Category: ネタ系

アルコールとパーキンソン病

By , 2014年3月16日 8:57 AM

2014年3月3日、Movement disorders誌に、アルコール摂取とパーキンソン病のリスクについての meta-analysisが掲載されていました。

Alcohol intake and risk of Parkinson’s disease: A meta-analysis of observational studies

・アルコール摂取量とパーキンソン病の発症リスクは逆相関する。ワインやリカーより、特にビールので関連がある。

・アルコールは、中毒性の性質や血清尿酸値上昇により、パーキンソン病リスクに影響を与えるかもしれない。血清尿酸上昇は、パーキンソン病のリスク減少や、疾患の進行が緩徐であることと関連がある。

・アルコールによるパーキンソン病のリスク減少は、男性に見られたが、女性には見られなかった。

・アルコール摂取が 1 drink/day増加すると、パーキンソン病発症リスクが 5%低下する。

・喫煙やカフェインもパーキンソン病の防御因子として知られている。そして、アルコール摂取量が多い人は喫煙やカフェイン摂取も多いことが報告されている。しかし、これらの因子を補正しても、やはり、パーキンソン病リスクはアルコール摂取者で減少していた。

男性がアルコール、特にビールを飲むと、パーキンソン病リスクが減少するとの報告です。過去に、男性では尿酸値が高いとパーキンソン病リスクが低いとする報告があり、ビールは尿酸値を高めますので、ビール→尿酸値上昇→パーキンソン病リスク減少、という仮説が成り立っているかもしれません。

アルコールの飲み過ぎは体に悪いですし、ビールを摂取して尿酸値が上昇しすぎるのも良くないことですが、酒好きにとっては興味深い論文だなと思いました。

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ゴルゴ13とギラン・バレー症候群

By , 2014年1月18日 11:02 PM

ゴルゴ13を読んでいたら、ゴルゴが髄液検査をするシーンに遭遇しました。ギラン・バレー症候群の診断を受けるシーンです。おー、ゴルゴが医者に背中を向けている (゚д゚)!

ゴルゴ13

ゴルゴ13

でも、このシーン、医学的におかしなことのオンパレードなんですね。

まず髄液検査が腹臥位になっている!普通は、側臥位ですし、どうしても難しい場合でも座位です。腹臥位で出来る検査ではないです。

そして、特異度の低い髄液検査での「蛋白細胞解離」を根拠に、診断を下してしまっています。症状がギラン・バレー症候群としては極めて非典型的 (手が突然しびれて、力が入らなくなって、数分後には症状が消失する) なので、電気生理検査や抗体検査 (ただし、この時代には抗体検査は出来なかったと思われる) などで詰めていかないと誤診の元です。こういう医者に身を任せるとは、ゴルゴにしては見る目がなかったものです。

ゴルゴオタクの先生にこの話をした所、「ゴルゴがギラン・バレー症候群だという描写は、他に数度出てくる (女工作員の話、台湾の漢方薬で治そうとする話、フィリピンの話)」と教えてくれました。基本的に、ギラン・バレー症候群は単相性の経過なので、再発を繰り返すのも不自然ですね。

この漫画は有名な某神経内科医が監修するようになったという噂で、2012年頃の連載で、「修験道の最奥の修行を完成して症状を克服し,結果的に心因であったと結論づけた」そうです (※私は連載を読んでいないので、確認したわけではありません)。

数十年に渡る誤診にも、やっとケリがついたと言えます。

さて、2013年12月の Lancet Neurologyの総説が、”axonal Guillain-Barre syndrome“でした。千葉大学の桑原先生の書かれた総説ですが、非常によく纏まっていて、神経内科医必読だと思います。あと、2012年に結城先生が New England Journal of Medicineに書かれた総説 “Guillain-Barre syndrome” も併せてお勧めしておきます。

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ざわ・・・ざわ・・・

By , 2014年1月9日 7:54 AM

福本伸行氏の漫画は、極限状態における人間の心理描写が巧みで、読んでいて引きこまれます。そして、あの角ばった顔、頻用される「ざわ・・・ざわ・・・」の文字は彼の漫画を特徴あるものにしており、見ると彼の漫画だとひと目でわかります。学生時代、付き合いで麻雀をする機会があったので、麻雀雑誌に掲載されていた「アカギ」「」を読み始めたのが最初ですが、もう出会って 15年くらいになります。

福本氏を一躍有名にしたのは「カイジ」でしょうか (カイジ名言集まとめ)。映画化もされたようです。

さて、「カイジ」には鉄骨渡りという命を懸けたゲームが登場します。「鉄骨渡り」に対して考察した、建築家の方のブログが素晴らしいです。これを日本で作れるのは「○○建設のみ」と、施工した会社まで当ててしまうのは凄すぎます。「カイジ」を読んだことのある方は、下記のリンクを見てみてください。

カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察1

あと、そのブログ主が、東京五輪でのオリンピックスタジアムについて解説されているのですが、こちらも素晴らしいです。併せて紹介しておきます。

新国立競技場の工事費が下がらない理由

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クリスマスBMJ ワーグナー

By , 2013年12月13日 10:09 PM

今年もクリスマス BMJの季節がやってきました。以前、Beethovenの難聴の話を紹介しましたが、今年はワーグナーの片頭痛の論文が載っていました。

Christmas 2013: Medical Histories

“Compulsive plague! pain without end!” How Richard Wagner played out his migraine in the opera Siegfried

BMJ 2013; 347 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f6952 (Published 12 December 2013)
Cite this as: BMJ 2013;347:f6952

ワーグナーは、自身の片頭痛発作を作品 Siegfriedで描写しているというのですね。私はワーグナーの作品はほとんど聴きませんが、興味深く思いました。ワーグナーの作品が好きな方は、是非読んでみてください。

(追記)

知り合いの先生から、今年はワーグナー生誕 200周年だと教えて頂きました。あと、「眠れない時は『ニーベルングの指環』を聴くと、全曲終わるまでに眠くなる (※演奏時間 15時間)」という使えないアドヴァイスも・・・。

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第36回分子生物学会

By , 2013年12月6日 5:49 AM

第 36回分子生物学会年会が、本日 12月6日まで開催されています。臨床に忙しくて参加していませんが、大会長は気合入れて準備された様子

しかし、今回の年会のウリは、何と言っても「恋人募集中表示」でしょうね。

神経学会も、これやってみると良いのに (^^)

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結婚がうまくいくかどうか

By , 2013年12月5日 9:36 PM

Science誌をチェックしていたら、「意識はしていないかもしれないが、新婚夫婦は結婚がうまくいくかどうかそれとなくわかっている」というタイトルの論文が出ていました。Science誌って、こういう論文も載るんですね。興味のある方は、ぜひ本文をどうぞ。

Though They May Be Unaware, Newlyweds Implicitly Know Whether Their Marriage Will Be Satisfying

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野菜と長谷川式

By , 2013年9月16日 12:40 PM

認知機能のスクリーニング検査、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R)」には、10種類の野菜を挙げてもらう「野菜語想起課題」があります。

検査をしていると、人参、きゅうり、たまねぎ、ピーマンなどメジャーな野菜じゃなくて、ズッキーニとかマニアックな野菜を挙げる人がいて、なかなか楽しいです。

ところが、野菜か果物か紛らわしいときがたまにあります。別にそれで HDS-Rが 1~2点違ってこようが、実際に大きな問題はないのですが、先日内輪で盛り上がりました。

すいか、メロン、いちごは野菜か果実か

◆回答◆イラスト

結論(けつろん)からからいうと、メロン、すいか、いちごは野菜に分類されます。
それはなぜでしょうか?
野菜と果実のちがいはどこにあるのでしょうか。
園芸関係の学会や報告文では、1年生及(およ)び多年生の草本(そうほん)になる実は野菜、永年生の樹木(じゅもく)になる実はくだものときめられています。
これからみると、すいか、メロンはウリ科の1年生果菜(野菜)で、いちごはバラ科の多年生果菜(野菜)です。
このように、分類上は野菜に分けられますが、青果市場で「すいか」「メロン」「いちご」はくだものとしてあつかわれています。市場の分け方は消費者の側にたって、消費される形態に合わせて分類しています。スーパーマーケットでも、デザートとしてたべるメロンやいちごは、くだもの売場に並(なら)びます。

メロン、すいか、いちごは野菜だったんですね。だから患者さんが野菜として答えても、減点してはダメです (^^)

Wikipediaでは、もう少し詳しく書かれています。

野菜

野菜は一般には食用の草本植物をいう[1]。ただし、野菜の明確な定義づけは難しい問題とされている[3][4]

園芸学上において野菜とは「副食物として利用する草本類の総称」[5]をいう。例えばイチゴスイカメロン園芸分野では野菜として扱われ[3][6]農林水産省「野菜生産出荷統計」でもイチゴ、スイカ、メロンは「果実的野菜」として野菜に分類されているが[5]、青果市場ではこれらは果物(果実部)として扱われ[6][7]厚生労働省の「国民栄養調査」[5]日本食品標準成分表でも「果実類」で扱われている[3][1]。また、日本食品標準成分表において「野菜類」とは別に「いも類」として扱われているもの(食品群としては「いも及びでん粉類」に分類)は一般には野菜として扱われている[1][5]。また、ゼンマイツクシといった山菜については野菜に含めて扱われることもあり[4][7]木本性の植物であるタラの芽サンショウの葉も野菜の仲間として扱われることがある[4]。さらに、日本食品標準成分表において種実類に分類されるヒシなども野菜として取り扱われる場合がある[1]

日本では慣用的に蔬菜(そさい)と同義語となっている[8][9][10]。ただし、「蔬菜」は明治時代に入ってから栽培作物を指して用いられるようになった語で[7][10]、本来は栽培されたものではない野菜や山菜などと厳密な区別があった[11]。しかし、その後、山菜等も栽培されるようになった結果としてこれらの厳密な区別が困難になったといわれ[11]、「野菜」と「蔬菜」は学問的にも全く同義語として扱われるようになっている[11]。そして、「蔬菜」の「蔬」の字が常用漢字外であることもあって一般には「野菜」の語が用いられている[12]。なお、野菜は青物(あおもの)とも呼ばれる[1]

分類する立場によって、色々変わってくるんですね。ややこしい・・・。

Wikipediaには「野菜の一覧」が載っているので、将来自分が検査を受けるようになったら、担当医が知らなさそうなマニアックな野菜の名前を挙げて、顔色を伺って遊ぼうかなと思います。一方で、果物の定義は下記のようになるようです。

果物

果物(くだもの)は、食用になる果実フルーツ: fruits)、水菓子(みずがし)[注釈 1]木菓子(きがし)ともいう。狭義には樹木になるもののみを指し、農林水産省でもこの定義を用いている。また、多年草の食用果実を果物と定義する場合もある。

一般的には、食用になる果実及び果実的野菜のうち、強い甘味を有し、調理せずそのまま食することが一般的であるものを「果物」「フルーツ」と呼ぶことが多い。

ちなみにアボカドは野菜ではなくて果物らしいので注意が必要です。

余談ですが、今回のエントリーを書いていて、岩田誠先生の「臨床医が語るしびれ・頭痛から認知症まで: 神経内科のかかり方」という本の一節を思い出しました。

 一方、一〇六歳で亡くなった物集高量 (もずめたかかず) さんという、辞書まで作った有名な方がおられました。九九歳くらいの時に東京都の養育院 (現在の健康長寿医療センター) の付属病院に入院されたことがあって、そこで認知症のテストをしました。長谷川式知能検査です。当時は今使っているのより少し前のバージョンなので、一番最初の問題が、「一年は何日ですか?」でした。物集さんは、「いやそれは一概には言えませんよ。一年といってもいろいろあるしね、うるう年もあるわけだから」と答えました。そうしたら医者もちょっとたじろぎました。すかさず物集さんが、「ときに君、うるうっていう字、書けますか?」と聞きました。その医者はすくんでしまって書けなかった。そうしたら、「門の下に王って書きますね」と、ちゃんと字を教えてくれて、なぜ門の下に王と書くとうるうになるのかという説明までしてくれたので、その医者は第二問以降の質問をすることができなくなった。未完の長谷川式テストという有名な話です。

その方はその七年後に一〇六歳で亡くなられて、脳を解剖させていただいたら、重量は一〇〇〇gでした。普通は一四〇〇gくらいですから、四〇〇g減っていました。三分の二まではいかないけれども、かなり減っています。でも、パフォーマンスとしての知能は抜群にあり、最後まで明晰なままで亡くなられました。ですから、小さい脳というのは決して萎縮ではありません。そんなわけで、画像の見方は非常に大事です。

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π^{0}p

By , 2013年9月1日 3:38 PM

論文タイトルを見て、「π^{0}p」が顔文字が見える私は、ネットに毒されているに違いない。

Accurate Test of Chiral Dynamics in the γ[over →]p→π^{0}p Reaction.

さらに、アブストラクトにあるこれも絵文字っぽく見えて仕方ない・・・orz

Σ≡(dσ_{⊥}-dσ_{∥})/(dσ_{⊥}+dσ_{∥})

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リンスインシャンプー

By , 2013年7月20日 11:05 AM

シャンプーの話について以前ブログに書いたことがあります。それとは関係ないのですが、Chem-stationのツイートで、リンスインシャンプーについて解説したサイトが紹介されていました。

リンスインシャンプーの化学

シャンプーとリンスを混ぜただけのものだろうか。

シャンプー分子はマイナスのイオンで、リンス分子はプラスのイオンである。

すなわち、混ぜたらお互いが引き合ってくっついてしまい、シャンプーとしての機能もリンスとしての機能も失ってしまう。

よって、上にあげたようなシャンプー分子とリンス分子は共存して効果を発揮することはできないのである。

しかしリンスインシャンプーは売っているわけで、ちゃんとシャンプーの洗浄力もリンスの柔軟力も発揮している。

ではリンスインシャンプーはどんな仕掛けなのだろうか。

その答えは、上記サイトにわかりやすく書いてあります。リンスインシャンプーって、こんな化学的な工夫がされているんですね。読んでちょっと感動しました。

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捏造騒動にも負けず

By , 2013年7月13日 8:39 PM

iPS論文不正で世の中を騒がせた森口尚文氏、ほとぼりが冷めた頃に再始動です。BMJ Case Reportsという雑誌に論文が掲載されました。

最初の論文はネットで少し話題になりましたが、その後気づかないうちに同じ雑誌に 2本追加で載っているようです。Pubmedで調べると、7月13日現在、他の雑誌には彼の論文は見当たりませんので、何故 BMJ Case Reportsばかりなのか、気になりますね。

彼の論文だと気づかずに医局の抄読会で読んだら、タコ殴りにされそうです (^^;

BMJ Case Reports

Searching journal content for “Hisashi Moriguchi”in full text.

1. Stable expressions of nine genes within human oocytes and live birth by in vitro fertilisation
Hisashi Moriguchi, Joren Madson
BMJ Case Reports published online 18 April 2013, doi:10.1136/bcr-2013-008988
…live birth by in vitro fertilisation Hisashi Moriguchi Joren Madson Correspondence to Dr Hisashi Moriguchi, moriguchi-tky@umin.ac.jp Reprogramming…live birth by in vitro fertilisation Hisashi Moriguchi, Joren Madson Reprogramming Inc, Chiba…
[Summary] [PDF] [Request permissions]

2. The reprogramming therapy for a patient with advanced hepatocellular carcinoma by using human-induced pluripotent stem (iPS) cells technology
Hisashi Moriguchi, Joren Madson
BMJ Case Reports published online 2 May 2013, doi:10.1136/bcr-2013-008950
…stem (iPS) cells technology Hisashi Moriguchi 1 Joren Madson 2 Correspondence to Dr Hisashi Moriguchi, moriguchi-tky@umin.ac…stem (iPS) cells technology Hisashi Moriguchi,1 Joren Madson2 1 Reprogramming…
[Summary] [PDF] [Request permissions]

3. Autologous human cardiac stem cells transplantation for the treatment of ischaemic cardiomyopathy: first study of human-induced pluripotent stem (iPS) cell-derived cardiomyocytes transplantation
Hisashi Moriguchi, Joren Madson
BMJ Case Reports published online 24 May 2013, doi:10.1136/bcr-2013-008960
…cardiomyocytes transplantation Hisashi Moriguchi 1 Joren Madson 2 Correspondence to Dr Hisashi Moriguchi, moriguchi-tky@umin.ac…cardiomyocytes transplantation Hisashi Moriguchi,1 Joren Madson2 1 Reprogramming…
[Summary] [PDF] [Request permissions]

・・・と思ったら、論文リンク (Summary) にアクセスすると、”Temporarily withdrawn while we investigate a complaint.” とか、”Retracted due to duplicate publication.” ってなってました。

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