第5回抄読会

By , 2007年6月27日 10:11 PM

昨日、内輪でいつもの抄読会を行いました。

K先生は、ミトコンドリア脳筋症について。「Mancuso M, et al. MERRF syndrome without ragged-red fibers: The need for molecular diagnosis. Biochem Biophys Res Commun 354: 1058-1060, 2007」を紹介しました。病理でRRFが得られないと、なかなかMERFFの診断は難しいかもしれませんが、遺伝子検査の有用性が示されました。

I先生は、ベーチェット病と頭痛について検討しました。示した論文は「Saip Sabahattin, et al. Headache in Behcet syndrome. Headache 45: 911-919, 2005」です。このような血管炎では、しばしば頭痛を経験しますが、それを研究した論文です。

私は、頭痛を伴わない片頭痛前兆について調べました。初めてこの疾患を見たとき、「これは一体何なのだろう?」とかなりとまどった記憶があります。「ギザギザと光ったものが短時間見えた」と訴える患者が外来に来院し、判断に困ったため、指導医に相談し、この疾患だと知りました。時々外来で見かけます。

以下、内容を紹介します。

頭痛を伴わない片頭痛前兆 (Migraine aura without headache (MAWOH))

(定義)
 前兆の定義「”a recurrent disorder manifesting in attacks of reversible focal neurological symptom that usually develop gradually over 5 to 20 minutes and last for less than 60 minutes.“ (通常 5-20分以上かけて徐々に広がり、60分以内に消失する可逆的な局所神経症状の発作を呈する再発する障害)」
 Migraine aura without headacheは「migraine equivalents」や「acephalgic migraine」という用語として受け入れられています。片頭痛前兆のような症状はあるが、頭痛がないものです。

(疫学)
-頻度-
 Framingham studyでは、片頭痛様の視覚症状を高齢者の 1-2%に認めました。77%は 50歳を越えてから初めて起こしたもので、42%には片頭痛の病歴がありませんでした。
 Mattson and Lundbergは、頭痛を伴わない視覚障害を片頭痛女性の 37%、一般人女性の 13%に認めました。
 Ziegler and Hassaneinは、前兆を伴う片頭痛患者の 44%は MAWOHを経験したことがあるとしました。
 Alvarez and Jensenらは片頭痛前兆の20%以上で頭痛を伴わないかもしれないとしました。
 Fisherは、片頭痛前兆に似た一過性のエピソードを伴う 40歳以上の患者で最も多いのは視覚症状で、視覚症状以外の神経症状を示すのが 20%としました。

-年齢-
 O’Connor and Trediciは比較的若い Air Force flying personnelの男性 61例中 45例 (87%) の MAWOH発症が40歳以前だったと報告しました。
 Hedgesらは、43例中 7例 (12%) の 5-30歳、18例 (42%) の30-50歳、18例 (42%) の 50-80歳の MAWOH患者を報告した。
 これらをまとめると、5歳から 70歳代いずれでも起こり得ます。Kunkel RSらは高齢者に多いとしています。

-性差-
 いくつかのスタディでは男性の方が起こりやすいとしていますが、Amos JFらの検討では、性差はないとしています。

-既往歴・家族歴-
 既往歴・家族歴があることが多いのですが、O’Connor ande Trediciは片頭痛の家族歴のある例が61例中15例 (24.5%) に過ぎなかったとしています。

(原因)
 不明です。

(トリガー)
 片頭痛と同様かもしれませんが、よくわかっていません。

(前兆)
-視覚前兆-
 前兆の中で視覚前兆が99%を占め、他の前兆を合併することもあります。
 視覚前兆で最も一般的なのが、photopsia (光視症) です。Teichopsia (閃輝暗点) も診断的意義があります。他の一般的な症状として、scotoma (暗点)、visual distortion (視覚のゆがみ)、blurring (ぶれ)、hemianopsia (半盲) があります。典型的な視覚前兆は、静止せず、強くなったり、視野を横切って動いたりするものです。これが一過性脳虚血発作 (TIA) との鑑別になるかもしれません。
 片頭痛の視覚前兆は通常明るく見えます。暗点ですら、周囲が光っています。暗く欠損するのはTIAを示唆します。
 片頭痛の視覚前兆は通常 15-30分続きます。TIAの視覚前兆は通常もっと短い (3-10分) 。部分てんかんも通常もっと短く5分以内です。もし視覚前兆が 60分を越え、繰り返すなら、網膜疾患、反復する塞栓、凝固異常症、血管炎を考える必要があります。
 片側性の場合は診断が困難で、単眼の障害では、網膜疾患や頸動脈の虚血を考えるべきです。Ocular migraineは retinal migraineとしても知られ、非常に稀であるが、単眼の視覚症状の原因となります。

-Neurological symptoms-
・Neurosensory symptoms: numbness (しびれ)、tingling (チクチク)、paresthesia (錯感覚)が最も一般的です。指から始まり、手、腕へと広がります。数分かけて広がり、顔や対側に達するかもしれません。舌のしびれのエピソードは、最も片頭痛を疑わせます。
・Mild weakness of the limbs: 手と腕が最も侵されます。片頭痛では症状が最初に出た部位から症状が消失していくが、TIAでは最後に消失します。
・Total global amnesia (TGA)
・Speech disturbances
・Vertigo: 聴力や前庭の異常は伴いません
・Confusion: 特に小児で見られます

(鑑別)
TIAs, Retinal disease, Partial seizures, Recurrent emboli to the brain

(検査)
MRI: 脳梗塞や腫瘍の除外
MRA, vascular ultrasonography: 血管狭窄の評価
Electroencephalography: てんかんの除外
Laboratory test: 血管炎の除外

(治療)
 頻繁な発作でなければ治療は不要。
 Isoproterenol; 吸入 βagonistで、auraを短くします
 Vsodilators: auraは脳虚血よりむしろ spreading neuronal depressionと考えられるので、血管拡張以外の作用もあると考えられます。片頭痛の治療として有用だが、時々頭痛を悪化させます。nitroglycerine舌下や nifedipineなどが使われます。
 Rapid-acting nonsteroidal anti-inflammatory drugs: meclofenamateや naproxenは時々症状の持続時間を短くします。
 Triptanは使用すべきではありません。経口トリプタンは前兆の間に効果があるほど速く効きません。高齢者は高血圧や心疾患のリスクファクターがあるかもしれないので、血管を締める作用のあるトリプタンは使用しない方が良いと考えます。

(参考文献)
・Kunkel RS. Migraine aura without headache: Benign, but a diagnosis of exclusion. Cleve Clin J Med 72: 529-534, 2005
・Amos JF, et al. Clinical description and review of migraine aura without headache. Optometry 71: 372-380, 2000


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