夢の話

By , 2017年6月9日 11:19 AM

抄読会で、”The neural correlates of dreaming” という論文を読みました。抄読会用の資料は下記です。

The neural correlates of dreaming

Nature newsでも紹介されています。

夢を見ることに特異的な脳活動パターン

 この論文の要点は以下です。

・REM期でもNon-REM期でも夢をみている (ただし REM期の方が多いようだ)。
・夢をみているときは、後頭ホットゾーンの低周波数活動が低下している。
・夢を思い出せるときは、ホットゾーンを中心に高周波数活動が増加している。
・夢の内容によって、高周波数活動の増加する部位が異なる。

 学生時代、夢は REM期に見るものだと習ったので、それを覆す内容で驚きでした。でも、授業中などに少しまどろんだだけで夢をみることもあるので、Non-REM期に夢を見ていると考えれば、その現象も理解できます。神経内科医としては、今後 REM睡眠行動異常と絡めた研究が出てこないか、注目したいと思います。


水族館めぐり

By , 2017年4月30日 3:25 PM

教科書のある章を書くことになったり、単著での執筆依頼が舞い込んできたり、学会での公開討論をしなければならなくなったり、次々と新しい仕事が振ってきて相変わらずバタバタしていますが、プライベートだけは死守するようにしています。2月18日、仙台での内科学会東北地方会の後、宮城県立美術館でルノワール展を見ることができました。ゴールデンウィークは、5月3日の当直を終えてから帰省しようと思います。実家ではすることもないので、昼は仕事が捗りそうです。

3月18-20日の三連休、初日は秋田県で全科当直でしたが、そのあと水族館めぐりをすることができました。

3月19日(日)

秋田 (12:10)→ JR男鹿線→ 男鹿 (13:05)

トヨタレンタカー男鹿店で車を借りてドライブしようと思って予約していたのですが、レンタカーショップは船越駅から車で 5分というところにあるんですね。男鹿駅に着いてから気付き、折り返しの電車も 1時間くらい待たされるとのことで、男鹿駅からレンタカーショップまでタクシーで行きました。

何とかレンタカーを借りてドライブ開始。県道59号線を走り男鹿半島を南側からぐるりと廻ると、潮干狩りができるような砂浜があったかと思えば、山の中腹からむき出しの岩肌を見下ろしたり、舞台島と呼ばれる特徴的な岩があったり、移りゆく海沿いの景色がとても綺麗でした。ただ、山の途中にはゲートがあって、冬は通り抜けできなくなるようです。

舞台島

舞台島

山の中腹からの海

山の中腹からの海

そして目的の男鹿水族館へ。ハタハタとか、男鹿の海の特集が良かったです。水槽内では、亀の甲羅の上に同じ魚がずっといました。この魚は全然動いていなかったけれど、生きていたのでしょうか。

魚

別の展示では、シロクマが首を振りながら後退しては前進するのを繰り返していました。10分以上ずっとしていて、自分の影と遊んでいるのかなと思ったのですが、その後に読んだウェブニュースを見るとシロクマにおけるというのが問題になっているらしく、不安になりました。

シロクマ

シロクマ

水族館を楽しんだ後は、なまはげ館をちょっとだけ覗いてレンタカーを返しました。レンタカーショップの方が、駅まで送ってくださいました。

男鹿駅 (17:53)→JR男鹿線→秋田駅 (18:52)

その日はアルバートホテル秋田泊。遊食さい賀で秋田の郷土料理と、地酒を楽しみました。まったり飲んでいたのに、途中で一番偉い女将っぽいのが登場して仕切りだしてから雰囲気がきつくなったのが残念。

3月20日(月)

秋田駅 (9:15) →特急いなほ→ 鶴岡駅 (11:06)

鶴岡駅からバスで市立加茂水族館に行こうとおもったのですが、接続が悪かったので、タクシーを使うことにしました。駅前の観光案内所では、「観タク」というのがあり、「クラゲ展示種類数世界一の水族館コース」を選ぶと、2時間貸し切り (6300円) でした。これだと、水族館で 1時間以上過ごすことができます。

水族館に入って、レストランに行くと、クラゲラーメンというのがありました。クラゲは独特の食感でした。クラゲ展示コーナーでは、ノーベル賞で一躍有名になったオワンクラゲを始め、数多くのクラゲが展示されていました。出生日数毎に並んだ水槽で、クラゲが生まれてから成長していく過程が観察できる試みも素晴らしかったです。笑ったのは出目金の水槽。オスメスの判別法で、「オスは腹部をこすると精液が出ます」って。性別を確認されるたびに射精させられる出目金かわいそう。

ウリクラゲ

ウリクラゲ

シンカイウリクラゲ

シンカイウリクラゲ

鶴岡駅で日本酒「くどき上手」を買い込み、羽越本線に乗り込みました。余目まで 1時間くらい時間があると思っていたら、すぐ着いてしまい、降りそびれました。そのまま酒田駅へ。酒田駅前で散策した後、折り返しの電車に乗り込みました。最上川が綺麗でした。

酒田駅 (15:28) →JR羽越本線→余目 (15:45), 余目 (16:01)→JR陸羽西線→新庄 (16:51), 新庄 (17:12)→山形新幹線つばさ

最上川

最上川

 

 


ILAE発作及びてんかん分類2017

By , 2017年3月25日 8:38 AM

2017年3月、ILAE (International League Against Epilepsy) から新しく発作分類とてんかん分類が発表された。

Instruction manual for the ILAE 2017 operational classification of seizure types. (2017.3.8 published online)

Operational classification of seizure types by the International League Against Epilepsy: Position Paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. (2017.3.8 published online)

ILAE classification of the epilepsies: Position paper of the ILAE Commission for Classification and Terminology. (2017.3.8 published online)

以下、簡単に要約する。なぜこの分類になったかとか、用語の定義などは原著参照のこと。

<発作の分類>

1981年分類から新しくなった点。

  1. “部分 (partial)” の語を “焦点 (focal)” に変えた。よって、部分発作は焦点発作と呼ばれるようになる。
  2. 発作型は “focal onset (焦点発作)”, “generalized onset (全般発作)”, “unknown onset (不明)” に分けられる。
  3. “Unknown onset” は将来さらに分類できるかもしれない。
  4. 焦点発作の分類に覚醒 “awareness” を用いる。
  5. 認知障害 (dyscognitive), 単純部分発作、複雑部分発作、心因性、二次性全般化の語は用いなくなった。
  6. 焦点発作で新たに加わった発作型は、自動症 (automatics), 自律神経 (autonomic), 行動停止 (behavior arrest), 認知機能 (cognitive), 情動 (emotional), 運動過多 (hyperkinetic), 感覚 (sensory), 焦点発作から両側性強直間代発作への移行 (focal to bilateral tonic-clonic seizures) を含む (下記の figure拡大バージョン参照)。弛緩性 (atonic), 間代性 (clonic), 点頭てんかん (epileptic spasm), ミオクローヌス性 (myoclonic), 強直性 (tonic) 発作は焦点発作の場合も全般発作の場合もありうる。
  7. 全般発作で新たに加わった発作型は、眼瞼ミオクロニアを伴う欠神発作 (absence with eyelid myoclonia), ミオクローヌス性欠神発作 (myoclonic absence), ミオクローヌス性強直間代性発作 (myoclonic-tonic-clonic), ミオクローヌス性弛緩性発作 (myoclonic-atonic), 点頭てんかん (epileptic spasms) である。

基本バージョンはこちら。

Basic version

Basic version

拡大バージョンはこちら。

Expanded version

Expanded version

流れとしては、まず発症時の状態で焦点発作 (旧部分発作) か全般発作かを検討する。目撃者がいなかった場合など、どちらかわからない場合は、今回から「不明 (unknown onset)」という分類が可能になった。個人的な意見だけど、治療の際に焦点発作でも全般発作でも対応できる抗てんかん薬を選択するという点で意味を持ってくるのかもしれない。焦点発作は、覚醒障害の有無により更に分類する。従来の「複雑部分発作」は「覚醒障害 (意識障害) を伴う焦点発作 (focal impaired awareness seizure)」と呼ばれるようになる。発作をさらに運動症状で発症したか、あるいは非運動症状で発症したかで分類し、細分化することもある。従来の二次性全般化は、「焦点発作から両側性強直間代発作への移行 (focal to bilateral tonic-clonic seizures)」として扱われる。

なお、発作型はできるところまで分類すれば良い。焦点発作でも、覚醒の障害があったかどうかわからないときは、単に「焦点発作」とだけ記せば良い。これらの分類については、厳格さよりも実用的であることを重視したため、”operational classification” という名前になっている。

<てんかんの分類>

発作型を診断した後、それを基にてんかんのタイプを診断する。てんかんのタイプは焦点性てんかん (focal epilepsy), 全般てんかん (generalized epilepsy), 全般てんかんと焦点性てんかんの合併 (combined generalized, and focal epilepsy epilepsy), 不明 (unknown epilepsy) に分類される。全般てんかんでは、典型的には脳波で全般性の spike-wave activityがみられるだろう。全般性強直間代発作で脳波が正常な場合は注意が必要である。この場合、myoclonic jerkや家族歴など補助的な根拠が大事になる。てんかんのタイプの次にてんかん症候群の診断をおこなうが、てんかん症候群の診断ができない場合は、てんかんのタイプが最終の診断になるかもしれない。てんかんのタイプとしてよくしられているのは、小児欠神てんかん、West症候群、Dravet症候群などがあるが、ILAEがこれまでてんかん症候群の正式な分類を出していないことには留意すべきである。

特発性全般てんかんという語は不適切だという意見もあるが、小児欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、覚醒時全般性強直間代発作 (覚醒時大発作のこと) については、特発性全般てんかんの語は許容できる。

ILAE classification of the epilepsies

ILAE classification of the epilepsies

今回の分類を読んだ感想。確かに、1981年に提案された ILAE発作分類や、1989年に提案された ILAEてんかん・てんかん症候群分類が抱える矛盾点をある程度解決しているといえる。でも、それらの分類が使いやすくて、とても浸透しているので、今回の分類が臨床現場で受け入れられるかはよくわからない。過去には、2010年に発表された発作分類及びてんかん分類の改訂版は普及しなかった訳だし。


最近の医学論文【下】

By , 2017年3月24日 9:27 PM

(最近の医学論文【中】より続く)

Ocular Flutter in the Serotonin Syndrome. (2016.11.3 published online)

46歳の女性が興奮 (agitation) のため救急外来に搬送されてきた。到着時、38.6℃の発熱と頻脈 (心拍数 169 /分) があった。患者は興奮しており、眼球粗動がみられた。また、下肢の筋強剛と腕のミオクローヌスがあった。腸音は亢進し、皮膚は冷たく、発汗を伴っていた。内服薬はベンゾジアゼピン、venlafaxine (SNRI) であった。彼女は指示されたよりも多く venlafaxineを内服していた。症状と無い履歴からセロトニン症候群が疑われた。ミダゾラムが投与され、気管挿管されたが、眼球粗動は続いていた。患者は ICUに入室し、数日後に死亡した。

SSRIや SNRIを処方することはたまにあるが、セロトニン症候群の経験はまだない。しかし、いつ遭遇するかわからないので、勉強しておかないと。論文サイトの眼球粗動の動画が印象的だった。

Assessing the Risks Associated with MRI in Patients with a Pacemaker or Defibrillator. (2017.2.23 published online)

MRI検査の適応がありながら、MRI非対応の心臓ペースメーカーや除細動器を植え込んでいる患者に、1.5Tの MRIを用いて検査をし、その安全性を前向き研究で確認した。植え込み式除細動器のうち pacing dependentの患者は除外している。適切なプログラミングがされていなかった植え込み式除細動器でジェネレーターの動作が確認できなかった以外、1000名のペースメーカー患者と 500名の植え込み式除細動患者で大きなトラブルはなかった。数件、小さなトラブルがあった。この研究でおこなったような条件なら、1.5テスラの MRIで大きな問題は起きないようだ。

この論文を読んで、10年前に読んだ教科書に、「いや・・・ほとんどめったに・・・ただただ気が進まずに行うことがある。我々の施設ではおよそ5年ごとに、ペースメーカー装着患者の差し迫った臨床上の問題で他の画像検査では十分でないために、MRIが必要とされる状況が生じる。このようなまれな状況では、我々は以下のプロとコールで安全に検査を施行してきた。①検査が医学的に必要なことを主治医が述べている声明書を取得する。(略)④うまくいくように祈る。」と書いてあったのをブログで紹介したことを思い出した。

Association of Intensive Blood Pressure Control and Kidney Disease Progression in Nondiabetic Patients With Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-analysis. (2017.3.13 published online)

非糖尿病性の慢性腎臓病 (CKD) で厳格な血圧コントロールをしたら、進行が防げるかというメタアナリシス。通常の血圧コントロールは 140/90 mmHg未満で、厳格な血圧コントロールは 130/80 mmHg未満とした。フォローアップ期間の中央値は 3.3年だった。その結果、年間の GFR変化率、血清クレアチニン倍増ないし GFR 50%低下、末期腎不全、複合腎アウトカム、総死亡において、両群間に有意差はなかった。ただし、非黒人および蛋白尿量が多い患者では、厳格な血圧コントロールでの CKD進行リスクが低い傾向があった。

厳格な血圧管理の有効性は低いかもしれないとはいえ、血圧の管理自体を否定する結果ではないのだろう。

Serum creatinine elevation after renin-angiotensin system blockade and long term cardiorenal risks: cohort study. (2017.3.9 published online)

RAS系阻害薬 (ACE阻害薬と ARB) 開始後の血清クレアチニン上昇と長期間の心腎リスク (末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡) のコホート研究。海外のガイドラインでは、血清クレアチニンが 30%上昇したら、RAS系阻害薬は中止するように推奨されているらしい。この研究では、RAS系阻害薬を投与された 122363名のうち 1.7%でクレアチニンが 30%上昇していた。女性、高齢者、心腎疾患合併、NSAIDs/ループ利尿薬/カリウム保持性利尿薬の使用に多かった。クレアチニン上昇の 30%上昇は全アウトカムの調整罹患率比に相関があった。

クレアチニン上昇とアウトカム

クレアチニン上昇とアウトカム

図をみると、クレアチニン上昇とアウトカムとの量相関関係が一目瞭然。たとえクレアチニン 10%上昇でも心腎リスクが上昇するというのはビックリ。これからは、ACE阻害薬とか ARBを処方したら、クレアチニンの上昇がないか気を配らないと。

Autologous Induced Stem-Cell-Derived Retinal Cells for Macular Degeneration. (2017.3.16 published online)

加齢性黄斑変性症に対する iPS療法の報告。2名が治療対象として選ばれ、1名に iPS療法が施行された 。iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞は術後 1年後も正常であった。視力は改善も悪化もなかった。もう 1名は copy numberの異常が確認され抗 VEGF療法への反応も若干あったため移植されなかった。移植しなかった細胞は解析に回され、ラットを用いた実験では、腫瘍の形成はみられなかった。

iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞移植の安全性を示したという意味で、記念碑的な論文だと思う。私は幹細胞医療も眼科領域も専門外でよくわからなかったのだけれど、術後 1年経過して視力が改善も悪化もしないというのはどういう意味なのだろう。加齢性黄斑変性症が進行しなかったため効果があったということなのか、それとも改善しなかったというのは効果がなかったということなのか。論文に説明がないので、よくわからない。”However, we have yet to evaluate the extent of photoreceptor function of RPE graft in Patient 1.” と書いてあるから、効果に対する評価はこれから色々とおこなわれていくのだろう。

NEJM誌の同じ号に、幹細胞クリニックで脂肪由来の幹細胞移植を受けて失明した 3名の加齢性黄斑変性症患者の症例報告がある。今回日本から報告された iPS療法のように十分な科学的裏付けがあり安全性に細心の注意を払っておこなっているところはよいけれど、そうではないところは怖いなと思う。

Clarifying a “PenicillinAllergy: A Teachable Moment. (2017.2.1 published online)

患者さんがペニシリンアレルギーと深刻したとき、皮膚テストをしてみると 80-90%はアレルギーではないらしい。ペニシリンアレルギーの患者にどう対応するかという下記の図が勉強になる。

ペニシリンアレルギー

ペニシリンアレルギー

DPPX antibody-associated encephalitis: Main syndrome and antibody effects. (2017.3.3 published online)

DPPXは Kv4.2カリウムチャネルの制御蛋白である。2013年以降の DPPX抗体関連脳炎 9名を後方視的に検討。発症年齢の中央値は 57歳 (36-69歳)。全ての症例で、強い体重減少や下痢が先行した。その後に、認知機能障害、記憶障害、中枢神経興奮性 (過剰驚愕症、ミオクローヌス、振戦、けいれん発作)、脳幹や小脳機能障害が出現した。疾患のピークは 8ヶ月 (1-54ヶ月) であった。全例、IgG4および IgG1 DPPX抗体が陽性であった。クラスター化した神経では、抗体は DPPXクラスターと Kv4.2蛋白の減少の原因となったが、これらは抗体の除去により可逆的だった。67%の症例に、体重減少 (中央値 20 kg)/胃腸症状、認知機能-精神機能低下、中枢神経興奮性の三徴がみられた。過去の報告と併せた 39症例のうち、35例の予後が評価可能だった (8名は免疫療法を受けていない)。60%は十分ないし軽度の改善、23%は改善なし (大部分は無治療)、17%が死亡した。

近年、脳炎の原因抗体が沢山されていて、把握がなかなか困難となってきているけれど、強い体重減少や下痢の先行というキーワードは特徴的なので覚えておこうと思う。

Delayed tacrolimus leukoencephalopathy, a rare and reversible cause of dementia. (2017.1.10 published online)

タクロリムスを投与している患者に起こる急性白質脳症としては、PRESが一般的だが、遅発性慢性の経過をとる白質脳症も報告されている。頭部MRIで造影効果があり、タクロリムスを中止すると改善するらしい。

Neurological Autoantibody Prevalence in Epilepsy of Unknown Etiology. (2017.2.6 published online)

原因不明のてんかん患者の連続症例で、自己抗体を検索した研究。112名のうち、34.8%で何らかの自己抗体が検出された。2つ以上の自己抗体が検出されたのは 7名で、3名が 抗TPO抗体+抗VGKC抗体、2名が抗GAD65+抗VGKC抗体、1名が抗TPO抗体+抗GAD65抗体、1名が抗Hu抗体+抗GAD65抗体だった。112名のうち、抗TPO抗体が 15名 (13.4%)、抗GAD65抗体が 14名 (12.5%)、抗VGKC抗体が 12名 (10.7%; うち 4名が抗LGI抗体)、抗NMDA抗体が 4名 (3.6%) であった。抗TPO抗体および低値の抗VGKC抗体を除いてさえ、てんかんの原因と考えられる自己抗体が検出された患者が 23名 (20.5%) 存在した。自己抗体が存在するか予測するのに APE (antibody prevalence in epilepsy) スコアが有用だった。自己抗体が検出された 23名のうち APE 4点以上が 82.6%であり、抗体が陰性なのに APE 4点以上だったのは 19.1%のみだった。自己抗体が陽性の患者は、発作のアウトカムが良く、発作頻度の減少は免疫抑制療法の使用と関連があった。

APE score

APE score

Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica. (2017.3.23 published online)

坐骨神経痛に対するプレガバリン (商品名リリカ) の効果を調べたランダム化比較試験。8週間 (および 52週間) の観察で、プレガバリンによる疼痛スケール、障害、QOLなどの改善はなく、副作用 (めまいなど) が多かった。

Auditory training changes temporal lobe connectivity in ‘Wernicke’s aphasia‘: a randomised trial. (2017.3.4 published online)

脳卒中で感覚性失語症をきたした患者に対する介入。30名の慢性期患者を対象に (1) “Earobics” というソフトウェアを用いた音韻性トレーニング、(2) ドネペジルによる薬物療法の効果を調べた。ドネペジルは、二重盲検、プラセボ対照、クロスオーバーデザインで評価した。その結果、音韻性トレーングは重度の障害の患者の言語理解を特に改善した。ドネペジルは、逆に悪化させるという予想外の結果だった。ドネペジルなど認知機能改善薬は、神経薬理学的作用と遂行機能の間に逆U字状の関係が指摘されており、聴覚野のアセチルコリン刺激が十分高い状況でドネペジルを入れることが逆効果だったのではないかと著者らは考察している。また、ドネペジルは言語理解よりもむしろ言語の表出に効果があるのではないかという検討もなされている。

Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. (2017.2.14 published online)

米国内科学会による腰痛の診療ガイドライン。

RECOMMENDATION 1:

Given that most patients with acute or subacute low back pain improve over time regardless of treatment, clinicians and patients should select nonpharmacologic treatment with superficial heat (moderate-quality evidence), massage, acupuncture, or spinal manipulation (low-quality evidence). If pharmacologic treatment is desired, clinicians and patients should select nonsteroidal anti-inflammatory drugs or skeletal muscle relaxants (moderate-quality evidence). (Grade: strong recommendation).

RECOMMENDATION 2:

For patients with chronic low back pain, clinicians and patients should initially select nonpharmacologic treatment with exercise, multidisciplinary rehabilitation, acupuncture, mindfulness-based stress reduction (moderate-quality evidence), tai chi, yoga, motor control exercise, progressive relaxation, electromyography biofeedback, low-level laser therapy, operant therapy, cognitive behavioral therapy, or spinal manipulation (low-quality evidence). (Grade: strong recommendation).

RECOMMENDATION 3:

In patients with chronic low back pain who have had an inadequate response to nonpharmacologic therapy, clinicians and patients should consider pharmacologic treatment with nonsteroidal anti-inflammatory drugs as first-line therapy, or tramadol or duloxetine as second-line therapy. Clinicians should only consider opioids as an option in patients who have failed the aforementioned treatments and only if the potential benefits outweigh the risks for individual patients and after a discussion of known risks and realistic benefits with patients. (Grade: weak recommendation, moderate-quality evidence).

ごく簡単に要約すると、”急性および亜急性の腰痛は、治療にかかわらず時間とともによくなる。まずは温める、マッサージなどの非薬物療法を選択するべきである。もし薬物療法が必要なら、NSAIDsや筋弛緩薬を用いる。慢性の腰痛では、最初に非薬物療法を選択し、非薬物療法への反応が不十分なら薬物療法を考慮すべきである。NSAIDsが第一選択薬で、トラマドールやデュロキセチンが第二選択薬となる。”
普段外来をしていると、腰痛を訴える高齢者は少なくないし、必要な知識だと思う。

最近の医学論文【中】

By , 2017年3月24日 9:26 PM

(最近の医学論文【上】より続く)

Assessment of Safety and Efficacy of Safinamide as a Levodopa Adjunct in Patients With Parkinson Disease and Motor Fluctuations: A Randomized Clinical Trial. (2017.2.1 published online)

MAO-B阻害薬である safinamideの第三相試験。Safinamideはジスキネジアのない on時間を 9.3時間から 1.42時間延長した。プラセボ群では 9.06時間から 0.57時間延長した。ジスキネジアは、safinamide群 14.6%, プラセボ群 5.5%だった。そして、FDAが 2017年3月21日承認

セレギリン、ラサギリンに続く薬剤。他の薬剤との直接比較がどうなのか知りたいところ。

Blood-based NfL: A biomarker for differential diagnosis of parkinsonian disorder. (2017.2.8 published online)

血液で、パーキンソン病とそれ以外のパーキンソン症候群 (atypical parkinsonian disorders; APD) を鑑別できないかという試み。パーキンソン病では neurofilament light chain (NfL) は上昇しないが、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症候群では上昇することを用いた。パーキンソン病を APDと鑑別する感度/特異度は、 Lund cohortで 82%/91%, London cohortで 80/90%, Early disease cohortで 70/80%だった。NfLは髄鞘化大径線維の変性のマーカーであり、脳卒中、頭部外傷、APD, 筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭葉変性症などで上昇することが知られている。パーキンソン病では上昇しない。軸索変性が重度でなく、また広範ではないことが原因ではないかと推測されている。

NfL

NfL

血液検査で、精度良く鑑別できるのは大きな利点だと思う。

Development of a Biochemical Diagnosis of Parkinson Disease by Detection of α-Synuclein Misfolded Aggregates in Cerebrospinal Fluid. (2017.2.1 published online)

パーキンソン病患者の髄液中の微量の α-synucleinを protein misfolding cyclic amplification (PMCA) で検出することで、感度 88.5% (95%CI 79.2-94.6%), 特異度 96.9% (95%CI 89.3-99.6%) の診断精度をえられるという報告。

PMCAは 2014年に報告された論文で尿中のプリオン蛋白を検出するのに用いられた方法で、これがパーキンソン病の髄液 α-synucleinで報告されたというのは、α-syculeinとプリオン蛋白との類似性の現れなのかもしれない。

Predictors of survival in progressive supranuclear palsy and multiple system atrophy: a systematic review and meta-analysis. (2017.3.1 published online)

進行性核上性麻痺や多系統萎縮症の予後予測についての systematic review & meta-analysis。進行性核上性麻痺では、予後不良因子として、Richardson型、初期の嚥下障害や認知機能障害が挙げられる。多系統萎縮症の予後不良因子は、重度の自律神経障害、初期から自律神経障害と運動症状の合併が挙げられる。そのほか、進行性核上性麻痺と多系統萎縮症で、早期からの転倒も予後予測因子だった。

この論文で勉強になったのは、予後予測因子そのものより、各研究での生存曲線。いずれの疾患も、約5~10年で半数、10~15年で大部分が亡くなるという結果が一目瞭然。

Predictors of survival in PSP and MSA

Predictors of survival in PSP and MSA

Safety and efficacy of ozanezumab in patients with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. (2017.1.28 published online)

筋萎縮性側索硬化症に対する分子標的治療薬 ozanezumabの第二相試験。SOD1G93A mouseに効果を示した Neurite outgrowth inhibitor A (Nogo-A) に対するモノクローナル抗体 ozanezumabは ALS患者に対して、プラセボ比較で効果を示すことができなかった。

論文の考察でも少し触れられているけれど、SOD1をターゲットに薬剤を開発しても、SOD1変異がない大部分の ALS患者では効果がないということなのだろうか・・・。SOD1変異のあるヒトを対象とした臨床試験をおこなったらどうだろうかと、ふと思った。

Zika virus infection and Guillain-Barré syndrome: a review focused on clinical and electrophysiological subtypes. (2016.10.31 published online)

ジカウイルスによる Guillan-Barre症候群の総説。AIDPタイプが多い、顔面の麻痺を伴うことが多い、入院時に抗asialo-GM1抗体が 31%に検出されるがジカウイルス抗原と asialo-GM1の関連を示すエビデンスはない、などの点がポイント。

Genetic heterogeneity of motor neuropathies. (2017.3.1 published online)

運動ニューロパチーの遺伝的多様性を調べたイギリス北部の大規模コホート研究。105名の内訳は、distal hereditary motor neuropathy (dHMN) 64名、axonal motor neuropathy (Charcot-Marie-Tooth disease type 2) 16名、hereditary motor neuropathy plus 25名であった。原因遺伝子は 35.6%で同定された。遺伝子の内訳と、鑑別を考えるときの手がかりは下記。

Genetic heterogeneity of motor neuropathies

Genetic heterogeneity of motor neuropathies

Netrin-1 receptor antibodies in thymoma-associated neuromyotonia with myasthenia gravis. (2017.3.1 published online)

胸腺腫、neuromyotonia, 重症筋無力症のある 3名の患者の血清を用いて免疫沈降法をおこなった。沈降したタンパク質 182のうち、コントロール群の血清と反応したタンパク質などを除外した後、細胞表面タンパク質が 9種類残った。Neuromyotoniaの患者サンプルを用いて、cell-based assayをおこない、Contactin-associated protein 2 (Casper2), Deleted in colon cancer (DCC), Netrin uncoordinated-5A receptor (UNC5A) の 3つの抗体が同定された。抗Netrin抗体 (DCC, UNC5A) 陽性患者はいずれも胸腺腫があった。

Serum antibody-positive patients

Serum antibody-positive patients

Venn diagram

Venn diagram

胸腺腫合併の重症筋無力症や neuromyotoniaで、抗Netrin-1抗体が陽性になることがあるらしいという話。覚えなくてはいけない抗体がどんどん増える。

Long-term survival in paraneoplastic Lambert-Eaton myasthenic syndrome. (2017.3.1 published online)

肺小細胞癌患者は、Lambert-Eaton筋無力症候群 (LEMS) を合併した方が予後がよさそうという報告。Lead time biasでは説明できないらしい。原因はよくわかっていないけれど、LEMSで検出される抗VGCC抗体が腫瘍の増殖にとってマイナスに働いているのではないかと推測されている。

肺小細胞癌とLEMS

肺小細胞癌とLEMS

Cerebellar Ataxia and Hearing Impairment. (2017.2.1 published online)

51歳男性。マラソンをして 1ヶ月もしないうちに進行性の歩行障害が出現した。また難聴を訴えが、他人の話したことを解釈するのが難しいようだった。浮動性めまいや膀胱直腸障害はなかった。バランス障害をきたすような家族歴は無かった。弁護士としての勤務は可能だった。神経学的には軽度の小脳失調はあったが、ミオクローヌスやパーキンソニズムはなかった。MoCAは 28/30点だった。頭部MRIは異常がなかった。髄液は正常で、14-3-3蛋白も正常範囲内だった。傍腫瘍症候群の抗体は陰性で、脳波も正常だった。1ヶ月後、車椅子生活となり、正確変化がみられた。小脳失調が悪化し、姿勢反射障害もみられたが、ミオクローヌスはなかった。けいれんが出現して入院した。精神症状が悪化し、無言となった。脳波も徐波となった。頭部MRIでは拡散強調像を含めて異常なかった。

診断はクロイツフェルト・ヤコブ病。感覚性失語を伴う急速進行性の失調が診断の手がかりとなる。鑑別診断は、亜急性失調+末梢性難聴として、傍腫瘍症候群、そのほか成人発症 CAPOS (cerebellar ataxia, pes cavus, optic atrophy, and sensorineural hearing loss) 症候群など。しかし、末梢性難聴がないことや、けいれんがあったことから考えにくい。亜急性の失調としては、ビタミンB1欠乏やビタミンE欠乏が挙げられるが、これらは正常だった。頭部MRIでも Wernicke脳症を示唆する所見はない。ビタミンB1を補充しても改善はなかった。橋本脳症のようなステロイド反応性脳症も考えたが、抗TPO抗体は陰性であり、ステロイドパルスも無効であった。通常耳鳴りや回転性めまいを伴わない聴力低下や聴覚過敏は、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病の初期症状として報告されている。髄液14-3-3蛋白、脳波、拡散強調像の感度/特異度は高い (髄液14-3-3蛋白 92/80%, 脳波での周期性同期性放電 67/86%, 拡散強調像 83-92/87-95%) が、いずれも正常な場合があり、特に初期症状が小脳失調の場合に多い。これらは無言無動状態となってさえみられないことがある。この患者の剖検では、視床、海馬、小脳歯状回に海綿状変性があり、ウエスタンブロットで異常プリオンタンパクの存在が確認された。病理学的には thalamic CJD / sporadic familial insomniaに合致する所見であったが、このような表現型ではなかった。

主要検査所見が全て陰性である triple negative CJDは小脳失調で発症するタイプにみられやすいことを 2016年12月31日のブログで書いておきながら、すっかり忘れていた。復習が必要。

The prion model for progression and diversity of neurodegenerative diseases. (2017.2.23 published online)

神経変性疾患の原因タンパク質が個体内あるいは個体間で伝播するというプリオン仮説の総説。研究の現状や、治療 (免疫療法、RNA干渉)。

prion仮説

神経変性疾患のprion仮説

ラボで基礎実験をしていた時代、TDP-43のプリオン仮説を唱えている先生の講演を聞いて以来、注目している仮説。

最近の医学論文【下】


最近の医学論文【上】

By , 2017年3月24日 9:23 PM

論文を読んでいて、ちょっとおかしな点があったので酔った勢いで知り合いに連絡を取って、レターを書いたら、脳卒中の某 top journalに通りました。普段は酔った勢いで失敗してばかりですが、プラスに働くこともあるんですね。あと、編集中の雑誌が出版間際なのですが、原稿落ちの危機にあって 5日間で総説一本書き上げました。普段読んだ論文をブログ記事にしているため、ブログ内検索しながら引用すべき文献を見つけられて、結構楽でした。忙しいけれど、こうして書いておくと、何かの役に立ちますね。

Effectiveness and safety of reduced dose nonvitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study. (2017.2.1o published online)

腎障害、年齢、体重などにより、NOACは減量して用いる。減量して用いた患者でのコホート研究 (propensity scoreを使用) が BMJ誌に掲載された。その結果、虚血性脳卒中及び全身性塞栓症リスク (%/year) は、アピキサバン 4.8,ダビガトラン 3.3, リバロキサバン 3.5, ワルファリン 3.7だった。ワルファリンとの比較では、効果に関するハザード比は、アピキサバン 1.19 (95%CI 0.95-1.49), ダビガトラン 0.89 (0.77-1.03), リバロキサバン 0.89 (0.69-1.16) だった。主要安全性アウトカムは、アピキサバン 0.96 (0.73-1.27), ダビガトラン 0.80 (0.70-0.92), リバロキサバン 1.06 (0.87-1.29) だった。

通常量だと NOAC間で効果に差がなくアピキサバンの出血リスクが低そうという結果だったが、減量量に関していえば、アピキサバンは効果が劣る、ダビガトランの出血リスクが低いということで、ダビガトランに軍配があがりそうだ。

Optimal Timing of Anticoagulant Treatment After Intracerebral Hemorrhage in Patients With Atrial Fibrillation. (2016.12.20 published online)

心房細動のある患者が脳出血を発症した場合、いつ頃から抗凝固療法を再開すればよいかを調べたコホート研究。脳出血発症 7~8週間後から再開すると、効果とリスクの比が最もよさそうだ。

Cardioembolic Stroke. (2017.2.3 published online)

Atrial Fibrillation and Mechanisms of Stroke: Time for a New Model. (2017.1.19 published online)

③と④は同じ著者による論文。心房細動では説明できない心原性脳塞栓症が多いことがわかってきていて、心房心筋症や心房の線維化など、心房基質の異常というモデルが注目されているという内容。2017年1月9日のブログ記事で詳しく紹介した論文と似た内容。

Histopathological Differences Between the Anterior and Posterior Brain Arteries as a Function of Aging. (2017.2.14 published online)

脳バンクの 194剖検脳を用いて、脳の前方循環と後方循環の動脈の病理組織学な違いを検討。後方循環の動脈は前方循環と比べて、壁が薄く、エラスチンが少なく、求心性の内膜肥厚が強かった。前方循環と比べると、脳底動脈は内弾性板に囲まれた動脈の面積が大きく (動脈拡張を示唆する)、椎骨動脈はエラスチンの欠損、求心性内膜肥厚、非アテローム硬化性狭窄が強かった。若者では椎骨動脈の石灰化が前方循環よりも強かったが、加齢とともにこの差は目立たなくなった。

前方循環と後方循環の脳梗塞の違いを比較するときに役に立ちそうな報告だと思う。

Intravenous Thrombolysis in Unknown-Onset Stroke: Results From the Safe Implementation of Treatment in Stroke-International Stroke Thrombolysis Registry. (2017.2.7 published online)

発症時刻不明で血栓溶解療法をおこなった症例と、発症 4.5時間以内に血栓溶解療法をおこなった症例を比較した。その結果、発症時間不明の脳卒中では、発症4.5時間以内とくらべて、症候性出血は増えなかった (調整オッズ比 1.09, 95%CI 0.44-2.67) が、死亡が増え (調整オッズ比 1.58, 95%CI 1.04-2.41)、良好なアウトカム (mRS) は減少した (調整オッズ比 1.29, 95%CI 1.01-1.65)。

mRS at 90 days

mRS at 90 days

発症時刻不明の脳卒中症例で、頭部CTで early signが出ていなかったり、頭部MRIの拡散強調像での高信号域が狭かったりすると、私は「まだ発症してすぐなんだろうな」と思いながら、血栓溶解療法は結局やらない (というか、基本的に発症 4.5時間以内というのが確認できる症例じゃなきゃ、やっちゃダメだし)。発症時刻不明の脳卒中で血栓溶解療法をすると、発症 4.5時間以内の症例に比べて予後が悪くなるというのは予想できる結果だったけど、どの程度というのがわかって勉強になった。

Association of Preceding Antithrombotic Treatment With Acute Ischemic Stroke Severity and In-Hospital Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation. (2017.3.14 published online)

心房細動の既往のある急性期虚血性脳卒中患者 94474名を対象として、発症前におこなわれていた治療と脳卒中の重症度 (NIHSS 16点以上を中等度~重症脳卒中と定義) を後方視的に調べた。脳卒中発症前に 7.6%が治療域 (INR≧2) のワルファリン、8.8%が NOACsを内服していた。83.6%は治療域の抗凝固療法を受けていなかった。13.5%はワルファリンを内服していたが治療域でなく、39.9%は抗血小板薬単独であり、30.3%は何の抗血栓治療も受けていなかった。CHA2DS2-Vasc 2点以上で抗凝固療法をおこなっていなかった理由の内訳は、記載なし 65.8%, 出血リスク 16.3%, 転倒リスク 10.3%, 終末期 6.2%, 患者の拒否 4.3%などだった。交絡因子で調整後、発症前に抗血栓療法がおこなわれていた患者では、中等度~重症脳卒中 (調整後オッズ比 治療域のワルファリン 0.56 [95%CI 0.51-0.60], NOACs 0.65 [0.61-0.71], 抗血小板薬 0.88 [0.84-0.92]) および院内死亡 (調整後オッズ比 ワルファリン 0.75 [0.67-0.85], NOACs 0.75 [0.72-0.88], 抗血小板薬 0.83 [0.78-0.88]) のオッズが低かった。

神経内科医になって、心房細動があるのに抗凝固療法をされずに心原性脳塞栓症で運ばれてくる患者さんを日々みて切々と感じていたのは、「なぜこの方は抗凝固療法をされていなかったのだろう。ひょっとしたら防げていたかもしれないのに。」ということ。おそらく NOACsが発売になり製薬会社がプロモーションの一環として抗凝固療法の必要性の啓蒙活動をするようになったこと、CHADS2あるいは CHA2DS2-Vasc scoreが知られるようになり抗凝固療法の適応がわかりやすくなったことが原因で、最近では適切に抗凝固療法が行われている症例が増えていると思う。そして、きちんと予防治療されている患者では、仮に虚血性脳卒中を発症しても軽くすむことが多いというデータ。抗血小板薬でも中等度~重症脳卒中および院内死亡の低下とこれだけ相関があるというのは少し驚きだった。

Validating the HERDOO2 rule to guide treatment duration for women with unprovoked venousthrombosis: multinational prospective cohort management study. (2017.3.17 published online)

誘因のない静脈血栓塞栓症において、女性の 51.3%が HERDOO2 (Hyperpigmentation, Edema, or Redness in either leg; D-dimer level ≥250 μg/L; Obesity with body mass index ≥30; or Older age, ≥65 years) の low riskに分類された。この場合、5-12ヶ月の短期間で抗凝固療法をやめても再発率は低かった (3.0% per patient year, 95% confidence interval 1.8% to 4.8%)。HERDOO2高リスク女性および男性では、治療を中止すると 8.1%  (95%CI 5.2% to 11.9%) per patient yearの再発があり、抗凝固療法を続けた場合は 1.6% (95%CI 1.1-2.3%) per partient yearの再発リスクだった。

HERDOO2

HERDOO2

いつまで抗凝固療法をつづけるかの指標として便利なので覚えておきたい。

 

Tumefactive demyelination following treatment for relapsing multiple sclerosis with alemtuzumab. (2017.2.8 published online)

症例は 39歳の女性。24歳時に再発緩解型多発性硬化症と診断。Glatiramer acetate→fingolimod→natalizumabで治療してきて、JC virusが陽性となったことを転機に alemtuzumabに変更。4ヶ月後、脱髄病巣による腫瘤形成がみられた。著者らは、リンパ球の populationが劇的に変化したためではないかと推測している。

Alemtuzumabは、種々の副作用のため米国では承認が延長された過去があり、最近副作用絡みの報告が専門誌に散見されるので、かなり注意して使わないといけない薬剤だと思う。

Treatment effectiveness of alemtuzumab compared with natalizumab, fingolimod, and interferon beta in relapsing-remitting multiple sclerosis: a cohort study. (2017.2.10 published online)

再発寛解型多発性硬化症について、alemtuzumabと他の薬剤を比較したコホート試験。年間再発割合は、alemtuzumab 0.19 vs interferon beta 0.53, alemtuzumab 0.15 vs fingolimod 0.34, alemtuzumab 0.20 vs natalizumab 0.19だった。障害のアウトカムでは、alemtuzumabは interferon beta, fingolimod, natalizumabと比較して有意差はなかった。alemtuzumabは障害の改善において、 interferon beta, fingolimodと差はなく、natalizumabより劣った。

Alemtuzumabや natalizumabの再発抑制効果は高いことはよくわかるけれど、いずれも副作用が気になるところ。重症例向けの薬剤なのだろうな・・・。

Long-term Outcomes After Autologous Hematopoietic Stem Cell Transplantation for Multiple Sclerosis. (2017.2.20 published online)

多発性硬化症に対する自家造血幹細胞移植の長期成績。281名の患者、追跡の中央値 6.6年の報告。78%が進行型の多発性硬化症だった。末梢血幹細胞の mobilizationをしたときの EDSSスコアの中央値は、6.5だった。8名 (2.8%, 95%CI 1.0-4.9%) が移植後 100日以内に死亡した。EDSSスコアによる評価で悪化がなく 5年間過ごせたのは 46%だった。移植後の神経学的疾患進行に関する因子は、高齢、進行型、2種類以上の疾患修飾薬を使用した既往であった。ベースラインの EDSSスコアが高い患者では、全生存の悪化と関連があった。

移植治療は侵襲の大きな治療で、約3%が移植に関連して亡くなるが、うまくいけば約半数の患者で明らかな進行なく過ごせるという、ハイリスク・ハイリターンの治療。

Neurodegeneration in multiple sclerosis and neuromyelitis optica. (2016.9.28 published online)

多発性硬化症と視神経脊髄炎の神経変性についての総説。多発性硬化症では髄鞘が障害されやすいけれど、視神経脊髄炎では軸索が障害されやすいことを説明した図がわかりやすい。

MS and NMO

MS and NMO

 

Possible liver injury added to label of Biogen MS drug (2017.1.25)

2017年2月22日に本邦でも発売開始となった フマル酸ジメチル (商品名 テクフィデラ) だが、米国では 添付文書に肝障害の副作用について記すことになったらしい。フマル酸ジメチルで重度の肝障害をきたした症例が複数報告されており、販売するバイオジェンのスポークスマンによれば、23万人治療して、14例だったとのこと。発症時期は数日~数ヶ月で幅があるらしい。

最近の医学論文【中】


Romdraculas

By , 2017年2月28日 5:31 AM

路上演奏に飛び入りで参加した韓国人ウッドベーシストが話題になっています。

【鳥肌】路上演奏に飛び入り参加を申し出た青年。最初はナメていたバンドマンたちだが、、

私が気になったのは、路上演奏していたジプシー演奏家の方で Romdraculasというグループのようです。ヴァイオリニストが良い味を出しています。

CDは手に入らなかったのですが、Youtubeでいくつか演奏を聴くことが可能です

・CZARDAS por ROMDRACULAS DE FIRENZE

チャルダーシュはジプシー音楽の定番ですね。

・I Will Survive (Cover) – Romdraculas

私にとって “I will survive” といえば Igudesman & Jooなのですが、Romdraculasも素晴らしいです。

・Rom Draculas

こちらは、ジャズのスタンダード・ナンバーの “minor swing” から始まり、途中でモーツァルトの交響曲第40番第1楽章がアレンジされます。そこで拍手。

ちなみに、私が最も好きなジャズ・ヴァイオリニストであるステファン・グラッペリが、ギタリストのジャンゴ・レインハルトと演奏した “minor swing” も youtubeで聴くことが可能です。

・Minor Swing – Django Reinhardt & Stéphane Grappelli

ジャンゴといえば、モダン・ジャズ・カルテットのジョン・ルイスが「ジャンゴ」を作曲していて、私はステファン・グラッペリが演奏する「ジャンゴ」を聴いたのが、彼にハマったきっかけです。

・Django Reinhardt & Stephane Grappelli – Django (動画はラインハルトではなく別のギタリスト)

話が随分と脱線してしまいました。とはいえ、いずれもお勧めの動画なので是非ごらんください。


パーキンソン病と iPS

By , 2017年2月4日 10:48 AM

ついにパーキンソン病に対する iPS治療の臨床試験が始まりそうですね。

パーキンソン病を他人のiPSで治療 京大研究所、30年度治験開始へ

産経新聞 2/4(土) 7:55配信

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使ったパーキンソン病の治療を研究している京都大iPS細胞研究所(CiRA(サイラ))の高橋淳教授は3日、他人の細胞から作ったiPS細胞による治療の実用化へ向け、平成30年度の治験開始を目指すことを明らかにした。

他人由来のiPS細胞をめぐっては、理化学研究所などによる網膜移植の臨床研究について厚生労働省が了承。厚労相が2日付で通知している。

高橋教授によると、拒絶反応が起きにくい免疫型を持つ健常者の血液からあらかじめ作製し、ストックしていたCiRAの再生医療用のiPS細胞を使用。今後の実用化段階では、iPS細胞から作製した神経前駆細胞を、パーキンソン病患者の脳内に注入して移植する方法で手術を行う。

CiRAでは、患者自身のiPS細胞を使った臨床研究も検討したが、高橋教授は「患者自身のiPS細胞を使用する計画は、コストや時間のめどがたたなかった」と説明。結果的に、他人のiPS細胞を使う方が実用化への早道になると判断したという。

また、ストック細胞を使うことで費用や移植までの期間が縮減できることが期待され、高橋教授は治療費を数百万円レベルに抑えることを目標とした。

計画では、国から医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づく承認を得られれば、大日本住友製薬(大阪市)がiPS細胞由来の神経細胞を再生医療用に製品化する方針。

2015年5月の神経学会総会で、「2015年中の臨床試験を目指す」という発表があった話は、昔ブログで書きました。その後、なかなか臨床試験の話が聞こえてこないので、2016年秋の神経学会東北地方会前日の講演で、高橋教授にどうなっているのか質問しました。そうすると、「患者から iPS細胞を作成して移植する (=自家移植) のはコストがかかりすぎるので、他人由来の iPS細胞を使うことにした (=他家移植) ため、追加での研究が必要になっている」とのことでした。具体的には、他人由来の細胞だと免疫抑制をどうするかというのが重要になってくるようです。個人的に聞いたことなのでブログには書かずにいたのですが、ついに報道されました。

患者さんからは、「iPS治療をすればパーキンソン病は治るのか」と聞かれることが多いのですが、治療効果はあるにしても、それで完治というわけではなく、薬物療法やリハビリなども継続していく必要はありそうです。


最近の医学論文 後編

By , 2017年2月1日 6:23 PM

前編】より

BE-FAST (Balance, Eyes, Face, Arm, Speech, Time): Reducing the Proportion of Strokes Missed Using the FAST Mnemonic. (2017.1.12 published online)

脳卒中の早期発見の啓蒙活動に、海外では FASTをよく用いる。これは、Face, Arm, Speechの略で、これらの異常があれば脳卒中の可能性があるとするもの。ただし、これでは 14.1%を見逃してしまう。そこで、Balance, Eyesという、バランスの異常と視覚症状を加えると、見逃しが 4.4%に減少するのではないかという報告。

BE-FASTだとゴロが良いので、脳卒中早期発見の啓蒙に使えるのではないかと思う。ただ、バランスの異常は、発熱でふらついていても起こりそうだから、特異度は低くなりそうだけれど・・・。

Incidence and outcome of functional stroke mimics admitted to a hyperacute stroke unit. (2016.8.28 published online)

脳卒中と誤診されるような紛らわしい病態を stroke mimicsと呼ぶ。脳卒中としてロンドンの超急性期脳卒中ユニットに入院した症例 1165名を対象に、stroke mimicsについて調べた。実際に脳卒中だったのは 904名 (77.6%)、medical mimicsは 163名 (14%)、functional mimics (≒心因性) は 98名 (8.4%) だった。Medical mimicsでは過去の脳卒中による機能障害、てんかん、片頭痛などが多かった。

medical mimics

medical mimics

こんなに心因性って多いのかなぁ・・・とも感じるけれど、著者らの所属に “Department of Neuropsychiatry” “Institute of Psychiatry, Psychology and Neuroscience” というのがあるので、精神疾患を持つ患者のかかりつけが多いのかもしれない。

Impact of Rehabilitation on Outcomes in Patients With Ischemic Stroke: A Nationwide Retrospective Cohort Study in Japan. (2017.1.20 published online)

虚血性脳卒中で入院した患者のリハビリ効果を調べるために、データベースを用いて 100719名を解析。リハビリ早期開始 (入院後 3日以内)、リハビリ強度 (単位数) について、Barthel index改善の有無を評価。早期開始による Barthel indexの改善は odds ratio 1.08 (95%信頼区間 1.04~1.13), 強化リハビリ療法 > 5単位/dayによる Barthel indexの改善は odds ratio 1.87 (95%信頼区間 1.69~2.07) であった。

解析に用いた数が大きいので有意差自体は出やすくなっている。しかし Barthel indexの改善に対する Odds比 1.08とか、リハビリを早期に始めるメリットって、この程度なのかと思った。一方で、リハビリ強度については、綺麗な量相関関係があり、しっかりとリハビリは頑張った方が良さそうだ。

YAMATO Study (Tissue-Type Plasminogen Activator and Edaravone Combination Therapy). (2017.1.24 published online)

日本からの報告。血栓溶解療法の前にエダラボンを投与しても、後にエダラボンを投与しても、再開通率や症候性脳卒中、mRSでの転帰に有意差はなかった。

個人的には、エダラボンの効果自体が微妙だと思っている (全くゼロじゃないだろうけれど、薬価に見合うだけのことはないのでは・・・) ので、予想範囲内の結論。エダラボンが本当に有効なのかについて、これまでの臨床試験はベースラインが揃っていなかったり、ブラインド化されていなかったりするので、きちんとしたデザインの RCTが行われることの方に関心がある。

Abstract 18462: Proton Pump Inhibitor Use Increases the Associated Risk of First-Time Ischemic Stroke. A Nationwide Cohort Study (2016.11.11 published online)

プロトンポンプ阻害薬 (PPI) が脳梗塞のリスクを高める (incidence rate ratio (IRR) of 1.21 (95% CI 1.16-1.27; P-value <0.0001)) という報告。

元々、AHA/ASA虚血性脳卒中予防ガイドライン2014の 2195ページには “Recently, evidence has emerged that proton pump inhibitors (PPIs), such as esomeprazole, may reduce the effectiveness of clopidogrel. However, a large population study from Denmark suggested that PPIs themselves may increase the risk of cardiovascular events, so that when they are used with clopidogrel, the PPI may be the culprit.” という記載があり、PPIで心血管イベントが増えるかもしれないとされていたけれど、それを裏付ける結果。最近、PPIの副作用についての論文が増えている。

Potential Signals of Serious Risks/New Safety Information Identified by the FDA Adverse Event Reporting System (FAERS): July – September 2016 Report

FDAより、NOACsで血管炎の恐れとの安全情報。

ダビガトランとシンバスタチンの併用には注意

プラザキサとリポバスの併用で、出血リスクが高まる (OR 1.46[1.17-1.82]) らしい。詳細はリンク先のブログ記事参照。

WarfarinAssociated Nonuremic Calciphylaxis. (2017.1.11 published online)

ワルファリンに関連した非尿毒症性 Calciphylaxisの報告。著者らの 3例に加えて、15例の文献的検討。Calciphylaxisは腎不全に関連して起こることが近年話題になっているが、腎不全がなくてもワルファリン内服に関連して発症することが極めて稀ながらあるらしい。治療は抗凝固療法やチオ硫酸ナトリウム (デトキソール) などが用いられ、18例中 15例が生存した。古典的 Calciphylaxisの死亡率が 50~80%とされているのと比較すると予後は良好だった。

Facebookでこの論文について書いたら、リウマチ科医の先生から「vasculitis mimicsとして有名」と教えて頂いた。

Pharmacologic Treatment of Hypertension in Adults Aged 60 Years or Older to Higher Versus Lower Blood Pressure Targets: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians and the American Academy of Family Physicians. (2017.1.17 published online)

アメリカ内科学会とアメリカ家庭医学会より、高齢者の血圧管理についてのガイドラインが公表された。GRADEシステムで作成されている。

Recommendation 1:ACP and AAFP recommend that clinicians initiate treatment in adults aged 60 years or older with systolic blood pressure persistently at or above 150 mm Hg to achieve a target systolic blood pressure of less than 150 mm Hg to reduce the risk for mortality, stroke, and cardiac events. (Grade: strong recommendation, high-quality evidence). ACP and AAFP recommend that clinicians select the treatment goals for adults aged 60 years or older based on a periodic discussion of the benefits and harms of specific blood pressure targets with the patient.
Recommendation 2:ACP and AAFP recommend that clinicians consider initiating or intensifying pharmacologic treatment in adults aged 60 years or older with a history of stroke or transient ischemic attack to achieve a target systolic blood pressure of less than 140 mm Hg to reduce the risk for recurrent stroke. (Grade: weak recommendation, moderate-quality evidence). ACP and AAFP recommend that clinicians select the treatment goals for adults aged 60 years or older based on a periodic discussion of the benefits and harms of specific blood pressure targets with the patient.
Recommendation 3:ACP and AAFP recommend that clinicians consider initiating or intensifying pharmacologic treatment in some adults aged 60 years or older at high cardiovascular risk, based on individualized assessment, to achieve a target systolic blood pressure of less than 140 mm Hg to reduce the risk for stroke or cardiac events. (Grade: weak recommendation, low-quality evidence). ACP and AAFP recommend that clinicians select the treatment goals for adults aged 60 years or older based on a periodic discussion of the benefits and harms of specific blood pressure targets with the patient.
要するに、「何もない高齢者では収縮期血圧 150 mmHg以下、心血管イベントのリスクが高ければ 140 mmHg以下を目標にするが、個々の症例で利益と害をよく考えて決める」というもの。高齢者の血圧を下げすぎないのは最近のトレンドだが、やはり脳血管障害予防はある程度下げるほうが効果的ともいわれているので、妥当な結論ではないかと思う。ただ、細かい数字については色々議論があるようで、2017年1月30日の JAMAにはもう少し異なる提案が掲載されていた。

Hypertension

降圧基準の提案 (JAMA)

米国糖尿病学会から糖尿病の標準医療 2017年版が公開された。主な変更点はこちら

Management of Sepsis and Septic Shock. (2017.1.19 published online)

敗血症の治療ガイドラインである Surviving Sepsis Campaignが改定された。主要な推奨項目は下記 (抜粋)。

・敗血症と認識してから 1時間以内に、想定される病原体を全てカバーした広域抗菌薬を投与。

・解剖学的な感染源のコントロールを可能な限り速やかに行う。

・毎日、培養結果や臨床的改善を基に抗菌薬を de-escaltionすることを検討。

・敗血症性の低血圧がある場合、3時間以内に 30 ml/kgの晶質液を輸液。

・昇圧剤を要する敗血症性ショックでは、平均血圧 65 mmHgを目標とする。

・昇圧薬としては、ノルアドレナリンを第一選択薬とする。

・敗血症関連 ARDSでは、一回換気量 6 ml/kg、プラトー圧 30 cmH2O以下を目標とする。

→こちらの過去のブログ記事も参考に:入れる、締める、叩く!

Transient smartphone blindness: Relevance to misdiagnosis in neurologic practice. (2017.1.18 published online)

2016年に NEJM誌に報告された transient smartphone blindnessについて。メカニズムは、一般人向けのサイトに詳しい。それ自体に害はないのだけれど、頭部MRIで小血管病巣と思われる白質病変が散在していたため、多発性硬化症と誤診されてしまったという報告。

Ibrutinib monotherapy in relapsed/refractory CNS lymphoma: A retrospective case series. (2016.11.18 published online)

原発性中枢神経リンパ腫 (PCNSL) あるいは二次性中枢神経リンパ腫の対する Ibrutinibの後方視的ケースシリーズ 14名。いずれも、難治例 (12名) もしくは再発例 (2名)。最良の治療効果は、完全寛解が 3名、部分寛解が 4名。最終的には、5名死亡、6名が疾患活動性がありながら生存、3名が寛解を維持 (8, 8, 12ヶ月) であった。

Improved Muscular Weakness During Asthma Exacerbation. (2017.1.3 published online)

48歳男性、小児期からの筋力低下で、針筋電図や、血清CKレベルなどは正常。喘息発作のため、アルブテロールおよびステロイドの吸入を行ったところ、筋力が改善し、階段をのぼったり、数 km歩いたりできるようになった。

診断は先天性筋無力症。DOK7変異による先天性筋無力症では、サルブタモール吸入 (10 mg/day) で症状が改善することが知られているようだ。機序は不明だが、MuSKシグナル経路の障害を軽減することによる終板構造の安定化が仮説と唱えられているらしい。

AbbVie Initiates Phase 2 Clinical Trial Programs for ABBV-8E12, an Investigational Anti-Tau Antibody, in Early Alzheimer’s Disease and Progressive Supranuclear Palsy (2017.1.25)

AbbVie社が初期アルツハイマー病患者と進行性核上性麻痺患者を対象に、抗タウ抗体 ABBV-8E12の第二相試験を開始するらしい。

進行の遅い患者も多いので、52週間進行を観察して有意差を示せるかなぁ・・・という気はするけれど、薬剤の機序的にとても期待している。

Burnout, career satisfaction, and well-being among US neurologists in 2016. (2017.1.25 published online)

神経内科医の燃え尽き (burnout)、仕事満足度などについてのサーベイランス。米国神経内科学会の会員を対象とし、40.5%から回答を得られた。平均年齢は 51歳、65.3%が男性。少なくとも 60%が燃え尽きの症状を自覚していた。燃え尽きのリスクと関連していたのは、労働時間/週、夜間オンコール/週、外来患者数/週、事務仕事量だった。サポートスタッフ、仕事の裁量権、意義のある仕事、年齢、てんかんのサブスペシャリティがリスク低下と関連していた。アカデミア (Academic practice) の神経内科医は臨床 (clinical practice) の神経内科医と比較して、燃え尽き率が低く、満足度が高く、QOLも高かった。燃え尽きは、仕事満足度の低さと強く相関していた。

私はまだ燃えてすらいないダメ医者ヽ(´ー`)ノ


最近の医学論文 前編

By , 2017年2月1日 6:21 PM

なんとか2月の3講演のスライドを完成させ、和文総説も前倒しで終えました。ガイドラインの資料もほぼ完成して、委員のチェックが終わればパブコメです。

今回の論文チェックは 1ヶ月分だから楽かなとおもったら、面白い論文が多すぎて、2回に分けました。

Ocrelizumab versus Interferon Beta-1a in Relapsing Multiple Sclerosis. (2016.12.21 published online)

多発性硬化症 (一次性進行型を除く) に対して、オクレリズマブとインターフェロンβ1aを比較した 2つの第三相試験 (OPERA I/II) をまとめた報告。Double-dummyで double-blindとのこと。オクレリズマブは、CD20陽性 B細胞に対するモノクローナル抗体である。オクレリズマブ群は、600 mgを 24週間毎に経静脈投与した。一方、インターフェロンβ1a群は 44 ug週 3回の皮下注射を 96週間続けた。その結果、主要エンドポイントである年間再発率は OPERA I試験でオクレリズマブ群 0.16, インターフェロンβ1a群 0.29 (オクレリズマブ群で 46%低い, p<0.001) で、OPERA IIでオクレリズマブ群 0.16, インターフェロンβ1a群 0.29 (オクレリズマブ群で 47%低い, p<0.001) であった。両試験を併せると、12週間後に障害が進行した患者の割合は、オクレリズマブ群でインターフェロンβ1a群に比べて有意に低かった (9.1 v.s. 13.6%, hazard ratio 0.60, 95%信頼区間 0.45~0.81, p<0.001)。また24週間後についても同様であった (6.9 v.s. 10.5%, hazard ratio 0.60, 95%信頼区間 0.43~0.84, p=0.003)。ガドリニウム造影病変の平均個数は、オクレリズマブ群で 0.02個、インターフェロンβ1a群で 0.42個であった。注射関連反応がオクレリズマブ群の 24%でみられた。重症感染は、オクレリズマブ群 1.3%で、インターフェロンβ1a群 2.9%であった。悪性腫瘍はオクレリズマブ群 0.5%で、インターフェロンβ1a群 0.2%だった。

ベースラインで半数以上の患者の EDSSが 0という、比較的軽症者を対象とした試験。経静脈投与の薬剤の方が、皮下注射で用いるインターフェロンなどより効果が高いというのは、他の薬剤でもそうなので驚くような結果ではない。むしろ驚いたのは次の文章。スポンサーとズブズブの臨床試験じゃないか・・・。”The sponsor, F. Hoffmann–La Roche, designed the trial in consultation with members of the ORATORIO trial steering committee. Data were collected by the site investigators, queries were responded to by site personnel, and the data were analyzed by the sponsor; the aggregated and individual results of the participants were reviewed by the sponsor and steering committee.”, “A subgroup of authors, which included academic authors and authors who are employees of the sponsor, drafted the manuscript, and all the authors approved the final version and made the decision to submit the manuscript for publication. Medical-writing assistance was funded by the sponsor.” という記載。あと、注射関連反応が 24%にみられたということは、その 24%では盲検化は崩れているのではなかろうか・・・。

Ocrelizumab versus Placebo in Primary Progressive Multiple Sclerosis. (2016.12.21 published online)

多発性硬化症の一次進行型を対象に、オクレリズマブとプラセボを比較した第三相試験。732名の一次進行型多発性硬化症患者を、2:1でオクレリズマブ 600 mgかプラセボに割り付け。薬剤の経静脈投与は 24週間ごとに、少なくとも 120週間もしくは事前に定められた数の障害進行イベントが起こったときまでとした。主要エンドポイントは 12週間の時点で障害の進行が確認された患者の割合とした。その結果、12週での障害が進行した患者の割合は、オクレリズマブ群 32.9%で、プラセボ群 39.3%だった (Hazard ratio 0.76, 95%信頼区間 0.59~0.98, P=0.03)。24週ではオクレリズマブ群 29.6%で、プラセボ群 35.7%だった (Hazard ratio 0.58, 95%信頼区間 0.58~0.98, P=0.04)。120週での timed 25-foot walk (25フィート歩行の時間) の悪化は、オクレリズマブ群 38.9%で、プラセボ群 55.1%だった (P=0.04)。T強調像での病変は、オクレリズマブ群で 3.4%減少に対し、プラセボ群では 7.4%増加した。

一次進行型の多発性硬化症に効果が証明された薬剤は存在しないので、もし有効であれば凄いことだと思う。同じく CD20阻害薬であるリツキシマブは、有効性を証明できなかった (OLYMPUS trial) とのこと。この臨床試験も、同じ号に掲載されたインターフェロンβ1aとの比較同様、次の文句が並ぶ。”The sponsor, F. Hoffmann–La Roche, designed the trial in consultation with members of the ORATORIO trial steering committee. Data were collected by the investigators and analyzed by the sponsor; the results were reviewed by the sponsor and steering committee.” “The first draft of the manuscript was written by the first and last authors, with medical writing assistance funded by the sponsor.”

An observational study of alemtuzumab following fingolimod for multiple sclerosis. (2017.1.10 published online)

フィンゴリモドを中止して 12ヶ月以内にアレムツズマブを開始すると、多発性硬化症の疾患活動性が高くなることを示唆する 9症例の報告。アレムツズマブに先行してフィンゴリモドが投与されていた 36例中 9例なので、実は多いのかもしれない。

多発性硬化症の新薬は次々と生まれていて、組み合わせ次第では様々なことが起きるのではないかという気がする。これは氷山の一角ではないだろうか。

Severe B-cell-mediated CNS disease secondary to alemtuzumab therapy. (2017年2月号)

41歳男性にアレムツズマブの初回投与を行った後、症状の急激な増悪があり、頭部MRIで造影される新規病変が 20ヶ所出現していた。メチルプレドニゾロン 7000 mgの静脈内投与を行ったが改善なく、免疫吸着療法が奏功した。病勢を安定させるため、リツキシマブを追加した。その後、症状は安定し、新規病巣の出現もない。

アレムツズマブを使う機会はそうそうないけれど、こういうこともあるのかと。しかし、そこでリツキシマブを使うとは、かなり勇気が必要だっただろうなぁ・・・。

Soluble CD27 Levels in Cerebrospinal Fluid as a Prognostic Biomarker in Clinically Isolated Syndrome. (2017.1.3 published online)

臨床的イベントが 1回のみで、まだ多発性硬化症と呼べないものを clinically isolated syndromeと呼ぶが、将来多発性硬化症になる患者ではそうでない患者と比べて髄液中の可溶性 CD27が高いという報告。

確かにそうかもしれないけれど、個々の症例で将来多発性硬化症を発症するかどうかの予測に使えるほどはっきり分離できる結果ではないと思った。

MOG antibody-positive, benign, unilateral, cerebral cortical encephalitis with epilepsy. (2017.1.16 published online)

東北大学からの報告。てんかんを伴う片側性皮質性脳炎で抗MOG抗体を測定したところ陽性であった。そこで、24例の原因不明の成人ステロイド反応性脳炎で抗MOG抗体を測定した。その結果、さらに 3名が抗MOG抗体陽性であった。全例男性で、年齢中央値 37歳 (23~39歳)、主要な症状は全般性てんかん発作であった。2例では片側性の良性視神経炎があった。全例、頭部MRIで片側の大脳皮質が FLAIRで高信号となっており、それらは腫脹し、SPECTでの血流増加に合致した所見であった。髄液では、単核球優位の中等度の細胞数増多と軽度の蛋白上昇があったが、ミエリン塩基性蛋白の上昇はなかった。他の抗体は陰性で高用量のメチルプレドニゾロンが有効で、MRIでの病巣は消失した。再発はなかった。

頭部MRIで片側皮質の FLAIR高信号を伴う自己免疫性脳炎では、抗MOG抗体の測定が必要・・・というのは勉強になった。

Anti-LGI1 encephalitis is strongly associated with HLA-DR7 and HLA-DRB4. (2016.12.27 published online)

悪性腫瘍非合併の抗LGI1抗体による脳炎患者 25名の HLAを調べたところ、HLA-DR7が 88% (コントロール群 19.6%)、HLA-DR4が 100% (コントロール群 46.5%) であった。著者らは、HLA-DR7や HLA-DR4を欠く抗LGI-1抗体脳炎では、悪性腫瘍の疑いがあるかもしれないとしている。

Characteristics in limbic encephalitis with anti-adenylate kinase 5 autoantibodies. (2017.1.6 published online)

抗AK5抗体陽性脳炎 10例の纏め。平均年齢中央値 64歳 (57~80歳)、けいれん発作を伴わない前向性健忘、ときどき無力症 (asthenia) や気分障害の先行がある。癌との関連はない。全例、MRIで両側の海馬以上信号があった。髄液検査では、軽度の細胞数増多、IgG index上昇、オリゴクローナルバンド、タウ上昇 (Aβやリン酸化タウは正常) がみられた。1例を除き、免疫療法は効果がなく、高度な前向性健忘が残存した。2例では重度の認知機能低下が進行した。MRIでその後海馬萎縮がみられた。In vitroでは 抗AK5抗体の役割を同定することはできなかった。

高齢者の前向性健忘を伴う脳炎で、当初 FLAIRで海馬の異常信号があり、やがて萎縮するという、似たような症例の経験がある。この報告と異なっていたのは、てんかんを合併していたこと。昔働いていた病院なのだけど、この疾患だったのかどうか気にかかる。

Efficacy, safety, and tolerability of lacosamide monotherapy versus controlled-release carbamazepine in patients with newly diagnosed epilepsy: a phase 3, randomised, double-blind, non-inferiority trial. (2016.11.24 published online)

新規抗てんかん薬ラコサミドの第三相試験。16歳以上の新規てんかん患者が対象。介入群はラコサミド (100→200 mg/day, 発作があれば max 600 mg/dayまで増量)、対照群はカルバマゼピン徐放錠 (200→400 mg/day, 発作があれば max 1200 mg/dayで増量)。主要エンドポイントは 6ヶ月連続で発作消失。6ヶ月の治療を継続できたのは、ラコサミド群 74% (327名)、カルバマゼピン徐放錠群 70% (308名) だった。6ヶ月間の発作抑制は、ラコサミド群 90%、カルバマゼピン徐放錠群 91%で、絶対リスク差 -1.3% (95%信頼区間 -5.5~2.8%)、だった。ラコサミドはカルバマゼピン徐放錠に非劣性だった。

有害事象の総数は両群でそれほど大きな違いはないが、ラコサミド群では浮動性めまいが多く、カルバマゼピン徐放錠では倦怠感、皮疹、傾眠、肝機能障害が多い傾向にあった。

副作用

副作用

Monotherapy treatment of epilepsy in pregnancy: congenital malformation outcomes in the child. (2016.11.7 published online)

妊婦への抗てんかん薬単剤療法の Cochrane reviewが公開されている。包含基準を満たした 50の臨床試験のうち、31試験で meta-analysisをおこなった。その結果、大奇形のリスクが最も低かったのはレベチラセタムとラモトリギンであった (キモの部分は “There was no increased risk for major malformation for lamotrigine (LTG). Gabapentin (GBP), levetiracetam (LEV), oxcarbazepine (OXC), primidone (PRM) or zonisamide (ZNS) were not associated with an increased risk, however, there were substantially fewer data for these medications.For AED comparisons, children exposed to VPA had the greatest risk of malformation (10.93%, 95% CI 8.91 to 13.13).”)。しかし、特異的な奇形についてのデータには乏しく、内科医はリスクと治療の有効性について、患者とよく話し合うべきである。(日本語要約)

薬剤選択について従来の結論と大きな違いはないが、こういう質の高い研究で示された意義は大きい。さまざまな抗てんかん薬の直接比較をおこなっているのだが、抗てんかん薬は種類が多く、比較には様々な組み合わせがあるため、解析を見ると Comparison 66までおこなっていて、大変な努力が必要な研究だと思った。

Rhabdomyolysis Associated with Levetiracetam Administration. (2016.12.31 published online)

レベチラセタム静脈内投与後に横紋筋融解症をきたした 27歳女性の報告。レベチラセタム単剤で治療を始めた後に出現し、無症候性で血清 CKの最大値は 49539 U/lだった。これまでレベチラセタムに関連した横紋筋融解症は 4例報告されている。全例 13~29歳で、CKは 986~29136 U/lだった。4名中 3名では併用薬があり、単剤だった 1名の CKは 986 U/lだった。

よく使う薬剤なので、極めて稀ではあっても、知っておきたい副作用。

Glucocorticoid-associated worsening in reversible cerebral vasoconstriction syndrome. (2017.1.17 published online)

可逆性脳血管攣縮症候群は、繰り返す雷鳴頭痛を呈し、約 1/3~1/2に虚血や出血を合併する。中枢神経原発血管炎 (primary angiitis of the CNS; PANCS) との鑑別を要する。mRS 3点を超えるアウトカム不良は 5~14%とされている。著者らは、後方視的に臨床的あるいは画像上の増悪をきたす要因を調べた。その結果、ステロイドを投与された患者の 37%で臨床的な悪化があった (ステロイド非投与では 5%)。また、臨床的悪化のあった患者で退院時の mRS 4-6の予後不良の割合は、ステロイド投与群で ステロイド投与群 47%、非投与群 17%だった。ベースラインの重症度で、ステロイド投与群が非投与群より軽症であったわけではなく (むしろベースラインの画像ではステロイド投与群の 35%が正常で、非投与群では全例異常があった)、ステロイド投与から症状増悪まで、ほとんどが 2日以内だった。SSRIで症状や画像上の悪化がみられたが、退院時の障害スコアへの影響はなかった。カルシウム拮抗薬やトリプタン製剤は、頭痛や増悪の予防に効果はなかった。

後方視的な研究だが、かなり説得力のある報告である。PANCSだった困るという理由で安易にステロイドを使ってしまうと、予後を悪化させる恐れがあるというのは、臨床医にとってジレンマとなるかもしれない。

Genetic epidemiology of amyotrophic lateral sclerosis: a systematic review and meta-analysis. (2017.1.5 published online)

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の遺伝子についての systematic reviewおよび meta-analysisをおこない、ヨーロッパ人とアジア人を比較している。ヨーロッパ人では C9orf72変異が多く、日本人では SOD1変異が多い。

それぞれの頻度については、図を見ると一目瞭然。

Genetic epidemiology of ALS

Genetic epidemiology of ALS

Pain in amyotrophic lateral sclerosis. (2016.12.8 published online)

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) と疼痛についての総説。ALSでは様々なタイプの疼痛がある。頻度については研究によりばらつきが大きい。軽度のことが多いが、中等度以上の疼痛もみられる。メカニズムとしては、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、中枢性感作がある。治療法について、2013年のコクランレビューでは RCTなしとしている。著者らは、疼痛で用いる薬剤を次のように推奨している。

・神経障害性疼痛 (四肢):Gabapentin (First line), Pregabalin (First line), 三環系抗うつ薬 (First line)

・筋痙攣 (下肢、手、腹部):Quinine sulphate (First line), Gabapentin (Second line), Mexiletine (First line), Dronabinol (Second line), Levetiracetam (First line)

・痙性 (下肢):Levetiracetam (First line), Baclofen髄注 (Second line),Baclofen内服/tizanidine/dantrolene/benzodiazepines (NA)

・体動困難に起因する疼痛:NSAIDs and paracetamol (First line), Opioids (Second line), Cannabis (Second line)

・四肢の麻痺 (肩痛, 関節痛):リドカイン・ステロイドの関節内注射 (First line)

ALSと疼痛

ALSと疼痛のタイプ

ALSで疼痛を訴える患者さんはたまにいるので読んでみたけれど、やはりわかっていないことが多いみたい。治療薬としては NSAIDs/アセトアミノフェンもしくは神経障害性疼痛についての薬剤がメインになるというのは予想通り。

後編】へ続く


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