ヴァイオリン・フェスタ・トウキョウ2014

By , 2014年5月2日 5:49 AM

2014年4月27日に、サントリーホールに「ヴァイオリン・フェスタ・トウキョウ2014」を聴きに行きました。2014年4月23日に成田達輝さん達と青山の川上庵で食事をして、Bar Tizianoで飲んだ時に話題が出て、御招待頂いたのです。

このコンサートはサントリーホールの小ホールで行われましたが、奇しくも大ホールで予定されていた佐村河内守のコンサートは中止となっていました。

【公演中止】佐村河内 守 作曲 交響曲第1番≪HIROSHIMA≫

この公演は中止となりました。チケットの払戻しは2月17日(月)から5月7日(水)までお買い求めのプレイガイドにて承ります。中止に関するお問い合わせは、サモンプロモーション 0120-499-699 までお願い致します。
日時
2014年4月27日(日) 14:00 開演
指揮
金聖響
演奏
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

さて、小ホールで行われた「ヴァイオリン・フェスタ・トウキョウ2014」は、難曲ばかりがプログラムを飾っていましたが、いずれも非常に高いレベルで演奏されていました。

ヴィエニアフスキ:モスクワの思い出 Op.6 (河井勇人)
バッツィーニ:妖精の踊り Op.25 (深田麗音)
サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第 1番ニ短調 Op.75 第 2楽章 (小林香音)
サラサーテ:ナバーラ Op.33 (宮崎真莉子/宮崎真実子)
サラサーテ:カルメン幻想曲 Op.25 (後藤康)
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第 2番イ短調 Op.27-2 (北川千紗)
ジンバリスト:リムスキー・コルサコフの「金鶏」による演奏会用幻想曲 (見渡風雅)
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・協奏曲第 1番 Op.77 第3/4楽章 (千葉水晶)
ワックスマン:「カルメン」幻想曲 (岡本誠司)
フバイ:「カルメン」による華麗な幻想曲 (土岐祐奈)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第 29番イ長調 K.305 (293d)
サン=サーンス/イザイ編:ワルツ形式のカプリース (小川恭子)
ヴィエニアフスキ:華麗なるポロネーズ第 2番イ長調 Op.21 (宮川奈々)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第 7番ハ短調 Op.30-2 (大塚百合菜)
ミルシテイン:パガニーニアーナ (山根一仁)
ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲 (成田達輝/萩原麻未)

まず、最初のヴィエニアフスキを聴いてビックリしました。なんと、小学六年生がこの難曲をミスなく完璧に演奏していたからです。これは凄いことです。ただ、一つ課題を挙げるとしたら、ヴィブラートだと思います。G線も E線も同じように細かいヴィブラートをかけていたし、音が変わるときにヴィブラートが途切れて滑らかさを欠いていました。とはいえ、彼のセンスがあれば直ぐに解決できるでしょう。2曲目は、私の大好きな曲。これは中学 2年生の深田麗音さんによる演奏でした。左でのピチカートが余りクリアではないという課題は見えましたが、音程は正確で、ボウイングのテクニックも華麗でした。

続いて、小林香音さん~小川恭子さんまでが、高校生~大学生による演奏でした。一番印象に残ったのが、サラサーテのナバーラ。おそらく双子でしょうけれど、2人のヴァイオリニストが完璧にシンクロしていました。デュオでのレパートリーが十分に増えれば、普通に演奏活動ができるレベルだと思いました。

いずれも質の高い演奏が続く中、モーツァルトとベートーヴェンのソナタは、少し残念。これは演奏者の技術云々というより、それだけ音楽的に難しい作品だからでしょう。生涯かけて追求する作品ですね。

空気が一変したのは山根一仁さんが登場したときです。登場した時のオーラが、これまでの演奏家とは全然違いました。そして最初の音から釘付けになりました。山根さんの描く世界が広がり、これが「上手な演奏家」と「カリスマ性のある演奏家」の違いなのだろうと思いました。本当に素晴らしい演奏でした。

・Nathan Milstein ‘Paganiniana’

締めは、成田達輝さんと萩原麻未さんの演奏。ストラヴィンスキーの デュオ・コンチェルタンテでした。

・Stravinsky Duo Concertante (Dushkin/Stravinsky)

成田さんと萩原さんによるこの曲の演奏を聴くのは二回目だったので、初めて聴いた時のような衝撃はありませんでしたが、山根さんを除くこれまでの演奏家達に比べて表現力が際立っていました。意図を伝える力、表現の幅、音の繊細さが素晴らしかったです。世の中に上手い演奏家はゴマンといることはわかりましたが、やはりプラスアルファして聴かせるものがあるのが、トッププロということなのでしょうね。この日はヴァイオリン演奏を堪能しました。

いずれの演奏家もまだまだ若いですし、将来が楽しみです。

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プラスグレル

By , 2014年5月1日 7:21 PM

2014年3月24日にプラスグレルの製造販売が日本でも認可されたようです。チエノピリジン系薬剤では、チクロピジン (パナルジン)、クロピドグレル (プラビックス) に続いて 3剤目ですね。

プラスグレル (エフィエント®):3成分目のチエノピリジン系抗血小板薬は画期的な新薬か?

今回の適応は「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患(急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞)」のようですが、薬効的には、おそらく将来脳梗塞の治療にも用いられるようになるのでしょう。今回はプラスグレルでしたが、チカグレロルがいつ日本で認可されるかも気になります。

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医学的研究のデザイン

By , 2014年5月1日 6:53 PM

医学的研究のデザイン -研究の質を高める疫学的アプローチ- 第3版 (木原雅子/木原正博訳, メディカル・サイエンス・インターナショナル)」を読み終えました。硬派な臨床疫学の本です。

臨床医としての知識のアップデートには、質の高い臨床研究の論文を多く読むことが不可欠です。しかし、実際には世の中に出てくる臨床研究の質は玉石混交です。特に製薬会社の息がかかった臨床研究には、製薬会社にとって結果が有利になるようなバイアスがかかっている場合が多々あります。研究の質を判断するためには、まず試験デザインが適切かどうか、その試験デザインではどのようなバイアスがかかり得るか判断出来なければいけません。

また、自分自身が臨床研究を行うときにも、研究デザインに不備があると、どんなに素晴らしい統計手法を使用したとしても研究は意味を持たなくなります。臨床研究にとって、試験デザインというのは骨格をなすもので、非常に重要です。

本書は、それぞれの試験デザインについて、豊富な例題を用いながら詳細に解説しています。陥りやすいピットフォールも丁寧に説明されています。また、サンプルサイズを知るためのパワー計算の方法についても充実しています。臨床試験を行う上での倫理的な問題についても、しっかりと書かれています。私は臨床疫学について勉強を始めたばかりですが、きちんとした基礎を作ってくれそうな本でした。多くの臨床医に読んでいただきたい本です。

余談ですが、本書の 253ページに「科学的な違反行為」という項があり、この部分の記載が今話題の小保方問題を理解するのに役立つと思うので、最後に紹介しておきます (アメリカだけでなく、日本でも通用する記述だと思います)。

科学的な違反行為

研究者が研究データを捏造したり、データを改ざんしたり、適格ではない対象者を臨床試験に用いたり、といった事例がいくつか発覚しています。そうした行為は、誤った結論を導き、研究に対する社会の信頼を損ない、研究費の公的補助の妥当性をさえ危機に曝すことにもなります。

連邦政府は、研究における違反行為 misconductを捏造 (ねつぞう)、改ざん、剽窃 (ひょうせつ) の 3つに狭義に定義しています (Office for Research Integrityの Webサイトを参照)。捏造 fabricationとは、架空のデータを作って、それを記録したり、報告したりすることを言い、改ざん falsificationとは、研究試料や機器や研究手順に操作を加えたり、あるいは一部のデータを変更したり削除したりして、データを作り変えることを言います。剽窃 plagiarismとは他の人の考えや研究結果、あるいは文章を適切な断りもなく自分のものであるかのように装って用いることです。

連邦政府によるこうした違反行為の定義は、本人が違反行為であることを承知の上であえて行ったことを前提としています。つまり、通常の研究の過程で、知らずに行ったこと honest errorや科学的な見解の相違と見なされるものは、この中には含まれません。また、連邦政府の定義の中には、二重出版 double publication, 研究試料の独り占め、セクシャルハラスメントといった違反行為は含まれません。こうした行為は、連邦政府ではなく、研究責任者や研究施設が扱うべき問題と考えているからです。

これらの違反行為についての訴えがあった場合には、研究助成組織や研究施設は、公正かつ迅速に、尋問や調査を実施しなければなりません。調査の間は、告発者 whistleblowerや被疑者はともに尊重される権利があります。告発者は、復讐の危険から保護される必要があり、被疑者は嫌疑の内容を知り、それに反論する権利が保証されなければなりません。違反行為が明らかになった場合には、研究費支給の差し止め、将来にわたる研究費申請の禁止や、その他の行政的、刑法的、民事的懲罰が課せられることになります。

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