9月4日(金) ~その2~
ホテルに荷物を置くと、旧墓地に出掛けた。旧墓地にはロベルト・シューマン、クララ・シューマン夫妻が眠っている。入り口の地図を見ていると、墓守の人がシューマンの墓まで案内してくれた。他には、ベートーヴェンの母親が眠っている墓もあるという。びっくりしたのは「カウフマン」の墓があったこと。学生時代婦人科の授業で、無月経の診断で頻繁に登場した人物で、「こいつのせいで試験に落ちたんだ」なんて懐かしく思った。
旧墓地からコンサートがあるベートーヴェンホールまで歩いて向かった。ベートーヴェンホールはわかりにくい位置にあるが、以前一度行っているので迷うことなく行くことが出来た。
コンサートのオープニングには、長々とした挨拶があったが、ドイツ語でちんぷんかんぷんだった。最初の曲は現代曲で、作曲者 Moritz Eggertによる自作自演。変な曲だった。「トムとジェリー」を、目をつぶって聴いたかのような印象。騒々しいアナウンス、断片的な BGM的音楽、デタラメな騒音、これらの複合体である。更にピアニストが踊りながら演奏したり、拡声器で何か叫んだり、ピアノの上に置かれたオモチャのピアノで演奏したり、紙飛行機を飛ばしたり・・・。売れないお笑い芸人を見ているかのようだった。芸術と名前が付きさえすれば何をしても許されるのだろうか。少し客観的に自分を見たらどうかと思った。少なくともクラシック音楽からは独立させて新しいジャンルに分類して欲しい。そして、私は純粋にクラシック音楽を聴いていたい。
次の曲は、クリスチャン・テツラフによるアルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲。この曲は、ヴァイオリンの開放弦である G-D-A-Eがモチーフになった曲で、アイデアの面白い曲である。テツラフの演奏は完璧だったが、残念なのは、彼が持っている楽器。ドイツ人作家のモダン楽器なのだが、音量に乏しくて、オーケストラに負けていた。以前、N響のヴァイオリニストと話したとき、「テツラフももう少し良い楽器を持てば良いと思うのだけど・・・」と言っていたのを思い出した。
テツラフのアンコールは、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第 2番第 3楽章。かすかに聞こえるくらいの音量で慎ましやかに始まり、どんどん立体的に音楽が構築されていく様は圧巻だった。とはいっても、息を吹きかけると、音楽自体が遠くに飛んでいってしまいそうなくらい繊細で、聴衆はみんな固唾を飲んで見つめていた。終わった後は、コンサート一番の拍手が送られた。
休憩を挟み、ベートーヴェンの交響曲第 3番「英雄」。この曲についての解説はいらないだろう。やや早めのテンポ設定で始まったが、凄く纏まった演奏だった。いくつか工夫が見られて、4楽章で弦楽四重奏の部分では、各パート 1人ずつでカルテットとして演奏していたのが面白かった。クライマックス少し前で弦楽器と管楽器がずれて崩壊しかけたのにはヒヤッとしたが、無難にまとめることが出来た。もう少し曲の終わりの盛り上げ方を工夫した方が良いと思ったのが正直な感想。それでも、ベートーヴェンの魅力は十二分に伝えることは出来ていたと思う。私の隣の席のカップルが、終楽章途中からいちゃつき始めて、男性が女性を抱きしめて聴いていたのは、イラッとしたけど、純粋に羨ましとも思った。
余韻に浸ってホテルのバーでカクテル「ウォッカレモン」を一杯だけ飲んだ。カクテルの種類があまりなかったのが寂しいところで、他の酒を飲もうかとも思ったが、24時くらいになっていたのでやめた。
朝食を少し食べただけで、一日何も食べなかったので、夜中少しひもじかった。ベートーヴェンでは胃袋は満たされないらしい。
9月4日(金) ~その1~
朝食を数口だけ食べると、ホテルをチェックアウトしてフランクフルト中央駅に向かった。今日はボンに向かう日だ。急行を使うと早いのだけど、ライン川沿いをゆったりと電車で旅することにした。駅の立ち飲み Barでビールをひっかけると、電車に乗り込んだ。電車は雨の中、川沿いを走ってコプレンツへ。コプレンツは父なるライン川と母なるモーゼ川の合流する街だ。それを横目にボン行きの電車に乗り込む。コプレンツからボンまでは30分程度だが、かなりの田舎の中を走る。
ボンに着くと、ホテル「GUENNEWIG RESIDENCE」へ。このホテルは駅を出てすぐ右手にあるバス停に接した所にあり、非常に立地が良い。古い建物で、少しカビくさいのが玉に瑕ではあるが。
ホテルに荷物を置いて、シューマンハウスに出掛けることにした。地球の歩き方に、604~607系統のバスと書いてあったので、ボン中央駅から 605系統に乗ったら、あさっての方向に 30分くらい連れて行かれてしまった。終点で降りろと言われたのを乗り続け、そのまま折り返し輸送。行き先を確認すべきだった。
中央駅に戻って、タクシーを捕まえると、10分くらいでシューマンハウスに連れて行って貰えた。運転手はシューマンハウスを知らなかったけれど、「Sebastianstrasse」と言うと、一発でわかってくれた。タクシーはベンツのオープンカーだったのだけど、カーブで天井から雨が降ってきてびっくりした。
シューマンハウスは、ロベルト・シューマンが最期の2年間を過ごした診療所の一部である。2部屋が無料の展示室となり、残りは音楽図書館となっている。展示室には、彼の自筆譜、ロベルト・シューマンが妻のクララ・シューマンに送った最後の手紙、ブラームスからクララ・シューマンへのプレゼントなどが展示されていた。窓から外を眺めると、木の葉が茶色くなり始めていて、ここでその光景を 2度眺めていていたであろうシューマンの胸中を察して、感傷に浸った。
シューマンハウスからの駅までの交通の便は悪く、タクシーで通った後を辿ってみることにした。どうせ数キロ程度のものである。坂を下って、トンネルをくぐり、左折してしばらく歩くと少し大きな通りに着く。そこからどっちに歩くべきか方向を失ってしまった。そこに運良く、中央駅行きのバスが通り、事なきを得た。
中央駅からベートーヴェンハウスに行くと、丁度博物館は閉館したところだった。前に一度訪れているし、中を見ることは諦め、ショップでいくつか買い物をした。弦楽四重奏曲作品 18のファクシミリ (自筆譜コピー) を買うことが出来たのはラッキーで、他にピアノソナタ「月光」のファクシミリを購入した。こういうものばかり買うから、スーツケースが重くなるのだ。
9月3日(木) ~その2~
動物園からホテルに戻り、荷物を全部置いてアルテ・オペラに出掛けた。昼間チケットを入手したコンサートがあるのだ。
最初の曲は、ブーレーズ作曲。現代曲で、聴きどころがわからなかった。和声がはっきりしなくて、音楽の方向が見えない。腹痛で下痢をしているときのような周期で盛り上がりがあり、「下痢便の音楽 (Geriben Musik)」と名づけてみた。
続く曲はヒンデミットのヴァイオリン協奏曲。ソリストは、私の大好きなヴァイオリニスト、F. P. ツィンマーマンだ。曲自体は難解な曲だったけど、ツィンマーマンが良かった。極めつけは、アンコールに弾いたバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番第3楽章。柔らかく、どこか懐かしい演奏で、老人がベッドで若い頃を思い出しているかのようなイメージを彷彿とさせた。
最後の曲はブルックナー。ひたすら長かった。20時に始まったコンサートが終わったのが 22時 30分で、「おい、ブルックナー、もう少し短く出来るだろう」なんて思いながら聴いていた。「話の長い男」なんていうあだ名を付けたくなった。まぁ、オーケストレーションが上手いのは認めるし、私の音楽に対する理解が乏しいから、そんな感想を抱くだけなのだろうけど。
アルテ・オペラから、公園内をシラー像まで歩き、Taunus strasseを通ってホテルの方へ戻ったのだけど、Tanus strasseはいかがわしい通りらしく、ピンク色のネオンの建物がたくさんあった。看板をみると「SEX INN」なんて書いてあって、近くのクラブでは、綺麗な女性が男性といちゃついているのが外から見えた。私の前に売春婦らしき女性が前に立ちふさがってどいてくれなかったのだけど、無理に振り切ってホテルに戻った。誘惑に打ち勝つとは、私も大人になったものだ。ただ単に、ぼったくられるのや病気を貰うのが恐かっただけとも言えるのだけど。
セレブの間では馬主になることはステータスです。特に海外においてはそうです。
とはいっても、有り余る金がないと、土台無理な話です。
馬主になりたいけれど金がない人たちのために、一口馬主という制度があります。例えば、1000万円の馬でも、400人で買えば 一人 (一口) 2万5000円で済みます。その分賞金は折半になります。賞金とはいうものの、こうした馬の中でも勝つ馬は一握りなんですけどね。
有名な会社では、サンデーサラブレッドクラブ、社台サラブレッドクラブなどが最大手です。ブエナビスタ、ドリームジャーニー、ヴァーミリアン、アンライバルドなどは、全てサンデーサラブレッドクラブの所属馬。
ただ、上記の会社では1頭40口くらいで割るので、一口当たりがどうしても割高になります。
最近、馬券オヤジ氏から「Tokyo thoroughbred club」を勧められました。ここは一頭400口で割るので、かなり安く購入できます。所属馬はレッドの冠名が付き、有名馬はレッドディザイア、レッドアゲートあたりでしょうか。
ということで、早速入会し、2頭 (各一口) 購入しました。血統などは良くわからないので、見た目で可愛い馬を購入。買った負けたは二の次です (^-^)
①アーティストチョイス 2008 (父:ディープインパクト)
②ワイルドフラワー 2008 (父:スペシャルウィーク)
私の買った馬はあまり人気がないようで、一方、馬券オヤジ氏の購入馬はすぐに満口。目の肥えた競馬ファンが見ると、走りそうな馬というのは一致するのですね。
デビューは来年か再来年になりそうですので、以後数年楽しめそうです。
9月3日(木) ~その1~
時差ぼけのためか、かなり早く目が覚めた。というか、現地時間で午前 3時くらい。ベッドの中で悶々として過ごし、朝を迎えた。
朝食は、ドイツのホテルでは最も一般的なもので、ソーセージ、ハム、卵料理、サラダ、パンなどをバイキングで食べるものだ。これが私の口にはなかなか合わないので、ソーセージ一本に卵とコーヒーでいつも終わらせることになる。米、みそ汁、生卵、納豆、海苔、鮭といった日本の朝食がこれほど恋しくなることもない。
外は雨が降ったり止んだり。日本から持参した折りたたみ傘がこういうときに訳に立つ。傘は現地で買うことも可能なのだが、ドイツの傘は壊れやすいし、止んだときに持ち歩くのも不便だ。
中央駅から市内の方へ、Tanus strasseを下っていくと、シラー像がある。細長い形の公園になっていて、ベンチで読書をするには持ってこいだが、あいにくの雨。そのまま街を散策することにした。
アルト・オペラ (Alte Oper) まで歩き、チケットショップにふらっと入ってみた。日本でチケットが手に入らなかったコンサートがあり、受付で聞いてみると、空きがあるという。見事、前列の真ん中のチケットを入手することができた。
そこからゲーテ通りを通ってゲーテ像へ。それを横目に見てゲーテハウスに向かう。診察道具を買いたくて、近くの薬局で店員に聞いたが、どこで売っているかはわからなかった。
それからゲーテハウスへ。部屋毎に色が変えられていて、黄色っぽい内装の部屋、青っぽい内装の部屋なんかがあった。部屋毎にテーマがあるというのは、なかなか良い。また、音楽用の部屋もあって、ピアノが置いてあった。もしゲーテの小説を読んでいたら、もっと楽しめただろうに、と少し残念だった。自分の教養のなさを感じた。
ゲーテハウスを出て、欧州中央銀行、フランクフルト歌劇場の横を通り、マインタワーへ。マインタワーでは金属探知器による検査の後、エレベーターに乗って地上 200mくらいにある展望台に上った。雨は止んでいたが、強風が吹いていて、飛ばされそうだった。一方で、手すりの高さは 1mくらいしかなく、下手に落ちたら地上まで真っ逆さまだ。その分、邪魔なものはなく、街を一望することができた。すぐ下にスカイレストランがあったのだが、こちらは残念ながら 17時30分まで閉まっていた。
仕方がないので、アルテ・オペラの近くのレストランで、シュニッツェルとビールを楽しんだ。
どこに行くかしばらく思案した挙げ句、動物園に行くことにした。いい歳した男が一人で行くところでもない気がするが、海外の動物園の雰囲気を知るには丁度良い。
地下鉄を降りると、すぐそこが動物園だ。中に立派な建物がある。中に入って、熊だの虎だのライオンだのを見たが、凄く距離が近い。虎とはガラス一枚で対面できるし、金網一枚というところもある。電気を消した建物で、夜行動物をたくさんみられる場所もあって、新鮮だった。ガラス一枚隔てた部屋の中で、コウモリが映画のように大量に飛んでいて、こんなのに襲われたらひとたまりもないと思った。残念だったのは、動物の名前がドイツ語だったので何の生き物かわからなかったこと。ま、何の生き物だったとして、私のこれからの人生に影響は与えないだろうけれど。
郡山時代の後輩が結婚することになり、依頼演奏を頼まれました。アマチュアヴァイオリニスト冥利に尽きます。
どうやらピアノを準備して頂けるとのことで、いくつかの曲を考えているのですが、候補を紹介。これらは私のレパートリーでもあるので、失敗するリスクが低いですし、11月 8日までに準備も間に合いそうです。
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9月2日 (水)
朝 9時 30分成田発の Lufthanza航空でフランクフルトへ。前日は旅行の準備が深夜までかかった上、この飛行機に乗るために 5時過ぎに練馬を出る必要があったため、睡眠不足で意識朦朧としての旅の始まりだった。
夏休みシーズンを終えていたためか、成田空港はかなりすいていて特に不便は感じなかったが、早朝だったので飲食店があまり空いてなかったのが残念だった。いつも私はヨーロッパに旅立つ前に寿司屋に入る習慣がある。それは、ヨーロッパで日本食が恋しくなるので予め出来るだけ食べておきたいという気持ちからと、日本酒を飲んで機内でグッスリ眠るためだが、この日はビールに枝豆で我慢した。
飛行機の中は、眠ることと飲むことを交互に繰り返した。隣の席の日本人は、英字新聞を読んだり、英語でメールしたりしていたが、外国語がここまで堪能だと羨ましい。
フランクフルト空港に着くと、電車に乗ってフランクフルト中央駅 (Hauptbahnhof) へ。この泊まるホテルは Intercity hotelといって、中央駅のすぐ脇にある、交通の便が非常に良いホテルだ。荷物が多いときは、駅から近いホテルが有り難い。また、迷わなくて済むというのも大事なポイントだ。
チェックイン後、腹が減っていたので近くのレストランでシュヴァイネハクセを食べながらビールを飲んだ。シュヴァイネハクセは、豚のスネ肉のローストだが、骨付きの大きな肉の塊で、切るのがかなり大変だった。何だか、豚の足を解剖しているかのような錯覚に陥った。
食事を終えてホテルに戻ったが、飛行機の中でひとしきり眠っていたので、頭が妙に冴えている。そのため、学会発表の準備をすることにした。作業を続けるうちに徐々に眠くなり意識を失った。
8月 31日から 2週間夏休みです。こんな長い夏休みは数年ぶりかな。
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Newton 10月号の「選挙を『数学的に』考えてみよう!」という特集が面白かったです。
まず、それぞれの投票者が合理的な選択をしているのに、投票者から一番支持されていたものが多数決で選ばれなかったり、結果が得られなかったりすることがあるのです。これを「コンドルセのパラドックス」ないし「投票の逆理」と呼びます。思ったより多い頻度で起こるようです。
また、コンドルセの逆理を解決するために、全体の候補での多数決を行わず、1対1で候補の多数決を繰り返していくと、投票の順番で結論が変わってしまうことがあります。これを「アジェンダパラドックス」と呼びます。投票の順番で好きなように結論が誘導出来てしまいますね。
「デュヴェルジェの法則」は、選挙区の定数に対して、有力な候補者が定数 +1に近づくという法則です。そうすると、定数1の小選挙区制では、有力な候補者が 2名ということになり、二大政党制に近づくことになります。
他には、「当確」の概念についてなども紹介されていました。
文章で書くとわかりにくいのですが、Newtonには図が豊富にあり、理解しやすいようになっています。直接候補者選びに役に立つわけではありませんが、選挙前に一読されてみてはどうでしょうか?