中学生の書いた医学論文

By , 2010年6月25日 1:33 PM

methyl先生から教えて頂いた情報です。

中学生の書いた医学論文が、British Medical Journal (BMJ) に載りました。アイスクリーム頭痛についての論文です。

論文のタイトルは、Ice cream evoked headaches (ICE-H) study: randomised trial of accelerated versus cautious ice cream eating regimenで、2002年 12月 21日の BMJに掲載されています。著者の Maya Kaczorowskiは、Dalewood Middle School, Hamilton, ON, Canadaの grade 8 studentです。Grade 8 studentといえば、13歳くらいになるのでしょうか。共著者は Janusz Kaczorowskiとなっており、恐らく親子で書いた論文なのでしょうね。Janusz Kaczorowskiは McMaster大学の Family medicine科の助教授のようです。

アイスクリーム頭痛について簡単におさらい。頭痛の診断は、「国際頭痛分類第2版」に基づいて行われますが、「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」がこれにあたります。間中先生のサイト「頭痛大学」にも掲載されており、同サイトより診断基準を紹介しております。

 寒冷刺激による頭痛

●13.11 寒冷刺激による頭痛

解説:極寒の気候または冷水中への飛び込みなど、低温環境に無防備で頭部がさらされると頭全体の頭痛が生じる。
13.11.1 外的寒冷刺激による頭痛
診断基準:
A. 頭部全体または非拍動性(あるいはその両方)の頭痛であり、CおよびDを満たす
B. 頭部への外因性寒冷刺激が存在する
C. 頭痛は寒冷刺激中に出現する
D. 頭痛は寒冷刺激除去後に消失する
13.11.2 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛
以前に使用された用語:アイスクリーム頭痛(ice-cream headache)
解説:感受性の高い人では、冷たい物質(固体、液体または気体)が口蓋または咽頭後壁あるいはその両方を通過すると、
短時間の痛み(激烈な場合もある)が誘発される。
診断基準:
A. 非拍動性の急性前頭部痛(注1)があり、CおよびDを満たす
B. 冷たい食物または飲み物の摂取、あるいは冷気の吸息による口蓋または咽頭後壁あるいはその両方への寒冷刺激がある
C. 頭痛は寒冷刺激後に限り、直ちに出現する
D. 頭痛は寒冷刺激除去後、5分以内に消失する
注:1.片頭痛患者の場合は、通常片頭痛の起こる部位に生じやすい。

Kaczorowskiが書いた実際の論文を読んでみました。

まず、サンプルサイズを決めるのにパワー計算をして、各群71名が必要とわかりました。口頭で説明して、担任の許可を得た後、ハミルトン中学の6つのクラスから145人の協力者を集めました。

145人は 2群に分けられ、緑ドットの質問票を貰った群は、100 mlのアイスクリームを 30秒以上かけて食べました。赤ドットの質問票を貰った群は、100 mlのアイスクリームを 5秒以内に食べました。

急いで食べた群では 27%にアイスクリーム頭痛を発症し、注意深く食べた群では 13%でした。アイスクリーム頭痛を生じた者のうち、59%は 10 秒以内に治まりました。アイスクリーム頭痛の生涯有病率は 79%でした。

論文の最後に利害関係の申告をしているのですが、その文章が素晴らしい。思わずほほえんでしまいました。

「財政的支援:この研究は、母と父の限りない補助 (グラント) により支えられています」なのだそうです。原文は下記。

 Footnotes

Funding: This work was supported by an unrestricted grant from mum and dad.
Competing interests: None declared.


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