アルツハイマー病の伝播

By , 2015年11月22日 8:19 AM

筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病では、最近 seed仮説というのが唱えられています。疾患の原因タンパク質がプリオンタンパクのように個体間や個体内で伝播し、正常なタンパク質を変性させていくもので、注目を集めています。

2015年9月9日の “Neurology Now” に恐ろしい事例が掲載されていました。

Researchers Find Alzheimer’s Proteins in the Brains of People Treated with Contaminated Human Growth Hormone

1985年以前には、ヒト成長ホルモンは人工合成でなく、死体の下垂体から抽出されていました。しかし、プリオンタンパクの混入があり、2000年までに 1848名中 38名がクロイツフェルト・ヤコブ病を発症しています。今回、このうち 8名の脳が調べられました。年齢は 36~51歳でした。すると、6名にアルツハイマー病にみられるようなアミロイドβの沈着がみられたのです。4名は広範囲であり、2名は斑状に分布していました。一方で、アルツハイマー病でみられる neurofibrillary tau gangleはみられませんでした。これらの患者には若年性アルツハイマー病の遺伝的背景はありませんでした。また、ヒト成長ホルモンの投与を受けていないクロイツフェルト・ヤコブ病でアミロイドβが検出された患者はいませんでした。

研究者らは、死体から抽出したヒト成長ホルモンの中に、プリオンタンパクと共に βアミロイド含まれており、それが伝播したのではないかと考えているようです。アミロイドは下垂体に凝集しやすいこと、アルツハイマー病で死亡した患者の脳組織をマウスに投与するとアルツハイマー病様の病理を呈することが知られていますが、それを支持するものです。

もし今回の報告が事実なら、アルツハイマー病の原因タンパク質である βアミロイドが seed仮説に従うという大きな根拠となりそうです。現在、別の研究機関で再現性を調べているらしく、結果を待ちたいと思います。

(参考)

ALSと臓器移植


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