くも膜下出血と頭部CT

By , 2016年3月30日 7:49 PM

くも膜下出血の CTでの検出率は、機器の進歩とともに良くなってきているはずです。最近の CT機器での診断精度はどうなのか。Stroke誌に meta-analysisの結果が掲載されていました (2016年1月21日 published online)。

Sensitivity of Early Brain Computed Tomography to Exclude Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Systematic Review and Meta-Analysis

A total of 882 titles were reviewed and 5 articles met inclusion criteria, including an estimated 8907 patients. Thirteen had a missed SAH (incidence 1.46 per 1000) on brain CTs within 6 hours. Overall sensitivity of the CT was 0.987 (95% confidence intervals, 0.971–0.994) and specificity was 0.999 (95% confidence intervals, 0.993–1.0). The pooled likelihood ratio of a negative CT was 0.010 (95% confidence intervals, 0.003–0.034).

神経学的異常所見のない患者の非外傷性くも膜下出血を 16列以上の CTで診断した場合、発症 6時間以内で感度 98.7% (95% CI, 0.971–0.994) 、特異度 99.9%とのこと。100%ではないけれど非常に診断精度は高い・・・、という予想通りの結果でした。

話は脱線しますが、頭部CTで異常がなくてもくも膜下出血が強く疑われる場合は髄液検査が必要となります。しかし、髄液を採取するときに血液が混入してしまうと判断に苦慮することになります。昔は 3-tube method (手技により血液が混入してしまったときは採取するスピッツが後になるほど髄液の赤色が薄くなるが、くも膜下出血であれば採取するスピッツが後になっても薄くならない) が推奨されていましたが、それを否定する論文が出て、最近では「キサントクロミーがなく髄液赤血球数 < 2000 x 106 /Lなら、動脈瘤によるクモ膜下出血を除外できる」という報告なんかもされているようです。

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医師への謝礼、公開義務化へ 厚労省、製薬企業に

By , 2016年3月30日 7:18 PM

製薬会社から医師に流れている謝礼の公開が義務化されるようです。製薬会社の広告塔のようになっている医師の存在がわかりやすくなるので、良いことだと思います。学会や科学雑誌の出版社は学術的な発表に際して、企業等との利益相反を開示するように定めていますが、現在のルールではきちんと開示されていないケースも散見されます。

医師への謝礼、公開義務化へ 厚労省、製薬企業に

相次ぐ論文不正を受け、臨床研究を規制する法案づくりを進めている厚生労働省は、製薬企業から研究機関や医師への資金提供の公開について、原稿料や講演の謝礼なども義務付ける方針を決めた。これまでは研究に直接関係がないとして除外していたが、方針を転換した。

29日にあった自民党の部会に厚労省が示した。公開の義務化は当初、研究開発費や奨学寄付金などに限り、講演謝礼などは業界の自主的なルールに委ねるとしていた。

厚労省によると、自社製品の研究を手がけている責任者らへの謝礼は「研究と無関係とは言えない」などの指摘もあり、対象に含めることにしたという。

資金提供の公開は毎年実施する。違反した場合は、指導や勧告をし、従わなければ企業名を公表するとしている。厚労省は法案を今国会に提出することを検討している。(武田耕太)

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Sham

By , 2016年3月30日 7:08 PM

アメリカでの不祥事。ノバルティス社が、心血管薬を売り込むために、講演会名目で医師たちを接待していた疑惑が浮上しました。講演会は見せかけのもので、のべ 80000回に上るそうです。米国がノバルティス社に情報開示を求めています。

「いつの時代だよ」、というようなニュース。ノバルティス社は、ディオバン事件に引き続いて、大きな痛手を被ることになりそうです。

U.S. Seeks Records of 80,000 Novartis ‘Sham’ Events for Doctors

The U.S. is asking Novartis AG to provide records of about 80,000 “sham” events in which the government says doctors were wined and dined so they would prescribe the company’s cardiovascular drugs to their patients.

The Swiss drugmaker and the Manhattan U.S. Attorney are engaged in a whistle-blower lawsuit that alleges Novartis provided illegal kickbacks to health-care providers through bogus educational programs at high-end restaurants and sports bars where the drugs were barely discussed.

In a filing Friday, the U.S. said it needs Novartis to provide information to support its allegation that the company defrauded federal health-care programs of hundreds of millions of dollars over a decade by inducing doctors to prescribe its medications through sham speaker events.

“The requested documents go to the core issues in this case: whether educational materials were provided at these events; which doctors actually attended the events; how much money was spent on meals and honoraria; and indeed, most fundamentally, whether the underlying documentation shows that a particular event actually took place,” the government said in its court filing.

‘Exploded’ Case

That filing came in response to a March 22 request by Novartis to the judge, seeking a hearing because the company says the U.S. has “exploded” the size of the case by demanding information about as many as 80,000 promotional events set up by its salespeople.

Representatives of Basel-based Novartis didn’t immediately respond to an e-mail sent Saturday seeking comment on the government’s filing.

Last year Novartis agreed to pay $390 million to settle a lawsuit in which the U.S. government claimed the Swiss company paid kickbacks to pharmacies to boost sales of some of its prescription drugs. The company neither admitted nor denied liability.

The case is U.S. v. Novartis Pharmaceutical Corp., 11-CV-0071, U.S. District Court, Southern District of New York (Manhattan).

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薬価引き下げ

By , 2016年3月30日 7:03 PM

医薬品の高騰化が問題となってきているので、財政上の都合から国は色々手を打ってきているようです。ある条件を満たした薬は値下げされるんですね。神経内科領域だと、脳梗塞の再発予防に用いられる「プラビックス (薬剤名:クロピドグレル) 」が対象となるようです。

今回の件については、新薬の開発費の高騰などから、製薬会社の側からも言い分はありそう。難しい問題です。

ブロックバスター新薬の薬価引き下げ、医療費削減の一方で対日投資に冷水も

C型肝炎の完治が見込める画期的な新薬が異例ともいえる大幅な薬価引き下げの対象となり、製薬業界が反発している。薬価引き下げは財政を圧迫する医療費削減につながる一方で、企業の収益にマイナスとなる。日本市場での新薬開発の魅力が薄れれば、投資の優先順位が後退する懸念があり、医療ビジネスを成長産業と位置付ける安倍晋三政権の戦略に逆風ともなりかねない。

C型肝炎治療薬、30%超の薬価切り下げ

焦点となっているのは、米ギリアド・サイエンシズが売り出したC型肝炎治療薬「ソバルディ」(昨年5月に日本発売)と配合薬「ハーボニー」(昨年9月発売)。副作用が少なく、経口で約3カ月で治療できる点に特徴がある。これまでC型肝炎の治療の主流はインターフェロンで副作用が強かった。

売上高1000億円を超える薬は「ブロックバスター」と呼ばれ、その実現に各社はしのぎを削る。IMSの医薬品市場統計によると「ソバルディ」の昨年の売上高(薬価ベース)は1117億円、「ハーボニー」は1176億円。発売から1年未満でブロックバスターとなったことからも需要の大きさは読み取れる。

しかし、この異例とも言える売上げが、大幅な薬価切り下げを招いた。

政府は今春の薬価改定から「特例拡大再算定」という制度を導入。「年間販売額1000億円超・1500億円以下、かつ予想販売額の1.5倍以上」の品目は最大25%、「年間販売額1500億円超、かつ予想販売額の1.3倍以上」の品目は最大50%の価格引き下げを行う。

血小板薬「プラビックス」(サノフィ)、抗がん剤「アバスチン」(中外製薬 <4519.T>)とともに「ソバルディ」、「ハーボニー」が「特例拡大再算定」の対象となり、この2品目は3割超の薬価切り下げとなった。

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名大病院救急

By , 2016年3月30日 6:59 PM

久々にこの手の医療崩壊系ニュースを見ました。

名大病院救急医9人が退職 体制半減、受け入れに影響も

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)で救急搬送患者らに対応する救急科の医師二十一人のうち九人が、三月末で一斉に退職することが、病院関係者への取材で分かった。四月以降に退職する意向を示す医師もおり、医師がほぼ半減する異例の事態となる。職場環境への不満や救急医療の方針への反発が、退職の理由とみられる。他の診療科の協力で救急患者受け入れは継続するが、規模縮小は避けられない見通しだ。

 名大病院は複数の外部識者を交えた調査委員会を設置し、こうした事態が生じた経緯を調べる。

 名大病院は、他の診療科の医師の応援を得るほか、当面は、医師の当直回数を増やすなどして、救急対応を継続する方針だ。ただ、救急搬送が複数重なった場合など、受け入れきれずに、他の医療機関に回さざるを得ないケースも想定される。長期的な態勢の再構築も不透明だ。

 退職する九人は、九州など出身地の医療機関に移ったり、名古屋市内や東京都の別の病院に移ったりする。

 退職する医師の一人は取材に対し、「明らかに理不尽と感じる方針を押しつけられ、他の診療科とあつれきが生まれる場面も何度もあった」と、職場環境が要因だったと明かした。

 一方、指導する立場の救急科の教授は「各医師の人生設計やキャリアアップが主な理由だ」と説明し、「どんな職場でも不満は生じる。現状をどう感じるかは各医師次第だが、全国的に救急医の数を増やさないと根本的な解決にはならない」と話す。

 名古屋市消防局によると、二〇一四年の救急搬送件数は約十万三千件。名大病院は同年、約四千二百台の救急車を受け入れている。〇九年度は千台余りだったが急増した。高度先進医療に対して、救急部門は遅れがちで、六年ほど前から、重度の患者を常時受け入れられる「救命救急センター」を目指し強化してきた。病院幹部は「この傾向に無理があったのかどうか。原因はどこにあるのか。客観的に検証するため外部識者を招いてきちんと調べ、適切な組織のあり方を探りたい」と話した。

今回の事態に関し、救命救急センターを備える名古屋市内の別の病院幹部は「市内には、救急搬送の受け入れ医療機関が充実しており、大きな影響は出ないだろう」と話した。

このニュースからわかるのは、「救急をたくさん受け入れるようになったこと (5年間で救急車 4倍!)」、「他科との軋轢が生じたこと」です。救急部で受けた患者が専門的な治療を要する場合、専門の科に紹介しなければいけません。専門の科にキャパシティーがない場合、救急部と専門の科で軋轢が生じることは良くあります。その辺の折り合いがうまくいっていなかったのでしょうか。

もう一つ、別のソース。

名大病院、救急科医師9人が月末に一斉退職 調査委設置

2016年3月30日11時34分

名古屋大学病院(名古屋市昭和区)の救急科の医師21人のうち、9人が3月末で一斉に退職することが病院への取材でわかった。病院は外部の有識者を加えた調査委員会を立ち上げ、退職の経緯を調べる。救急患者の受け入れは、他の診療科の医師の応援を受けるなどして、影響が出ないようにするとしている。

名大病院によると、他の病院から研修に来ていた医師が元の病院に戻ったり、出身地に帰ったりする医師らの退職が重なったという。ただ、「教授と意見が合わなかった」など職場環境への不満をあげる医師もいるため、4月上旬に調査委員会を設置する。

一方、救急科の松田直之教授は「医師が研修に出たり、地元に戻ったりすることが重なっただけ。一時的に人数が減るのは全国的な救急医不足が根本的な問題だ」と説明している。

同病院では、内科や外科などの医師が応援に入り、救急科を支える。救急科には4月に2人、5月にも1人の医師が加わる見通しで、病院は「救急車を断ることなどは考えていないので市民に影響はない」としている。

「教授と意見が合わなかった」という記載と、前述のニュースと併せて考えると、救急部が他科との軋轢で患者受入を制限しようとしたのに教授が許さなかったのでしょうかね。名大の知り合いからもそんな内容のことを聞きました。しかし、臨床以外の部分が関係しているという噂も・・・。

調査委員会の結論を待ちたいと思います。

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