3月29日から3月31日までは猛吹雪が続き、さすがに4月も近いというので、ノーマルタイアに換えていた人達は大変だったようです。一方で、テレビでは東京の桜の風景が報道されていて、地域の差というものを感じさせられました。新幹線だと1時間半くらいなのですが・・・。
さて、今日は少し深刻な話。先日、「極めて稀な症例」に、「最善を尽くしたにせよ救命できなかった」、ある産科医が逮捕されました。産科医療の崩壊しつつある僻地(日本の9割以上の地域では既に崩壊が始まっていますが)において、地域の医療を支え、年間200件以上の出産(24時間いつ産まれるかわからない)を一人でとりあげていた医師でした。症例自体は極めて稀で、同様の症例を経験した医師達も、救命できるかどうか自信はないと言います。学会や各地の医師会は、医療行為自体に過誤はなかったと声明を出していますが、加藤医師は刑事事件として逮捕されました。
通常通り病院に勤務している医師が、ましてや身重の妻がいて、逃亡の危険も何もありませんが、逃亡を防ぐという名分のもと逮捕されるというのも、ある意味見せしめな気がします。マスコミでは、「医療事故」として扱っていますが、加藤医師の過失が証明できなさそうであるという雰囲気になると、急にトーンダウンしています。これから刑事事件として審議が始まるでしょう。無罪となる可能性が高いとは思いますが、無罪になったとしても、彼は医師生命を社会的に絶たれます。そのことで誰も責任をとりません。報道でのタイトルも、「医療事故」「医療ミス」と既に過失を認めたかのようなタイトルをつけられています。
「産科に進まなくて良かった」と思う反面、今後は誰が(世界一優秀な治療成績を残しているとされる)日本の産科を救うのか、無責任ながら感じます。せめて、このサイトを見ている人達には客観的な目で見て欲しいと思うし、「患者」対「医師」の構図を作り上げ、大衆である「患者」の耳に心地よい報道を繰り返すマスコミに少しでも疑問を持ってもらわないと、日本の医療は知らないうちにむしばまれていくのではないかと思っています。
昨日に品川プリンスホテルに宿泊し、友人達と飲み会をして、今日は新高輪プリンスホテル。頭痛フォーラムに参加してきました。集まった医師の数は1000人くらいと、なかなか規模の大きなものでした。
会場には国際頭痛分類の翻訳委員や、慢性頭痛診療ガイドライン作成委員の先生がたくさんいらしゃいました。日本の頭痛診療の権威である座長の先生から、「頭痛を治療する能力は医師の力量を測るのに最も良い」という医聖ウィリアム・オスラーの言葉が引用され、活発な議論が繰り広げられました。
また、University Duisburg-Essen HufelandstrのHans-Christoph Diener教授も参加し、特別講演を聞くことができました。ドイツと日本の医療の違いなども垣間見え、興味深かったです。
会場では、医師達にリモコンが渡され、選択式の問題を解かされました。そして、何%の医師がどの答えを選んだか、前のパネルに表示されました。わざわざ紛らわしい症例を出題した割には、全体的にほぼ8割くらいの正答率がありましたが、中には正答率が思わしくない問題もあり、頭痛を専門としている医師達と、専門にしていない医師との力量の差が見られました。私は、昨年頭痛に関する論文を2本ばかり書き、その際かなり勉強したこともあり、だいたい正答することが出来ました。どの医師を受診しても、高いレベルの頭痛診療を受けられるようになるために、一般の医師への啓蒙も必要です(本日参加した医師は、それでも積極的に学ぶ姿勢を持った人が多かったと思います)。
(参考)http://homepage2.nifty.com/uoh/ (座長の先生による、頭痛に関するサイト)
話は変わりますが、先日福島市である研究会に参加して、面白い話が聞けました。福島県立医科大学の教授の体験ですが、以前オーストラリアの学会に参加した際、各国の神経内科医代表が、神経内科のあらゆる分野について討論し、勝ち負けをつけるゲームを行ったそうです。その時、優勝したのは、伝統あるフランスでもアメリカでもなく、イギリス。また上位は軒並みイギリス式医学教育を受けた国だったそうです。日本は惨敗だったとのことでした。このままではいけないと感じさせられた話です。
最近、4点セットだか5点セットだかが世間を賑わせています。しかし、我々神経内科医にとっては、断然狂牛病問題に興味があります。狂牛病で問題となるのはプリオンと呼ばれる異常蛋白です。プリオン病はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と呼ばれます。
私もプリオン病に関しては、ここ1年で2例の臨床経験がありますが、治療法がなく、本当にミゼラブルな疾患です。私が経験したのは、硬膜移植に伴うCJDと、古典的CJDですが、狂牛病はまだ治療経験がありません。古典的CJDについては、来院後1~2時間で診断がつきましたが、治療法無く、対症療法のみとなっています。
報道で見ていて気になるのは、政治的な駆け引きだけが問題となっていて、疾患の本質が全く報道されていないことです。
(参考)http://www.nanbyou.or.jp/pdf/cjd_manual.pdf
先日、ニュースを賑わした遭難事故に私も巻き込まれたことがありました。それは、私がかなりハードな当直をしていた日のことでした。
救急隊から要請が入り、遭難者が4名いるとのこと。16時くらいに要請が入りましたが、まず駆けつけたのはマスコミ。その後、19時半くらいに救急隊が到着しました。男性3名と女性1名だったので、2部屋続いた救急室を仕切って、男性と女性に分けました。後は、より症状の重そうな人から順に診察していきました。マスコミ対策は警察が手際よくやってくれ、マスコミも度を越した取材は無かったように思います。最後に警察から、病状を教えて欲しいと聞かれたので、「プライバシーのことがあるので、患者様が話して良いという範囲でのみ話します」と伝えました。「患者が疲労している」「プライバシーの問題がある」と強調したため、結局代表者1名のみによる短いインタビューで取材は終了したみたいです。
ニュースでも報道され、翌日の新聞でも取り上げられていましたが、渦中にいる人間には、そういった情報は入らないものだなと思いました。内科当直は私一人だったため、責任者として対応しましたが、無事問題なく解決し、ほっとしています。
私が勤務するのは神経内科なる科ですが、世間的にはまだまだ認知度が低く、長嶋茂雄さんが脳梗塞で東京女子医大の神経内科に入院され、やっと知った人もいるのではないでしょうか。
神経内科が他の科と混同されやすいのは、精神科が敷居を低くするために「神経科」と名乗っていることや、精神状態が身体症状に強く関与する「心療内科」なる、名前の良く似た科があるためと思われます。
神経内科という科は、中枢及び末梢神経、またはそれらの支配する筋肉に関わる疾患を扱います。外来をやっていて多いのは、頭痛、認知症、パーキンソン病、頸椎症、糖尿病性末梢神経障害、眩暈などで、入院患者としては脳梗塞、脳出血(手術適応のないもの)、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などを扱います。稀な疾患ですが、重症筋無力症、プリオン病なども時々来院します。神経内科疾患に対して知識を持っている医師が少なく、歳のせいにされている悲惨な症例があるのが現状です。
あくまで内科的なアプローチに主眼がおかれ、また患者の大多数が老人なので、神経内科疾患以外の合併も多く、内科疾患への幅広い知識も要求されます。老人を相手にするということは、介護や社会医療制度の問題も避けて通れません。一方で特殊な知識を要求される疾患が多いため、他の内科系医師からも良く相談を受けます。
時に「神経内科疾患は神経内科に診断はつけて貰えるけど、治らない」という誹りを受けることがありますが、多くを占める頭痛や脳梗塞はかなり治療成績が良いものと思います。ただ、比較的新しい学問で、脳という未知の領域を相手にするので、今後の研究の余地が多い領域です。
今、ノロウイルスが猛威を振るっています。急性胃腸炎を起こすウイルスです。
丁度一ヶ月前の日曜日に当直した病院では、外来患者40人中20人が急性胃腸炎でした。今回の当直では、午前9時から午前5時まで断続的に受診があり、50人以上来院した患者の8割くらいが急性胃腸炎でした。診療中に整腸剤の在庫が病院からなくなるくらいの、かなりハードな当直でした。ほとんど一睡もせず働き、さらに連続して埼玉で外来後、大学病院で夜まで働き、疲労のため免疫力が著しく低下していそうな私ですが、これ程感染力が強いと言いながら、その当直では伝染ることなくすみました。
ノロウイルスは風邪同様、ウイルスなので抗菌薬が効きません。整腸剤を処方し、食事や水分が経口摂取が出来ない例には、点滴、場合によっては入院が必要になります。急性胃腸炎は私も何度か患ったことがありますが、非常につらい症状です。
診療する側から恐いのは、大量におしよせる腹痛患者の中に、1-2人違う腹痛が紛れていること。卵巣癌が虫垂を巻き込み腹痛を起こしていたり、消化管穿孔であったりといった腹痛をここ1ヶ月で経験しています。ほぼ全員が急性胃腸炎だと、つい「また、急性胃腸炎?ノロウイルス?」と診療してしまいますので、気持ちを引き締めています。
昨日の午後から訪問診療に行ってきました。毎月2、3回行っているのですが、山の方のお宅を訪ねると、すでに雪が舞っていて、びっくりしました。
患者さんから聞いた話ですが、以前家の軒先に燕が巣を作っていたそうです。しかし、ある日あまりに鳴き声がうるさいので行ってみると、蛇が巣に進入して雛を食べていて、親鳥が周りを飛び回って鳴いているようなのです。訪問診療を受けるような、あまり元気でないおじいさんですが、棒を使ってなんとか蛇を追い払ったそうです。以後、時々親燕が家の中に挨拶しにくるとおっしゃっていました。なかなかの美談ですね。
昨日の夜は、福島県立医科大学に新薬の講習を聞きに行ってきました。脳梗塞超急性期(発症3時間以内)に使用できる新薬(rt-PA;商品名アルテプラーゼ、グルトパ)の講習です。使用するための条件が厳しく、適応が限られる薬剤ですが、臨床試験では使用した37%の人がほとんど後遺症なく回復しています。しかし、致死性の出血性梗塞に移行する可能性も2.9%(使用しない場合0.3%)存在します。いずれにしても、治療の選択肢が広がっていくことは確かです。