名画の医学

By , 2013年4月17日 8:28 AM

数年前、滋賀医科大学麻酔科の横田敏勝先生のサイトについてお伝えしました。残念ながらそのサイトは現在閉じられています。サイトに書かれた内容を出版するなどという事情であれば良いのですが、そうでないとしたらもったいない話です。サーバーの問題なのであれば私が管理してもよいので、是非復活させて欲しいものです。

さて、横田先生が「名画の医学 (横田敏勝著、南江堂)」という本を出版されているのを最近知りました。早速読んでみました。

【主要目次】
第1部 病草紙を診る
1 白内障の男
2 歯の揺らぐ男
3 風病の男
4 肥満の女
5 霍乱の女
6 痔瘻の男
7 二形の男
8 陰虱をうつされた男
9 鍼医

第2部 泰西名画を診る
1 モナリザ
2 キメラ
3 ラス・メニーナス
4 アキレス
5 ヴィーナスの脂肪
6 思春期
7 病める少女
8 ポンパドゥール夫人
9 湯あみのバテシバ
10 鎖に繋がれたプロメテウス
11 メドゥサ
12 エビ足の少年
13 皇帝カール5世
14 愛の国
15 病める子
16 ヴィーナスの誕生
17 ペスト

各章、題材となる絵の写真があり、その後著者による考察が記載されています。

モナリザの章を例に挙げると、モナリザ妊娠説があるそうです。モナリザの輪郭が 24歳にしては母親じみていること、頸が太いこと (Gestational transient hyperthyroidismを疑わせる)、胸や手がふっくらとしていること、妊婦がよくする座り方をしていることなどです。断定出来るほど強い根拠ではないのですが、章の結びが洒落ていて「『女性を診たら・・・』の定石に従ったまでのことだ」としています。臨床現場では、見逃しを防ぐため「女性を診たら妊娠と思え、老人を診たら癌だと思え」という格言があるのです。

また、「愛の園」という章では、ルーベンスの「愛の園」という絵を扱っています。絵の中で踊っている初老の男性はルーベンス自身で、彼の持病である関節リウマチに侵された両手が描きこまれています。この絵の他にも彼の手が描かれたものがあり、辿ると彼の病歴がわかるようになっています。これらの絵は、関節リウマチの存在を示唆した歴史上初の作品とされているそうです。この絵はマドリードのプラド美術館にあるようなので、機会があれば是非一度見に行ってみたいです。

その他に、オスロ美術館にあるムンクの「病める子」は、結核に侵されて死期の迫った自身の姉と悲嘆にくれる叔母の姿を、「先立つ娘とその母親という、普遍的な人間の悲しみのテーマ」として描いたそうです。こういうことを知っていれば、2010年にオスロ美術館に行った時、もっと楽しめたのにと思いました。

絵画に興味がある方は本書を読んでみると面白いと思いますが、少しだけ残念なことがあります。一つは、1999年の時点で最先端の医学情報が書かれていて、最先端というのは年々古くなっていくことです。もう一つは、絵画に関した疾患を挙げたあと、絵画に関係ない疾患の解説が結構マニアックに続くことです。この点さえ気にならなければ、絵画の楽しみ方がまた一つ増えるに違いありません。

最後になりますが、姉妹図書として「名画と痛み (横田敏勝著、南江堂)」というのがあります。こちらも「名画と医学」と同様のスタイルになっていますが、扱う絵画が疼痛に関連したものに限定されています。併せてお薦めです。

(追記)

横田先生のサイト、アーカイブがあるとの情報を頂きました。

http://web.archive.org/web/20110207151436/http://www.shiga-med.ac.jp/~hqphysi1/yokota/yokota.html

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