Category: 感染症

症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z

By , 2015年4月28日 9:44 PM

症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z (忽那賢志著、中外医学社)」を読み終えました。普段見かけることの稀な輸入感染症は私の苦手な分野ですが、どのように診療を進めていけばよいのかがとてもわかりやすく解説されていました。本書は、指導医と弟子の会話形式を取っており、あちこちに散りばめられたギャグが秀逸で、勉強している感覚なく気が付いたら読み終えていました。初学者でも楽しめて、かつレベルが高い、お薦めの本です。

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髄液検査とマスク

By , 2015年3月12日 7:28 AM

髄液検査をするとき、検査を行う医師のマスク着用は基本です。マスクを着用しなかったことによる、医原性髄膜炎が複数報告されているそうです。詳しくは、下記ブログ記事と、そこに紹介された論文リンクを御覧ください。

医療者の口や鼻からの感染予防

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レジデントのための感染症診療マニュアル

By , 2015年3月5日 7:36 AM

「レジデントのための感染症診療マニュアル」といえば、知らない医師がいない程の名著です。日本語で読める感染症診療の本としては、最も有名な本だと思います。

私が医師になったばかりの頃は、第1版が売られており、それを読んで感染症診療の原則を学びました。当時臨床病理学教室におられた先生が、この本を持って血液培養陽性患者のラウンドをされていたのが記憶に残っています。その後、2007年に第2版が出版され、すぐに購入しました。

そして、2月25日に医学界新聞から気になるツイートが・・・。

ついに第3版が出るようです。

先月 Amazonをチェックしたときは見当たらなかったのですが、昨日 Facebookで知人が第3版を予約できることを書き込みされていました。これは即予約ですね。

レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版

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The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy

By , 2015年2月8日 6:18 PM

感染症のことで困った時、感染症科にコンサルト出来ると良いのですが、感染症科のない病院も少なくありません。

私は現在はそういう環境におり、「Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases」「Up to date」「レジデントのための感染症診療マニュアル」などを参照することが多いです。

その他に、感染症診療でよく使われるのが、「SANFORD GUIDE」です。よく「熱病」とも呼ばれます。研修医の頃は小冊子をポケットに忍ばしていたものですが、数年前から iPhone用のアプリがあるというのを知りました。

The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy

 

熱病

熱病

 

実際に使用してみると、疾患名、病原菌、抗菌薬等から探したいものがすぐ見つけられますし、検索機能もついています。そしてアプリ版は、随時最新の内容にアップデートされているようです (下記画像参照)。やや値段は高いですが、お勧めのアプリです。

熱病アップデート

熱病アップデート

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髄膜炎と髄液細胞数増多

By , 2015年2月7日 10:50 AM

髄膜炎の診断の gold standardは、髄液検査で細胞数増多を証明することです。

少し前のことですが、発熱、意識障害の患者が搬送されてきました。血小板が 40000 /μlまで低下し、D-dimerも 3桁。敗血症→DICがありそうでした。身体診察では、項部硬直陽性、Kernig徴候陽性でした。敗血症に細菌性髄膜炎を合併したものでしょう。髄液検査をしてみると、何と細胞数 5 /μlと、ほぼ正常なのです (ただし多核球優位、髄液蛋白上昇あり、糖は髄液/血液=0.5程度)。「あれっ?」と思いましたが、臨床的には髄膜炎であることは明らかでした。迅速診断キット「PASTOREXメニンジャイティス」は全て陰性でした。前医で抗菌薬を中途半端に数日使っていたこともあって、髄液も血液も培養は陰性。

「髄膜炎でも細胞数増多がないことがある」というのは、過去に知り合いの感染症科医と話した時に知っていましたが、論文を読んだことはありませんでした。そこで探してみると、2014年9月に亀田総合病院から論文が出ていました。

Bacterial meningitis in the absence of cerebrospinal fluid pleocytosis: A case report and review of the literature.

上記論文は症例報告ですが、過去の論文と併せて 26例を考察しています。論文は無料公開されていますので、興味のある方は読んでみてください。著者らは、髄液細胞数増多がないというだけでいつも髄膜炎を否定できるわけではなくて、敗血症や髄膜炎の徴候があるときは、すぐに抗菌薬を開始しなければならないと結んでいます。

亀田総合病院の症例は、検査したタイミングが早いと髄液細胞数増多がみられないことがあるとしていて、確かにそういう一面はあると思います。実際に、再検査で髄液細胞数増多が確認できることはあるようです。一方で、髄液細胞数が低いほうが予後が悪いという論文が、2006年の New England Journal of Medicineに掲載されています。細菌性髄膜炎では重要論文の一つです。重症細菌感染症では血液検査で白血球が低下することがあるので、それと似た現象が髄液で起きているのかなぁ・・・と私は勝手に推測しています。

Clinical features and prognostic factors in adults with bacterial meningitis.

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クロイツフェルト・ヤコブ病の新しい検査

By , 2014年8月11日 6:12 AM

プリオン病の一つであるクロイツフェルト・ヤコブ病は、急速に進行する認知症症状やミオクローヌスの存在、あるいは頭部MRIでの拡散強調像高信号域、脳波での周期性同期性放電などが診断根拠になります。診断精度を高めるために、髄液 14-3-3蛋白なども測定します。しかし、髄液は高い感染性があることが知られています。医療スタッフへの感染を防ぐため、できることなら避けたいところです。

2014年8月7日の New England Journal of Medicineに、それを解決する 2本の検査法が報告されました。

A Test for Creutzfeldt–Jakob Disease Using Nasal Brushings

Prions in the Urine of Patients with Variant Creutzfeldt–Jakob Disease

1本目の論文は、鼻腔擦過標本を用いて RT-QuIC法 (リアルタイム撹拌変換法) を行うものです。少量の異常プリオン蛋白 (PrPCJD) に組み換えプリオン蛋白 (rPrPSen) を加えると、アミロイド線維を形成し、それが thioflavin T蛍光で検出できるそうです。髄液を用いた先行研究では、感度 80~90%, 特異度 99~100%でした。今回、著者らが安全で簡単に行える、鼻腔擦過検体で解析を行ったところ、感度 97%, 特異度 100%でした。

2本目の論文は、尿中の微量プリオンを PMCA (protein misfolding cyclic amplification) 法を用いて増幅するものです。尿を遠心分離し、得られた沈殿を transgenic mouseの 10%脳ホモジネート液に混ぜます。そして PMCA法で増幅した後、western blotを行います。この検査では、感度 92.9%, 特異度 100%でした。

こうした手法が、臨床現場に出てくるのはいつになるでしょうか、待ち遠しいです。

(参考) Novel Ways to Detect Creutzfeld-Jacob Disease?

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アネメトロ

By , 2014年7月12日 8:07 AM

日本には、必要のない抗菌薬がたくさんある一方で、海外では当たり前に使える本当に必要な抗菌薬がなかったりします。その一つがメトロニダゾールの点滴薬です。これまではメトロニダゾールは内服薬しかありませんでした。

ちなみに、メトロニダゾールの内服薬の名前は「フラジール」と言います。飛行機で壊れ物を預けたときに貼られるテープには「fragile」と書いてあり、いつもフラジールを連想してしまうのですが、フラジールのスペルは “FLAGYL (フランス語)” らしいです。余談です。

さて、メトロニダゾールの注射薬は「アネメトロ」という名前です。感染症診療に従事する医師たちには、武器が一つ増えました。ファイザー社、GJです。

嫌気性菌感染症治療剤「アネメトロ®点滴静注液500mg」 製造販売承認を取得

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パリ医学散歩

By , 2014年5月31日 8:04 AM

パリ医学散歩 (岩田誠著, 岩波書店)」を読み終えました。

私はヨーロッパ旅行をするときは、医学や音楽にまつわる史跡をできるだけ巡るようにしています。昨年パリ旅行をしたときは、「ペールラシェーズの医学者たち」を参考にしてペール・ラシェーズ墓地を訪れましたが、本書を読んで、まだまだパリに行くべき場所があるのを知りました。それにしても、岩田先生の本は外れがないです。

また、下記のような歴史的な事実は、本書で初めて知りました。医学史に興味がある方におすすめの本です。

・オテル・ディユーは長い間パリ市内唯一の病院だったため、いつも患者があふれていた。その結果、一つのベッドに何人もの患者が寝ているようなことは日常茶飯事であり、十六世紀頃の記録では、五〇〇床のベッドに対し、多い時には一五〇〇人もの入院患者がいたと記されている。一床一人の原則が確立したのは、ボナパルト時代であった。

・ヴュルピアンはシャルコーの友であり、デジェリンの師であった。彼は一八六六年にクリュヴェイエの後任としてパリ大学医学部の病理解剖学講座の主任教授となり、フランスの病理学に初めて顕微鏡を導入した。また、多発性硬化症という術語を最初に用いたのはシャルコーではなくヴュルピアンであった。

・旧シャリテ病院脇のジャコブ通り界隈には、シャリテ病院に縁のある医者たちが多く住んだ。ルイ一四世の筆頭外科医であったジョルジュ・マレシャル、失語症研究のポール・ブローカなどである。その通りの一四番地にはリヒャルト・ワーグナーが住み、四〇年後にそこに住んだのは神経学の巨匠ジュール・デジェリンだった。

・パストゥールの発見は、ビュルピアンらが支持したが反論も多かった。ある日、シャルコーはパストゥールの研究室を訪れ、弟子のルーに説明を求めた。彼はルーの話に一時間以上にわたってじっと耳を傾け、二、三の質問をした後、実験記録を見せてくれと要求した。その直後の一八八七年七月一二日の医学アカデミーでパストゥールを弁護した。そしてサルペトリエール病院神経病クリニックの中に微生物学研究室をつくろうとしたが、シャルコー急死のためこの計画は中止となった。

・クロード・ベルナールは一八六六年、病気のため実験室を去ってボージョレにある故郷の家で静養していたが、身の不運を嘆いてうつに陥っていた。パストゥールはベルナールを励ますため「世界事情」に「クロード・ベルナール:その研究、教育、方法論の意義」という記事を書いた。そこでベルナールの業績中もっとも重要なものとして肝臓におけるグリコーゲン産生の発見を取り上げた。そして「今、はからずも静養を余儀なくされているこの偉大な患者が、彼の思想と情熱を世に紹介するこの論文によって元気づけられ、彼の友人や同僚たちが、彼がまた研究にもどってくる日を待ち望んでいることを知って喜んでくれることを期待したい」と結んだ。この記事は、ベルナールがうつから立ち直るきっかけとなった。

・ベルナールは、「糖尿病患者が自分で摂取するでんぷんや糖などの炭水化物よりはるかに大量のブドウ糖を尿から排泄するのはなぜだろうか?」「糖尿病患者の糖尿が消失しないのはなぜか」ということに疑問をもった。そして、人体にはブドウ糖を産生する未知の機構があるのではないかと考えた。当時は、糖を産生できるのは植物だけであると信じられていた。しかし、ベルナールは「もし理論に合致しない事実が見出されたなら、どんなに権威のある常識的な理論であろうと、その理論を捨てて事実をとるべきである」という信条を持っていた。ベルナールは動物を肉だけで飼育し、門脈と肝静脈の血液をとって比較してみると、門脈中にはブドウ糖がないにもかかわらず、肝静脈中にはブドウ糖が大量に存在することがわかった。このことから、肝臓中にグリコーゲンを発見するに至った。

・セヴール通りにあるネッケール病院は「ひとつのベッドに一人の患者を」というモデル病院を作る計画に従い、一七七八年に開かれた。ラエネックは一八〇六年頃にネッケール病院に赴任した。ウィーンの医師アウエンブルッガーにより発見された打診法をフランスに広めたのはコルヴィサールであり、ラエネックはコルヴィサールの弟子であった。一八一六年、ルーヴル広場を通りかかったラエネックは、二人の子供が大きな材木をたたいて遊んでいるのに気づいた。ひとりの子供が材木の一方の端をトントンと叩くと、もう一人はもう一方の端に耳をつけてこれを聞いて遊んでいた。この様子をみたラエネックは自分の患者に応用してみた。ネッケール病院に戻ると、心臓病の少女にきつくまいた紙の筒の一方の端をあて、もう一方の端を自分のみみにあててみた。すると、直接胸に耳を押しあてて聴くのとは比べ物にならないほどはるかにはっきりと、患者の心臓の鼓動が聞こえた。彼はこの方法が、あらゆる種類の胸部疾患の診断に応用できることに気づいた。そして紙筒を木の筒に換え、これを「聴診器」と名づけた。一八二六年八月二三日、彼は肺結核で亡くなった。ネッケール病院の入口に隣り合う壁には「この病院でラエネックは聴診法を発見した」という石碑が掲げられている。

・一三四八年にパリにペストが流行し、フランソア一世はペスト患者専門の収容病院をパリ市街に建設しようと計画したが、宗教戦争等で実現しなかった。一六〇六年に再度ペストが流行したため、計画はようやく実行に移された。当時は西風が病毒を運ぶと考えられていたため、パリ東北に病院の建設地が定められた。サン・ルイ病院は一六一一年に完成し、一六一八年に開院された。当初は感染性疾患のセンターであったが、当時皮膚感染症が多かったため、そのうちこの病院は皮膚科専門の病院になっていった。フランス人の名前を冠せれた皮膚疾患は多いが、ほとんどはこの病院に足跡を残した人々の名前である。ここに勉強に来たのが太田正雄 (作家としてのペンネームは木下杢太郎) である。木下杢太郎はサブロー寒天培地に名前を残したサブロー教授の研究室で真菌症の研究を始め、白癬菌の新しい分類体系を確立した。また、日本に戻ってからは太田母斑 (眼上顎褐青色母斑) を世界に先駆けて記載した。

・ピネルは一九九三年にビセートル病院の内科医師となり、まずここで男性精神病患者を鎖から解き放った後、一七九五年にラ・サルペトリエールに赴任し、今度は女性患者を解放した。サルペトリエール病院の門の前にはピネルの像が立ち、サルペトリエール病院神経病クリニックにとなり合うシャルコー図書館の入り口には、ピネルが患者を鎖から解放している絵が掲げられている。

・ ブローカの墓は、モンパルナス墓地にある。墓石にはブローカの名前が刻んであるのみで、墓石には彼の生前の業績を讃える何の言葉も見出せず、ほとんど訪れる人もない。

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ねころんで読める CDCガイドライン

By , 2014年3月14日 6:02 AM

ねころんで読めるCDCガイドライン (矢野邦夫著、メディカ出版)」を読み終えました。とはいっても、書籍ではなく、iPhoneアプリ版です。

ねころんで読めるCDCガイドライン 3部作 まるっとアプリ

言われるまでもなく、医療従事者にとって感染対策は重要ですが、なかなか勉強する機会がないのも事実です。たまに病院で講習がありますが、私とっては講習を聴くより本を読む方が、頭に入りやすいです。

このアプリが素晴らしいのは、最新の内容がわかりやすく書かれていることに加えて、どこでも読めることです。私は、電車の中とか、一人居酒屋で手持ち無沙汰なときとか、細々した時間で読みました。その他、通常の目次の他に、内容別目次もあって、後から読み返すときに便利です。また参考文献も、ワンタッチでリンクされた論文に飛べます。

アプリ版、色々と御薦めです。

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不適切な CM

By , 2014年1月16日 5:46 PM

最近、テレビ CMを見て不愉快な思いをしました。シオノギ製薬が行っているインフルエンザの CMです。

シオノギ製薬 CM

薬局で売っている薬ならともかく、病院で使用される薬剤についてテレビCMを行うのは変です。なぜなら、このような薬剤を使用するかどうかは、医師が医学的根拠に基づいて決定すべきことだからです。感染症の知識に乏しい一般人が誤解するような CMを行うことは、有害と言えます (医学的に必要ない薬剤を、患者さんが必要あると思い込んでいる時、しばしば不信感を持たれます。また、説得にも長い時間を要します)。この CMは医療関係者の間で批判が高まっており、いくつかのサイトでわかりやすく解説されているので紹介しておきます。

不誠実な製薬会社の宣伝キャンペーン

塩野義製薬のインフルエンザの啓蒙CM・サイトについて

年末から医療従事者の間でひどいと話題になっていた塩野義製薬の抗インフルエンザ薬のCMについて

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