリしました。

Fully implanted brain-computer interface in a locked-in patient with ALS (2016.11.12 published online)

筋萎縮性側索硬化症で閉じ込め症候群となった 58歳の女性患者の硬膜下に電極を植込み、検出される脳の電気活動を用いて、コンピューターを操作してもらう研究が発表されました。電極は左運動野の手の領域に埋め込まれ、また運動野が ALSで侵されるリスクがあるため、左前頭前野にも埋め込まれました。トレーニングの末、彼女は右手を動かすイメージを思い浮かべるなどして、コンピューターを操作できるようになりました。Surface Pro 4で動くプログラムを用いて、自宅用のシステムも作られたそうです。

これまで意思の疎通がとれなかった患者が何を考えているかというのは研究者として興味がありますし、患者の側としても自分の意図を伝えられるというのは凄く大きいですよね。こういうデバイスが臨床現場に普及してくればと思います。

Masitinib in Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS) (2016.4.11)

ALSに対するチロシンキナーゼ阻害薬 Masitinibの承認審査を欧州医薬品庁(EMA)がはじめたそうです。

Polypharmacy in the aging patient (2016.5.8 published online)

糖尿病患者の血糖コントロールを強化した場合、微小血管障害のアウトカム改善は 9年目以降に現れるようです。また、血糖コントロールの強化により重篤な低血糖リスクは 1.5~3倍になります。65歳以上の多くでは、HbA1c  7.5%未満或いは 9%以上だと害がメリットを上回る可能性があります。メトホルミンのように低血糖リスクが低い薬剤で、むしろ HbA1cの下限を決めて治療するのが良いかもしれません。治療薬比較の表が纏まっています。メトホルミンは心血管イベントや死亡を減らし、安く、血糖降下作用も大きいのですね。ただし、腎不全、非代償性心不全には使えないのと、副作用としての消化器症状に注意する必要があります。

glucose-lowering-medication

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Calcium supplementation and risk of dementia in women with cerebrovascular disease (2016.8.17 published online)

カルシウム補充療法を受けている女性では、特に脳卒中の既往があったり画像での白質病変がある場合、脳血管性認知症あるいは混合性認知症のリスクが高まるかもしれないという研究です。

論文の limitationにも書いてありますが、症例数が 98名と研究の規模が小さいことや、観察研究で様々な交絡因子があることが予想されることから、この研究の結果だけでものを語るのは危険だと思いました。

Cancer association as a risk factor for anti-HMGCR antibody-positive myopathy (2016.10.7 published online)

抗HMGCR陽性ミオパチー (anti-3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase autoantibody-positive myopathy) は、スタチン内服との関連がこれまで指摘されていました。しかし、今回のケースシリーズでは、抗HMGCR陽性ミオパチー 33名中 12名 (36%) に癌が見つかりました。一方、スタチンを内服していたのは 21%でした。癌が見つかった患者のうち、92%はミオパチー診断の 1年以内に癌が見つかり、83%は進行癌で、75%は 2.7年以内に癌で死亡しました。

抗HMGCR陽性ミオパチーを見つけたら、癌の存在を考える必要があるのですね。勉強になりました。

Clinical relevance of microbleeds in acute stroke thrombolysis (2016.9.14 published online)

脳梗塞の超急性期治療で rt-PAによる血栓溶解療法を行う時、MRIの T2*や SWIで画像上の微小出血 (microbleeds) がある患者では治療によって出血リスクが増えないのか、私は以前から気になっていました。

著者らは meta-analysisを行い、microbleedsがあると rt-PAによる症候性出血リスクは増加する (OR 2.18; 95% CI 1.12~4.22; p=0.021) ことを明らかにしました。症候性出血は、microbleedsがあった場合 5%, なかった場合 3%でした。なお、rt-PA療法を受けた患者のうち、miclobleedsがあったのは 24%でした。Microbleedsがあると、rt-PAによる出血リスクは増えるけれど、許容範囲内だろうと著者らは判断しています。

Time to treatment with endovascular thrombectomy and outcomes from ischemic stroke: A meta-analysis (2016.9.27 published online)

2015年頃から、虚血性脳卒中に対する血管内治療の良好な成績が相次いで報告されています。使用デバイスの進歩が寄与するところが大きいと推測されています。発症から治療までの経過時間が予後に与える影響について、5つの RCT (MR CLEAN (2015), ESCAPE (2015), EXTEND-IA (2015), REVASCAT (2015), SWIFT PRIME (2015)) を統合して解析したメタアナリシスが報告されました。血栓溶解療法 (rt-PA) に血管内治療を追加すると、血栓溶解療法単独に比べて 3ヶ月後の障害が減少しましたが、発症 7.3時間以降の治療では両群に有意差はありませんでした。治療開始あるいは再灌流の達成が遅れる程、治療効果は悪くなる傾向がありました。

Early start of DOAC after ischemic stroke (2016.9.30 published online)

非弁膜症性心房細動を合併した虚血性脳卒中において、いつから抗凝固療法を始めて良いかはよくわかっていません。そこで、著者らは抗凝固療法を 7日以内に始めた群と、8日以降に始めた群で比較しました。

治療薬の選択に関しては、204名の患者を 4群に分け、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバン、ワルファリンとしました。NOAC/DOACの早期開始群と後期開始群では、NIHSS 1 vs. 7と早期開始群の方が有意に軽症でした。Follow up期間中に、脳出血を着たしたのは 1例だけでした。その患者は、入院時ワルファリンを内服しており、INR 1.7, NIHSSは 8点でした。入院後、ワルファリンは中止され、発症 4日後に再開されました。その翌日に症候性脳出血を起こし、その時の INRは 1.8でした。NOAC/DOACを内服していた患者で脳出血を起こした患者はいませんでした。虚血性脳卒中再発は、早期開始群 5.1%/y, 後期開始群 9.3%/yで有意差はありませんでした。著者らは、虚血性脳卒中の早期に抗凝固療法を始めても、脳出血を起こすリスクは低いと結論しています。

非常に興味深い問題に取り組んだ研究だと思います。しかし、前向きコホート研究なので、早期開始群と後期開始群の割り付けが無作為化されておらず、早期開始群に軽症患者が偏っています。ある程度の重症例に抗凝固療法をいつから始めたら良いかという、最も知りたい疑問を明らかにしてくれる研究デザインではありませんでした。残念です。例えば、NIHSS 1点で画像での梗塞巣が小さいなら、私は躊躇なく早期から抗凝固療法を始めています。

Stroke, bleeding, and mortality risks in elderly medicare beneficiaries treated with dabigatran or rivaroxaban for nonvalvular atrial fibrillation (2016.11.1 published online)

高齢者を対象として、非弁膜症性心房細動にダビガトラン (150 mgを 1日 2回) を使用した場合とリバロキサバン (20 mgを 1日 1回) を使用した場合を比較したコホート研究。後ろ向きコホート研究で、ベースラインは propensity scoreで調整しました。

リバロキサバンは脳塞栓症の減少においてダビガトランと有意差がなく、有意に脳出血、頭蓋外出血を増やしました。また、有意差はないものの、リバロキサバンの方が死亡が多い傾向にありました (HR, 1.15; 95% CI, 1.00-1.32; P = .051; AIRD = 3.1 excess cases/1000 person-years)。特に、75歳以上、あるいは CHADS2 score 2点以上では、リバロキサバンはダビガトランに比べて有意に死亡が増えました。

これはかなり深刻な報告だと思います。リバロキサバンにとってはかなりネガティブなデータです。

Bridging anticoagulation before colonoscopy: results of a multispecialty clinician survey (2016.9.14 published online)

ワルファリンを内服している患者が下部消化管内視鏡受ける時、ワルファリンを中止するとともにヘパリン投与 (heparin bridging) をしたほうが良いかは議論があります。2015年に NEJMに掲載された RCTでは、heparin bridgingで脳梗塞は予防できず、むしろ出血性合併症が増えたという結果でした。実際の現場ではどうしているかを調べたのが今回の研究です。リスクが高くなるに従ってヘパリンを使用する割合は高くなり、中等度リスク (CHADS2 = 3) であっても脳梗塞の既往がある場合は使用することが多いという結果でした。また、診療科により heparin bridgingを行うかどうかにばらつきがありました。

2015年の RCTの結果はともかくとして、リスクが高いと思ったら heparin bridgingはしている人が多いんですね。

Cardiac magnetic resonance imaging: a new tool to identify cardioaortic sources in ischaemic stroke (2016.9.22 published online)

脳梗塞の原因検索で心臓や大動脈を評価するのに MRIを用いる方法の総説。まだ研究段階のようです。

Medical management of intracerebral haemorrhage (2016.11.16 published online)

脳出血の治療についての総説です。現在進行している臨床試験が表になっています。トラネキサム酸や鉄のキレート剤などが含まれていますが、ワクワクする臨床試験はあまりないなぁ・・・と感じました。急性期の降圧については ATACH-IIや INTERACT2が代表的な RCTですが、表があるともっと読みやすかったと思います。

Ticagrelor versus clopidogrel in symptomatic peripheral artery disease (2016.11.13 published online)

虚血性脳卒中の急性期治療でアスピリンに勝てないばかりか呼吸苦での中断も多いチェーンストークス呼吸の原因となりうるといったネガティブなニュースが最近目立つ Ticagrelorですが、このたび ABI 0.8以下の症候性末梢動脈疾患患者を対象に、Clopidogrelとの比較試験が行われました。一次エンドポイントは心臓血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合エンドポイントで、両群間に有意差はありませんでした (Ticagrelor 10.8%, Clopidogrel 10.6%)。出血性合併症も有意差はありませんでしたが、Ticagrelor群の方が副作用による治療中断が多く、その原因が呼吸苦の副作用であった患者は Ticagrelor群全体の 4.8%にものぼりました。

鳴り物入りで登場した Ticagrelorですが、心筋梗塞の治療以外の活躍の機会は今のところあまりなさそうな印象を持ちます。

Effects of ischaemic conditioning on major clinical outcomes in people undergoing invasive procedures: systematic review and meta-analysis (2016.11.7 published online)

周期的に非致死的な虚血を血管床に導入することで、心筋虚血、急性腎障害、脳卒中を含む障害を軽減する “ischaemic conditioning” という手法があります。虚血性心疾患、脳卒中、心臓手術、移植、急性腎障害などで臨床研究がおこなわれているそうです。著者らは、その効果についてのメタアナリシスを行いました。その結果、一次エンドポイントである死亡は、行った群と行わなかった群で有意差がありませんでした。また、アウトカム別では、急性腎障害で唯一有意な治療効果がありましたが、軽症例に限るものと推測されました。脳卒中は治療効果がある傾向はみられましたが、統計学的に有意ではありませんでした。

ischaemic-conditioning

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Carpal tunnel syndrome: clinical features, diagnosis, and management (2016.11.15 published online)

Lancet Neurologyに掲載された手根管症候群の総説です。神経伝導検査の診断精度については、まず通常の正中神経の運動/感覚の検査を行い、それが正常であれば比較法 (書いていないけれどおそらく 2L-INTや ring finger method) を追加した場合、感度 80~90%, 特異度 > 95%とのことでした。また、最近流行りの神経超音波の診断精度は meta-analysisでは感度 77.6%, 特異度 86.8% (gold standardは臨床所見) でした。直接比較ではないですが、神経伝導検査の方が特異度が高いというのは感覚に合致します。治療として手根管開放術の合併症は 1~25%, 重篤なものは 0.5%未満でした。Common diseaseなのでチェックしておきたい総説です。

Prevalence of polyneuropathy in the general middle-aged and elderly population (2016.9.28 published online)

論文の図を見ると、年齢とともに末梢神経障害が増えることが、一目瞭然です。

prevalence-of-polyneuropathy

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後編】へ続く。

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ノーベル医学生理学賞

By , 2016年10月4日 5:57 AM

2016年の医学生理学賞は、大隅良典先生が受賞されました。昔、近い分野の基礎研究をしていた者として、とてもうれしいです。そういえば、オートファジー絡みの和文総説書いたことあるなぁ・・・。

Press Release

そして、なんと・・・2011年に私が書いたブログでのノーベル医学生理学賞予想は、大隅先生でした。時代を 5年先取りしてしまったぜ (違

ノーベル医学生理学賞 (日々不穏:2011年10月3日)

 今後、PD-1の本庶佑先生、CRISPER/Cas9の石野良純先生・Doudna博士・Charpentier博士などはおそらく受賞することになるのでしょうが、iPSの山中先生のときも話題になってから少し引っ張りましたから、1~2年先なんですかね。
Twitterで大隅先生の講義を受けた方から下記の投稿見つけました。ユニークですね。

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最近の医学論文

By , 2016年9月21日 4:59 PM

不定期に論文のタイトルチェックはしているのですが、なかなか読む時間がとれず、月に 1日まとめて十数本斜め読みしています。例によっての備忘録。

A Randomized Trial of Focused Ultrasound Thalamotomy for Essential Tremor (2016.8.25 published online)

本態性振戦の第一選択薬はプロプラノロールとプリミドンです。日本だと β遮断薬のプロプラノロール (インデラル) が保険適用となっておらず、アロチノロールが保険適用となっています。同様に抗てんかん薬のプリミドンも保険適用となっていませんが、薬価が 30.7円/g程度なので、保険で切られても痛くはありません。プリミドンは錠剤で 250 mg使うと眠気がひどいので、散剤 25 mg程度から開始するのがミソです。その他に、いくつかの 2nd-lineの薬剤があります。第一選択薬になっている薬剤もそれほど効果があるわけではなく、30~50%の方では治療効果が期待できません。

そこで著者らは薬剤 2剤以上に抵抗性の中等度~高度本態性振戦に対して MRI下での超音波視床破壊術の RCTを行いました。3ヶ月後の手の振戦スコアの改善は、実治療群で 18.1→9.6, sham刺激群で 16.0→15.8%でした。実治療群では合併症として歩行障害と感覚障害 (異常感覚) が 36%, 38%に生じました。12月後において残存していたのは、それぞれ 9%, 14%でした。

確かに効果のありそうな治療ですが、合併症もそれなりなので、職業上の理由などでよっぽど困った場合、積極的には行わないかなと思いました。研究の limitationにも、破壊は片側性で同側には効かない、頭頸部、声といった軸方向の振戦には効果が弱いというのがありましたが、その辺もネックになってくると思います。

そういえば、昔、その筋の方で本態性振戦で困っている患者さんを診療していましたが、薬が効かなくて凄みが半減していてかわいそうだったのを思い出しました。

Antiviral Agents Added to Corticosteroids for Early Treatment of AdultsWith Acute Idiopathic Facial Nerve Paralysis (Bell Palsy) (2016.8.23 published online)

特発性顔面神経麻痺 (Bell麻痺) を診たとき、急性期であればステロイド投与が標準的治療となっています。それに抗ウイルス薬 (抗ヘルペス薬) を追加するかは、議論があるところです。

今回のメタアナリシスでは、ステロイド+抗ウイルス薬の方がステロイド単独よりも効果があり、3~12ヶ月後の完全回復をアウトカムとした NNTは 19でした。一方で、抗ウイルス薬単独のみでの投与は、プラセボと比較して有意差はありませんでした。

Bell麻痺と抗ウイルス薬

Bell麻痺と抗ウイルス薬

Zika Virus and the Guillain-Barré SyndromeCase Series from Seven Countries. (2016.8.31 published online)

ジカウイルスに 1000人に感染して 0.24人の Guillain-Barre症候群が生じるという試算があるようですが、実際に 7カ国でジカウイルス流行により Guillain-Barre症候群が増えたという報告です。ジカ熱は若い女性に多いけれど、Guillain-Barre症候群は年齢ととも発症リスクが高くなり、さらに男性の発症率は女性の 1.28倍 (rate ratio, 1.28; 95% CI, 1.09 to 1.50) だったらしいです。

zika-and-guillain-barre-syndrome

Zika-and-guillain-barre-syndrome

Gluconorm (repaglinide) New Contraindication for Concomitant Use with Clopidogrel (2015.7.31 update)

レパグリニド (商品名:シュアポスト) とクロピドグレルの併用で、低血糖リスクが高まり、カナダでは併用禁忌に指定されているようです。以下、Healthy Canadianのサイトから転載。

  • Co-administration of repaglinide and clopidogrel (a CYP2C8 inhibitor) may lead to a significant decrease in blood glucose levels due to a drug-drug interaction.
  • The concomitant use of repaglinide and clopidogrel is now contraindicated.
  • The prescriber information for GLUCONORM (repaglinide) has been updated. The prescriber information for PLAVIX (clopidogrel) is currently being updated. The prescriber information for the generic products will be updated (see Products affected).

神経内科では、脳卒中の二次予防にクロピドグレルを用いることがあるので、他科からレパグリニドが処方されていないかはチェックしておかないといけないと思います。日本では併用注意扱いですが、もう少し注意しておいた方が良いのかもしれません。

Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes (2016.9.6 published online)

妊娠の第2期 (second trimester; 14週0日~27週6日)、第3期 (third trimester; 28週0日以降) の MRIは安全性と考えられているようですが、最もこうした影響に感受性の高いと思われる第 1期 (first trimester; 0週~13週6日) が安全かはわかっていませんでした。そこで著者らは後ろ向きコホート研究を行いました。対象は 2003年4月27日~2015年3月4日までに出産ないし死産した母子です。16歳未満、50歳以上、20週以前の出産は除外されました。1576631の母子ペアが対象となり、うち 152526ペア (9.7%) が除外されました。その結果、第1期のどの時期においても、MRIの曝露により死産や新生児死亡、胎児危険、悪性新生物、視力低下、聴力低下は増えませんでした。一方で、ガドリニウム造影は、どの時期に行ってもリウマチ性、炎症性、浸潤性の皮膚障害や死産、新生児死亡が増加しました。

MRIと奇形リスク

MRIと奇形リスク

ガドリニウム造影剤とリスク

ガドリニウム造影剤とリスク

ということで、妊娠どの時期に MRIを行っても大丈夫そうではあるけれども、可能な限りガドリニウム造影剤は避けるべき・・・というのが結論になりそうです。ガドリニウム造影剤での奇形リスクは絶対的なものではないので、造影剤で検査しなければ診断がつかなくて生命が危険、という場合はメリットがリスクを上回る可能性がありますが、非常にデリケートな臨床的判断になりそうです。

Autoimmune Glial Fibrillary Acidic Protein Astrocytopathy: A Novel Meningoencephalomyelitis. (2016.9.12 published online)

自己免疫性髄膜脳炎の原因となる新しい自己抗体がメイヨークリニックから報告されました。アストロサイトに対する自己抗体です。

抗 glial fibrillary acidic protein (GFAP) 抗体による脳脊髄炎 16例の特徴として、

・発症年齢の中央値は 42歳 (21-73歳)

・性差はない

・頭部MRIでは脳室周囲に血管に沿った線状の造影効果 (linear perivascular enhancement) がみられる。

・頭痛、亜急性脳症、視神経乳頭炎、脊髄炎、姿勢時振戦、小脳失調が主な臨床症状

・髄液での炎症性変化が 93%にみられる

・悪性腫瘍が 3年以内に 38%にみつかる。内訳は前立腺及び胃食道の腺癌、骨髄腫、メラノーマ、消化管カルチノイド、耳下腺多形性腺腫、奇形腫であった。

・高用量ステロイドに反応するが、長期の免疫抑制なしでは再発しやすい傾向にある

というのがあるそうです。頻度としては抗 Yo抗体と同じくらい検出されるそうですから、決しては少なくないですね。MRIでの脳室周囲の線状の造影効果は lymphomatoid granulomatosisなどを思い起こさせますが、この髄膜脳脊髄炎も鑑別に挙げなければいけないというのは覚えておこうと思います。

Cheyne-Stokes Respiration, Chemoreflex, and TicagrelorRelated Dyspnea. (2016.9.8 published online)

Ticagrelorを脳卒中の急性期治療で用いた場合、呼吸苦での内服中断が 1.4%にみられるという論文を以前紹介したことがあります

今回著者らは、心臓収縮能・拡張能が保たれ、呼吸機能が正常で動脈血ガス分析が正常であったにも関わらず、ticagrelor (商品名ブリリンタ) 内服で持続する呼吸苦を訴えた患者に 24時間心肺モニタリングをした結果チェーン・ストークス呼吸が検出された症例を報告しました。Ticagrelorを clopidogrelに変更後、呼吸苦は消失し、呼吸パターンも正常化しました。同様の症例はほかに 3例あったそうです。

ticagrelorと心肺モニタリング

ticagrelorと心肺モニタリング

呼吸機能検査や血液ガス分析で異常が見つからないというのは怖いですね。Ticagrelor内服中の方が呼吸苦を訴えた場合の鑑別として、知っておかなければいけないと思いました。

Development of Interstitial Lung Disease after Initiation of Apixaban Anticoagulation Therapy (2016.4.15 published online)

NOACs内服中の間質性肺炎の報告はいくつかあります。国立循環器病研究センターから、アピキサバン内服中の間質性肺炎のサーベイランスについて報告されました。約 870名内服して 4名 (約 0.45%) が間質性肺炎を発症したそうです。発症者は全例高齢で腎機能障害のある日本人男性で、非弁膜症性心房細動のため内服していました。4名中 3名は喫煙者で、3名には肺疾患の既往がありました。呼吸苦は 3名では薬剤開始 1週間のうちに始まり、1名は 90日で始まりました。全例 mPSLパルス療法を受け、3名は人工呼吸器を要しました。2名は改善しましたが、2名は呼吸不全で死亡しました。1名は血中濃度が測定されており、390 ng/ml (健常者では ~130 ng/ml) でした。著者らは、高齢でハイリスクの患者にアピキサバンを開始するときは、呼吸機能を慎重にモニターする必要があるとしています。

考察に、日本のサーベイランスでは、2016年2月時点でアピキサバン 49名、リバロキサバン 100名、ダビガトラン 68名に間質性肺炎が報告されているそうです。いずれも処方機会の多い薬剤ですので、気をつけようと思いました。

The antibody aducanumab reducesplaques in Alzheimer’s disease. (2016.8.31 published online)

とても話題になった論文。アルツハイマー病のアミロイドβに対する治療は行き詰まっている中で、aducanumabが用量依存的にアミロイドβを減らし、進行を遅らせたというのは、画期的な結果でした。これまでアミロイドβに対するモノクローナル抗体が失敗続きだったことについて、著者らは抗体が脳の標的蛋白質に結合する能力が不足していたことや、患者選択が悪かったからではないかと推測しています。論文内容自体は、2015年3月の国際会議で発表されたのとほぼ同じだと思うので、それを纏めたブログを御覧ください。

この論文は画期的ではありますが私は 2点ほど懸念しています。一つは副作用で、10 mg/kg群では、32人中 10人 (31%) が副作用で治療を中断しています (プラセボ群では 10%)。最も多かったのは ARIA (血管原性脳浮腫 (アミロイド関連造影異常、amyloid-related imaging abnormality)) , 次いで頭痛です。ARIAは 10 mg/kg群の 47%でみられました。

もう一つは、データそのものについてです。Aducanumabがアミロイドβを排除してくれる抗体なので、用量依存的にアミロイドプラークが減少するという figure 2 a-cの結果は納得できます。しかし、認知機能を評価する CDR-SB (figure 3a) の変化については違和感があります。Aducanumabの用量が増えるに従って、認知機能の低下が直線的に抑制されるということはありうるのでしょうか。認知機能には多数の要因が関与してくるので、もっと複雑な振る舞いをするのではないかという気がしますけれど・・・。あと、MMSEのデータ (figure 3b) で、 52週後の MMSEの変化はプラセボ -3点、aducanumab 6 mg/kg群で -2点程度なのですが、臨床的に MMSEが 1点違うのは誤差のようなもので、ほとんど効果は実感できないと思います。

figure 2

figure 2

figure 3

figure 3

ということで、期待はしているけれど、第 3相試験の結果を見るまでは、手放しでは喜べないなと思っています。

Worldwide Thyroid-Cancer Epidemic? The Increasing Impact of Overdiagnosis (2016.8.18)

検査法の進歩に伴うと推測される甲状腺癌の過剰診断が近年問題となっています。この論文の図を見ると、ここ 20年間でいかに甲状腺癌が増えているか良くわかります (特に韓国)。ただ、甲状腺癌と診断された数が著増しても、死亡自体は増えておらず、見つける必要のなかった癌 (放置してもほとんど進行しない癌) を見つけている可能性があります。論文では 2ヶ所福島に触れられた部分があり、特に結語の “Finally, the enormous increase in thyroid-cancer incidence in South Korea subsequent to opportunistic ultrasonography-based screening sends a strong warning about data interpretation in the context of large-scale after radiation exposure from exceptional events like the nuclear accident in Fukushima.” というメッセージは重要だと思います。

thyroid-cancer

thyroid-cancer

原発事故後の福島でのスクリーニング検査についてですが、検査法の進歩のため甲状腺癌自体が過剰診断されるようになってきている中、過去との比較すると著増してしまうのが目にみえてしまうので、原発事故と関係ない地域との比較が大事なんですが、実際そうされていないのでなかなか解釈が難しいですね。

この論文とは関係ありませんが、甲状腺疾患についてのまとまった総説が 2016年8月29日に出ていて勉強になります。

MRI criteria differentiating asymptomatic PML from new MS lesions during natalizumab pharmacovigilance  (2016.8.16 published online)

多発性硬化症に対する免疫抑制療法の進歩に伴い、副作用としての進行性多巣性白質脳症 (PML) が問題となってきています。特にリスクの高い薬剤がナタリズマブです。PMLは多発性硬化症と同じく白質を主座とする疾患なので、発見が遅れがちです。

そこで、著者らは多発性硬化症と PMLを鑑別するための MRI基準を作成しました。点状の T2病変、皮質灰白質病変、傍皮質 (juxtacortical)白質病変、灰白質と白質に隣接し向かう不明瞭あるいは混在した病変、病巣サイズ 3 cm以上、造影増強効果あり、は 全て PMLを示唆しました。局所様病変 (local lesion appearance)、脳室周囲の病変は多発性硬化症の新規病巣を示唆しました。多変量モデルでは、点状の T2病変、皮質灰白質病変で PML、局所様病変、脳室周囲の病変で多発性硬化症の新規病巣とすると、感度 100%, 特異度 80.6%でした。

PMLと多発性硬化症の鑑別

PMLと多発性硬化症の鑑別

Discontinuing disease-modifying therapy in MS after a prolonged relapse-free period: a propensity score-matched study. (2016.6.13 published online)

多発性硬化症では、再発を抑えるためインターフェロン製剤などの疾患修飾薬を用います。しかし長期間再発がない患者で、疾患修飾薬を中止して良いかはよくわかっていません。

そこで、著者らは 5年以上再発がない患者を対象として propensity score-matchingを用いて研究を行いました。その結果、薬剤を中止した患者と継続した患者では、再発するまでの期間に有意差はありませんでしたが、障害 (disability) が進行するまでの期間は、中止者で有意に短いという結果でした。

Intensive Blood-Pressure Lowering in Patients with Acute Cerebral Hemorrhage (2016.6.8 published online)

脳梗塞急性期は脳循環を保つため血圧はあまり下げないように治療します。一方で、脳出血の場合は複雑です。血圧が高いほうが脳循環は維持されるでしょうが、その分出血には悪影響になるかもしれません。どのくらいの血圧で管理するかは議論があります。

著者らは、血腫の容積 60 cm3未満、GCS 5点以上の患者 1000名を対象に、収縮期血圧を 140~179 mmHgで管理した通常治療群と、収縮期血圧 110~139 mmHgで管理した強化治療群に分けて評価しました。ベースラインの収縮期血圧は約 200 mmHgでした。その結果、90日後の死亡や後遺症は両群間で差はありませんでした。患者振り分け 72時間以内に起こった治療に関連した有害事象は、通常治療群 1.2%, 強化治療群 1.6%でした。振り分け 7日以内の腎有害事象は、通常治療群 4.0%, 強化治療群 9.0%でした。

90日後のmRS

90日後のmRS

脳出血急性期に血圧を下げるのは、それほどガチにならなくても良さそうということですね。

Efficacy of Folic Acid Therapy on the Progression of Chronic Kidney Disease (2016.8.22 published online)

慢性腎臓病 (CKD) の治療は RAS系を主体とした降圧療法が一般的ですが、十分に効果があるとは言えません。高ホモシステイン血症が悪影響とされますが、ビタミンB12と葉酸を内服したスタディーでは効果がないばかりかむしろ有害でした。著者らはビタミンB12なしで葉酸のみだったらどうかということを考えました。

そこで著者らは 150104名の中国人 (平均 60歳) をエナラプリル 10 mg/日のみ内服した群と、エナラプリル 10 mg/日と葉酸 0.8 mg/日を内服した群に分け、RCTを行いました。中央値 4.4年間追跡した結果、葉酸を追加した群では、腎障害の進行が有意に抑制されました。

この研究のみで結論を出すのは早計ですので、今後の追試の結果を待ちたいと思います。

Comparison of sensitivity and specificity among 15 criteria for chronic inflammatory demyelinatingpolyneuropathy. (2013.12.11 published online)

慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の診断基準はたくさんありますが、どの精度が最も良いか直接比較した研究はありません。そこで著者らはレトロスペクティブにカルテを用いて比較を行いました。その結果、最も感度・特異度が良かったのは EFNS・PNS診断基準でした。感度/特異度は、EFNS・PNS definiteで 73.2/90.8%, EFNS・PNS probableで 78.5/86.8%, EFNS・PNS possibleで 87.5/68.4%でした。

Drugs That May Cause or Exacerbate Heart Failure: A Scientific Statement From the American Heart Association. (2016.9.11 published online)

心不全を増悪させる原因となりうる薬剤の一覧表が、AHAから論文化されています。神経疾患に用いる薬としては、カルバマゼピン、プレガバリン、三環系抗うつ薬、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、エルゴタミン (現在では既に使わない薬ですが・・・) などがリストアップされていました。

Unilateral Gottron Papules in a Patient Following a Stroke: Clinical Insights Into the Disease Mechanisms and Pathophysiology of Cutaneous Dermatomyositis (2016.9.1 published online)

症例は 60歳代の皮膚筋炎の女性。脳卒中のため右片麻痺だったのですが、その 2年後に左手にだけ Gottron徴候が出現しました。自己炎症で働く接着分子の CD44v7は、機械的な伸展で誘導され、osteopontinとともに皮膚筋炎の皮膚に Gottron徴候を生み出すそうです。著者らは、麻痺のため右側を使わなかったので、右手には Gottron徴候がなかったのではないかと推測しています。

興味深い仮説とそれを支持する症例報告ですね。

Patient outcomes up to 15years after stroke: survival, disability, quality of life, cognition and mental health. (2016.7.22 published online)

脳卒中後、15年後までの予後についての報告です。2625名の患者のうち、15年後まで生存していたのは、21%でした。生存者の 61%が男性で、脳卒中発症年齢の中央値は 58歳、33.8%が自宅で生活していました。15年目の時点で、認知機能障害が 30%、鬱が 39.1%、易怒性が 34.9%にみられました。

Trial Reporting in ClinicalTrials.gov — The Final Rule (2016.9.16 published online)

臨床研究は ClinicalTrials.govに登録して行うのが国際的に一般的です。その最終ルールが公開されたようです。

University of Tokyo to investigate data manipulation charges against six prominent research groups (2016.9.20)

東京大学での研究不正疑惑。Science誌でもニュースとして取り上げられました。

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DJキンさまの感染ラジオ!

By , 2016年9月14日 4:44 PM

DJキンさまの感染ラジオ! Season 1 感染・免疫・微生物編 (金井信一郎監修、リーダムハウス)」を献本いただきました。散りばめられたギャグの数々が面白くて、一気に通読してしまいました。

本書は細菌であるアシネトバクテロビブリオテウス・エンテロクレブシェリキア 3世がオネェ言葉で感染症についてラジオで語るという斬新な企画。感染とはなにか、免疫にはどのようなものがあるか、グラム染色が意味するものは・・・といった基本的なことから、わかりやすく解説してあります。グラム染色で何故青く染まるか、赤く染まるかが即答できない方、代表的な DNAウイルスや RNAウイルスが答えられない方は、この本を読んどいた方が良いんじゃないかしら~、あら~オネェ言葉が移っちゃったわ、あはは~のは~

新人ナースから、学生時代の知識が遠い過去になってしまったオジサン医師まで楽しめる、肩の凝らない感染対策入門書です。

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メキメキ上達する 頭痛のみかた

By , 2016年8月30日 4:00 PM

メキメキ上達する 頭痛のみかた (Elizabeth W. Loder / Rebecca C. Burch / Paul B. Rizzoli著, 金城光代/金城紀与史訳、メディカルサイエンスインターナショナル)」を献本頂きました。

この本は、国際頭痛分類第3版β版に準拠しています。従って、国際頭痛分類第3版β版でどのように頭痛が分類されているか知っていると読みやすいです。下記のサイトで、予め分類をざっと眺めておくと良いでしょう。

日本頭痛学会:国際頭痛分類第3版beta版日本語版

一般的な頭痛の入門書では、患者の多い一次頭痛 (緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛のような機能性頭痛) の内容が厚い反面、二次性頭痛 (多くは器質的疾患が原因の頭痛) の記載は少ない傾向にあります。一方で、救急の教科書ではくも膜下出血や髄膜炎を中心とした二次性頭痛についての記載は多いですが、どうしても緊急性の高い二次性頭痛が主体となってしまいます。本書は一次性頭痛はもちろんのこと、頭痛の入門書や救急の教科書であまり扱わないような二次性頭痛まで網羅的に扱っているので、頭痛診療の穴をなくす意味でとても役に立つと思います。私は届いた時にざっと目を通しましたが、もう一度精読したいと思っています。

初学者には少しハードルが高いかもしれませんが、「片頭痛の診断なら大体自信を持って出来る」というくらいのレベルの方にとてもお勧めの本です。

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Bagpipe

By , 2016年8月27日 8:45 AM

バグパイプ内で増殖した菌で管楽器奏者が死亡したという報道がありました。

バグパイプ内の菌で男性死亡? 管楽器奏者に警鐘

AFP=時事 8月24日(水)6時52分配信

AFP=時事】英国で、バグパイプの内部に繁殖していた菌を吸い込み続けた男性が死亡した事例が報告された。報告を行った医師らは管楽器奏者に対し、楽器を定期的に掃除するよう呼び掛けている。

英医学誌「ソラックス(Thorax)」に掲載された記事によると、死亡した61歳の男性は毎日バグパイプを演奏しており、7年間にわたり乾性のせきと息苦しさに悩まされていた。

だが、バグパイプを自宅に置いてオーストラリアへ3か月間旅行に出掛けた際だけ、症状が急速に緩和されたという。

これを受けて主治医らがバグパイプ内を調べたところ、湿気のこもった留気袋や音管、マウスピースに、多様な菌類が繁殖していたことが分かった。

男性は治療のかいなく2014年10月に死亡。検視の結果、肺には重度の損傷が見つかった。

菌類を吸い込んだバグパイプ奏者の死亡例は、この男性が初めてとみられる。男性が患っていた過敏性肺炎の原因は、この菌だった可能性があるという。

記事では、「管楽器奏者は、楽器を定期的に清掃することの重要性と、その潜在リスクについて認識する必要がある」と警鐘を鳴らしている。【翻訳編集】 AFPBB News

実際の論文は下記になります。

Bagpipe lung; a new type of interstitial lung disease?

バグパイプの中から検出された真菌は、”Paecilomyces variotti, Fusarium oxysporum, Penicillium species, Rhodotorula mucilaginosa, Trichosporon mucoides, pink yeast and Exophiala dermatitidis” でした。論文にある figureをみると、「うわーっ、やばい」という感じが伝わってきます。

bagpipe

bagpipe内の真菌

ちなみに、今回検出された菌の多くは、過敏性肺炎の起因菌としてこれまで報告されているもののようです。そのため、これらの真菌を慢性的に吸入していたことが、過敏性肺炎の引き金になったのではないかと推測されています。

論文の考察には、サクソフォン奏者トロンボーン奏者での真菌による過敏性肺炎の症例が引用されています。サクソフォンの症例では、”Ulocladium botrytis” と “Phoma sp” がサクソフォンから検出され、これらの真菌に対する血清特異的抗体が陽性でした。トロンボーンの症例では、たくさんの “Mycobacterium chelonaeabscessus group” 、”Fusarium sp (真菌)”、それとわずかな “Stenotrophomonas maltophilia” 及び大腸菌が培養されたようです。トロンボーンの報告中に、さらに 7名の金管楽器奏者の楽器からの培養結果が表として纏められていて、その菌の多さにビックリします。

金管楽器と菌

金管楽器と菌

こういう報告を読むと、金管楽器が菌管楽器とならないように、持ち主はきちんとした手入れが大事ですね。ちなみに、私の知り合いは、”bagpipeじゃなくて bugpipeだな” って言っていました。誰ウマ。

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最近の医学論文

By , 2016年8月18日 6:51 PM

例によって、最近の論文が中心の備忘録です。

Bortezomib Treatment for Patients With Anti-N-Methyl-d-Aspartate Receptor Encephalitis

抗NMDA受容体脳炎は、治療に難渋することが少なくないが、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ (商品名:ベルケード) が奏功した 2例の報告。

症例 1は 30歳代前半の黒人女性。卵巣奇形腫がみつかり手術、それに加えて血漿交換、リツキシマブ、シクロフォスファミド、ステロイド大量療法で改善なし。7ヶ月人工呼吸器管理となっていた。CD19陽性細胞は消失。血漿交換、ステロイド、免疫グロブリン大量療法を受けた後、わずかに改善した。ボルテゾミブ 1.3 mg/m2を 1, 4, 8, 11日目に皮下注射 (アシクロビル, cortimoxaoleを併用) したところ、忍容性は良好で有害事象もなかった。数カ月後、症状や抗体価は著明に改善し、軽度の高次脳機能障害のみ後遺症として残存した。

症例 2は、20歳代前半の白人女性。卵巣奇形腫はみつからなかった。血漿交換をうけて改善し、職業訓練に復帰することができた。しかし、20ヶ月後、再発。血漿交換及びリツキシマブは効果がなかった。CD19陽性細胞は消失。ステロイド、血漿交換、免疫グロブリン大量療法は効果がなかった。ボルテゾミブは症例 1と同じレジメンで使用したところ、忍容性は良好で、有害事象もなかった。後遺症として軽度の記憶障害などを残すのみで著明に改善し、再発もない。

以下個人的な感想。抗NMDA受容体脳炎について、2011年の Lancet Neurologyに書かれた総説の治療戦略はよくまとまっているけれど、これほど効果がありそうなら、将来的にはボルテゾミブも加わってくるかもしれない。その前に、きちんとした臨床試験が必要だけど。

A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis.

自己免疫性脳炎を起こす疾患と自己抗体や診断基準がまとまっていて読みやすい。ただ、figure 1の診断アルゴリズムは、各種自己抗体の結果がでるのに数週間かかることを考えると、臨床的には使えないかもしれない。自己抗体とそれに対応する疾患 (table 1) は使えそうなので備忘録として貼っておく。

自己抗体

自己抗体

International consensus guidance for management of myasthenia gravis

重症筋無力症の “international consensus guidance”。エキスパートの意見のためかガイドラインではなくてガイダンスという表現が使われている。「寛解」などいくつかの用語の定義が 示された後に、治療法が箇条書きで書かれている。重症筋無力症が heterogeneousであるためか、薬剤の投与量には言及されていないが、治療戦略を立てる上での基本となることが纏まっている。

Lack of KIR4.1 autoantibodies in Japanese patients with MS and NMO

多発性硬化症や視神経脊髄炎に対する KIR 4.1抗体について、日本からの報告。この抗体は、当初すごく注目されたけれど、再現性が示されていない。日本人を対象に ELISAと LIPS (luciferase immunoprecipitation system) で調べたけれど、やはり使えなさそうだという結論。

KIR4.1

KIR4.1

KIR4.1については、2016年春の講演で少し触れたので、その時のスライドを貼っておく。

多発性硬化症 スライド1

多発性硬化症 スライド1

多発性硬化症 スライド2

多発性硬化症 スライド2

多発性硬化症 スライド3

多発性硬化症 スライド3

Multicentre comparison of diagnostic assay: aquaporin-4 antibodies in neuromyelitis optica

視神経脊髄炎関連疾患における抗アクアポリン4抗体の assay法についての論文。診断精度の問題で、新ガイドラインでは cell-based assayを推奨しているけれど、specialist centerでは免疫組織化学法やフローサイトメトリーも同じくらいだという結果。Table 2に assay法の一覧と、figure 5に診断精度の図が纏まっている。

診断精度の図

診断精度の図

Progressive Brain Atrophy in Super-refractory Status Epilepticus

超難治性てんかん重積患者に伴う脳萎縮を調べるため、発症 2週間以内に撮った MRIと、それから 1週間以上あけて 6ヶ月以内に撮った MRIを比較した。方法として、5 mmスライスのFLAIR画像で脳室と脳の比 (ventricular brain ratio; VBR) を調べた。Inclusion criteriaを満たしたのは 19名であり、てんかん発作を抑制するために中央値 13日間の麻酔薬管理を必要とした。VBRの変化率の中央値は 23.3%、脳萎縮は麻酔薬の投与期間に相関していた。

Psychotic disorders induced by antiepileptic drugs in people with epilepsy

抗てんかん薬には、副作用として精神症状 (抗てんかん薬誘発の精神症状 antiepileptic drug induced psychotic disorder; AIPD) が出現するものがある。著者らは、どのような患者で精神症状をきたしやすいかを調べた。てんかんでも精神症状をきたすことがあるので、抗てんかん薬による精神症状と診断するためのアルゴリズムは figure 1、精神疾患の診断基準は table 1の通りとした。その結果、抗てんかん薬誘発の精神症状は、女性、側頭葉病変、レベチラセタムの使用で有意に多かった (特にレベチラセタムのオッズ比は 21.676!)。カルバマゼピンは内服により逆に精神症状が減少した。

抗てんかん薬と精神症状

抗てんかん薬と精神症状

レベチラセタムは初回から治療量で使える薬剤で、薬剤相互作用や皮疹などの副作用が少なく、使われる頻度が非常に増えているけれど、精神症状はてんかんを治療する医師は絶対知っておかないといけない副作用だと思う。

Randomized Trial of Thymectomy in Myasthenia Gravis.

対象は 18歳~65歳、MGFA分類 II-IV, 発症 5年以内で抗AChR抗体陽性の重症筋無力症患者。介入は胸腺切除術+プレドニゾンの隔日内服で、対照はプレドニゾンの隔日内服。主要アウトカムは、 3年後の QMGスコア (ブラインド化して評価) と 3年間に要したプレドニゾンの平均用量 (time-weighted)。

介入群 (胸腺切除+プレドニゾン) では、対照群 (プレドニゾン) と比べ、QMGスコアが低く (6.15 vs. 8.99, P<0.001)、プレドニゾンの平均投与量も少なかった (隔日 44 mg vs. 60 mg, P<0.001)。また、介入群の方が免疫抑制剤アザチオプリンを必要とした症例が少なく (17% vs. 48%, P<0.001)、増悪による入院も少なかった (9% vs. 37%, P<0.001)。治療による合併症に有意差はなかった。

主要アウトカム

主要アウトカム

抗AChR抗体陽性の重症筋無力症で胸腺切除術を行うのは一般的だが、実はこの論文が、初めて行われた RCTであることを知って驚いた。75年前、胸腺腫のない重症筋無力症に対して胸腺切除術の効果が報告された後、観察研究はいくつもあるが、 RCTは行われていなかったらしい。抗AChR抗体陽性の重症筋無力症に胸腺切除術が有効であるという RCTでのエビデンスを示した点で、歴史的な論文になると思う。なお、抗MuSK抗体陽性の重症筋無力症は別なので要注意。

Spt4 selectively regulates the expression of C9orf72 gene sense and antisense mutant transcripts

ALSと C9orf72の話は、これまで何度もブログで紹介した。転写延長因子 Spt4の阻害により、C9orf72のセンスとアンチセンスの伸長した転写産物や転写された 2量体ペプチド (DRP) を減少させ、動物モデルでは神経変性を抑えることができた。Spt4のヒトオルソログである SUPT4H1のノックアウトにより、患者細胞でやはりセンスとアンチセンス RNA凝集体の産生低下と DRPタンパク減少がみられた。

この論文の通りだとすると、SUPT4H1は C9orf72異常の ALSでは治療法開発のターゲットの一つはなるのかもしれない。それ以外の原因による ALSでどうなのかはわからないけれど (日本人では C9orf72の GGGGCC反復伸長による ALSは少ない)。

Enteroviral Postencephalitic Parkinsonism With Evidence of Impaired Presynaptic Dopaminergic Function

日本脳炎、セントルイス脳炎、西部ウマ脳炎、東部ウマ脳炎、ウエストナイル熱、EBウイルス、インフルエンザA型、そのほかコクサッキーBやエコーウイルスのようなエンテロウイルス後に起こることが報告されている。これらのウイルスは、脳皮質、視床、脳幹、脊髄を侵す一方で、黒質を好んで侵すことも報告さている。黒質病変による脳炎後パーキンソニズムは、これまで 1915~1928年に流行した嗜眠性脳炎 (von Economo脳炎) で報告されてきた。

今回、著者らはエンテロウイルスによりレボドパ反応性のある脳炎後パーキンソニズムをきたした症例の MRIや PETを評価し報告した。初回の頭部MRIでは、脳幹のびまん性の異常信号がみられたが、1年後に撮像した MRIでは、黒質の非対称性 (右優位) の破壊的変化がみられた。Fluorine F 18–labeled fluorodopa PETでは、線条体に持続性の取り込み低下がみられた。著者らによると、脳炎後パーキンソニズムでドパミン系のシナプス前機能の障害を証明した研究は、この論文が初めてである。

Time- and Region-Specific Season of Birth Effects in Multiple Sclerosis in the United Kingdom

生まれた月と多発性硬化症の発症に相関があるというイギリスでの研究。日照との関連が推測されている。

誕生月と多発性硬化症

誕生月と多発性硬化症

多発性硬化症の再発の季節性については、これまで色々と指摘されている (以前講演で使ったスライドを下に示す)。生まれた月まで関連が・・・というのが、もし本当ならばびっくり。

多発性硬化症と緯度

多発性硬化症と緯度

Stroke outcomes with use of antithrombotics within 24 hours after recanalization treatment

今回著者らは、再灌流療法後の抗血栓療法を 24時間以内に行う早期開始 (early intiation) と 24時間以降に行う通常管理 (standard management) を前向き組み入れ試験で比較した。抗血栓療法をどのように行うかは脳卒中治療医に任せたが、多くの症例で初回投与時には loading dose (アスピリン 300 mg) が用いられた (抗血小板薬 2種類併用や抗凝固薬の使用もあり)。

患者の内訳は、経静脈治療 34%, 経動脈治療 (血管内治療) 32%, 経静脈+経動脈治療 34%であった。早期開始群では全出血は少なかったが、症候性出血や機能予後 (mRS) は早期開始と通常管理で差はなかった。再灌流 12時間以内の超早期開始では、出血性変化のオッズ比の増加はなかった。再灌流の方法による臨床的アウトカムに差はなかった。

再灌流と抗血栓療法

再灌流と抗血栓療法

現在、血栓溶解療法を行った後、基本的には 24時間は抗血栓療法を行わないのが一般的で、日本のガイドラインにもそのように記されている。一方で、抗血小板薬を内服をしている患者に血栓溶解療法をした方が、内服していなかった患者に比べて出血リスクは高くなるが、機能予後は良かったという報告もある。今回の研究は、再灌流療法後に抗血栓療法を始めるタイミングについて、一石を投じるかもしれない。ただ、発症から治療開始までの時間や心房細動の有無など大事な項目でベースラインの群間に差があるのが気になるところ。

Predictive value of ABCD2 and ABCD3-I scores in TIA and minor stroke in the stroke unit setting.

一過性脳虚血 (TIA) 後の脳卒中リスクを予測ツールとして、ABCD2 scoreなどは現在広く受け入れられており、一般の外来や救急外来では評価は確立している (scoreについての日本語解説はこちらを参照)。今回、脳卒中ケアユニット (stroke care unit; SCU) に入院した発症 24時間以内の TIAや minor stroke (NIHSS 4点未満) 患者を対象に前向きコホート研究で ABCD2や ABCD3-Iを評価した。ABCD2 scoreの感度・特異度は、過去のメタアナリシスと似た結果だった。個々のスコアをみると、年齢 (A)、血圧 (B)、糖尿病 (D) は早期あるいは 3ヶ月後の脳卒中と相関しなかった。一方で、臨床症状 (C)、症状持続時間 (D)、同側の頸動脈狭窄 (D)、拡散強調像高信号域 (D) は SCU settingにおいて重要であった。

ABCD3-Iと個々のコンポーネント

ABCD3-Iと個々のコンポーネント

Human neural stem cells in patients with chronic ischaemic stroke (PISCES): a phase 1, first-in-man study.

不死化した神経幹細胞 CTX03を用いて、オープンラベルで安全性と忍容性を調べた第 1相試験。CTX03は、中大脳動脈閉塞モデルのラットでは、用量依存的な運動感覚機能の改善が確認されている。

対象は NIHSS 6点以上、mRS 2-4点、脳梗塞発症から 6~60ヶ月経った 60歳以上の男性。頭蓋骨に穴を開け、脳梗塞と同側の被殻に投与した。臨床データと頭部画像を 2年間追跡した。主要評価項目は安全性 (合併症と神経学的変化) とした。

13名の男性 (平均 69歳、 60-82歳) が組み入れられ、 CTX-DPの投与を受けた。治療前の NIHSSの中央値は 7点 (6-8点) であり、脳卒中からの平均経過期間の平均は 29ヶ月 (SD 14) だった。3名の男性が皮質下梗塞のみで、 7名は右大脳半球の梗塞だった。免疫学的あるいは投与細胞による有害事象はなかった。その他、手技や併存疾患による有害事象があった。刺入部位付近の FLAIR高信号が 5名で認められた。2年後の NIHSSの改善は 0-5点 (中央値 2点) だった。

以下、個人的感想。慢性期脳梗塞に対する幹細胞治療は、2016年6月2日 Stroke誌に骨髄由来培養幹細胞 SB623の第 1/2相試験が発表されたばかりで、競争が過熱している。SB623も CTX03も baselineの NIHSSが 一桁後半で、改善効果は 2点程度という点は、単純比較はできないけれど効果は似ている印象を受ける。注意しなければいけないのは、両試験とも評価者がブラインド化されていない点である。オープンラベル試験で評価項目が NIHSSのようにソフトエンドポイントだと、結果に臨床試験担当者や被験者の意図が混入しやすい。また、いずれの製剤も頭蓋骨に穴を開けて培養細胞を注入しなければならず、それなりに侵襲はある。

一方で、本邦では静脈投与可能な製剤の治験が行われている。以前、2009年に本望先生の講演を聴いた時は効果としては期待できそうな印象を持ったが、ようやく形になってきているようだ。この治療のネックは患者本人から骨髄を採取しなければならない点だろう。こちらは、SB623や CTX03と異なり、急性期~亜急性期の脳梗塞が対象のようだ。

私は脳梗塞に対する幹細胞治療については全然詳しくないけれど、いくつかある方法のなかでネックとなってくるのは、(1) どのような細胞を用いるか (その都度患者由来の細胞から培養して作製するより、既成品の方が便利)、(2) どのような投与経路とするか (経静脈投与が望ましい)、(3) 薬価、なのではないかと思う。

NICE recommends ticagrelor with aspirin for three years post-MI

イギリスでは心筋梗塞治療のファーストラインとして、アスピリンに加えて ticagrelor 90 mg 1日 2回を 12ヶ月追加し、その後アスピリンを継続する施設が多い。NICEの新しいガイダンスの草稿では、12ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある患者や心筋梗塞や脳卒中をさらに起こすリスクの高い状態が続く患者に対して、アスピリンに加えて ticagrelor 60 mg 1日 2回を 3年間続けることを推奨している。Ticagrelor 90 mgと 60 mgの間に中断が起きないようにすべきである。3年以上のアスピリンとの併用は、効果や安全性についてのデータが不十分であり推奨しない。

ちなみに、ACCとAHAも 2016年に共同で、冠動脈疾患後の抗血小板薬 2剤併用についてのガイドラインを出しており、JACCCirculationに掲載されている。

Recommendations for the Management of Strokelike Episodes in Patients With Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis, and Strokelike Episodes

ミトコンドリア脳筋症の一つである MELASの脳卒中様症状についての総説。Arginineや citrullineによる治療などについて解説している。いずれも RCTは行われていないが、著者らは次のような治療を推奨している (文献的根拠に乏しく、expert opinionという印象)。

<Short-term Therapy>

脳卒中様発作に対しては、arginine hydrochlorideを loading doseで静脈内投与すべきである。Arginineの至適用量は不明だが、0.5 g/kgを症状発症 3時間以内に急速投与することが推奨される。脳卒中様発作が見られた時、画像診断が有用だが、そのために arginineの投与が遅れるべきではない。脳循環を保つため生理食塩水を急速投与すべきで、血糖値が正常なら代謝を正常化させるために可能な限り早くブドウ糖を含む輸液を投与すべきである。精神症状がある場合は、非痙攣性てんかん重積ではないか、脳波を評価すべきである。なぜなら、MELASでは精神症状の原因としてしばしばみられるからだ。

<Ongoing Therapy>

Arginineを急速投与した後、0.5 g/kgの 24時間持続投与を 3-5日間続ける。Arginineの維持量をどの程度続ければよいかの臨床的エビデンスはないが、ミトコンドリアの専門家の多くは少なくとも 3日間は続けることを推奨している。臨床症状が 3日以上続くようなら、卒中が進行しているか画像評価し、5日間 arginine治療を続けることを検討すべきである。嚥下の安全性が確認され、経口摂取ができそうなら、静脈内投与と同量 (1-to-1 dose) の L-arginine内服に移行するかもしれない。

<Prophylaxis>

MELASの患者が最初の卒中を経験したら、脳卒中様発作を減少させるため、予防的に arginineを投与すべきである。経口で投与量 0.15~0.30 g/kg/day 分3が推奨される。

Climate influence on Vibrio and associated human diseases during the past half-century in the coastal North Atlantic

温暖化に伴い、北大西洋や北海でビブリオが増えている。報道では生牡蠣を介した感染が懸念されている。日本の生牡蠣はどうなんだろう・・・。

Takayasu’s Arteritis

知り合いの医師らの報告が、New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載された。凄い!

Gastric Anisakiasis

日本からの報告が、同じく New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載されたようだ。アニサキスの症例報告といえば、2013年7月18日に紹介した論文が面白かった。この論文も、figureに著者の胃にいるアニサキスの写真が載っていて有名 (論文内容の日本語紹介はこちら)。

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最近の医学ニュース

By , 2016年7月20日 1:08 PM

最近出た医学論文や医学ニュースは、新聞を読む感覚でサラッとチェックだけしていますが、メモしておかないと忘れてしまうので、備忘録として記録しておきます。

United States Health Care Reform 

なんと、オバマ大統領が JAMAに投稿した論文。オバマケアで無保険者が減ったと言っています。一人で書いたとは思えないのになぜか単著論文で、かなりの部分貢献したと思われる人は、”Additional Contributions: I thank Matthew Fiedler, PhD, and Jeanne Lambrew, PhD, who assisted with planning, writing, and data analysis. I also thank Kristie Canegallo, MA; Katie Hill, BA; Cody Keenan, MPP; Jesse Lee, BA; and Shailagh Murray, MS, who assisted with editing the manuscript. All of the individuals who assisted with the preparation of the manuscript are employed by the Executive Office of the President.” と書かれています。計画者、書いた人、データ解析した人がちゃんといるみたいですね。また、COIに関しては、ホワイトハウスのサイトを見てくれとか、こっちも面白いです。友人と、「査読者が、プーチン、習近平、金正恩だったらどうする?」とか盛り上がりました。安倍総理が査読だと、そのままアクセプトされそうですね。トランプだったらどうなんでしょう (^^;

ちなみに、日本では天皇陛下が Akihitoの著者名で Science誌に投稿されています

(2016.7.21追記)

実は、オバマ大統領はこれまでも一流誌にたくさん論文を発表していたらしいです。

Association of Traumatic Brain Injury With Late-Life Neurodegenerative Conditions and Neuropathologic Findings

意識消失を伴う外傷性脳損傷は、Lewy小体の蓄積、パーキンソニズムとパーキンソン病のリスクと関連がありましたが、認知症、アルツハイマー病、老人斑、神経原線維変化とはありませんでした (先行研究ではアルツハイマー病との関連が指摘されています)。

なお、頭部外傷を繰り返すと chronic traumatic encephalopathy (CTE) を発症することは以前から問題視されており、ルー・ゲーリックも ALSではなくて CTEだったのではないかと言われています。こちらは、病理学的に TDP-43と tauが蓄積するようです。

頭部の外傷と神経変性疾患というテーマは、注目を集める分野となっているようです。

Traumatic brain injury history is associated with earlier age of onset of frontotemporal dementia

頭部外傷と前頭側頭葉変性症との関連を調べた研究。前頭側頭葉変性症を発症する 1年以上前に後遺症を伴わない外傷性意識消失のあった患者となかった患者を比較したところ、前者では症状出現が 2.8歳、診断が 3.2歳早かったとのことです。これだけで関連があるかどうかはなんとも言えないところでしょうが、頭部外傷と神経変性疾患の関連は本当に注目されてますね。

A Rare Cause of Myoclonus

ミオクローヌスと巣状分節性糸球体硬化症 (FGFS) を合併する action myoclonus renal failure syndrome (AMRFS) の症例。SCARB2変異が検出されたとのこと。FGFSと神経疾患の合併ですぐ思い出すのは、INF2変異を伴う Charcot-Marie-Tooth病です。昔、SNAP diagnosisしたことがあります。なぜ、FGFSが神経疾患を合併するのか、分子メカニズムはどうなっているんでしょうねぇ・・・。

Unmasking Alzheimer’s risk in young adults

最近の研究によると、アルツハイマー病のリスクを下げるために「色々なことができる」と考えられているようです。それは例えば、魚介類をきちんと摂取することだったり、きちんと運動や睡眠をとることだったりします。

Transplantation of spinal cord-derived neural stem cells for ALS: Analysis of phase 1 and 2 trials.

脊髄由来神経幹細胞の ALSに対する第1/2相試験の結果が発表されました。安全性は確認できましたが、残念ながら進行抑制効果は示されませんでした。間葉系幹細胞治療の方に期待したいです。

BrainStorm Announces Positive Top Line Results from the U.S. Phase 2 Study of NurOwn® in Patients with Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS)

ALSに対する間葉系幹細胞治療についてこれまで 2回ほど紹介してきました。

ALSに対する間葉系幹細胞治療がfast-track指定

間葉系幹細胞治療と ALS

ついに、2016年7月18日に第1/2相試験の結果が発表されたようです。記事によると、安全性と忍容性についての基準を達成し、 ALS-FRS-R rating scaleと CSF biomarkersで良い結果を示しました。

第三相試験がとても楽しみです。

Association of Environmental Toxins With Amyotrophic Lateral Sclerosis

ALSと環境汚染物質について調べたケースコントロール研究。Organochlorine
pesticides (OCPs), polychlorinated biphenyls (PCBs), brominated flame retardants
(BFRs) などの環境汚染物質の血中濃度をガスクロマトグラフィーで測定しました。その結果、ALS患者で OCP 2種類 (penthachlorobenzene; OR 2.21, cis-chlordane; OR 5.74), PCB 2種類 (PCB175; OR 1.81, PCB202; OR 2.11), BFR 1種類 (polybrominated diphenyl ether 47; OR 2.69) の血中濃度が有意に高いことがわかりました。環境汚染物質は、改善可能な ALSの危険因子かもしれないと著者らは述べています。

Meta-analysis of 375,000 individuals identifies 38 susceptibility loci for migraine

約 375000人 (患者 59674人, 対照 316078人) を対象としたメタアナリシスで、38個の遺伝子座に片頭痛リスクと関連した 44の SNPsが見つかりました。38個の遺伝子座のうち、28個は過去に報告されていなかったもので、1個は初めて Chromosome Xに同定されたものでした。引き続いてのコンピューター分析で、同定された遺伝子座は血管および平滑筋に発現している遺伝子が豊富であることがわかりました。このことは、片頭痛の血管説が優位であることと一致した結果でした。

2012年に紹介した論文と同じ雑誌に掲載されていますが、その研究と共通した著者の多い研究ですね。血管説とすると、以前から注目を集めている CSDはどう説明することになるのでしょうか。

Global and regional effects of potentially modifiable risk factors associated with acute stroke in 32 countries (INTERSTROKE): a case-control study

著者らは、脳卒中の 90%と関連する修正可能な 10個の危険因子を同定しました。この論文を紹介した CBS Newsの記事では、それぞれの危険因子を改善するとどのくらい脳卒中のリスクが下がるかをまとめています。

  • Blood pressure: 48 percent
  • Physical inactivity: 36 percent
  • Poor diet: 23 percent
  • Obesity: 19 percent
  • Smoking: 12 percent
  • Heart causes: 9 percent
  • Diabetes: 4 percent
  • Alcohol use: 6 percent
  • Stress: 6 percent
  • Lipids (blood fats): 27 percent

これらは、論文の figure 2, 3を抜き出したものですが、論文では地域別になっており、人種差がありそうなことがわかります。私は一般人向けの脳卒中予防の講演を頼まれているのですが、このようにまとめたものがあると、喋りやすいですね。

Figure 2: Multivariable analysis by region

Figure 2: Multivariable analysis by region

Figure 3: Multivariable analysis by region

Figure 3: Multivariable analysis by region

治らない病気を抱えながら、なお社会で人として生きるとは、いかなることであるのか 第1回 難治性疾患の患者として生きるということ

難病を抱えていらっしゃる方の書かれた文章です。素晴らしいので、是非読んでみてください。

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高齢者の血圧,目標値は?

By , 2016年7月7日 10:07 PM

2016年5月20日のブログで、高齢者の血圧管理についての論文を紹介しました。

最近の医学ネタ

Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years

Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT) で高齢者のサブグループを調べた研究。糖尿病のない 75歳以上の高齢者において、収縮期血圧 140 mmHg未満よりも 120 mmHg未満で管理した方が、主要な心血管イベント、総死亡は減るようだ。

高齢者の降圧については凄く議論のある分野で、ガイドラインは下げ過ぎない方向に向かっていて、この研究だけでプラクティスを変えるようなことにはならなさそう。今回は時間がなくてアブストラクトしか見てないので、時間ができたら先行研究と比較吟味したいところ。

高齢者の血圧は厳格に下げた方が良いのかどうかは迷う所ですが、週間医学界新聞の連載が SPRINTのサブグループ解析の結果を含めてわかりやすくまとめてくれていました。

ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス [第4回]高齢者の血圧,目標値は?
✓ 降圧薬開始時は「Start Low and Go Slow」,血圧の下げ過ぎには注意が必要である。
✓ 高齢者では個々の病態に合わせた治療目標の設定が必要である。状況によっては150/90 mmHg未満程度を目安としても良いと考えられる。
✓ 立位血圧の測定を忘れずに。

●SPRINT研究は適応(患者の平均BMI>27)によって,積極的治療の効果だけでなく危険性の低さも示唆している。150/90 mmHg未満を目安にしつつ,非糖尿病かつ地域生活高齢者では,積極的治療の話し合いを心掛けている。(許 智栄/アドベンチストメディカルセンター)

●高齢者では血圧が低くなるほど心血管イベントリスクが増える(Jカーブ効果)。降圧目標上限のみでなく,下げ過ぎないよう調節したい。SPRINTは衝撃的だが,1 RCTにすぎず,絶対リスク減少率は1.6%(3年間の投薬で1000人のうち16人のみ恩恵あり)。(関口 健二/信州大病院)

高齢者の降圧は、基本的にあまり頑張りすぎなくてよいという話でしょうか。

あと、総合診療 2016年6月号の 454ページに、ポリファーマシーの原因となりうる prescribing cascadeの表があったので、高血圧に関連した部分を紹介しておきたいと思います。有名なものが多いですが、カルシウム拮抗薬の便秘症は結構盲点になりやすいですね。こういうことにならないように注意しないといけません。

総合診療 2016年 6月号 特集 “賢い処方”と“ナゾ処方”

・降圧薬, 利尿薬, 血管拡張薬, オピオイド, 鎮咳薬, NSAIDs→めまい→抗めまい薬, 制吐薬

・サイアザイド系利尿薬→高尿酸血症, 痛風→アロプリノール, コルヒチン

・ACE阻害薬→咳嗽→鎮咳薬, 抗菌薬

・カルシウム拮抗薬→便秘症→下剤

「総合診療」の “賢い処方”と“ナゾ処方” 特集はなかなか面白いのでお勧めです。中でも、忽那先生の「すなわち『経口カルバペネム』という存在そのものが ”清楚系 AV女優” のような矛盾を抱えている抗菌薬なのである」という表現 (P480) は、絶品ですね。ちなみに、このフレーズを読んだ私は「俺のお気に入りの○○たんは、清楚系だもん。矛盾なんかないもん。」というクレームを忽那先生につけたのでした (^^;

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重症筋無力症と抗cortactin抗体

By , 2016年7月6日 6:06 PM

重症筋無力症 (MG) は、全身型の約 80%、眼筋型の約 50%で抗AChR抗体が陽性となり、全身型の約 5%で抗MuSK抗体が陽性となります。抗AChR抗体陰性の重症筋無力症を従来 sero-negative MGと呼んでいましたが、抗MuSK抗体が見つかってからは、抗AChR抗体と抗MuSK抗体の両方が陰性の重症筋無力症を double sero-negative MGと呼ぶようになりました。重症無力症には他にも抗LRP4抗体などが知られています。

2016年7月5日、JAMA Neurology誌に重症筋無力症における抗cortactin抗体についての論文が掲載されました。

Clinical Characteristics of Patients With Double-Seronegative Myasthenia Gravis and Antibodies to Cortactin

250名の重症筋無力症患者のうち、double sero-negative MGは 38名 (15.2%) でした。残りは、201名 (80.4%) は抗AChR抗体が陽性で、11名 (4.4%) は抗MuSK抗体が陽性でした。抗cortactin抗体は、sero-negative MG 38名中 9名 (23.7%), 抗AChR抗体陽性MG 201名中 19名 (9.5%) で検出された一方で、抗MuSK抗体陽性MGや正常コントロール群では全て陰性でした。抗 cortactin抗体陽性患者において、抗LRP4抗体や抗横紋筋抗体は全て陰性でした。

発症は、抗cortactin抗体陽性 double sero-negative MG 9人中 6名が眼筋型、3名が MGFA IIaで、眼筋型のうち 2名は後に全身型となりました。

抗cortactin抗体陽性患者でみると、double sero-negative MGでは抗AChR抗体陽性 MGに比べて軽症での発症が多く、最重症時に球症状が少ない傾向がありました (統計学的有意差あり)。また、抗cortactin抗体陽性患者のうち、double sero-negative MGは抗AChR抗体陽性 MGに比べて眼筋型が多い傾向にありましたが、統計学的な有意差はありませんでした。Double sero-negativeの眼筋型 MG患者 17名のうち、抗cortactin抗体陽性は 4名 (23.5%) でした。

なお、抗cortactin抗体は ELISAおよび Western blotで検出し、抗AChR抗体/抗 Musk/抗横紋筋抗体は通常の方法、抗LRP4抗体は cell-based assayで検出しました。

Cortactinは agrin/LRP4/MuSKの下流にあり、AChRの clusteringを促進する役割があるようです。

重症筋無力症と抗contactin抗体

重症筋無力症と抗contactin抗体

以前、double sero-negative MGでも、cell-based assayで調べると 38.1%で抗AChR抗体が検出できたという論文を紹介したことがありましたが、抗cortactin抗体が検出されることも結構あるんですね。重症筋無力症患者から抗cortactin抗体が検出されることは 2014年に既に報告されていたそうですが、勉強になりました。

問題は、こういう症例を疑ったときにどこで検査ができるかということです。抗LRP4抗体など測定してくださっている川棚医療センターなどで検査できるようにならないか、密かに期待しています。

神経疾患における自己抗体等の測定

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