電王戦

By , 2013年3月16日 11:34 AM

プロ棋士とコンピューターソフトが対戦する「電王戦」がいよいよ 1週間後に始まります。

電王戦 公式サイト

私はプロ棋士を応援したいですが、成績予想としては 1勝出来るかどうか微妙なところです。

先日、前哨戦としてアマチュアとコンピューター将棋の対戦イベントがありました。2月24日(日)から3月10日(日)までの毎週土日11時~18時にアマチュアとコンピューター将棋ソフト「GPS将棋」が対戦するというものです。勝てば 100万円もらえるということで、多くのアマチュアが集まりました。

GPS将棋最新バージョンは GPS fishですが、このイベント開始直前にバグが見つかりました。ある局面に誘導されると悪手を指してしまうのです。そのバグを回避するために運営側は数年前のバージョンの GPS将棋を用意しました。そうしたところ、いきなり二人のアマチュア強豪がコンピューターソフトを撃破し、100万円を獲得しました。

「人類vs最強将棋ソフト 勝てたら100万円」 2名のアマ強豪が100万円獲得! (棋譜あり)

古いバージョンのソフトでは勝つアマチュアが何人も出てくることに気づいた運営側は、GPS fishを投入することを決めました。

「人類vs最強将棋ソフト 勝てたら100万円」 頼みのGPSfishが撃破され運営青ざめる (棋譜あり)

しかし、それをも撃破するアマチュアが現れました。細川さんというアマ強豪で、本人は朝起きるの大変だから行きたくないと主張したようなのですが、知り合いが強引に連れて行きました。右玉という作戦で、右側の桂跳ねを保留する工夫に混乱したソフトが、22手目△6三銀というまさかの大悪手。的確に咎めた細川さんの金星となりました。彼を連れて行った知り合いは、当初の約束どおり 100万円の何割かを貰ったそうです。

こうした状況をみて、「ひょっとしたら勝てるかも」と思ったアマチュア強豪たちはこの企画に殺到しました。最終日は、始発で並んだ人達が挑戦することができなかったくらい混んでいたそうです。運営側は、コンピューターのスペックを上げることで、最終日の全勝を達成しました。

このようにコンピューターソフトに勝ったアマチュアが何人も出たのは事実ですが、通算成績的にはコンピューターソフト側の圧勝です。竜王戦予選のように、プロとトップ・アマが対局してトップ・アマが勝つことが珍しくないことを考えると、圧倒的にトップ・アマに勝ち越したコンピューター将棋の実力は、プロを凌駕しているのではないかと感じました。電王戦が楽しみです。

(追記)

訂正をくださった方がいるので、コメント欄も御覧ください

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神戸市室内合奏団

By , 2013年3月13日 8:10 AM

招待券を頂いたので、3月10日に知人と神戸市室内合奏団のコンサートを聴きに行って来ました。

神戸市演奏協会 第 373・374回公演

神戸市室内合奏団

定期公演 第 22回東京公演

古典派と歩む一年~アンサンブルの極みを目指して~

「ふたりの天才と若き日の作品」

シューベルトが受け継いだ”明るく、照らされた、美しい”もの

2013年3月10日(日) 14:00 開演/紀尾井ホール

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 交響曲 第 29番 イ長調 KV201 (186a)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト フルート協奏曲 第 2番 ニ長調 KV314 (285d)

フランツ・シューベルト 交響曲 第 5番 変ロ長調 D485

指揮:石川星太郎、フルート:藤井香織、神戸市室内楽合奏団

一曲目の冒頭、繊細さが要求されるところですが、完璧な出だしで、すぐに合奏団のレベルの高さが分かりました。この曲は細かく動くフレーズが多いのですが、全く乱れたところがありませんでした。1985年生まれの若い指揮者は曲を完璧に把握した上にそれを表現する手段を知っており、「モーツァルトがそうであったように、天才は若い時から天才なんだなぁ」と感じました。

二曲目、藤井香織さんは歌い方が上手でした。音が明るくて、聴いていて心地よかったです。ただ、強く吹き込んだときに全体的に音程が高くなりやすく、楽器の特性があるので難しいのかもしれませんが、もう少し低くとるべき音は低くとった方が、調性感がクリアになって綺麗なのかなと思いました。こうした素晴らしい tuttiでヴァイオリン協奏曲も聴いてみたくて、ヴァイオリニストの成田達輝さんとか招いたコンサートとか企画してくれないかなぁ・・・。

三曲目はシューベルト。コンサートのサブタイトルにもある「シューベルトが受け継いだ”明るく、照らされた、美しい”もの」というメッセージが良く伝わって来ました。

この合奏団はボッセ・ゲルハルト氏が過去に音楽監督だったらしいですが、こんなにレベルの高い合奏団に育てたというのは、ボッセ氏の数多い業績のうちでも特筆すべきものの一つでしょう。 また機会があれば聴きに行きたいと思いました。

最後に、それぞれの曲を Youtubeで曲紹介をしておきます。

・Mozart – Symphony No. 29 in A, K. 201 [complete]

 

・Mozart – Flute Concerto No. 2 in D, K. 314 / K. 285d [complete]

・Schubert: Symphony No.5 – Harnoncourt/WPh(2010Live)

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311

By , 2013年3月12日 6:59 AM

昨日で震災 2年目を迎えました。

Nature誌が、東日本大震災のオンライン特集を組んでおり、震災に関する過去の記事が日本語翻訳されています。

 オンライン特集:東日本大震災から2年

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動画による不随意運動検討会 2013

By , 2013年3月10日 10:03 AM

3月7日に、「動画による不随意運動検討会 2013」に行ってきました。特別講演の演者は京都大学医学部名誉教授の柴崎浩先生でした。

動画による症例提示をしながら、4つの核となるポイントをわかりやすく教えてくださり、非常に勉強になりました。以下、簡単にポイントを記しておきます。

 

①複数の不随意運動の特徴を兼ね備た症例もあるので、必ずしも既成の概念に当てはめて分類する必要はない 

・見たまま記載するのが大事。同じ不随意運動を見せてどの用語を当てはめるか、専門家でも意見が分かれることは珍しくなかった。

・ほとんどの不随意運動は 100年以上前に詳細な観察に基いて記載されている。分類は必ずしも電気生理学的機序に基づかなくてもよいのかもしれない。

・不随意運動は触るのが大事。筋の動きが良く分かる。

・不随意運動分類のアルゴリズム

不随意運動

不随意運動

Case.1 BAFME (良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん): 律動性ミオクローヌス

Case.2 CBD (皮質基底核変性症): 律動性ミオクローヌス

Case.3 書痙:ジストニー、ミオクローヌス、振戦・・・複雑に混ざっている

Case.4 CJD (クロイツフェルト・ヤコブ病):捻れた姿勢 (ジストニー) に周期性の運動 (ミオクローヌス) が乗っかる→ジストニー+ミオクローヌス or ジストニー性ミオクローヌス (PSDと筋放電は 1:1ではない)

Case.5 SSPE:周期性ジストニー (PSDと筋放電は 1:1である)

Case.6 軟口蓋振戦:軟口蓋ミオクローヌスは軟口蓋振戦という用語が用いられるようになったが、この症例のように同期して口唇のミオクローヌスが見られる症例も見られる。

Case.7 Diaphragmatic flutter (respiratory myoclonus):レーウェンフックが罹患していた。myorythmiaとも呼ばれる

Case.8 低酸素脳症:ミオクローヌス、刺激過敏性があり反射で誘発される。表面筋電図では、胸鎖乳突筋 (延髄支配) の直後に眼輪筋 (橋支配)、上腕二頭筋 (頚髄支配) が収縮し、延髄由来だとわかった。

Case.9 Painful leg moving toe

Case.10 Myoclonus-dystonia syndrome (DYT11 mutation):ジストニーにミオクローヌスが独立して乗っかる。皮質性ミオクローヌスは遠位筋に出やすいが、Myoclonus-dystonia syndromeでは近位筋に出やすい (皮質由来ではない)

Case.11 本態性振戦:一見、静止時+姿勢時に振戦がみられる。近位筋が姿勢性に収縮しているので、静止時に手が震えているように見える (静止時振戦と間違いやすい)。動作時にはない。

 

②内科疾患の部分症候としてあらわれることがある

Case.12 Wilson病:仰臥位で上肢を挙上して、下肢を屈曲しないと出現しない不随意運動。そういう姿勢をとらせるのが大事。

Case.13 肝性脳症:アステリクシス。腎不全でも出現する。手に出てもあまり困らないが、下肢や体幹に出ると転倒の原因になる。

Case.14 リウマチ熱に伴う舞踏病:一定の筋肉に繰り返すより migrationがみられる。癖のようにも見える。マネが出来る。

 

③しばしば薬剤によって誘発される

・L-Dopa→ジスキネジー、抗精神病薬→ジストニー、が有名

Case.15 アマンタジン投与中にみられたアステリクシス

Case.16 ガバペンチン投与中にみられたアステリクシス

Case.17 シスプラチン投与中にみられたアステリクシス

 

④心因性の不随意運動がまれではない

・心因性不随意運動の特徴

1. 一般的に知られている不随意運動では説明しにくい

2. 正常、パターン、分布が変動しやすい

3. 注意を他の課題に向けることによって軽減するか消失する

4. 振戦の場合、他方の手で一定周波数の随意運動を反復させると振戦の律動がその律動に置き換わる (entrainment)

5. 本人の性格や環境に心因性要素が存在する

Case.18 シャルコーの有名な講義写真:閉眼で後屈→心因性に多い

Case.19 下顎・口唇が右に偏奇

Case.20 Orthostatic myoclonus: 観察していないときの態度が決め手になって診断できた

Case.21 心因性ジスキネジー:対側の手でリズムを取ると改善

Case.22 心因性振戦:中学3年生の受験生。下肢の振戦。臥位になると変動し、膝を左右に動かす。座位で足を浮かせると上下に動かす。足の運動の周波数が手の運動の周波数に置き換わる。

Case.23 spinal myoclonus?: C4-5に限局。s-EMGでは自分で肩を挙上させると周波数が早くなる。肩を叩いて誘発すると、700 msの不応期が観察された。最終的に心因性と診断。

Case.24 propriospinal myoclonus: paraspinalの筋が収縮することで、腹部の筋が動く→心因性ではない

Case.25 reflex propriospinal myoclonus (心因性):腹部の前屈には心因性が多い。propriospinal myoclonusでは diffusion tensor tractographyで神経線維の乱れが見えたとする報告がある。

Case.26 mimicking-propriospinal myoclonus:練習したら propriospinal myoclonusの動きはマネできる→心因性多いのでは?

Case.27 Abdominal tic

Case.28 fixed dystonia

心因性不随意運動

心因性不随意運動

[Q&A]

Q: dystonia, tremorの違いは、拮抗運動の有無ではないのか?持続時間で説明して良いのか?

A: 表面筋電図で、振戦は backgroundがない、ミオクローヌスは backgroundがある。ただし早いと鑑別が難しいことが多い。振戦は必ずしも reciprocalではなく、同時に出ることもある。右手は reciprocal、左は同時ということもある。

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Xa阻害の阻害なのだ

By , 2013年3月9日 6:52 PM

非弁膜症性心房細動による脳塞栓症予防には、ワルファリンという薬剤が良く使われます。しかし、頻回に採血をして量を調節する必要があったり、薬物や食事の相互作用を気にしなければならないといった欠点から、近年第 Xa因子阻害薬という新しいタイプの抗凝固薬が開発されました。リバロキサバン (イグザレルト) 、アピキサバン (エリキュース) といったの薬剤が立て続けに登場し、多くの患者さんが恩恵を受けています。これらの薬剤は、高齢者、腎障害、低体重、抗血小板薬との併用などでは重篤な出血性合併症がみられることがあるので注意が必要ですが、一般的にはワルファリンに比べて出血性合併症は若干少ないと言われています。

第 Xa因子阻害薬の欠点として、拮抗薬がないというのが挙げられます。古典的な薬剤だと、例えばヘパリンならプロタミン、ワルファリンならビタミンKで拮抗できるので、内服している患者さんが出血しても直ぐに効果をキャンセルすることができます。ところが Xa阻害薬はそれが出来ないのです。

しかし、2013年3月3日の Nature Medicineに、その第 Xa因子阻害薬の作用を “解毒” できる組み換え蛋白質 (r-Antidote, PRT064445) が報告されました。

A specific antidote for reversal of anticoagulation by direct and indirect inhibitors of coagulation factor Xa

Genmin Lu, Francis R DeGuzman, Stanley J Hollenbach, Mark J Karbarz, Keith Abe, Gail Lee, Peng Luan, Athiwat Hutchaleelaha, Mayuko Inagaki, Pamela B Conley, David R Phillips & Uma Sinha
AffiliationsContributionsCorresponding author
Nature Medicine (2013) doi:10.1038/nm.3102
Received 02 December 2012 Accepted 23 January 2013 Published online 03 March 2013

Abstract
Inhibitors of coagulation factor Xa (fXa) have emerged as a new class of antithrombotics but lack effective antidotes for patients experiencing serious bleeding. We designed and expressed a modified form of fXa as an antidote for fXa inhibitors. This recombinant protein (r-Antidote, PRT064445) is catalytically inactive and lacks the membrane-binding γ-carboxyglutamic acid domain of native fXa but retains the ability of native fXa to bind direct fXa inhibitors as well as low molecular weight heparin–activated antithrombin III (ATIII). r-Antidote dose-dependently reversed the inhibition of fXa by direct fXa inhibitors and corrected the prolongation of ex vivo clotting times by such inhibitors. In rabbits treated with the direct fXa inhibitor rivaroxaban, r-Antidote restored hemostasis in a liver laceration model. The effect of r-Antidote was mediated by reducing plasma anti-fXa activity and the non–protein bound fraction of the fXa inhibitor in plasma. In rats, r-Antidote administration dose-dependently and completely corrected increases in blood loss resulting from ATIII-dependent anticoagulation by enoxaparin or fondaparinux. r-Antidote has the potential to be used as a universal antidote for a broad range of fXa inhibitors.

著者らは第 Xa因子阻害薬を “解毒” するために、第 Xa因子に似ているけれど活性のない蛋白質を作製しました。この組み換え蛋白質 r-Antidote (PRT064445) は、46-78番目のアミノ酸を欠失させたことにより膜結合 γ-カルボキシグルタミン酸 (γ-carboxyglutamic acid; GLA) ドメインを欠き、プロテアーゼ触媒三残基のセリン残基をアラニンに置換 (S419A) したことで触媒的に不活性になっています。また、活性化ペプチド ArgLysArg (RKR) を RKRRKRに置換してあります。

Figure1A

Figure1A

この組み換え蛋白質はそれ自体活性を持ちませんが、第 Xa因子に似ているので第 Xa因子阻害薬とは結合します。第 Xa因子阻害薬は r-Antidoteにくっついてしまうせいで、r-Antidoteの用量依存的に作用が減弱することになります。動物実験では、マウス、ラット、ウサギでこれらの効果を確認することができました。またそればかりではなく、r-Antidoteは低分子ヘパリンや活性化 AT-IIIとも結合し、間接的に第 Xa因子を阻害する薬剤の活性にも影響を与えるようです。実際にラットを用いた実験では、enoxaparin (低分子ヘパリン) や fondaparinuxといった AT-III依存的抗凝固薬による出血を抑制することができました。

このように第 Xa因子阻害薬の作用を減弱する薬が開発されれば、薬剤をより安全に使用できることになります。第 Xa因子阻害薬を飲んでいる患者が出血してしまった時に効果を打ち消すことができるからです。また、抗凝固薬をずっと使用しておいて手術直前に作用を拮抗させるといった使い方も可能になるでしょう。第 Xa因子に間接的に作用する薬剤でも効果がありそう、というのも見逃せない点です。

いつ臨床の舞台に登場するかは不明ですが、安全に使用出来ることが確認できれば、登場が待ち遠しい薬剤です。

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YAKINIKU

By , 2013年3月7日 7:39 AM

3月6日、来日中の成田達輝氏と、医師仲間 2人とで「翔山亭」に焼肉を食べに行きました。成田氏は、2010年のロン=ティボーコンクール、2012年のエリザベートコンクールでそれぞれ 2位に入賞した新進気鋭のヴァイオリニストです。

・ロン・ティボー国際音楽コンクール(成田達輝)

・Tatsuki Narita | Paganini | Violin Concerto No.1 | Cadenza | Queen Elisabeth

美味しい焼肉を食べながら、日本とフランスの音楽教育の違い、これまで共演した指揮者/オーケストラ、現在活躍中の演奏家など、様々なトークで盛り上がりました。

驚いたのが、新作ヴァイオリンとオールドヴァイオリンを弾き比べる実験に、成田氏が参加していたと告げられたことでした。この実験はニュースになり、このブログでも過去に紹介しました (論文はコチラ)。

成田氏に伺うと、ニスの匂いでは、どの楽器かわからなかったそうです。また、知り合いと「舐めてみたらニスの味でわかるかもよ?」なんて冗談を言っていたことを明かしてくれました。ちなみにその実験で成田氏が一番素晴らしいと感じた楽器は、ストラディバリだったそうです。

成田氏は今年日本でいくつかコンサートを予定しているようなので、時間を作って是非聴きに行きたいと思います。

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Kyoto Heart Study

By , 2013年3月6日 7:49 AM

2012年末~2013年初旬にかけて、バルサルタン (商品名ディオバン) に関する臨床研究 “Kyoto Heart Study” についての論文が立て続けに撤回されました。

Journal retracts two papers by Japanese cardiologist under investigation

Study of blood pressure drug valsartan retracted

日本循環器学会は京都府立医大に調査を依頼したようですが、大学側は 3教授による内部調査のみで済ませたようです。3教授にしてみても、他科の教授のクビを切ることになる報告書を作れるわけないですよね・・・。玉虫色の調査結果となりました。

しかし、このスキャンダルは一般紙でも取り上げられることになりました。

降圧剤論文撤回:学会が再調査要請 京都府立医大に不信

毎日新聞 2013年02月20日 15時00分

京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受け撤回された問題で、日本循環器学会が吉川敏一・同大学長に対し再調査を求めていたことが20日分かった。大学側は今年1月、捏造(ねつぞう)などの不正を否定する調査結果を学会に出していたが、学会は納得せず不信感を抱いている。

問題になっているのは松原弘明教授(55)が責任著者を務め、09〜12年に日欧の2学会誌に掲載された3論文。患者約3000人で血圧を下げる効果などが確かめられたとする内容だ。昨年末、3本中2本を掲載した日本循環器学会が「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決めるとともに、学長に事実関係を調査するよう依頼した。

しかし大学は調査委員会を作らず、学内の3教授に調査を指示。「心拍数など計12件にデータの間違いがあったが、論文の結論に影響を及ぼさない」との見解を学会に報告し、松原研究室のホームページにも同じ内容の声明文を掲載した。

学会はこれに対し、永井良三代表理事と下川宏明・編集委員長の連名で2月15日付の書面を吉川学長に郵送した。(1)調査委員会を設け、詳細で公正な調査をする(2)結論が出るまで、松原教授の声明文をホームページから削除する−−ことを要請している。

毎日新聞の取材に、学会側は「あまりにもデータ解析のミスが多く、医学論文として成立していないうえ、調査期間も短い。大学の社会的責任が問われる」と説明。大学は「対応を今後検討したい」とコメントを出した。

バルサルタンの薬の売り上げは薬価ベースで年1000億円以上。多くの高血圧患者が服用している。【河内敏康、八田浩輔】

騒ぎが大きくなったためか、最終的には、責任者の教授は辞任に追い込まれました。

京都府立医大:責任著者の教授、辞職へ 降圧剤論文撤回で

毎日新聞 2013年02月28日 02時30分

京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受けて撤回された問題で27日、論文の責任著者の松原弘明教授(55)が大学側に月末での辞職を申し出、受理されたことが大学への取材で分かった。松原教授は大学に対し、「大学や関係者に迷惑をかけた」と説明したという。

大学によると、辞職申し出は2月下旬。大学を所管する府公立大学法人が受理した。

問題になっているのは、09〜12年に日欧2学会誌に掲載された3論文。血圧を下げる効果に加え、脳卒中のリスクを下げる効果もあるかなどを約3000人の患者で検証した。

3論文のうちの2本を掲載した日本循環器学会は昨年末、「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決め、吉川敏一学長に調査を依頼。これに対し、大学は学内3教授による「予備調査」で、捏造(ねつぞう)などの不正を否定する結果を学会に報告した。その後、学会は再調査を求めており、大学は「対応を検討中」としている。【八田浩輔】

ここにきてやっと、京都府立医大は 3月 1日付けで調査本部を設置しました。

「Kyoto Heart Study」に係る研究発表論文に関する対応について

 本学大学院医学研究科の研究グループが実施した臨床研究「Kyoto Heart Study」の発表論文に係る学会誌からの撤回案件につきましては、次のとおり対応することとしましたので、お知らせします。
  なお、本学の研究活動につきましては、今後とも、なお一層、研究者の行動規範等の徹底を図っていくこととします。
 1  本学研究者が行う研究活動の「知の品質管理」を常に行うことにより、本学の研究活動の質を確保するために、学長を本部長とする「京都府立医科大学研究活動に関する品質管理推進本部」を平成25年3月1日付けで設置したこと。
  具体的な取組内容
   (1)研究活動の質を確保するための支援
   (2)研究活動上の不正を防止するための指導、啓発
   (3)研究論文内容の精査力向上のための研修、支援 など
 2 「京都府立医科大学研究活動に関する品質管理推進本部」の中に「Kyoto Heart Study精度検証チーム」(外部の有識者を含む6~7名程度のチーム員で構成)を早急に設置し、「Kyoto Heart Study」の臨床研究の精度の検証を行うこととしたこと。

多くの患者さんたちが研究に協力してくれていたのに、この医師たちはどういう気持でずさんなデータ処理をしていたのでしょうか?そればかりでなく、医師は臨床研究の結果が記された論文を治療の根拠にするため、誤った論文はそのまま患者さんの不利益になります。

こうなった以上は、(場合によっては生データを開示して) 何が問題だったか徹底的に膿を出してほしいものです。もしここで中途半端な報告が出ると、「京都府立医大の臨床研究は、こんな杜撰にやっても咎められない環境で行われているのか」と周囲から見られることになります。

責任者の教授は、論文不正ではなくデータの解析ミスを主張していますが、彼は過去に研究不正の疑惑が取りざたされており、信憑性に欠けます (最近さらに別の論文が撤回されています)。本当に不正がなかったか追求する必要があります。

もっとも、今回の研究に関しては、研究結果が医師の実感や欧米での研究と解離 (ARBにそこまでの脳卒中予防効果はない) していたため、勘の良い医師たちは信じていなかったのも事実です。この問題が話題になる前に、既に論文に問題があることを指摘していた人もいます。

余談ですが、バルサルタンには他にも怪しげな研究があり、かなり手厳しい批判がされています。では悪い薬かというとそういう訳ではありません。脳卒中予防において、一番大事なのは、血圧を下げることです。副作用なく血圧を下げられれば、とりあえずの目標達成といえます (ただし、どこまで下げれば良いかには諸説あり、最近ではあまりにも下げすぎるのは逆に良くないともされています)。バルサルタンは、そういう意味では優れた薬剤です。しかし、その上で同系統の薬剤に対する優位性を出すには、血圧を下げるプラスアルファの効果 (pleiotropic effect) が大事になります。”Kyoto Heart Study” はこういう状況下で、背伸びをした結果を出そうとして、おそらくデータを都合よく解釈してしまったのでしょう。普通は、あまりに常識から離れたデータが出たら、データを疑って解析し直してみるものだとは思いますけれど、そのまま発表されたのには、恣意的な何かがあったのかもしれません。

今回の件が研究の不正だったかどうかは今後の調査結果を待つ必要がありますが、研究不正についてノーベル賞学者の野依良治先生の論文を元に、安西祐一郎氏が素晴らしい文章を書いていますので、是非御覧ください。

科学研究の目的はトップジャーナルに論文を載せることなのか?

その他、研究不正について書かれたいくつかのリンクを貼っておきます。

医学論文の捏造

Vol.128 論文捏造疑惑

研究不正が起きる根本原因について

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C9orf72での RANTing

By , 2013年3月5日 10:08 PM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 研究で、現在最もホットな遺伝子は C9orf72かもしれません。このブログでも何度か紹介しています。

2011年9月、C9orf72のイントロン領域における GGGGCC 6塩基リピートがフィンランド人 (Finnish) において孤発性 ALS患者の 21.1%を占めることが報告され、大きな衝撃を与えました。その後、さまざまな国における遺伝子変異の頻度の報告が相次いでいますが、国によりかなり状況は異なるようです。

C9orf72について、2013年 2月 20日の Neuron誌に興味深い論文が掲載されました。その論文は同誌の “Previews” で注目の論文として紹介されています。まずは紹介記事を示します。

RANTing about C9orf72

Neuron, Volume 77, Issue 4, 597-598, 20 February 2013
10.1016/j.neuron.2013.02.009

Refers to: Unconventional Translation of C9ORF72 GG…

Authors

Tammaryn Lashley,John Hardy,Adrian M. Isaacssend emailSee Affiliations

Summary

A noncoding repeat expansion in the C9orf72 gene is the most common genetic cause of frontotemporal dementia and amyotrophic lateral sclerosis. In this issue of NeuronAsh et al., 2013 show that despite being noncoding the repeats are translated, leading to widespread neuronal aggregates of the translated proteins.

C9orf72がどのようにして ALSの発症に関与しているかはわかっていませんが、これまで 2つのメカニズムが推測されていました。

① gain of function

筋緊張性ジストロフィーのように noncoding lesionの異常な反復配列がみられる疾患では、機能獲得を起こすことが知られています。こうした疾患では、転写された repeat RNAが核に RNA fociという凝集体を形成します。RNA fociは RNA結合蛋白を独占してしまい、RNA結合蛋白の喪失が最終的に疾患を発症させます。C9orf72患者において RNA fociの存在が報告されています。

② loss of function

C9orf72は、Rab-GTPaseを活性化する GDP/GTP exchange factors (GEFs) である DENN蛋白との構造上の類似性から、小胞輸送に関与しているのではないかと推測されています。C9orf72の機能喪失を支持する知見として、 GGGGCC反復配列を含む転写産物レベルが患者の脳で低下していることが挙げられます。

今回、Ashらにより、第 3の仮説が登場しました。

③ RAN translation

Huntington病や一部の脊髄小脳失調症のように CAGリピートがみられる疾患において、開始コドンを介さないリピート関連翻訳 (repeat-associated non-ATG translation; RAN translation) がみられることが近年報告されました。RAN translationが起きるには、最低 58個の CAGリピートが必要で、RAN翻訳産物は凝集体を形成します。

Ashらは、C9orf72の CCCCGG配列で RAN translationが起こっているか調べるため、poly-(glycine-proline), poly-(glycine-alanine), poly-(glycine-arginine) に対する抗体を作製し、C9orf72変異 ALS患者の神経組織で免疫染色しました。すると、しばしば Cporf72変異 ALS患者で認められる p62陽性/TDP-43陰性封入体と似たような形状・分布で C9RANT陽性神経凝集体が染色されました。

“Previews” ではこのように、非常にわかりやくポイントが示されていました。そして実際の論文は下記です。

Unconventional Translation of C9ORF72 GGGGCC Expansion Generates Insoluble Polypeptides Specific to c9FTD/ALS

Neuron, Volume 77, Issue 4, 639-646, 12 February 2013
10.1016/j.neuron.2013.02.004

Referred to by: RANTing about C9orf72

Authors

  • Highlights
  • C9ORF72-expanded GGGGCC repeat RNA undergoes unconventional translation
  • C9ORF72 RAN translation product accumulates in insoluble inclusions in the brain
  • Inclusions are specific to c9FTD/ALS and not in other neurodegenerative disorders
  • C9ORF72 RAN translation peptides maybe a potential biomarker and therapeutic target

Summary

Frontotemporal dementia (FTD) and amyotrophic lateral sclerosis (ALS) are devastating neurodegenerative disorders with clinical, genetic, and neuropathological overlap. Hexanucleotide (GGGGCC) repeat expansions in a noncoding region of C9ORF72 are the major genetic cause of FTD and ALS (c9FTD/ALS). The RNA structure of GGGGCC repeats renders these transcripts susceptible to an unconventional mechanism of translation—repeat-associated non-ATG (RAN) translation. Antibodies generated against putative GGGGCC repeat RAN-translated peptides (anti-C9RANT) detected high molecular weight, insoluble material in brain homogenates, and neuronal inclusions throughout the CNS of c9FTD/ALS cases. C9RANT immunoreactivity was not found in other neurodegenerative diseases, including CAG repeat disorders, or in peripheral tissues of c9FTD/ALS. The specificity of C9RANT for c9FTD/ALS is a potential biomarker for this most common cause of FTD and ALS. These findings have significant implications for treatment strategies directed at RAN-translated peptides and their aggregation and the RNA structures necessary for their production.

C9orf72において RAN translationがないか調べるため、著者らはまず poly-(glycine-proline), poly-(glycine-alanine), poly-(glycine-arginine) に対するポリクローナル抗体 (抗C9RANT抗体) を作製しました。論文の figure 1Aを見ると、なぜこの組み合わせのポリアミノ酸を調べなければいけないかがよくわかります。”GGGGCC” 反復のフレームシフトによって出来るアミノ酸が変わってくるからですね。。

figure1A

Figure. 1A

次に、著者らは作製された抗体を検定し、poly-(glycine-proline) peptideに対する抗体を用いるのが最も良いことを確認しました。

それから、ALSないし前頭側頭葉変性症 (FTLD) 患者の小脳組織を抽出し、Western blot及び dot blotを行いました。その結果、C9orf72変異のある患者ではバンドが検出された一方で、変異のない患者ではバンドは検出されませんでした。

さらに小脳組織から得られた pre-mRNAの塩基配列を調べると、開始コドンと GGGGCC配列の間に複数の終止コドンがあることがわかりました。したがって、GGGGCC配列は開始コドン (ATG) によって翻訳されていないことがわかりました。つまり、GGGGCCは開始コドンを介さない翻訳 (=リピート関連翻訳) が行われていることになります。

続けて免疫組織化学的評価をしました。C9orf72変異 ALSでは、TDP-43陰性ユビキチン陽性ないしユビキチン結合蛋白 (p62, ubiquilin-2) 陽性封入体が出現することが知られています。これらの封入体と、C9RANT抗体陽性の神経細胞質/核内封入体は形態的に似通っていました。抗 C9RANT抗体に反応したのは、灰白質および神経内封入体のみで、血管内皮細胞、平滑筋細胞、白質、グリアでは反応しませんでした。

C9RANT陽性封入体が脳内のどこに出やすいか、30症例で調べたのが Figure 2Qです。

Figure. 2Q

Figure. 2Q

C9RANT陽性封入体が最も豊富に見られたのは、p62陽性封入体がみられる小脳でした。しかし、p62陽性封入体とは異なり、外側膝状体や内側膝状体でも検出されました。

C9RANT陽性封入体は、C9orf72変異を伴わない FTLD/ALSや他の変性疾患 (アルツハイマー病、レビー小体病、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症) では検出されませんでした。トリプレットリピート病 (ハンチントン病、脊髄小脳失調症 3型、球脊髄性筋萎縮症) では、p62陽性封入体が検出された一方で、C9RANT陽性封入体は検出されませんでした。

また、C9orf72変異を伴う患者において、骨格筋、末梢神経、後根神経節、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、精巣を調べましたが、精巣のセルトリ細胞を除いて、C9RANT陽性封入体は検出されませんでした。

 著者らは、C9orf72に対する髄液の immunoassayが進歩すれば、疾患の活動性や進行に対するマーカーとして使えるのではないかと考えております。

C9orf72は ALSにおけるホットトピックスということもあり、どんどんと知見が積み重なっています。今回の C9RANTは、分子メカニズムという観点からはかなり意義のある報告です。しかし、知見が積み重なるにつれてますます問題が複雑化している感もあります。

(2013.3.8 追記 )

ブログ “First Author’s” に、この領域の研究著者による解説が載っていましたので紹介しておきます。

前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症の原因である非翻訳領域のGGGGCCリピート配列はジペプチドリピートタンパク質に翻訳され脳に蓄積する

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ALSの新規遺伝子

By , 2013年3月4日 8:30 AM

2013年 1月に、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)  の遺伝子関連で、興味深い報告が 2報ありました。

まずは、2013年 1月 4日の Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration誌に報告された新規原因遺伝子です。 

Detection of a novel frameshift mutation and regions with homozygosis within ARHGEF28 gene in familial amyotrophic lateral sclerosis

Rho guanine nucleotide exchange factor (RGNEF) is a novel NFL mRNA destabilizing factor that forms neuronal cytoplasmic inclusions in spinal motor neurons in both sporadic (SALS) and familial (FALS) ALS patients. Given the observation of genetic mutations in a number of mRNA binding proteins associated with ALS, including TDP-43, FUS/TLS and mtSOD1, we analysed the ARHGEF28 gene (approx. 316 kb) that encodes for RGNEF in FALS cases to determine if mutations were present. We performed genomic sequencing, copy number variation analysis using TaqMan real-time PCR and spinal motor neuron immunohistochemistry using a novel RGNEF antibody. In this limited sample of FALS cases (n=7) we identified a heterozygous mutation that is predicted to generate a premature truncated gene product. We also observed extensive regions of homozygosity in the ARHGEF28 gene in two FALS patients. In conclusion, our findings of genetic alterations in the ARHGEF28 gene in cases of FALS suggest that a more comprehensive genetic analysis would be warranted.

その遺伝子の名前は ARHGEF28といいます。その遺伝子産物は Rho guanine nucleotide exchange factor (RGNEF)  というタンパク質です。RGNEFの役割を知るためには、まずニューロフィラメント (Neurofilament; NF) を理解する必要があります。

細胞は、形態を維持したり、細胞内輸送を行うために ”細胞骨格” と呼ばれる構造物を持ちます。細胞骨格はアクチンフィラメント、中間径フィラメント、微小管に分類されます。ニューロフィラメントは神経細胞に広く分布している中間径フィラメントです。分子量が 68 kDaの低分子量ニューロフィラメント (low molecular weight NF; NFL), 160 kDaの中分子量ニューロフィラメント (middle molecular weight NF; NFM), 200 kDaの高分子量ニューフィラメント (high molecular weight NF; NFH) があり、ヘテロ多量体を構成します。

RGNEFは NFLの mRNAに結合し、3’末端非翻訳領域の不安定化を介して、mRNAの安定性に影響を与え、細胞の NFLレベルを調節します。中間径フィラメントの化学量論的異常は運動ニューロン死を起こすことが過去に報告されていますし、NFL量の調節は ALSの NF陽性封入体の出現にも関与しているのではないかと言われています。

今回著者らは、既知の SOD1, FUS/TLS, TARDBP変異のない 7例の家族性 ALS患者 (男性 5名, 女性 2名, 年齢 54-71歳) を調べました。ただし、4例 (ALS-3, ALS-5, ALS-6, ALS-7) では C9orf72変異がありました。

遺伝子検査の結果、下記の 3例で ARHGEF28変異を認めました。

・ALS-2 : Homozygosis

・ALS-4 : Homozygosis

・ALS-5 : Exon 6と Intron 6の境界に一塩基欠失あり、frameshift もしくは spilicing異常の原因となっている。結果として遺伝子産物は非常に短くなる。

病理学的に RGNEF陽性細胞質封入体は ALS-1, ALS-2, ALS-4~6で確認されました。RGNEF陽性細胞質封入体と C9orf72遺伝子変異の間に明らかな関連はなさそうでした。

ALSでは RNA代謝の障害が話題になっていますが、RNA結合蛋白質である RGNEF、それもニューロフィラメントに関係した蛋白質の発現に関与する遺伝子が同定されたというのは、興味深いことだと思います。

2013年 1月に興味を引いたもう一つの報告は、p62という蛋白質をコードする SQSTM1 (squestosome 1) 遺伝子についてです。p62はユビキチン会合ドメインと LC3認識配列を持ち、不良蛋白質を処理するユビキチン・プロテアソーム系、オートファジー両者に関係した蛋白質として近年注目されています。2011年 11月の archives of neurology誌に、SQSTM1米国で孤発性 ALSの約 4.4%を占める原因遺伝子として報告されました。今回、2013年 1月 29日号の Neurology誌には日本人での 解析結果が掲載されています。

Mutations in the gene encoding p62 in Japanese patients with amyotrophic lateral sclerosis

Neurology January 29, 201380:458-463
Hirano M, Nakamura Y, Saigoh K, Sakamoto H, Ueno S, Isono C, Miyamoto K, Akamatsu M, Mitsui Y, Kusunoki S.

Abstract
OBJECTIVE:
The purpose of this study was to find mutations in the SQSTM1 gene encoding p62 in Japanese patients with amyotrophic lateral sclerosis (ALS), since this gene has been recently identified as a causative gene for familial and sporadic ALS in the United States.
METHODS:
We sequenced this gene in 61 Japanese patients with sporadic and familial ALS. To our knowledge, we describe for the first time the clinical information of such mutation-positive patients.
RESULTS:
We found novel mutations, p.Ala53Thr and p.Pro439Leu, in 2 patients with sporadic ALS. The clinical picture of the mutation-positive patients was that of typical ALS with varied upper motor neuron signs. Although this gene is causative for another disease, Paget disease of bone (PDB), none of our patients showed evidence of concomitant PDB.
CONCLUSION:
The presence of mutations in this racial population suggests worldwide, common involvement of the SQSTM1 gene in ALS.

孤発性及び家族性 ALS 61例の遺伝子を調べた所、2例に p.Ala53Thr, p.Pro439Leu変異が見つかりました。SQSTM1遺伝子は骨 Paget病の原因遺伝子としても知られていますが、今回の症例の中に骨 Paget病の存在を示唆する患者はいませんでした。

ALSの原因遺伝子はこのように続々と見つかってきていますが、それらがどうやって疾患を引き起こしているか、詳細なメカニズムの解明が待たれます。

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脱線

By , 2013年3月3日 10:12 AM

3月 2日、大学での業務を終えて秋田での当直に向かいました。14時 22分に大宮駅で新幹線こまち 29号に乗車。強風の影響で所々徐行運転をしながら、5分遅れで 16時 30分頃盛岡駅に到着しました。そこで「こまち 25号が秋田駅手前で脱線したため、秋田新幹線は運転打ち切りです」と突然のアナウンス。こまちから切り離された新幹線 “はやて” 29号は予定通り青森方面に向かって行きました。

こまち車内の客達はみんな冷静に新幹線を降り、アナウンスで誘導されたコンコースに集まりました。そこで、バスによる代替輸送について知らされました。ところがバスが何時に出るのかはわかりません。周囲の話し声を聞いていると「3時間」という声が聞こえました。病院に電話したところ、タクシーで向かうように言われ、タクシーに乗りました。

しかし途中からは猛吹雪で、視界がほとんどなく、スピードが出ません。何度も吹き溜まりに突っ込みました。途中、雪のため起きたと思われる交通事故現場の横を通り、しばらく進むとそこに向かうパトカーとすれ違いました。

なんとか病院に到着して当直を開始すると、病院に向かう途中で見かけた交通事故現場からの救急車が到着!交通事故の状況がわかっている分、診察はスムーズにいきました。

何かドタバタしましたが、たった今当直が無事終わって一安心です。これから駅に向かい、東京に帰る方法を模索します。

新幹線脱線:暴風雪の秋田で 乗客130人は無事

毎日新聞 2013年03月02日 19時13分(最終更新 03月03日 01時49分

猛吹雪の中、脱線し停止した秋田新幹線。一番右の車両が脱線した先頭車両とみられる=秋田県大仙市で2013年3月2日午後7時29分、田原翔一撮影
猛吹雪の中、脱線し停止した秋田新幹線。一番右の車両が脱線した先頭車両とみられる=秋田県大仙市で2013年3月2日午後7時29分、田原翔一撮影

2日午後4時5分ごろ、秋田県大仙市神宮寺のJR奥羽線神宮寺−刈和野駅間で、東京発秋田行き秋田新幹線こまち25号(6両編成)が脱線したと乗務員からJR秋田支社に連絡があった。車体は転覆しておらず、乗客約130人にけがはないが、2人が嘔吐(おうと)など気分の不調を訴え、病院に搬送された。同新幹線の脱線は在来線区間を含めて初めて。事故を受け国土交通省運輸安全委員会の鉄道事故調査官2人が3日未明、現地に到着し、事故原因の調査に乗り出した。

同支社によると、車両の下から「ドン」と音がしたため、運転士がブレーキをかけて停車。外に出て確認したところ、現場付近には雪が積もり、先頭車両の進行方向右側の1軸目と2軸目の車輪が内側に脱線していた。左側の車輪の状況は不明。事故発生の6分前に在来線の奥羽線が現場を通過した際、異常はなかったという。同新幹線は盛岡−秋田駅間で上下線12本の運転を見合わせた。3日に再開できるかは未定。

同支社によると、現場一帯の除雪は2月25日夜から26日朝にかけて実施。それ以降は走行できないような積雪は確認されず、除雪を行っていなかった。運行制限は最大瞬間風速20メートル以上で徐行、同25メートル以上で運転停止になるが、JRの風速計で基準超えはなかった。積雪についての基準はないという。脱線事故は在来線の直線区間で起き、当時は時速20キロに減速して運行していた。

乗客の救出は猛吹雪のため難航し、秋田支社に設置された現地対策本部は、乗客に水と乾パンを配った。秋田駅に移送するためのバス3台に乗り換えるため、乗客が新幹線を降り始めたのは午後10時5分ごろ。乗客は先頭車両から外に出て、徒歩で約100メートル離れたバスに向かった。秋田駅には同11時40分ごろに到着した。同駅と反対方向に向かう乗客にはタクシーも用意された。

2日は発達した低気圧が北海道を通過した影響で冬型の気圧配置が強まり、北日本で大荒れの天候だった。気象庁によると、最大瞬間風速は秋田市で26.0メートル、大仙市で23.0メートルを記録。秋田県ではこの日7地点で3月としては過去最大の瞬間風速になった。同日午後5時現在の積雪は、秋田市で平年比の5倍近い47センチ、大仙市に近い秋田市・大正寺で同2倍超の93センチとなっている。【小林洋子、田原翔一、池田一生】

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