fasciculationの起源

By , 2013年12月29日 7:07 PM

やや古い話になりますが、2007年に仲の良い先輩たちと抄読会をしていて、fasciculation  (線維束性収縮) の起源についての話題になりました。Fasciculationは、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などでしばしばみられますが、他の疾患でもみられます。

第2回抄読会

電気生理検査専門の I先生は、Fasciculationの Originについて調べてきました。以前は前角細胞由来とされていましたが、FasciculationもF波を持つことがわかり、末梢由来だと考えられるようになり、Cancelationを利用した実験で、8割は末梢由来だとする報告も出てきました (Rothら)。一方で、中枢由来とする報告 (幸原ら)も存在し、諸説あるようです。

それ以来、なんとなく意識はしていた問題なのですが、2013年12月号の JAMA Neurology誌 (旧 “Archives of Neurology”) に ALSと “Benign Fasciculation Syndrome” における fasiculation (FPs) の起源についての論文が掲載されていたので、興味深く読みました。

Origin of Fasciculations in Amyotrophic Lateral Sclerosis and Benign Fasciculation Syndrome

Importance Fasciculation potentials (FPs) may arise proximally or distally within the peripheral nervous system. We recorded FPs in the tibialis anterior using 2 concentric needle electrodes, ensuring by slight voluntary contraction and electrical nerve stimulation that each electrode recorded motor unit potentials innervated by different axons.

Observations Time-locked FPs recorded from both electrodes, suggesting a spinal origin, were most frequent in benign fasciculation syndrome (44%) (P < .001) and amyotrophic lateral sclerosis without reinnervation (27%). Fewer time-locked FPs were found (14%) in the reinnervated tibialis anterior in amyotrophic lateral sclerosis (P < .001).

Conclusions and Relevance We conclude that in chronic partial denervation FPs are more likely to arise distally and that FPs in benign fasciculation syndrome more frequently arise proximally.

【過去の研究】

①前角由来とする報告

Fasciculations: what do we know of their significance? (Desai J, 1997)

Fibrillation and fasciculation in voluntary muscle. (Denny-Brown DB, 1938)

②末梢神経由来とする報告

Effects of denervation on fasciculations in human muscle: relation of fibrillations to fasciculations. (Forster FM, 1946) : 神経ブロックをしても残存することが根拠

Fasciculations and their F-response. Localisation of their axonal origin. (Roth G, 1982) : F波を用いて評価

(※ Rothは、約 80%が末梢の軸索由来で、約 20%が末梢神経系のより中枢側由来であると推測)

The origin of fasciculations. (Roth G, 1982) : collision法 (衝突法) を用いて評価

Firing pattern of fasciculations in ALS: evidence for axonal and neuronal origin. (Kleine BU, Neurology) : 発火パターンを解析

③皮質由来

Neurophysiological features of fasciculation potentials evoked by transcranial magnetic stimulation in amyotrophic lateral sclerosis. (de Carvalho M, 2000)

④脊髄由来

Complex fasciculations and their origin in amyotrophic lateral sclerosis and Kennedy’s disease. (Hirota, 2000) : “complex fasciculation” が上脊髄由来だと推測

Synchronous fasciculation in motor neuron disease. (Norris FH Jr, 1965) : 体の両側で同時に起こる fasciculationを記録して検討。中枢での興奮性が関与し、脊髄起源が示唆される。

今回、著者らは単一の筋肉 (前脛骨筋) の 2ヶ所に 1 cm以上離して記録電極 (concentric needle electrodes) を置いて、time-locked FPsを調べることで、fasciculationの起源を検討しました。2ヶ所の記録電極が、それぞれ別々の神経支配の筋肉を記録していることを、支配神経の電気刺激や、随意的な筋肉の弱収縮など、いくつかの方法で確認しました。

【対象患者】

・ALS

52例 (男性 29例, 女性 23例), 年齢 36~75歳 (平均 59.6歳), 初発症状からの平均期間 11.1ヶ月。bulbar 16例, axial 5例, upper limb 20例, lower limb 11例。

・Benign fasciculation

11例, 年齢 38~70歳 (平均 58歳)。筋力低下がなく、筋電図で normal MUPを呈した。また、 2年間の観察期間で進行がなかった。筋痙攣を有する者はいた。代謝性疾患や薬剤性障害はなかった。

【結果】

・ALS (前脛骨筋に神経原性変化があった患者)

1096個の fasciculationを記録した。同時記録の 2ヶ所のうち、1ヶ所のみで fasciculationが観察されたのが 941個 (85.7%), 2箇所で観察されたのが 155個 (14.3%) であった。

・ALS (前脛骨筋に神経原性変化がなかった患者)

544個の fasciculationを記録した。同時記録の 2ヶ所のうち、1箇所のみで fasciculationが観察されたのが 394個 (72.7%), 2ヶ所で観察されたのが 150 (27.3%) であった。

・Benign fasciculation

234個の fasciculationを記録した。同時記録の 2ヶ所のうち、1箇所のみで fasciculationが観察されたのが 129個 (55.1%), 2ヶ所で観察されたのが 105個 (44.9%) であった。

【考察】

 神経原性変化がない ALSの前脛骨筋や benign fasciculationでは、異なる神経に支配された 2ヶ所の筋肉で同時に発火する頻度がより高く、これは中枢 (おそらく 脊髄の motor neuron pool) に由来すると推測される。一方で、神経原性変化がある ALSの前脛骨筋では、異なる神経に支配された 2ヶ所の筋肉で別々に発火する頻度が高く、(それぞれ別の末梢神経系が同期することなく発火していることから) より遠位由来と考えられる。隣接した運動神経に混線して刺激が伝わってしまうエファプス伝達により、2ヶ所の筋肉で同時に発火してしまう可能性については、(神経損傷を伴わない) benign fasciculationでも 2ヶ所同時に発火する頻度が高いので、可能性は低い。

Fasciculationの起源って、奥が深いのですね。大部分が末梢神経由来で、一部中枢性の要素もあるというのは理解していましたが、ALSの病期によって異なるというのは面白いと思いました。Benign fasciculationを検査して、エファプス伝達を除外しているのも上手いやり方だと感じました。

電気生理検査を専門にしている人たちから話を聞くと、針筋電図で見られる安静時活動の起源というのは、結構アツい問題です。fasciculation以外にも議論はあり、例えば “fibrillation potential” や “positive sharp wave” といった脱神経電位は、一般的には末梢神経障害や炎症性筋疾患で見られることで知られていますが、脳血管障害でも見られることもあるなんていうのが、ちょっとしたネタになったりします。

知り合いの電気生理ヲタクの医師と酒を酌み交わすときは、こういうマニアックな話題がいつも肴になります。


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