これだけは知っておいて欲しい筋疾患

By , 2016年5月28日 6:15 PM

2016年5月13日、郡山ビューホテルで行われた第9回福島末梢神経研究会に参加しました。西野一三先生の「これだけは知っておいて欲しい筋疾患」という講演が面白かったので備忘録としてメモしておきます。

①Sporadic late-onset nemaline myopathy (SLOMN):ネマリンミオパチー

・成人発症で、亜急性・進行性である。運動ニューロン疾患に似た経過をたどる。治療できる場合があるので、見逃してはならない。

・SLOMN with MGUSは予後不良で、5/7例が呼吸不全で死亡 (予後 1-5年)。

・SLOMN without MGUSは 5/5例生存→治療として、高用量メルファラン+自家幹細胞移植 7/8例で生存、改善している。 

・SLOMN with MGUSは治療として、高用量メルファラン+自家幹細胞移植 7/8例で生存、改善している。(記事末尾の追記およびコメント欄参照)

・狭高口蓋は先天性ミオパチーを示唆する。Nemaline myopathyが鑑別となる。ミオパチーを疑ったら、口腔内の上側をきちんと評価すること。

・四肢筋力が保たれるにも関わらず、呼吸筋麻痺が目立つミオパチーとして、nemaline myopathy, Pompe病がある。歩けているのに呼吸不全をきたし、患者自身が自分でアンビューを押す事例もあるらしい。

②Inclusion body myositis (IBM): 封入体筋炎

・深指屈筋が侵されやすい (前腕の筋萎縮が目立つ) +大腿四頭筋萎縮が目立つ

・深指屈筋が侵されると、ペットボトルの蓋が開けにくい。深指屈筋の筋力低下のみだと、握力計は役に立たないことがある。

・疫学としては、米国、オーストラリアに多い。タイ、インド、イスラエルにはほとんど存在せず、報告があったとしても全部外国人。食生活が影響?

・IBM患者では HCV感染症が多く、28.8%というデータがある。非IBM患者だと 3.4%とされている。米国の IBM患者は HIVの合併が多いと言われている。

・筋病理は、autophagyを反映して rimmed vacuoleがみられる。Endomysiumにリンパ球がみられ、炎症を示している。壊死・再生がないのにリンパ球がみられるというのが特徴。

・高齢者にしか起こらない筋疾患として、眼咽頭筋型筋ジストロフィー (OPMD), IBMがある。

③Immune mediated necrotizing myopathy (iNM): 免疫介在性壊死性ミオパチー

・筋病理としては、筋の壊死・再生がみられるが、リンパ球浸潤はほとんどない。

・様々な自己抗体が見られる。SRP>HMGCR>ARS>M2>others (抗SS-A抗体など)。SRP, HMGCR, ARS, M2については routineにチェックすべき。

・SRPは signal recognition particleで、ERに入る分泌型の蛋白質についているシグナルを認識している。ELISA法だと抗原認識部位により抗体を検出できないことがあるので注意。

・抗HMGCR抗体は最初スタチン内服患者での myopathyで検出された。しかし、その後スタチンを内服していない患者でも報告されている。

④Limb-girdle muscular dystrophy (LGMD) 2B:肢帯型筋ジストロフィー2B

・筋病理は、壊死・再生線維がみられ、血管周囲にリンパ球がみられる。perimysiumにもリンパ球がみられるが、これは反応性であり、診断的意義はない。

⑤Polymiositis (PM):多発筋炎

・皮膚科やリウマチ膠原病科では多発性筋炎と呼ぶが、神経内科では多発筋炎が正しい。

・筋病理では、endomysiumにリンパ球 (cytotoxic T cell) 浸潤 (=筋を攻撃している) がないと、多発筋炎とは診断できない。

・2012年に国立精神神経センターに送られてきた 732例の検体の臨床診断は、多発筋炎 35%, 皮膚筋炎 18%, 封入体筋炎 17%, その他 30%だった。ところが病理診断を行うと、実際には壊死性ミオパチー 44%, 多発筋炎 6%, 皮膚筋炎14%, 封入体筋炎 22%, その他 14%だった。いかに壊死性ミオパチーが多いか、いかに多発筋炎が稀かということ。実は多発筋炎はとてもめずらしいのだ。

・1975年の Bohan-Peter基準 (Polymyositis and dermatomyositis (part 1, part 2)) は非常に緩い基準だったので、これを用いて多発筋炎と診断される患者は多かった。しかし、2015年の ENMC分類 (筋炎患者を皮膚筋炎、多発筋炎、封入体筋炎、壊死性ミオパチー、抗synthetase症候群、非特異的筋炎に分類) を厳格に適用すると、多発筋炎患者は極めて少なくなる。

⑥Anti-Aminoacyl-tRNA Synthetase (ARS) antibodies: 抗ARS症候群

・myositis (筋炎), interstitial pneumonia (間質性肺炎), Mechanic’s hand (機械工の手: カサカサ) が重要

・筋病理では perifascicular necrotizing myopathyである。

・Jo-1, PL-7, PL12, EJ, OJ, KS, YRS, Zoなどたくさんの抗体が見つかってきている。Jo-1, PL-7, PL-12, EJ, OJは抗ARS抗体としてスクリーニングすべきである。抗ARS抗体の一つ Jo-1のみでスクリーニングをかけると、7割を見逃すことになる (抗Jo-1抗体は、抗ARS症候群の中で 30%くらいにしか検出されない)。

⑦皮膚筋炎

・MDA5, TIF-1γ, Mi-2, NXP2, SAEなどさまざまな抗体が見つかってきている。

(2016.7.16追記)

なんと、演者の先生から修正を頂きました。コメント欄から転載します。

神経センターの西野です。ウェブを検索していて偶然ブログを見つけ拝見させて頂きました。講演をまとめて頂き大変光栄です。

一点だけ、先生の記録を修正させて下さい。メルファランで治療可能なのは、SLOMN with MGUSです。この疾患は生命予後不良なのに、見つけてちゃんと治療すれば救命でき、筋力も改善するという点がミソです。without MGUSの方は、治療法はないものの生命予後良好はです。

どうぞよろしくお願いいたします。

(参考)

多発筋炎と皮膚筋炎


とろみ

By , 2016年5月24日 7:21 AM

神経疾患で嚥下障害を呈することは珍しくなく、栄養管理をどうするのかというのは常に問題になります。水で誤嚥が起こることが多いので、ぎりぎり経口摂取可能な程度の嚥下障害がある方は、トロミをつけて食事をしていただくことがしばしばあります。慣習的なもので、そのエビデンスについて、私は深く考えたことがありませんでした。この問題について、下記のブログを読んでとても勉強になったので紹介しておきます。

LESS IS MORE: トロミ剤の不適切使用 The horrible taste of nectar and honey-Inappropriate use of thickened liquids in dementia A teachable moment


最近の医学ネタ

By , 2016年5月20日 8:40 AM

論文の reviseの締め切りとか、雑誌の編集会議用の資料作りとか、色々重なって、ブログを更新する時間が全く取れませんでした。最近出た論文や医学系ニュースも概要のみチラッとチェックしているだけですが、後々見返すことがありそうなので、備忘録として簡単にメモしておきます。

Low-Dose versus Standard-Dose Intravenous Alteplase in Acute Ischemic Stroke

“Approximately two thirds of the patients were Asian, and 43% were recruited from China. ” とアジア人を多く含む試験で、アルテプラーゼ 0.6 mgは 0.9 mgに死亡や障害で非劣性を示せず。rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 にも「アルテプラーゼの至適用量に関するデータは国内外ともに未だ乏しく、このような用量の差が人種 差に基づくものか否かも含めて今後の更なる検討が必要である」とか書いていますし、今後は、アジア人のみを対象として至適用量を探す研究が出てくるんですかね。今のところ、clinicaltrials.govでそれっぽいのはないけれど。

Ticagrelor versus Aspirin in Acute Stroke or Transient Ischemic Attack

発症 24時間以内の急性虚血性脳卒中が対象。13199人をランダム化比較された。1:1割り付けで、薬物の用量は下記。
Patients received either ticagrelor (a loading dose of 180 mg given as two 90-mg tablets on day 1, followed by 90 mg twice daily given orally together with loading and daily doses of aspirin placebo) or aspirin (a loading dose of 300 mg given as three 100-mg tablets on day 1, followed by 100 mg daily given orally together with a loading dose and twice-daily doses of ticagrelor placebo).

Ticagrelorはアスピリンに脳卒中、心筋梗塞、死亡の複合エンドポイントで優位性を示せず。
In conclusion, in our trial involving patients with acute ischemic stroke or transient ischemic attack, ticagrelor was not found to be superior to aspirin in reducing the risk of the composite end point of stroke, myocardial infarction, or death.

二次エンドポイントである虚血性脳卒中もギリギリだめ。
The main secondary end point, ischemic stroke, occurred in 385 patients (5.8%) in the ticagrelor group and 441 patients (6.7%) in the aspirin group (hazard ratio, 0.87; 95% CI, 0.76 to 1.00; nominal P=0.046)

あと、Ticagrelorは呼吸苦での内服中断が 1.4%あり。
Dyspnea and bleeding events were the most frequent factors accounting for the difference, with rates of discontinuation due to dyspnea in the ticagrelor and aspirin groups of 1.4% and 0.3%, respectively, and rates of discontinuation due to any bleeding of 1.3% and 0.6%.

やはり、脳卒中の急性期治療でアスピリンに勝てる薬剤は無いんですね。

Popular Pain Drug Linked to Birth Defects

神経障害性疼痛の治療で用いられるプレガバリン (商品名:リリカ) で先天性異常のリスクが高まる可能性があり、妊婦さんは注意を。

Olanzapine: Drug Safety Communication – FDA Warns About Rare But Serious Skin Reactions

抗精神病薬のオランザピンで DRESS (Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms) の報告。1996年以降 23件の報告が FDAに寄せられているが、報告されていないものもあるため、実際にどの程度生じるかは不明。

Mucocutaneous Findings and Course in an Adult With Zika Virus Infection

ジカウイルスでは皮膚粘膜の所見に注意。講演で忽那先生がおっしゃっていた通り

Migraine photophobia originating in cone-driven retinal pathways

片頭痛患者は光過敏を示すが、緑色よりも白色や青色、黄色、赤色で悪化する。円錐由来の網膜経路が関与しているらしい。

Metformin for chemoprevention of metachronous colorectal adenoma or polyps in post-polypectomy patients without diabetes: a multicentre double-blind, placebo-controlled, randomised phase 3 trial

ポリペクトミーの既往のある非糖尿病患者へのメトホルミン投与で、異時性大腸腺腫やポリープが減るらしい。

メトホルミンの癌に対する効果の研究は最近色々と行われています。

Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years

Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT) で高齢者のサブグループを調べた研究。糖尿病のない 75歳以上の高齢者において、収縮期血圧 140 mmHg未満よりも 120 mmHg未満で管理した方が、主要な心血管イベント、総死亡は減るようだ。

高齢者の降圧については凄く議論のある分野で、ガイドラインは下げ過ぎない方向に向かっていて、この研究だけでプラクティスを変えるようなことにはならなさそう。今回は時間がなくてアブストラクトしか見てないので、時間ができたら先行研究と比較吟味したいところ。

ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス [第1回]認知症治療薬,どう使う?
✓ 認知症治療薬は,効果が限定的であることも,改善効果を示すこともあり,各薬剤の特徴を知って適切に使用したい。
✓ 認知症治療薬は少量から開始し,有害事象にも注意しながら12週間を目安に効果を判定する。
✓ 服薬中の錐体外路症状,興奮,不穏は,薬剤の有害事象である場合もある。
✓ 薬剤の有害事象かどうかの判断は,薬剤を中止してその症状が軽快するか否かで見極める。

ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス [第2回]スタチン,いつやめる?
✓ 1次予防でのスタチンの適応は,リスク計算や年齢だけでは判断できない。
✓ 1次予防目的でスタチンを始める場合,効果発現には2年程度かかる可能性がある。
✓ 虚弱高齢者へのスタチンの継続は,目的をきちんと話し合う。
✓ 終末期のスタチンの中止は,患者にとって害にはならず,QOLの改善につながる可能性もあることから,中止も考慮したい。

Effects of aspirin on risk and severity of early recurrent stroke after transient ischaemic attack and ischaemic stroke: time-course analysis of randomised trials

TIAもしくは虚血性脳卒中でアスピリンとプラセボと比較して、二次予防効果を検討。過去の 12の臨床試験のデータを使用。アスピリンは 6週間の虚血性脳卒中再発リスクを 60%低下し、重症ないし致死性虚血性脳卒中を 70%低下させた。特に TIAや minor stroke患者で効果が大きかった。これは重症脳卒中の低減効果によるものだった。これらの効果は投与量や患者の特性、TIA/虚血性脳卒中の原因に独立してみられた。


犬養木堂記念館

By , 2016年5月5日 10:06 AM

ゴールデンウィーク、5月3-5日に帰省しました。3, 5日は移動日だったので、出かけられたのは 4日のみでした。乗馬クラブは混んでおり、犬養木堂記念館に出かけることにしました。

犬養木堂記念館

犬養木堂 (犬養毅) といえば、憲政擁護運動で知られた政治家です。明治憲法と日本国憲法の違いはありますが、憲法記念日の翌日に訪れることができてよかったと思います (憲法を変えるとか変えないとかいう議論とは全然別のものです)。記念館には、木堂が撃たれたときに座っていた血痕のついた座布団や、孫文が武器弾薬を陳情した手紙、木堂の書などが飾られていました。また、木堂の演説の録音を聴くことが出来ました。

その後は、川崎医大の前を通り、大山名人記念館に行きました。

大山名人記念館

展示はワンフロアのみで、大山康晴ゆかりの品がいくつか展示されていました。彼が使用した盤駒、駒袋、眼鏡などです。棋書が自由に読めるようになっており、奥座敷では、若者が一人将棋盤を使って詰将棋を解いていました。大山名人が残した「助からないと思っても助かっている」という名言は、重症患者を診ているときなど、ふと頭に浮かぶことがあります。

夜は、福島県の行きつけの酒屋で買った「十四代 中取り純米吟醸 播州愛山」を家族で飲みました。行きつけの酒屋ではスタンプカードが貯まると定価で買うことができますが、ネットオークションでは 3万円もするんですね。調べてみてびっくりしました。あとは、地元の「御前酒 馨」、こちらも美味しかったです。


更年期障害

By , 2016年5月5日 9:18 AM

とあるクリニックで外来をしていたら、患者さんから更年期障害について相談を受けました。突然発汗してしまい、困っているのだそうです。婦人科へのアクセスの悪い地域だったので、何か自分でできることはないか、少し調べてみると、オープンアクセスとなっている NEJMの総説がとてもよくまとまっていました。

Management of Menopausal Symptoms

・周閉経期 (menopausal transition) は 40歳代後半から始まり、約 4年間続く。閉経年齢の中央値は 51歳であり、喫煙者では約 2年間早くなる。周閉経期の初期は、エストロゲンは通常正常からやや高値で、FSHは上昇し始めるが概ね正常範囲内である。周閉経期が進むにつれて、ホルモンレベルは変化するが、エストロゲンは著明に低下し、FSHは上昇する。閉経すると排卵は起きなくなる。卵巣は、エストラジオールやプロゲステロンを産生しなくなるが、テストステロンの産生は続く。

・閉経期の女性は様々な症状を訴えるが、年齢や交絡因子で調整すると、血管運動症状 (vasomotor symptoms, ホットフラッシュや夜間の発汗) と膣症状 (vaginal symptoms)、睡眠障害のみである。記憶障害や倦怠感は、ホットフラッシュや睡眠障害によるものかもしれない。

・ホットフラッシュは、顔面や頸部、胸部を中心とした突然のほてりである。持続時間にばらつきはあるが、平均 4分程度である。しばしばおびただしい発汗と、それに引き続く寒気がある。ホットフラッシュは、周閉経期の後期に多く、約 65%の女性にみられる。中国人や日本人は白人よりも少ない。

・ほとんどの女性でホットフラッシュは一過性である。30~50%の女性では、数ヶ月以内に改善し、85~90%の女性では、4~5年で解決する。しかし、10~15%の女性では、なぜか閉経後も長年続く。ホットフラッシュのある女性とない女性では、内因性エストロゲンレベルに差はない。FSHの高値のみがほてりと関係していたという研究がある。

・膣症状 (乾燥、違和感、そう痒感、性交時痛) は、閉経後初期の約 30%、後期の 47%の女性にみられる。ホットフラッシュとは異なり、持続するか、年齢とともに悪化する。

・40歳代後半から 50歳代半ばの典型的な血管運動症状であれば、ほかに疑われるような原因がないかぎり、検査は不要である。注意深く問診し、アルコール摂取、カルチノイド、ダンピング症候群、甲状腺機能亢進症、麻薬離脱、褐色細胞腫、薬物 (硝酸薬、ナイアシン、GnRHアゴニスト、抗エストロゲン薬) などの除外を行う。FSHや LHは周閉経期の間、閉経前の正常範囲内に収まるが、ホルモン測定をルーチンに行うべきではない。

・複数の無作為研究で、エストロゲンはホットフラッシュの頻度や重症度を改善した。一般的に頻度は 80~95%減少する。どのような投与法でも有効である。効果は用量依存であるが、少量のエストロゲンでもしばしば有効である。効果は通常量のエストロゲン (経口エストロゲン 1 mg/dayないしその相当量) を開始して 4週間以内に見られる。エストロゲンあるいはプロゲスチンとの併用療法で脳卒中は 40%増える。直接比較はされていないが、エストロゲン+プロゲスチンの併用療法で、冠動脈疾患、肺塞栓症、乳癌はより増加するようだ。エストロゲンは、冠動脈疾患や乳癌、子宮がん、静脈血栓症の既往があったりハイリスクである患者、あるいは活動性肝疾患の患者では避けるべきである。経口薬より貼り薬の方が、静脈血栓症のリスクは低下するかもしれないが、はっきりとはわかっていない。

・エストロゲン+プロゲステロンの方が、エストロゲン単剤より有害事象が増えるかもしれない。しかし、エストロゲンを単剤で投与すると、有意に子宮過形成や子宮癌が増加する。プロゲスチンの少量投与は、子宮内膜を保護する。プロゲスチン単剤では副作用がしばしばみられる。

・SSRIや SNRIも効果があるが、薬剤や臨床試験での被験者の層によりホットフラッシュへの治療成績は異なる。パロキセチンで中等度の効果がある。乳癌サバイバーで治療効果が高い。抗エストロゲン薬の使用やうつの合併頻度が高いことなどが、治療効果が高いことの理由として推測されている。

・ガバペンチンも、わずかにであるが、乳癌の治療歴有無に関わらずホットフラッシュに効果がある。しかし副作用が出やすい。

・αアドレナリン作動薬であるクロニジンは、ホットフラッシュに対して効果がないか、あってもわずかである。

・膣症状にはエストロゲンがとても効果的であり、推奨される用量、投与頻度を守る限りは、プロゲスチンの追加は不要である。

その他、知人の医師から、産婦人科医によるわかりやすい解説も教えて頂きました。

「更年期障害」の診方

あと、BMJの総説も読みやすかったです。

Hormone replacement therapy.

これらの総説を読んだ結論としては、下記になります。

・診断は比較的容易で、通常はホルモン検査も不要。

・ホットフラッシュは一過性のことがほとんどで、治療の副作用を考えると、軽度であればそのまま経過観察でよい。

・ホットフラッシュの治療を行う場合、エストロゲンが良く効くが、禁忌がないことを確認する必要がある。また、子宮癌や乳癌等のリスクには留意する必要がある。子宮がある女性患者にエストロゲン療法を行うときは、子宮内膜癌のリスクを減らすため、プロゲスチンを併用するべき (←BMJ論文の表現)。ホルモン療法を行う場合、ダラダラと長期間続けない。ホルモン療法が行えない場合、SSRIは治療オプションになり、特に乳癌の既往がある場合に有効である。

ということで、ホルモン療法を行うならば、子宮内膜癌や乳癌のスクリーニングが可能な専門家に御願いしておいたほうが良さそうですね。自分で治療することはないと思いますが、半分近くの女性は、ホットフラッシュが数ヶ月で改善するとか、調べてみて色々と勉強になりました。


極論で語る感染症内科

By , 2016年5月3日 10:05 AM

極論で語る感染症内科 (岩田健太郎著, 丸善出版)」を読み終えました。

「極論」とは言っても、第一版から青木本を読んで育ってきた我々世代にとっては、感染症診療の原則そのものが書いてあるなぁ・・・という印象でした。最終章の HIV/AIDSは少しマニアックな感じがしましたけれども。

神経内科医としては、髄膜炎の章は是非読んでおくべきでしょう。細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014ではカルバペネムが推奨されるシチュエーションが多いですが、私は基本的に、岩田健太郎先生が書いているのと同じように、第三世代セフェム+バンコマイシン±アンピシリンで治療しています。カルバペネムの温存と、肺炎球菌のカルバペネムへの耐性化が進んでいることが理由です。本書には、JANISのデータで、5%弱の肺炎球菌がカルバペネム耐性であること、髄液検体だと 10%以上は感性でないことなどが書かれており、そこまで耐性化が進んでいるのかと思いました。あと、細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014では、MICの縦読みがされていることを私は気にしているのですが、そのことへの言及はありませんでした。実際、どうなんでしょうね。感染症の専門家の意見が聞きたいです。


気管支喘息バイブル

By , 2016年5月3日 9:42 AM

気管支喘息バイブル (倉原優著、日本医事新報社)」を読み終えました。

研修医時代は、天気の変わり目の当直といえば喘息発作が列をなしていて、ひたすら気管支拡張薬の吸入やステロイドの点滴を使っていた印象が強く残っていますが、近年ではそういう患者を見かけることもめっきり減りました。おそらく、吸入薬の進歩によるものでしょう。

吸入薬の進歩はめざましく、近年では様々な製剤が出ています。私はせいぜい ICS/LABAとしてアドエアくらいしか使ってこなかったのですが、ICSおよび ICS/LABAの使い分け、ステップアップやステップダウンの方法など、とても勉強になりました。

また、気管支喘息と ACOS (気管支喘息+COPD)、咳喘息、アトピー喘息の鑑別法もとても丁寧に書いてありました。気道過敏性と気道感受性の違いも、本書で初めて知りました。

クリニックなどで一般外来をしていると、「夜になると咳が止まらない」等の主訴でいらっしゃる喘息患者はたまにいらっしゃいます。そういう時に、本書はとても役立ちます。


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