精神医学の歴史(2)

By , 2006年9月7日 8:48 PM

前回紹介した「精神医学の歴史」という本を読み終えました。

ドイツの優性思想だとか、その時代背景だとか、それが過去や現在の医学の考え方とどのように結びついたかにも触れていて面白かったです。

紀元前18世紀から既にハシュシュが存在し、BC1550年頃にはエジプトでケシopiumが鎮痛剤として用いられていたことから、かなり昔から精神に作用を及ぼす薬を使っていたことがわかります。ちなみに最古の意識変容薬は、アルコールか、もしくはシャーマンが用いた毒キノコと言われています。

また、アラブ世界からコーヒーをヨーロッパに持ち帰ったラウヴォルフが、インド蛇木から採った薬をヨーロッパに紹介しましたが、その主成分が降圧剤として使用されたレセルピンで、副作用である抑うつ状態の研究の過程で脳内アミン類の減少が報告され、現在の鬱病の原因としてのモノアミン仮説が唱えられるようになったそうです。他に、製薬会社社長が覚醒剤中毒になった友人を治療するために開発したのが統合失調症治療薬のハロペリドールだったとか、躁病治療薬のリチウムが19世紀にはリウマチの治療薬であったとか、嫌酒薬ジスルフィラムがもともと回虫駆除薬であったとか、話題に事欠きません。

梅毒患者の慢性脳髄膜炎による精神症状について、脳から初めてスピロヘータ・パリーダを分離したのが野口英世ですが、当時治療としては患者の血液中にマラリア患者の血液を注入し、高熱を出させて治療することが行われていたことを知って、ぞっとしました。

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