プラスグレル

By , 2014年5月1日 7:21 PM

2014年3月24日にプラスグレルの製造販売が日本でも認可されたようです。チエノピリジン系薬剤では、チクロピジン (パナルジン)、クロピドグレル (プラビックス) に続いて 3剤目ですね。

プラスグレル (エフィエント®):3成分目のチエノピリジン系抗血小板薬は画期的な新薬か?

今回の適応は「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患(急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞)」のようですが、薬効的には、おそらく将来脳梗塞の治療にも用いられるようになるのでしょう。今回はプラスグレルでしたが、チカグレロルがいつ日本で認可されるかも気になります。

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医学的研究のデザイン

By , 2014年5月1日 6:53 PM

医学的研究のデザイン -研究の質を高める疫学的アプローチ- 第3版 (木原雅子/木原正博訳, メディカル・サイエンス・インターナショナル)」を読み終えました。硬派な臨床疫学の本です。

臨床医としての知識のアップデートには、質の高い臨床研究の論文を多く読むことが不可欠です。しかし、実際には世の中に出てくる臨床研究の質は玉石混交です。特に製薬会社の息がかかった臨床研究には、製薬会社にとって結果が有利になるようなバイアスがかかっている場合が多々あります。研究の質を判断するためには、まず試験デザインが適切かどうか、その試験デザインではどのようなバイアスがかかり得るか判断出来なければいけません。

また、自分自身が臨床研究を行うときにも、研究デザインに不備があると、どんなに素晴らしい統計手法を使用したとしても研究は意味を持たなくなります。臨床研究にとって、試験デザインというのは骨格をなすもので、非常に重要です。

本書は、それぞれの試験デザインについて、豊富な例題を用いながら詳細に解説しています。陥りやすいピットフォールも丁寧に説明されています。また、サンプルサイズを知るためのパワー計算の方法についても充実しています。臨床試験を行う上での倫理的な問題についても、しっかりと書かれています。私は臨床疫学について勉強を始めたばかりですが、きちんとした基礎を作ってくれそうな本でした。多くの臨床医に読んでいただきたい本です。

余談ですが、本書の 253ページに「科学的な違反行為」という項があり、この部分の記載が今話題の小保方問題を理解するのに役立つと思うので、最後に紹介しておきます (アメリカだけでなく、日本でも通用する記述だと思います)。

科学的な違反行為

研究者が研究データを捏造したり、データを改ざんしたり、適格ではない対象者を臨床試験に用いたり、といった事例がいくつか発覚しています。そうした行為は、誤った結論を導き、研究に対する社会の信頼を損ない、研究費の公的補助の妥当性をさえ危機に曝すことにもなります。

連邦政府は、研究における違反行為 misconductを捏造 (ねつぞう)、改ざん、剽窃 (ひょうせつ) の 3つに狭義に定義しています (Office for Research Integrityの Webサイトを参照)。捏造 fabricationとは、架空のデータを作って、それを記録したり、報告したりすることを言い、改ざん falsificationとは、研究試料や機器や研究手順に操作を加えたり、あるいは一部のデータを変更したり削除したりして、データを作り変えることを言います。剽窃 plagiarismとは他の人の考えや研究結果、あるいは文章を適切な断りもなく自分のものであるかのように装って用いることです。

連邦政府によるこうした違反行為の定義は、本人が違反行為であることを承知の上であえて行ったことを前提としています。つまり、通常の研究の過程で、知らずに行ったこと honest errorや科学的な見解の相違と見なされるものは、この中には含まれません。また、連邦政府の定義の中には、二重出版 double publication, 研究試料の独り占め、セクシャルハラスメントといった違反行為は含まれません。こうした行為は、連邦政府ではなく、研究責任者や研究施設が扱うべき問題と考えているからです。

これらの違反行為についての訴えがあった場合には、研究助成組織や研究施設は、公正かつ迅速に、尋問や調査を実施しなければなりません。調査の間は、告発者 whistleblowerや被疑者はともに尊重される権利があります。告発者は、復讐の危険から保護される必要があり、被疑者は嫌疑の内容を知り、それに反論する権利が保証されなければなりません。違反行為が明らかになった場合には、研究費支給の差し止め、将来にわたる研究費申請の禁止や、その他の行政的、刑法的、民事的懲罰が課せられることになります。

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