福島県に引っ越してきて、クラシック音楽専門チャンネル「CLASSICA 」の視聴継続が難しくなりました。そこで、オンラインで視聴できるベルリン・フィルの “Digital Concert Hall” を契約することにしました。年間 149ユーロで、ベルリン・フィルの一部のライブや過去のアーカイブスを見ることができます。PCを大画面テレビに接続すれば、自宅でライブ感覚が味わえそうです。また、iPhoneアプリを用いれば、外出先でも視聴が可能です。
値段は一見やや高めに感じられるかもしれませんが、月々 CD 1枚買う程度と考えれば、安いものと思います。ネット配信で流通コストを抑えているのが大きいのでしょうね。クラシック音楽好きの方にお勧めです。
(※リンク先上段のタブから “DIGITAL CONCERT HALL” を選択)
私はまず、室内楽や大好きな Frank Peter Zimmermannのソロ演奏、以前ベルリンに聴きに行った時のシューマン/ブラームスの交響曲 (客席の自分が映っているらしい) などを楽しむつもりです。また、ゴールデンウィークに帰省しますので、実家でも家族で見たいと思います。
「モーツァルトとベートーヴェン その音楽と病-慢性腎臓病と肝臓病 (小林修三著, 医薬ジャーナル社) 」を読み終えました。
第一章はモーツァルトの病についてです。モーツァルトの診断を下すにあたって、病歴上いくつもの大きなヒントがあります。
・死の直前まで、ベッドで身体を起こして作曲していた (=起座呼吸)
・モーツァルト 6歳時に父親が手紙に「息子の咽頭がやられて、熱を出したあと痛いというので診ると、足のすねにやや盛り上がった、銅貨ほどの大きさの赤く腫れ上がった発疹がいくつかできていました (扁桃炎+結節性紅斑?)」と記載。咽頭の腫れは何度か繰り返した。
・「水腫」という記述
・オペラ「魔笛」上演後に呼吸困難で倒れた
・死の約 2時間前に痙攣を起こし昏睡状態となった。両頬は膨らんでいた。熱のために体は汗でびっしょりぬれていた。
こうした病歴より、著者の診断は、直接の死因は心不全となります。原因疾患は原発性慢性糸球体腎炎、もしくはへノッホ・シェーンライン紫斑病、あるいは水銀中毒による間質性腎炎からの慢性腎臓病。その終末疾患としての尿毒症で死亡。併発疾患は大動脈弁狭窄・・・としています。
溶連菌感染→心臓弁膜症、糸球体腎炎というのは、もっとも合理的な説明ですね。起座呼吸や水腫という病歴もこれらの疾患に合致します。モーツァルトの病としてはとても有力な説です。へノッホ・シェーンライン紫斑病説は、確か私が学生の頃、2000年頃に論文を読んだことがあり、これも有力な説の一つかなと思っていました。
第二章はベートーヴェンの病についてです。ベートーヴェンについては腹水の病歴があり、病理解剖で肝臓に萎縮と表面に結節があったそうですから、肝硬変はほぼ確定診断です。その他、虹彩炎と思われる症状、繰り返す消化器症状、関節炎もあったようです。著者は鉛により誘発されたベーチェット病と診断しました。やや踏み込み過ぎの感はありますが、積極的に否定する証拠もないように思います。
話は脱線しますが、ベーチェット病では HLA-B51 typeが多いことが知られています。一方で、欧米人では HLA-B51は少ないそうです。2009年の Lancet Neurologyの総説を読むと、日本人やトルコ人のベーチェット病患者で HLA-B51 がみられるのは 60-70%である一方で、ヨーロッパ人では 10~20%に過ぎないと記載されていました (ただし、その論文は “Behçet’s syndrome: disease manifestations, management, and advances in treatment. ” を引用したものです)。欧米人の診断をつけるときは要注意ですね。
本書は、一般人が読んでもわかりやすく書いていますし、医学的にもまっとうな内容だと思います。唯一残念なのは参考文献が示されていないことです。著者が下した診断は過去に別の研究者が論文にしているのと同じですし、そのことは明記すべきと思いました。また、診断根拠となる所見がどの文献に書かれていたのかによっても信ぴょう性は変わってくるので、その辺りは記しておくべきでしょう。
(参考)
・Beethovenの耳の話
・楽聖ベートーヴェンの遺体鑑定
「Classic Bar ~in Blue Rose」に行ってきました。サントリーホールの小ホールで行われたコンサートです。
各座席の横にはウイスキーとおつまみが置かれていました。
第一部は、元バレーボール日本代表の佐々木太一さんが、ウイスキーの基礎知識やテイスティングの仕方などを解説しました。彼は日本で資格取得者わずか 2名しかいなかった「マスター・オブ・ウイスキー」を取得しているそうです。ウィスキーの歴史や味の違いなど、勉強になりました。
第二部は成田達輝さんと中野翔太さんによる生演奏でした。普段あまり聴かない曲を聴くことができて、貴重な経験でした。特にジョン・アダムズの Road Moviesという曲は、minimal musicと呼ばれる、非常に小さな単位から構成されているそうですが、初めて聴いて「良い曲だな」と思いました。楽しかったのは演奏だけではなくて、西山喜久恵アナの司会による演奏者のトーク付きでした。
Classic Bar
ドビュッシー:美しき夕べ
ガーシュウィン:3つの前奏曲
武満徹:妖精の距離
ジョン・アダムズ:Road Movies
チャップリン:Smile
成田達輝 (Vn)/中野翔太 (Pf)
10月30日 (木) 19:00開演, サントリーホール小ホール
なお、次回の Classic Barは、「ワイン」をテーマにして、2015年2月8, 9, 10, 11日に行なわれ、ヴァイオリニスト川久保賜紀氏、ピアニストの横山幸雄氏が登場するそうです。
余談ですが、今回から成田達輝氏のプロフィールに「使用楽器:匿名の所有者からの貸与を受けて、ガルネリ・デル・ジェス “ex-William Kroll” 1738年製を使用。」の一文が加わっていました。素晴らしいパートナーとのますますの御活躍を楽しみにしています。
24のカプリース全曲演奏会に行ってきました。
トーマス・ツェートマイヤー
24のカプリース (ニコロ・パガニーニ)
2014年10月17日 19:00開演 トッパンホール
パガニーニ作曲、24のカプリス は、ヴァイオリン無伴奏曲の頂点の一つです。バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ・パルティータを旧約聖書、パガニーニのカプリスを新約聖書と呼ぶ人がいるくらいです。特に第 24番の主題は、リスト、ブラームス、ラフマニノフらがパガニーニの名前を冠した曲に用いたことで非常に有名です。
非常に技巧的な曲であるため、24曲が一度に演奏されることはあまりありません。ツェートマイヤーにとって、かなりのチャレンジだったと思います。
演奏を聴いて、ツェートマイヤーがこの曲集を完全に自分のものにしていることが伝わってきました。他の演奏家に真似できない個性がありました。
また、素晴らしいと思ったのがボウイング技術です。例えば、第5番の中間部は 16分音符 4個が一単位ですが、楽譜には最初の 3個をダウンボウで、最後の 1個をアップボウで弾くように書いてあります。ところが、そのように弾いている演奏家はほとんどいません。例外的にマルコフが一部そう弾いているのを Youtubeで見ることができます (この動画の 40秒くらい ) が、それでも途中からは奏法を変えています。ツェートマイヤーは楽譜の指示通り完璧に弾いていました。
残念だったのは音程です。かなり不安定でした。一曲を通じて調性感のある安定した音程で弾けていたのは、第5, 7, 17, 18, 19 番などくらいで、あとはどこかしか気になりました。まぁ、それでも聴かせてしまうのは凄いんですが (^^;
アンコールは、下記。
ツィンマーマン:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1楽章
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.27-3 《バラード》
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 BWV1005より 第4楽章
現代作曲家ツィンマーマンの曲は初めて聴きました。難曲ですが、完璧な演奏でした。
・B. A. Zimmermann “Sonata for Violin” Part 1/2 played by Rachel Field
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(参考)
・Paganiniの手
・カプリス5番
・カプリス
映画「『アルゲリッチ 私こそ、音楽』」を見ました。
ピアノの巨匠マルタ・アルゲリッチの娘ステファニーが撮りためた、母親の映像を豊富につかったドキュメンタリー映画です。
ベッドでくつろいでいるシーン、起き抜けの顔、コンサート前に楽屋で「弾きたくない」とダダをこねているシーンなど、ほとんどがプライベート映像で占められています。
マルタ・アルゲリッチ自身が “音楽” に言及した部分はそれほど多くなく、「老いへの不安」や「家族の絆」という内面的な描写が多かったです。
マルタ・アルゲリッチは元夫シャルル・デュトアと離婚しているため、ステファニーの戸籍の父親の欄は「不明」となっています。ステファニーが父親に認知してもらおうとして役所に交渉したとき、スイス大使館がデュトアの結婚歴証明証を紛失していることが判明し、認知できないとわかったシーンはグッときました。
巨匠マルタ・アルゲリッチの素顔に興味がある方には、楽しめるドキュメンタリーだと思います。
2014年7月19日のブログで、出光音楽賞受賞者ガラ・コンサートについて書きました。
そのコンサートの模様が、9月7日午前9時からの「題名のない音楽会」で放送されます。
かつて聴いた生演奏がテレビではどう聴こえるか、比較できる機会で楽しみです。何度でも聴けるように、録画しておこうと思います。素晴らしい演奏でしたので、皆様も、是非御覧ください。
成田達輝氏が演奏するメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の第 1楽章が、テレビユニマンチャンネルで視聴可能になりました。
私がこの曲をさらった時、昔の巨匠達の演奏する CDを中心に 20枚くらい買って聴き比べたものでした。成田氏の演奏は、ややゆっくりめのテンポ設定で、気高さの中に漂う切なさを感じさせる演奏です。表現が豊かで、聴いていて面白いです。下記リンクから是非どうぞ。
名指揮者 ロリン・マゼール が、2014年7月13日に 84歳で肺炎で亡くなりました。
ヴァイオリニストとしても素晴らしい演奏をしたマゼール。わずかですが、ヴァイオリン演奏の映像も残されています。艶やかな音が印象的です。
・LOREN MAAZEL ~ Mozart Violin Concerto K.216 ~ 1st. Movement
指揮者としての名声は、クラシックファンとして知らない人はいないでしょう。特に彼の指揮するブラームスは色っぽさがあって、私は大好きです。フランクフルトで彼の指揮するブラームスを聴いた のが懐かしい思い出です。
昨夜は、マゼールの DVD を聴きながら、追悼しました。ご冥福をお祈りします。