プロテアソーム阻害薬

By , 2012年1月14日 10:57 AM

私が研修医の頃、多発性骨髄腫に対する有効な治療はほとんどありませんでした。ところが、プロテアソーム阻害薬 bortezomib (商品名:ベルケード) が出現し、予後は大きく改善しました。とはいえ、プロテアソーム阻害薬には、末梢神経障害、血球減少、消化器症状といったいくつもの副作用があります。また、長期の使用により腫瘍が薬剤に対して耐性を獲得するようになります。そこで、次世代のプロテアソーム阻害薬に期待が集まっています。

次世代プロテアソームについて、Nature medicine 2012年 1月 6日号に特集していたので、簡単に紹介します。

 Next-generation proteasome blockers promise safer cancer therapy.

・carfilzomib
プロテアソームの作用に対する選択性が高く、オフターゲット効果も少ないようだ。第二相試験、第三相試験の結果では、bortezomibに比べて、より有効で副作用が少ないようだ。しかし、bortezomibとは違ってプロテアソームに不可逆的に結合するため、より毒性が強い可能性があり、長期間での安全性はまだ保証されていない。一方、肺癌や腎癌、卵巣癌といった他の癌への適応拡大が期待されている。

・MLN-9708 / ONX-0912
プロテアソーム阻害薬は点滴投与が必要なので、より治療しやすい経口薬の開発が進んでいる。

・その他
第3世代と呼ばれるプロテアソーム阻害戦略が研究中されている。2011年に Nature Medicineに報告された薬物 b-AP15は、20Sプロテアソームの活性中心ではなく、19Sプロテアソームを阻害する (※通常プロテアソームと呼ばれる蛋白質は、26Sプロテアソームを指し、19S, 20Sプロテアソームから構成されている。くわしくは Wikipedia「プロテアソーム」参照)。細胞実験レベルでは、これまでの薬剤より癌殺傷効果が高いとされている。

(補足)
b-AP15は、ユビキチンC末端加水分解酵素及びユビキチン特異的ペプチダーゼ14を阻害する。急性骨髄性白血病動物モデルでは、臓器浸潤を抑制した。

ユビキチン・プロテアソーム系は神経変性疾患に大きく関係しているとされているので、こうした薬剤が長期的にどういう副作用を起こすか、関心のあるところです。

また、既知の副作用として末梢神経障害を起こすので、神経内科医にとって、知識のアップデートは欠かせないところだと思います。

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