Dabigatranと情報の隠蔽

By , 2014年7月26日 9:23 PM

心房細動のある患者の脳梗塞予防には、以前はワーファリンが使用されていました。というか、内服での抗凝固療法では、他に選択肢がありませんでした。しかし、採血で INRを測定しながら用量調節する必要があり、薬剤相互作用や食品の影響を受けるなど使いにくく、効きすぎて出血したり、効かなさすぎて脳梗塞を発症したりということもよく見かけました。 そこで登場したのが、新規抗凝固薬 (NOACs) です。用量調節が簡単で、薬剤相互作用や食品の影響を受けにくい、効果発現が速い、やめると速やかに効果が切れる、ワルファリンと効果がほぼ同等で出血性合併症が少ない、などの理由で急速に普及しました。その先陣を切った薬剤が dabigatran, 商品名プラザキサです。その後、rivaroxaban (イグザレルト)、apixaban (エリキュース) が発売されました。腎障害、高齢、低体重などで出血性合併症のリスクが高くはなるものの、その点を留意して選択すれば、ワルファリンに比べて圧倒的に使いやすい薬剤です。

NOACsは市場が大きいため、製薬会社による販売活動が非常な盛んな分野です。少しでも他社製品に差をつけようと、各社しのぎを削っています。そんな中、2014年7月23日の British Medical Journal (BMJ) に衝撃的な特集記事が組まれました。

Dabigatran: how the drug company withheld important analyses

Concerns over data in key dabigatran trial

Dabigatran, bleeding, and the regulators

The trouble with dabigatran

BMJの言い分は、「もし採血で薬剤の血漿レベルを監視して使用することにしていれば、もっと出血性合併症を減らせたのに、製薬会社がその事実を隠していた (dabigatranの血中濃度が 200 ng/mlを超えると危険らしい)」というものです。Boehringer社は、「ワルファリンと違って採血不要」を宣伝文句にしていました。販売戦略のために、副作用を軽減しうる投与法を隠していた可能性が指摘されています。また、pahse IIIの RE-LY試験が open labelだったことが、バイアスにつながっている可能性にも触れられていました。

個人的な使用経験や臨床試験の結果を見た感じでは、dabigatranをこれまでどおり使用しても、少なくともワルファリンより効果や安全性が劣ることはないとは思います。しかし、最善の使用法が製薬会社により意図的に隠されていたことで、dabigatranのイメージダウンは免れません。

少数例ではあっても rivaroxabanで間質性肺炎が問題になっていること (ただし稀)、AHA/ASAによる stroke guidelineで示された evidence level、今回の BMJの特集記事から、NOACsの中では apixabanが選ばれやすくなっているのかもしれません。


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