ホグウッド

By , 2011年11月5日 11:17 AM

11月 3日に第九を聴いてきました。

サントリーホール 25周年記念

モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
ベートーヴェン:交響曲第 9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」

指揮:クリストファー・ホグウッド指揮
ソプラノ:スザンネ・ベルンハルト
アルト:クラウディア・マーンケ
テノール:ジョン・トレレーベン
バリトン:ルドルフ・ローゼン
合唱:東京混声合唱団、二期会合唱団
管弦楽:NHK交響楽団

ホグウッドを初めて知ったのは学生時代。古楽器演奏の大家です。モーツァルトの交響曲全曲録音で痺れました。感情べったりの演奏とは対極的に、曲本来の持つ魅力を引き出しています。Youtubeでいくつか聴くことができます。

さて、一曲目のアヴェ・ヴェルム・コルプス。弦楽器奏者の弓速のコントロールから、古楽器での奏法を取り入れて演奏しているのがわかりました。普段の N響とは全く違うサウンドでした。

そのまま第九の演奏開始。オーケストラは流行の対抗配置(第一ヴァイオリンが左側、第二ヴァイオリンが右側で向き合う形)。サントリーホールは舞台の後ろにも客席があるので、そこを使って合唱団を並べました。通常男女を左右に並べるのですが、面白いことに、女性が前、男性が後ろという配置でした。音響を考えてのことに違いありません。

第一楽章の出だしから、余分なものを排除した、シンプルなスタイルでの演奏。ベートーヴェンは古典派からロマン派の移行期の作曲家とされますが、ロマン派的要素を極力排除した演奏に聞こえました。ベートーヴェンの後期はロマン派の作品のように演奏されることが多いので、聴き慣れた演奏に比べると若干物足りなさを感じることがありました。

テンポはあくまで前がかり。感情に浸りそうなところは特に音を短く余韻を残さず次に突っ込んでいました。

これらのホグウッドの手法は、過去にない新鮮さを与えましたが、慣れないオケがばらつくシーンが多かったのも確か。

①対抗配置は音響学的なメリットがあるのに対し、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが隣り同士ではないのでアンサンブルが難しい。第一ヴァイオリンはどうしても隣のチェロの音を聞いてしまうので、上手くやらないと第二ヴァイオリンとずれてしまう。第二ヴァイオリンも場所的な問題で、普段のようにチェロと第一ヴァイオリンの間でバランスをとるという行為がやりにくい。
②あまりにクリアに解釈しているので、逆にミスが誤魔化しにくい
③指揮者の棒が見にくい。音と同時に振ることが多いので、奏者に時間的猶予がない。
④指揮者イルジー・コルトがけがのため急遽ホグウッドに変わったので、準備期間があまりなかった

といった原因を推測しました(間違っていたらすみません)。

一方で、音響的な効果は素晴らしく、第四楽章の合唱では脳天に突き抜けるような響きが得られました。また、第四楽章の途中から、テンポを滅茶苦茶落として、ある種のオペラのクライマックスのように壮大なスケールを演出したあたりは、ホグウッドが腕を見せたと思いました。

総括として、色々な意味でホグウッドが味わえて良かったです。なかなかこれだけの個性を持った指揮者は少ないと思います。曲の解釈も斬新でした。

ストリング誌の連載コラムで、N響ヴァイオリン奏者の永峰氏が今回の演奏について書いてくれないか、今から楽しみにしています(彼は演奏していて感動したとき、良くコラムに書いてくれるので)。

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