リアルタイムPCR手技 完全マスター 実技講習会

By , 2009年5月19日 3:25 AM

5月 17日 (日) に「リアルタイムPCR手技 完全マスター 実技講習会」に参加してきました。学際企画のセミナーで、講師は防衛医大法医学の高田雄三先生でした。池袋駅から近く、開始も 10時とやや余裕があったので、当直先から参加することが出来ました。

リアルタイム PCRは、簡易で定量性に優れ、多検体処理に適しています。従来のノーザンブロット法で数日かかっていたのが、数時間で検査できるようになりました。最近流行の新型インフルエンザの精密検査にも使われています。今回、講習を受けたのは、TaqManアッセイと、SYBR Green Dyeアッセイでした。

まず、与えられた検体 (白血球) から RNA を抽出し、更に cDNA を作ります。この辺りは便利なキットがあり、比較的簡単にこなすことができました。キットがなかったら大変そうですけどね。こうしたキットはアプライドバイオシステムズ社が充実しています。

そこまで終わると、いよいよ TaqManプローブを用いた real time PCR です。real time PCR は、PCR での遺伝子増殖の効率に目を向けています。PCR では、ある程度遺伝子が増殖してくると、dNTPsやプライマーの枯渇、PCR阻害物の蓄積などで増殖効率が落ちます。しかし、増殖効率がもっとも良いところでは、増殖産物量は 1サイクル毎に 2倍になります。増殖効率の良いところで、既知のいくつかの濃度の試料の、増幅産物量に対応する検量線を描き、目的の検体が検量線のどこに位置するかを調べれば、絶対的な定量ができます。

TaqManプローブは、増幅産生物量を知るのに絶大な効力を発揮します。TaqManプローブには、両端に蛍光色素がありますが、クエンチャー蛍光色素が近傍に存在するため、蛍光の発生が抑制されています。しかし、PCR の途中で DNA の伸長反応が起こると、クエンチャー蛍光色素がプローブから遊離し、蛍光が起こります。蛍光強度は定量することができます。

TaqManアッセイには、既存キットがあり、 アプライドバイオシステムズ社から TaqMan Gene Expression Assays として販売されています。プローブは、ヒト、マウス、シロイヌナズナ、ショウジョウバエ、サル、イヌを対象に、70万種類あるそうです。

ここまで実習したところで、昼食を食べに行きました。久しぶりの池袋だったので、懐かしいラーメン屋に行ってきました。「屯ちん」というのですが、福島にも支店があると知ってびっくり。しかも、住所が「村」ですよ?福島なので、「しゃんでりあの君」に試食に行って頂かないと。

実習室に戻ってからは、SYBR Greenアッセイを行いました。「さいばーぐりーん」と読むらしいのですが、TaqManアッセイと違って、2本鎖 DNAに結合する SYBR Green I の蛍光シグナルを検出します。使用オリゴが、Taq Man の 3種類より少ない 2種類で、低価格で行えますが、2本鎖DNAを何でも拾ってしまうので、中間生成物などが結果に混入することがあります。そのため Melting curve を描き、混入がないか判定します。Melting curve は 1塩基違うだけでも 1度くらい変わることがあるくらいなので、異なった DNA が混入していればわかりやすいのですが、同様の Melting curve を描く DNA は判定できないので注意が必要です。また、反応条件の検討が必要です。人間のどの細胞にも発現している内在性遺伝子 (GAPDH, TfR, 18S rRNA, β-actinなど) との比を出せば、相対的定量が可能です。

実習が終わってから、原理についての講義がありました。講師の方の話がわかりやすくて、聞き入りました。

講義そのものはもとより、雑談にも勉強になる部分がありました。講師の方が、MRSA感染で亡くなった方からの検体から、Staphyrococcus aureus の遺伝子や抗生剤レジスタントな塩基配列を real time PCR で定量している話などは、臨床にも応用できそうな話です。

臨床から離れた分野では、指紋や着衣からのゲノム DNA定量。例えば、レイプ事件などで、現場に残された下着から、犯人の DNAを採取出来るのです。下着を強い力で引っ張ると、犯人の手の細胞が下着の繊維に付着し、その細胞の DNA が調べ、被疑者と一致するか検査することが可能です。被害にあった女性がいたら、すぐに証拠品を保管したまま警察に届けて頂きたいです。

その他、Single Nucleotide Polymorphism (SNP; スニップ) という概念があり、特定の一塩基が置換されている DNA の一型を指します。人種や個人によって異なるため、マーカーとして使えます。例えば、人種を特定出来るため、海外に残された遺骨の SNPs を調べれば、日本人の遺骨だと主張でき、持って帰ることが出来ます。海外では、このような手法で所有権を主張する流れがあるのですが、日本ではこの専門家は 5人しかいないそうです。

まだまだ面白い話はあるのですが、オフレコの部分もあって、ここには書きません。

私は基礎医学に関しては初心者でしたが、わかりやすい講義と、親切な実習でストレスなく参加できました。来月は、遺伝子解析の講座に参加する予定です。特に目的があるわけではないのですが、どこかで役立つかもしれませんし、知らない分野に首を突っ込むことが新鮮で、純粋に楽しくてなりません。

今回参加していた研究者達 (数えたところ、22名くらいいました) は各地から集まっていて、北海道からなんていう方もいました。みなさん専門家らしく実践的で、プローブの作り方なんていうマニアックな話をしてました。今後、この分野で困ったことがあれば、講師の方にメールして相談できるというのは、研究者にはたまらないのではないでしょうか?

しかし、行きつけの YAMAHA 近くの池袋の雑居ビルの一室で、こんな怪しい集団がいたなんて、気付きませんでした。普通の部屋に機械を数台持ち込むだけで、遺伝子調べて遊べるのですから。


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