第 3回 Journal club

By , 2013年1月31日 7:10 AM

1月29日に第 3回 Journal clubを行いました。

兄やん先生は、抗てんかん薬 zonisamideが徐放性 carbamazepineに対し、部分発作で非劣性を証明した論文を読んできました。

Efficacy and tolerability of zonisamide versus controlled-release carbamazepine for newly diagnosed partial epilepsy: a phase 3, randomised, double-blind, non-inferiority trial.

ただし、この研究は、zonisamideを販売するエーザイから資金提供を受けているのを考慮する必要があります。

ホワイトロリータ先生は、輸液の留置針を換えるタイミングについての論文を読んできました。色々な所で話題になっていた論文です。

Routine versus clinically indicated replacement of peripheral intravenous catheters: a randomised controlled equivalence trial.

留置針は 72-96時間で交換することが推奨されていますが、定期的に交換するのと、詰まるなどして必要になったときに交換するのだと、どちらが良いか調べた研究です。ブログにまとめている方がいましたので、リンクを貼っておきます。

定期的 vs 臨床指示下の末梢静脈カテーテルの再留置:無作為対照同等性試験

ちなみに、定期的に交換する群では 48-96時間で、臨床的に必要になった時に交換する群では 48-561時間で交換していたそうです。

ちょび髭王子は、てんかんと性機能についての論文を読んできました。何故こんな論文にしたかというと、「何を読んだら良いかわかりません。時間がないので長い論文は無理です。」と、み○のすけ氏に相談したら、これを勧められたからです。

Sexual dysfunction and epilepsy: The reasons beyond medications.

てんかんおよび抗てんかん薬が原因で性機能低下が見られることがあるという論文です。てんかんによる性機能低下は、動物実験では発作後時間とともに改善したと記されていました。

最後に、私は高齢者における一過性身震い様不随意運動についての論文を紹介しました。この疾患は、知っているとひと目で診断出来るのですが、知らないと相当ビックリします。救急をやっている先生から相談されることが多いですね。

Transient myoclonic state with asterixis in elderly patients: a new syndrome?

高齢者における一過性身震い様不随意運動について

断片的に全般化して数日続く、明らかな代謝的あるいは器質的異常を伴わない高齢者の急性ミオクローヌスおよび羽ばたき振戦について報告する。同様の症状は、過去に 1986年に水谷らが報告した「臨床神経学」誌の ”Recurrent myoclonus associated with Epstein-Barr virus infection in an elderly patient“ という論文にのみ見られる。

この論文では、奈良県の天理よろづ相談所病院かかりつけで、震えを主訴に神経内科に紹介された 7例の患者 (78歳女性, 79歳女性, 63歳男性, 64歳男性, 82歳男性, 71歳男性, 69歳女性) について、ビデオ撮影、表面筋電図、脳波、体性感覚誘発電位 (SEP) を用いて評価した。

その結果、以下の臨床的特徴が明らかになった。

①    高齢者および慢性疾患保持者に起こりやすかった

②    意識レベルはほぼ正常もしくは軽度に障害されていた

③    ミオクローヌス反射は自発的に起こり、動作によりわずかに増強した。全身広範に出現するが、主に頸部、肩帯、上肢に見られた。前頭筋、眼輪筋、腹筋群は侵されにくかった。オプソクローヌスは見られなかった。

④    いくらか声の震えがあった

⑤    感覚刺激でミオクローヌス反射は誘発されなかった

⑥    羽ばたき振戦はミオクローヌス反射の出現部位に出現した。羽ばたき振戦様の運動が提舌で見られた。

⑦    ミオクローヌス及び羽ばたき振戦以外の神経学的異常所見はなかった

⑧    脳波では、非特異的徐波ないし不規則性が見られたが、てんかん波はなかった

⑨    発症はかなり急であったが、数時間かけて更に顕著になった

⑩    ミオクローヌスと羽ばたき振戦は 2-3日間のジアゼパム投与で消失した。一旦症状が消失すると、更なる治療は必要なかった。

⑪    後遺症はなかったが、再発を起こす傾向にあった

著者らの行った median SEPでは 7例中 2例で振幅増加が見られた。しかし、P27に比較して N20の振幅が大きかった。これはミオクローヌスで出現するいわゆる Giant SEP (ミオクローヌスで有名な所見) とは異なり、高齢者でたまに非特異的に経験される所見であった (著者の私見)。

水谷らによる同様の症状の報告では EB virus IgGが高値だった。しかし、これらの 7例で抗体価が有意に上昇していた患者はいなかった。

臨床所見については、まさにこの通りです。気になったのは median SEPの解釈についてです。私は某基幹病院で外来をやった帰りに、技師さんが行った SEPのレポートを作成していますが、年に数件くらいミオクローヌスのない症例で、この論文に見られるような Giant SEP様の所見を認めます。著者らは高齢者でたまに非特異的に見られる所見としていますが、その臨床的意義は何なのだろうと思いました。今度電気生理検査に詳しい先生に会う機会があったら、聞いてみようと思います。

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