Adult polyglucosan body disease

By , 2015年2月17日 5:48 AM

2014年2月9日の JAMA neurologyに adult polyglucosan body disease (APBD) の遺伝子について論文が掲載されていました。

Deep Intronic GBE1 Mutation in Manifesting Heterozygous Patients With Adult Polyglucosan Body Disease

APBDは 50歳以降に、脊髄障害や末梢神経障害に起因する進行性の錐体路性四肢麻痺、遠位優位の感覚障害、神経因性膀胱、歩行障害を呈する疾患である。多くの患者はアシュケナージ系ユダヤ人で、glycogen branching enzyme gene (GBE1) p.Y329Sのホモ接合変異がある。一部の患者では、p.Y329Sと p.L224Pのヘテロ接合変異を合併している。30%の患者では、p.Y329Sのヘテロ接合変異のみで発症する。なぜ、このヘテロ接合変異のみで発症するのか、著者らは遺伝学的検索を行った。

16名のヘテロ接合の APBD患者を調べたところ、全例でグリコーゲン分岐鎖酵素活性がホモ接合 APBD患者より低下していることがわかった。これは、正常なはずの対立遺伝子が機能していないことを示している。

著者らが GBE1の mRNAの解析を行ったところ、全ての患者に c.986A>Cのホモ接合変異があり、もう一方の対立遺伝子 (正常であるはずの対立遺伝子) では mRNAを完全に欠いていることがわかった。さらに詳しく調べると、その対立遺伝子のイントロン領域には GBE1-IVS15 + 5289_5297delGTGTGGTGGinsTGTTTTTTACATGACAGGT変異があり、これが遺伝子トラップを形成し、異所性の last exonを形成していることがわかった。このため、mRNA転写産物は exon16と 3’非翻訳領域が機能せず、異常な GBEをコードしてしまい、酵素活性が 18%から 8%に低下している。

今回の研究で、ヘテロ接合変異の患者が何故 APBDを発症するかわかり、ひと通り遺伝学的な説明がついたと言えます。この研究でもそうですが、神経疾患でイントロン領域というのはホットな分野ですね。ALSでの C9orf72とか、SCA36での NOP56とか、様々なことがわかってきています。

APBDはユダヤ人に多く、一生診ることのない疾患かもしれませんが、神経内科医の教養として知っておきたいと思います。臨床所見は、下記のブログがまとまっています。

Adult polyglucosan body disease という病気が、ある。

 

Post to Twitter


Panorama Theme by Themocracy