自動車保険
神経内科ではてんかんの患者さんを診療する機会が多くあります。今話題の自動車免許の件も避けては通れない問題で、患者さんと話し合うことがしばしばあるのですが、先日の外来で自動車保険について聞かれて、自分の中で盲点になっていたことに気付き、簡単に調べてみました。
サイトをご覧頂くと、加入する際の参考になるのではないかと思います。一方で、個々の保険会社名は書いていないですので、加入の際に確認が必要でしょうね。
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以前お伝えしたとおり、5月22~25日に神経学会総会があり、行ってきました。なかなか有意義な数日間が過ごせました。この数日間を簡単にお伝えしようと思います。
5月22日
神経学会生涯教育セミナー Hands-on 6 「高次脳機能」に参加しました。WAIS-IIIは自分で検査したこともされたこともあったので、検査の初歩的説明は私にはあまり面白くなかったです。しかし、次期 WAIS-IVから評価項目の記載が代わると話など、いくつか新しい知識が得られました。聞き終わってからラボに実験に行きました。
5月23日
8時から「ビデオで見る不随意運動の基礎」という講演を聞きました。不随意運動は見る機会があっても、最初は「これが○○だよ」と誰かに教えて貰わないと、なかなか正しく学習出来ません。教科書を読んでも、文字からでは想像しにくいものが多いのが事実です。そういった意味で、得難い勉強の機会でした (とはいえ、10年も神経内科医をやっていれば、ビデオで見た不随意運動のほとんどは既に経験したものですが・・・)。
9時からは絞扼性末梢神経障害の手術についての講演でした。亀田総合病院の整形外科の先生が、講演してくださいました。内容は、carpal tunnel syndrome (手根管症候群), ulnar neuropathy at elbow (昔、肘部管症候群と言われていたもの), Guyon’s canal syndrome, tarsal tunnel syndrome, T.O.S. (胸郭出口症候群), piriphormis syndrome (梨状筋症候群), meralgia parestheticaについてでした。我々は診断をつけたら整形外科に患者さんを紹介することが多い訳ですが、整形外科の先生がどのような基準でどのように治療するかがわかって、非常に勉強になりました。また、手根管症候群の一部で、Palmar cutaneous branchが障害されると非典型的な症状 (母指の障害) を出し、Tinel’s signの部位が通常と異なることは初めて知りました。こんなに面白い話なのに、非常に参加者が少なかったのが残念でした。
10時頃からポスターをみて、ラボに行き、実験をしました。そして、15時の講演に合わせて会場に戻りました。15時からの「小脳症状とは何か」という講演は、期待はずれでした。あまり「小脳症状とは何か」という問に答えていない演者が多かった気がします。
5月24日
8時から「てんかん発作を診て勉強しよう」の講演を聞きました。基本的な話が中心で、新しく勉強になったことは少なかったですが、入院でビデオ+脳波同時期録ができる施設が羨ましいと思いました。なかなかそういう環境でないと、ヒステリー (偽発作) と本当のてんかん発作の鑑別が難しいことがあるからです。
9時からは「感覚情報と大脳基底核」の講演を聞きました。内容としては、「Motor」「Oculomotor」「Prefrontal」「Limbic」の系は (細かいことを別にすれば) 閉じている、一方感覚系は閉鎖ループではなく、一種の open loopとして大脳基底核に関わっている、という話でした (一部閉鎖ループはあるかもしれないが、その影響は小さい)。つまり、運動の実行、プラン時に感覚野は大脳基底核の機能に影響を与え、この障害は基底核で運動症状を作ると言うことです。また、Sensory trickは、大脳基底核障害で回らない基底核ループの感覚情報の修飾、paradoxical gaitは感覚情報を用いた小脳による運動の補正 (大脳基底核:internal triggerな運動を制御、小脳:external triggerな運動を制御) と説明するとわかりやすいのではないかと提案されました。なんとなくわかった気がしたのですが、いつも話がわかりやすい宇川先生を以てしても難しい話でした。
10時からはポスターを見ました。紀伊半島古座川 ALSに 3名の C9ORF72変異が見つかった話、Parkinson disease with dementiaでは MMSEより HDS-Rの方が鋭敏であること、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) のレスパイト入院では年間医療費はほとんど増えないという話などが面白かったです。ポスターを見てからラボに実験に行きました。
5月25日
前日、将棋の橋本八段達と午前 1時過ぎまで飲んでいて朝辛かったですが、何とか遅刻せずに間に合いました。
8時からの「てんかんと運転免許」は今トピックの話でした。てんかんの方に運転免許が与えられるようになってきた経緯、それを規定する法律内容について説明がありましたが、詳しく書くと長くなってしまうので、いくつかに絞って紹介します。
・医師の責任について。てんかん患者が運転免許を取るときに必要な診断書は、虚偽の記載をすれば虚偽公文書作製罪に問われます。しかし、適合と判断したのに非適合あったケースでは、医師の刑事責任は問われません。
・事故件数について。日本での運転免許保持者は 8101万人、総人身事故は 72.6万件/年、うちてんかん発作によると思われる事故は 71件 (そのうち免許取得/更新時に申請していたのは 5名) と、有病率を考えれば決して多くありません。
・ヨーロッパでは欧州連合指令による規定があります。自家用運転での発作抑制期間 (この期間発作がなければ免許がとれる) は、てんかん 1年、初回発作 6ヶ月、薬物調整時 6ヶ月、てんかん手術後 1年、職業運転での発作抑制期間は、てんかんの場合内服なしで 10年、初回発作 5年です。今後これが global standardになっていくのではないかと考えられています。ちなみに、発作抑制期間の長さにより、あまり事故率は変わらないというデータがあるそうです。
・運転適性 がない (発作の恐れがある) のに運転していた人のうち、35%が仕事や生活の必要性のため免許がどうしても必要なので申告していなかったそうです。
講演後、フロアから、いくつか良い質問がありました。
①初回発作のときどうするか?
てんかんは、 2回以上の発作があって初めて確定診断されることが多いです (初回発作があっても、半分の患者さんはその後発作を起こさない)。なので、初回発作のみでは診断できない場合があります。このとき運転免許をどうするかに関しては、明確な決まりはないそうです。
②仕事がなくなるのが怖いから、患者さんは申請できないのでは?
現行ルールを守って貰うため、世間を巻き込んだ議論をする必要があります。現行ルールで良いのかは学会で方針を出したい、とのことでした。
③減薬をどうプランニングするか?
成人に成る前にトライすべきで、成人になってからは極めて慎重であるべき、とのことでした。
(2012年 10月11日16:00-18:00に日本てんかん学会のワークショップ「てんかんと運転」があり、そこで様々な事が決まる見込みなのだそうです)
9時からは、「実地に役立つ神経遺伝学」の講義でした。家族性 ALSと診断されていた MJD, MERFF, Friedrich ataxia with retained reflexes, Posterior column ataxia, hereditary spastic palarysisが症例としてあげられました。遺伝形式などにより使う手法が違うので臨床診断がしっかりしていないと無駄が多くなってしまう、という話でした。どのような場合にどのような解析法を使うかなど、勉強になりました。参加者が少なかったのが残念でした。
10時からポスターを見に行きました。京都からの報告で、 ALS/Paget病の患者さんで VCP変異が見つかった話などが興味深かったです。日本ではその変異はないかと思っていたのですが、実際にはあったのですね。
13時 30分から、「東日本大震災:あれから一年」というシンポジウムに参加しました。まず岩手医大、東北大学の先生が、震災により生じる健康被害についてどう研究をするか、どうデザインを組むかを話されました。私は「そういう話は学会誌の読み物にまとめて、こういう場じゃないと聞けない話をすればよいのに」と思いました。
3人目の演者、福島県立医大の宇川教授は「調査する側とされる側の思いは違う」とチクリと言って、講演を始めました。福島県は、浜通り、中通り、会津と 3地域にわけられますが、それぞれの震災後の状況、現状を話されました。放射能汚染についても触れました。現在、福島市の放射線量はローマと同じくらいですが、雨樋など一部高い場所もあるようです。どの程度怖がるかは、科学じゃなくて価値観の問題なので難しいようです。考えさせられました。
4人目の演者は斎藤病院の斎藤先生でした。石巻の民間病院の院長です。周囲が全て津波に飲まれ、1個のおにぎりを半分にして、それを 1日 2回にして飢えを凌いだとおっしゃっていました。斎藤病院では、震災後救急患者が 2-3倍になりすぐに満床になりました。DMATは石巻赤十字病院には来ましたが、斎藤病院には来ず、その後東北大学が様々な支援をしたそうです。支援物資の分配も上手くいっていなかったそうで、民間病院や在宅の方へは届くのが遅れました。石巻では 3ヶ月で 70%, 6ヶ月で 86.8%の病院が再開しました。民間病院には、建物に半分の補助がでましたが、医療機器は補償されず、官民格差を感じたとのことでした。最後のまとめで斎藤先生がおっしゃっていたのは、①震災時に拠点病院以外の病院をどうするのか?②卸売り業者が被災して薬が手に入らなくなった場合、メーカーから直接買えるようにならないか?③支援物資をどう届けるのか?④予算案が国会を通るのに何故 8ヶ月も空白が生じたのか?ということでした。
5人目の演者はいわき病院の先生でした。いわきは揺れ、津波、原発事故のトリプルパンチをくらいました。原発事故後、1週間は外を車が走っていなかったと証言されていました。いわき病院では、津波時に寝たきりの患者さんを院内の高いところに避難させ、その後全ての患者さんを他院に搬送し、そして戻ってきて診療を再開しました。講演では、被災後の ALSの患者さんの動向などについて話されました。現在のいわきでは、流出した人はいるものの相双地区から流入した人がいて、若干人が増えたそうです。転勤してくる方の住む家がないほどだとおっしゃっていました。
まだシンポジウムは続いていたのですが、被災地の先生の話が終わったため、別のシンポジウムに出るため、途中で抜けました。このシンポジウムで残念だったのは、参加者が非常に少なかったことです。他に勉強しなきゃいけないことがたくさんあるのはわかりますが、1年経つと人の関心は移ろうものだなぁ・・・と。まだ引きずっている私の方がおかしいのでしょうか?
さて、15時 15分からは「神経学と精神」というシンポジウムに出ました。まずは神経疾患で見られる精神症状について。急性自律性感覚性ニューロパチーでは半数以上に精神症状が見られる、片頭痛で遁走が見られることがある、post stroke depressionでは中前頭回の血流が低下している、CADASILではアパシーが見られる、パーキンソン病では性欲亢進が見られることがある、抗 NMDA受容体抗体脳炎では意識・自我の障害がみられる、拒食症では insulaとの関係が指摘されている、視床梗塞では personality障害が出る・・・という話でした。その後、精神科の先生からの話を聴き、神経内科とは違った立場からの見方に新鮮さを感じました。
これで私が聴講した全ての講演が終わりました。参加できた講演はこれでもごく一部で、神経学の幅広さを実感しました。
本日から日本神経学会総会です。今のところ、下記の演題を聴きに行くつもりでいます。しかし早朝の演題は、起きられない可能性があるので微妙なところです (^^;
第53回日本神経学会 (2012年)
東京国際フォーラム 有楽町線有楽町駅徒歩1分
5月22日(火)
11:00 神経学会生涯教育セミナー Hands-on 6 「高次脳機能」第13会場 (ガラス棟7階)
5月23日(水)
8:00 教育講演 E(1)-1 ビデオでみる不随意運動の基礎 第3会場 (ホール棟B 7階)
9:00 教育講演E (1)-4 絞扼性末梢神経障害の手術 第4会場 (ホール棟B 7階)
10:00 ポスター発表 第16会場 (展示ホール地下2階)
パーキンソン病①画像、パーキンソン病④姿勢異常、筋疾患③筋ジストロフィー
16:00 教育講演E(1)-5 ALSの遺伝学 第3会場 (ホール棟B 7階)
or シンポジウムS(1)-9 小脳症状とは何か 第6会場 (ホール棟5階)
5月24日 (木)
8:00 教育講演 E(2)-1 てんかん発作を診て勉強しよう 第3会場 (ホール棟B 7階)
9:00教育講演 E(2)-3 感覚情報と大脳基底核 第3会場 (ホール棟B 7階)
10:00 ポスター発表第16会場 (展示ホール地下2階)
認知症⑧検査、パーキンソン病⑫ DBS、運動ニューロン疾患⑨社会医学、HIV, HTLV1、その他の機能性疾患②RLSなど
5月25日 (金)
8:00 ホットトピックス H(3)-1 てんかんと運転免許 第2会場 (ホール棟C 4階)
9:00 教育講演 E(3)-3 実地に役立つ神経遺伝学 (脊髄小脳変性症を中心に) (ホール棟B 4階)
10:00 ポスター発表第16会場 (展示ホール地下2階)
パーキンソン病⑭病態生理、パーキンソン病⑮基礎研究、パーキンソン病⑯病理・遺伝、脊髄小脳変性症④分子病態、脊髄小脳変性症⑤遺伝子異常、運動ニューロン疾患⑩神経病理、運動ニューロン疾患⑪遺伝、運動ニューロン疾患⑫分子病態、てんかん③画像検査・治療など、末梢神経疾患⑤CMTなど、筋疾患⑥ポンペ病その他
13:30 シンポジウムS(3)-12 東日本大震災:あれから一年 第8会場 (ホール棟D 5階)
15:15 シンポジウム S(3)-16 神経学と精神 医学の境界を再度考える 第3会場 (ホール棟B 7階)
今回の総会で面白いのは、「てんかんと運転免許」「東日本大震災:あれから一年」といった、時事的問題を扱った演題が多いことですね。神経内科医が社会で果たす役割を考えましょうということでしょう。楽しみです。
日仏学会で、岩田誠先生の講演が行われます。
日時: 2012年07月06日(金曜) 18:00
会場: 日仏会館ホール – 渋谷区恵比寿3丁目
入場無料● 岩田誠 (日仏医学会会長、東京女子医科大学名誉教授)
主催: 公益財団法人日仏会館、日仏医学会、日仏海洋学会、日仏工業技術会、日仏生物学会、日仏獣医学会、日仏農学会、日仏薬学会、日仏理工科会
後援: ABSIF (科学部門フランス政府給ひ留学生の会)生物の進化史上、自然発生的に絵を描くことを始めたのは、われわれHomo sapiensのみです。既にある程度の話し言葉の能力を持っていたと考えられ、我々に最も近い存在であったとされる旧人(Homo neanderthalensis)でさえ、絵を描くことはしなかったようです。その意味で,ヒトはHomo pictorと呼んでも良い存在であると言えます。それでは、ヒトは何故絵を描くのでしょうか。また、どうしてヒトだけが絵を描く能力を持っているのでしょうか。それらの諸問題を、認知考古学、動物行動学、神経心理学、発達神経心理学などの多方面からのアプローチで探ってみましょう。また、様々な病気が、画家の描く作品に与える影響についても、考えてみたいと思います。
岩田先生の講演は、いつ聴いても感動を覚えます。早速申し込みました。
似たような内容の講演をされたことがあるようで、日本子ども学会のサイトに文章が載っていました。講演を聴きに行けない方は、こちらで雰囲気を味わってみて下さい。
「描画の発達と進化」 (pdfファイル)
ちなみに、ジェラール・プーレ氏のコンサートが別の日に行われるようで、こちらも申し込みました。ジェラール・プーレ氏の父、ガストン・プーレはドビュッシーと親交があり、以前ブログで紹介したことがあります。非常に優れた音楽家ですので、クラシック音楽好きの方は是非申し込まれることをお勧めします。
日時:2012年07月11日(水曜) 19:00 (18:30開場)
会場:日仏会館ホール – 渋谷区恵比寿3丁目
演奏 櫻木枝里子(p)、夜船彩奈(p)、白山 智丈 (p)、金澤希伊子(p)、ジェラール・プーレ(Vn) Soirée de musique française – SAKURAGI Eriko (p), YOFUNE Ayana (p), Gérard POULET (vn), KANAZAWA Keiko (p),/
参加費:
● 日仏会館会員 3.000 円
● 一般 2.000 円、学生 1.500 円
・ピアノ
櫻木枝里子
ラモー 新クラヴサン組曲より
ラヴェル 夜のガスパール・ピアノ
夜船 彩奈白山 智丈
前奏曲【初演】幻想曲【再演】
・ヴァイオリン
ジェラール・プーレ
・ピアノ
金澤 希伊子ラヴェル
フォーレの名による 子守唄
ハバネラの形式による小品
バイオリンとピアノのためのソナタ
Neurology という blogで紹介されていた「脳の歴史」を読み終えました。
古典的な研究、最先端の技法が豊富な写真で紹介されており、眺めて楽しい本でした。解説の文章もコンパクトで非常に読みやすかったです。脳研究の基礎知識がなくても読むことの出来るお勧めの本です。
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) における C9orf72遺伝子イントロン領域の GGGGCC 6塩基リピートについて以前紹介しましたが、Lancet Neurlogy 2012年4月号に興味深い論文が出ていました。
C9orf72遺伝子変異にはかなり人種差があるようで、フィンランド人 (Finnish) では孤発性 ALSの 21.1%を占めますが、その他ヨーロッパや米国の白人では 7%, ヒスパニックでは 8%, 黒人では 4%程度に変異がみられるそうです。一方で、米国原住民、アジア人の孤発性 ALSにはこれらの変異は見つかりませんでした。家族性 ALSについては日本人で 1例遺伝子変異が同定された症例があるようです。
ハプロタイプ解析の結果から、どうやらこの遺伝子変異には約 1500年前 (おそらく 100世代前) に共通の祖先が存在することが明らかになりました。
この遺伝子変異の浸透率は、35歳以下ではほぼ 0%, 58歳では約 50%, 80歳ではほぼ 100%と年齢依存性があるようです。原因は不明ですが、論文中では「年齢依存性の遺伝子座のメチル化」「何らかの遺伝因子」を推測しています。
C90rf72遺伝子キャリアの臨床像としては、やや女性に多く、家族性で、球麻痺型が多いようです。
この論文の limitationとしては、いくつかの地域でサンプルサイズが小さいこと、今回調べた症例で染色体 9p21以外のハプロタイプも見つかる可能性があること、浸透率を過大評価した可能性があること、家族性と孤発性の判断が問診によること、などが挙げられます。
今回の論文で、日本人にはこの遺伝子異常が少ないと推測されます。日本人における孤発性 ALSの原因探しの道程は、まだ長そうです。また、研究が遺伝子解析先行なので、分子レベルでの疾患メカニズムの解明も待たれます。
ちなみに、同じく Lancet neurology 2012年4月号の “Comment” で、この論文を扱っていました。
C9orf72 repeat expansions in patients with ALS and FTD
注目を集めている分野であることは間違いないと思います。
(今回のブログ記事では、同じ遺伝子変異が原因となる前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia; FTD) については触れませんでした。興味のある方は、論文本文を読んで頂ければと思います)
4月2~7日、秋田県の医師不足の病院で勤務してきました。総合病院の病棟内科医がゼロになってしまい、応援の医師が勤務するまでのつなぎとして、院長から頼まれて行ってきました。
いなくなった内科医の穴をどう埋めるか、診療態勢が定まらぬ中だったので、思わぬ暇が出来たりして、読書の時間がもてたのは収穫でした。読んだ本をいくつか紹介したいと思います。
・ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
ここ 10年くらいで、外傷治療の常識が覆されています。外傷での消毒は意味がなく、組織を傷害するだけで却って有害であることが明らかになりました。秋田では内科外科問わず全科の患者さんの対応をしなければいけないので、こうした外科系の最新の知識も必須であると思い読みましたが、眼から鱗でした。
・ドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
熱傷の治療も、外傷治療同様、近年大きく変わってきています。以前は消毒をして乾燥させて・・・でしたが、最近では全く逆であることが常識になりつつあります。熱傷創にはサイトカインや組織栄養因子が存在し、それを乾かすのは培養細胞の入った培地を乾燥させるのに等しいそうです。湿潤を保ち皮膚の再生を促すことが治療への最善で、さらに消毒は有害 (菌を殺す効果がほとんどなく、組織を傷害する結果に終わる) であるというのは、知らないと患者さんに不利益を与えることになりますね。学生時代に習ったことと常識が 180度変わってしまっているのを感じながら読みました。
救急をやっていると、「地雷」と呼ばれる症例にぶつかることがあります。例えば「喉が痛い」と来院した患者が心筋梗塞だった・・・など、通常の診断アルゴリズムでは予期できない疾患に遭遇するものです。もちろんほとんどの患者さんではこういうことがないのが、「地雷」たる所以で、全く意外なタイミングで、意外な疾患が隠れていたりします。それを見抜く目を養うのが本書の狙いです。第一章:外来で使える general rule、第二章:症候別 general rule、第三章:ケースブックとなっています。ケースブックではいくつかのケースで「これは見逃しそうだなぁ・・・」などと思いながら読みました。救急に従事する医師は一度眼を通しておいた方がよいかもしれません。
・ダ・ヴィンチのカルテ―Snap Diagnosisを鍛える99症例
Snap Diagnosisとは、「知っていれば一目」の診断ですが、知らないと正しい診断に辿り着くまでひどい遠回りになります。臨床の場での実践的な知識が身に付きますので、読んでおいて損のない本です。
3分間で読了しました。学生の知識の整理に丁度良いですが、臨床の場ではあまり実践的ではないかもしれません。
薄い本ですが、かなり実践的な本です。研修医、救急医、プライマリ・ケア医などにオススメ出来ると思いました。
秋田では、上記の本を読んだほか、論文もいくつか読みました。機会があれば紹介したいと思います。
今回は早めに秋田入りしたので、4月1日に乗馬クラブに行くことが出来ました。乗馬クラブの名前は「エクセラ」です。非常に親切にして頂いたので、また行きたいと思いました。今回は巻乗り、半巻乗り、脚の使い方、尻鞭、馬装具の外し方・・・などを学びました。
新潟大学初代神経内科教授、椿忠雄先生について Brain medicalに書かれた文章をネット上で読むことが出来ます。日本の神経学の成り立ち、慢性水銀中毒、SMON, 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の話題が中心です。東京都立神経病院の林秀明先生が書かれた文章です。
週間医学会新聞で毎回楽しみにしている李啓充先生の文章。今回は、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) についてでした。
続 アメリカ医療の光と影 第218回 医師が患者になるとき 李 啓充
この疾患を克服することは神経内科医の悲願ですが、この疾患に冒されながら啓蒙活動を続けたオルニー先生の話です。神経内科医は是非一読を
ラボでの実験が早く終わったので、久々に大学に遊びに行きました。たまたま研究会をやっていたのでふらりと参加したら、滅茶苦茶面白い講演でした。講演は「認知症の診断と治療の進歩」で、演者は東京医科大学老年病科の羽生春夫教授でした。教科書に書いていない、最先端が多かったです。以下、備忘録代わりに、内容の抜粋を書いておきます。
・Mini-Mental State Examination (MMSE) は、元々の認知機能が高い人、つまり学歴が高かったり社会的に高い立場の人に対しては感度が低い。Cut offを通常の 23/24に置くと、感度 0.66, 特異度 0.99, 通常より高い 27/28に置くと感度 0.89. 特異度 0.91になる。
・認知症スクリーニング検査での計算課題は注意力の低下を見ているので Diffuse Lewy body disease (DLB) で落ちやすい、遅延再生は Alzheimer病 (AD) で落ちやすい。
・MMSEが 10-12分かかるのが大変なので、1分間スクリーニングというのがある。Category fluencyは 1分間で動物の課題を出来るだけたくさん答えてもらうもので、頭頂葉内側機能を見ている。海外の studyでは得手不得手に考慮して、動物、フルーツ、スポーツなどいくつかの分野を出題することもある。Letter fluencyは「カ」で始まる言葉などを列挙してもらうもので、前頭葉機能を見ている。Category fluencyも Letter fluencyも Mild cognitive impairment (MCI) や ADで低下する。
・Test your memoryという検査法は、自己評価で行うことができる。ADや MCIでは病識がないので、他者からの評価より自己評価の方が高い。うつや神経症では逆になる。
・ADだと全脳の容積は 18%, 海馬は 45%低下する。海馬容積を評価する VSRADは、次期 Versionが開発され、より感度が高くなった。VSRADは Z-scoreの数字だけを見るのだけではなくて、元画像で正しい部位を評価しているか確認することが大事。また、海馬の atrophyは sensitiveだが ADにspecificではない。
・ADはアミロイドアンギオパチーを合併するなど、血管障害を合併することが多い。ADと Vascular dementia (VaD) は同じ spectrumで mixed-dementiaと呼ぶことがある。
・VaDと思われる症例で、MRIでの白質病変が同じくらいでも認知機能が異なることがある。Diffusion tensor image (DTI) で走行線維を見ると、認知症のある患者は脳室周囲の前後方向の線維がかなり落ちている。従って、同じ白質病変でも病理学的に違うのだろう。”cell/synaptic density” を反映する 123I-iomazenil (IMZ) で見ると、VaDでは前頭葉が、VaD+ADでは前頭葉+頭頂側頭葉で取り込みが低下している。
・MRI T2*も VaDと ADの鑑別に有用で、VaDでは 77%, ADでは 32%に micro-bleedingがある。
・REM sleep behavior disorder (RBD) は Parkinson disease (PD) / DLBに先行する。 MCIから ADを発症するのは 3~5年だが、RBDから PD/DLBになるには 10~20年以上かかるので追跡が難しい。さらに、PD/DLBを発症すると、RBDが軽くなることがある。
・idiopathic RBD (iRBD) では、84例中 82例で MIBGシンチで取り込みが低下している。 また、iRBD患者の MRIで Voxel-based morphometryを行うと、小脳・中脳橋被蓋部で容積低下がある。SPECTでは、DLB, iRBDともに後頭葉で血流低下がある。経過中画像が悪化しても、必ずしも症状は悪化しない。
・Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) には、メマンチン、抗てんかん薬、漢方薬などを使用する。漢方薬について、太っている患者には、抑肝散より柴胡加竜骨牡蛎湯の方が良く効く。
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