Parkinson病の音楽療法

By , 2008年6月29日 3:23 PM

普段、勉強させて頂いている「Neurology」という blogで、「Parkinson病の音楽療法」が取り上げられていました。

Parkinson病の方には「内的リズム形成障害」があるという考えは、Parkinson病の研究会では、毎回必ずと言って良いほど議題になります。この考えを支持する現象として、Parkinson病の方の歩行に合わせて「1,2,1,2」とかけ声をかけてあげると歩きが良くなることがあります。

この「かけ声」の代わりに音楽を用いたのが、「パーキンソン病の音楽療法」の面白いところです。実際に、メトロノームを用いると良いというのは、14年前に著された教科書にも載っています。「神経症候学を学ぶ人のために (岩田誠著、医学書院)」から、少し引用してみます。

 すくみ足歩行

いずれにせよ、すくみ足という現象は、感覚刺激によって誘発される随意的な下肢の動作は障害されていないのに、歩行という自発的な自動動作の開発のみが障害された病態であると考えられており、床の横縞のような視覚刺激が有効なのは、自発的自動運動としての歩行が開発されないときに、感覚によって誘発される随意動作としての跨ぐという動作を開発させてこれを代償すると考えられている。すなわち自発的自動運動の開発が高度に障害されているのに、感覚刺激誘発性の随意動作は正常に保たれているという逆説的な現象と解することができることから、すくみ足と矛盾運動 (kinesie pradoxale) との間には機構上の類似性があるのではないかという考えがある。後者は無動が高度で歩行不能かつ上肢の日常動作もできないような Parkinson病患者が、”火事だ”との叫び声で走り出したり、ボールを投げられるとこれをひょいと受け取ったりするというような現象に対する用語である。

すくみ足歩行に対する対策としては、視覚刺激を利用して歩行をしやすくする方法がとられる。屋内では床に横縞の模様をつけたり、通路にテープを貼ったり、また、先端に横木を取り付けたL字型の杖を足の前に出しながら歩くような工夫をすることも効果がある。視覚刺激だけでなく、聴覚刺激によるリズム形成も有効であることが知られており、メトロノームの拍子を聞きながら歩くとすくみ足が生じにくい

上記「Neurology」という blogでは、Parkinson病の音楽療法に用いる CDを紹介していました。この CDは順天堂大学の林明人先生が出されているそうです。林先生は、私が「運動障害研究会」で発表をしたときに御世話になったことがあります。運動障害の分野では、神経内科医の中で知られた医師です。

さて、少し話は変わりますが、「神経内科」という雑誌の 2007年 9月号で「神経疾患と音楽療法」という特集が組まれていました。私は定期購読している雑誌ではないのですが、特集が面白かったので、以前その号のみ買って取り寄せていました。奇しくも「Parkinson病と音楽療法」という稿は、林明人先生が書かれていたのです。

神経内科 67/3 2007年9月号

―目次―

特集 神経疾患と音楽療法

音楽療法の歴史と意義
音楽療法に科学的に取り組む試み
―東海大学の音楽療法教育―
脳血管障害に対する音楽療法
認知症と音楽療法
神経難病と音楽療法―総論
Parkinson病と音楽療法
筋萎縮性側索硬化症と音楽療法
-在宅医療の立場から-
筋萎縮性側索硬化症に対する音楽療法
-特殊疾患療養病棟での経験-
音楽療法と脳機能再建

上記の林先生の論文「Parkinson病と音楽療法」を紹介します。以下は、私がごく簡単に纏めてみたものですが、実際の論文を読んで頂けると良いかと思います。

 Parkinson病と音楽療法

(対象)内服などの治療で効果不十分の Parkinson病患者。男性 10名、女性 15名。平均年齢は 70.0±7.7歳。重症度は Yahr Ⅱ~Ⅳ度。罹病期間 7.0±5.4年。

(方法)メトロノームを 120回/分 (2 Hz) とし、被験者の興味ある音楽 (クラシック、演歌、童謡など) をそれに重ねた。毎日最低1時間、3~4週間、歩行を行わない状態で演奏を聴いた。

(結果)課題後、全例の歩行速度は、有意に増加した。25例中 19例で、歩行速度が 5%以上改善した。歩幅も有意に増加した。1分間の歩数はやや増加したが、有意ではなかった。鬱状態の指標である SDSは、顕著に改善した。アンケートでも、25例中 24例の患者が気分が明るくなったと答えた。

(考察)内的リズム形成の過程が外的な音リズム刺激によって安定化するように働き、歩行に関する内的なリズム形成が遂行出来るようになったと考えられる。

論文を読むと、Parkinson病に対する音楽療法は、効果がありそうに思えます。実際の歩行時に音楽を聴く場合は、患者の歩行リズムに合わせて音楽の速さを変えなければいけないことも、論文中に記載されていました。

林明人先生の出されたParkinson病の音楽療法に関する CDは、上記の様なエビデンスの裏付けもあり、Parkinson病の方が試してみる価値は充分にありそうです。根治的な治療にはならないでしょうが、薬みたいに副作用もなく、気軽に行えて、精神的ストレスをも緩和するのが素晴らしいところですね。

いやー、音楽って本当に良いものですね。

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