Parkinson病と末梢神経障害

By , 2014年9月29日 1:12 午前

Journal of Neurology Neurosurgery Psychiatry (JNNP) 誌に興味深い総説が掲載されました (2014年8月28日 online published)。Parkinson病治療薬である L-dopaの十二指腸持続投与と末梢神経障害についてです。

Polyneuropathy associated with duodenal infusion of levodopa in Parkinson’s disease: features, pathogenesis and management

背景:過去いくつかの研究で、Parkinson病患者にはポリニューロパチー (多発神経障害; polyneuropathy)  が多いとされている。ポリニューロパチーを有する割合は、パーキンソン病患者で 38-55%と、コントロール群 8-9%に比べて多く、年齢、ビタミンB12低値、高ホモシステイン血症、メチルマロン酸レベルに比例する。ポリニューロパチーは L-dopa投与を受けていないパーキンソン病患者でも 5-12%に見られるが、マイスナー小体の脱落は治療患者にしかみられない。最近の研究では、病期の長さや重症度ではなく、L-dopaの投与期間においてポリニューロパチーとの強い関連が示唆されている。これまでの研究は、主に中等量の L-dopa摂取による慢性、軽度、感覚優位の神経障害を中心に行なわれてきた。一方で、L-dopaの十二指腸持続投与を受けた患者において、Guillain-Barre症候群に似た重篤な急性/亜急性ポリニューロパチーが報告されている。

方法:文献を検索し、レビューした。急性は 4週間以内、亜急性は 4~8週間以内に障害のピークがあるものと定義した。

結果:全体として、L-dopa十二指腸持続投与を受けた 14名が急性ポリニューロパチー、21名が亜急性ポリニューロパチーを発症した。少なくとも 9名の患者を含む研究では、急性ないし亜急性のポリニューロパチーの平均発症頻度は 13.6%だった。1名を除き、L-Dopa投与前に全員神経障害の症状はなかった。L-Dopa投与量は 1100-3800 mg/dayであり、発症までの治療期間は数週間から 29ヶ月の間だった。

【先行感染】急性ポリニューロパチーの 4名、亜急性ポリニューロパチーの 14名では先行感染は明確になかったと記されている。

【臨床的特徴】 Guillain-Barre症候群、急性炎症性ニューロパチー、急性感覚運動性ポリニューロパチーとして矛盾しないように思われる。

【検査所見】急性ポリニューロパチーの患者では、7名中 2名でビタミンB12, 6名中 5名で葉酸が低下し、9名中 6名でホモシステイン, 2名中 2名でメチルマロン酸が高値であった。亜急性ポリニューロパチーの患者では、10名中 3名でビタミンB12, 3名中 2名で葉酸、7名中 7名でビタミン B6が低下し、6名中 5例でホモシステイン, 3名中 1名でメチルマロン酸が高値であった。急性ポリニューロパチー 5名、亜急性ポリニューロパチー 4名では、抗ガングリオシド抗体は陰性であった。亜急性ポリニューロパチーの 2名では抗ガングリオシド抗体が陽性であったが、Ig isotypeや抗体価は示されていない。

【電気生理学的所見】急性ポリニューロパチー患者 6名で重篤な軸索性感覚運動障害が示された。4名では、軸索性と脱髄性の混合パターンだった。亜急性ポリニューロパチーでは、16名に軽度から重度の軸索性感覚運動ポリニューロパチーがみられた。2名では軸索性と脱髄性の混合パターンだった。1名に伝導ブロックがみられた。

【神経生検】急性ポリニューロパチー患者 2名のうち 1名では軽度の炎症浸潤を伴った軸索変性がみられた。亜急性ポリニューロパチー患者 2名では、有髄線維密度の減少と神経内膜浮腫がみられたが、炎症細胞浸潤や炎症性ニューロパチーを示唆する所見はなかった。

【治療と予後】急性ポリニューロパチー患者の大部分は、L-dopa十二指腸持続投与が中止された。7名が血漿交換、IVIgないしステロイドで治療され、2名で何らかの効果があった。4名はビタミン投与のみが行なわれ、1名は急速に改善、1名は何らかの効果があり、2名はそれ以上悪化しなかった。3-6ヶ月後に 2名が死亡した。亜急性ポリニューロパチー患者のうちビタミンB12/ホモシステイン/葉酸異常があった 10名はビタミン投与のみが行なわれ、大部分は 3ヶ月以内に改善した。5名の患者では、ビタミン投与を行いながら L-Dopa十二指腸持続投与を続たが、症状は改善するか横這いかであり、悪化はなかった。抗ガングリオシド抗体陽性の亜急性ポリニューロパチー患者 2名に対する IVIgや血漿交換は、効果がなかった。これらの患者では、L-dopa十二指腸持続投与中止後に、改善がみられた。1名の患者では、ビタミンB12投与がされていたにも関わらず、亜急性ポリニューロパチーを発症した。ビタミンB12値は正常範囲内だったが、ホモシステインやメチルマロン酸は測定されていなかった。

【L-Dopa経口投与中の急性ポリニューロパチー】

L-dopa高用量内服中の急性感覚失調性ニューロパチーが 2名報告されている。両者ともビタミンB12は正常範囲内だったが、ホモシステインやメチルマロン酸は測定されていない。1名に対して行なわれた IVIgは効果がなかった。1名は特別な治療を受けず、9年以上かけて悪化した。

【L-dopa十二指腸持続投与中の慢性ポリニューロパチー】L-dopa十二指腸持続投与を受けた 15名のうち11名に軽度から中等度の遠位部感覚低下があり、6名は日常生活に支障のある強い神経痛がみられた。電気生理学的な異常は、L-dopa投与量および治療開始からの体重減少に相関があった。

考察:L-dopa十二指腸持続投与で末梢神経障害が起きる理由は完全にはわかっていないが、著者らは 1-carbon pathwayの関与を疑っている (論文 Figure 1)。

(1) L-Dopaから Dopamineと 3-O-methyldopaが作られる過程で CH3が必要になる。これには、S-adenosyl-methionineから S-adenosyl-homocysteineが生成される過程で生じる CH3が使われる。

(2) 上記 S-adenosyl-methionine→ S-adenosyl-homocysteineの生成は “Methionie→S-adenosyl-methionine→S-adenosyl-homosysteine→Homocysteiene→Methionine” という経路の一部である。このうち、Homocysteine→Methionineでは、ビタミンB12が消費される。加えて、Homocysteineから Cysteineと Methylmalonic acid (メチルマロン酸) を生成する経路があり、ここでビタミンB6が消費される。

(3) L-dopaの代謝で CH3をたくさん必要とすれば、それだけ (2) の回路が多く回るので、ビタミンB12やビタミンB6の消費は多くなる。その結果、ビタミンB12欠乏やビタミンB6欠乏が起こり、末梢神経障害の原因となる。

この論文を読んで、L-dopaの十二指腸持続投与により Guillain-Barre症候群に似た末梢神経障害が生じるというのは初めて知りました。約 13.6%というのは結構な頻度だと思います。L-dopaとビタミンB12/B6の関係についても、非常に勉強になりました。

ちなみに、十二指腸持続投与に用いる薬剤 (ABT-SLV187) は、ヨーロッパではすでに発売されているようです。そして、clinical trials.govでチェックすると、日本と台湾で第三相試験が行なわれるところのようです (, )。いずれ日本でも発売されるようになるでしょうし、そうすれば目にかかることがありそうですので、知っておかないといけませんね。

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