銅と亜鉛と脊髄

By , 2015年11月23日 1:10 PM

栄養障害が原因の脊髄障害としては、ビタミンB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症が良く知られています。一方で、銅欠乏による脊髄障害も稀ながら知られています。

Neurology Clinical Practice誌の2015年8月号のに、銅欠乏による脊髄障害が報告されていることをアブストラクト・ジャーナルで知りました。。

Hypocupremia secondary to excessive zinc supplementation and gastric surgery

食道/胃部分切除の既往のある男性が、1年の経過で進行する歩行時のふらつきと四肢の末梢神経障害のため受診しました。後索障害を指摘され、Vit.B12、銅、セルロプラスミンが低値でした。ビタミンB12の補充では改善せず、銅の補充で改善しました。この患者はサプリメントとして亜鉛を 1日  80 mg内服していました。そして亜鉛の過剰摂取による銅の吸収阻害と推測されました。

亜鉛の過剰摂取で銅欠乏をきたすこともあるんですね。後索障害の時の問診には注意しなければいけないと思いました。

ちなみに、亜鉛含有の内服薬といえば胃薬のポラプレジンク (プロマック) が有名で、投与が簡単なので亜鉛欠乏のときにはよく処方しますが、こちらの亜鉛含有量は 1日 2回内服で 34 mgのようです。亜鉛欠乏のない患者にルーチンに投与するのは、多少リスクがあるのかもしれないと感じました。

なお、昔はポリグリップにも亜鉛が含有されており、それが原因の脊髄障害も報告されているようですが、2010年からは亜鉛を含有しないようにされているようです。

【GSK】亜鉛含有で「新ポリグリップEX」の販売を中止し自主回収

グラクソ・スミスクラインは4日、入れ歯安定剤「ポリグリップ」シリーズのうち、「新ポリグリップEX」(40g、70g)の販売を中止し、店頭から自主回収することを発表した。

同品には粘着性を高める目的で、亜鉛が含有されている。人体に必要な栄養素ではあるが、長年にわたって過剰に亜鉛を含有した入れ歯安定剤を使用することで、亜鉛の過剰摂取による貧血や神経症状を起こすことが、最近の文献で報告されている。

定められた使用方法(1日1回3cmまで)に基づき使用する限りは、安全性に問題がないものの、中には長期間にわたって過剰に使用するケースもあることを踏まえ、「健康被害への潜在的なリスクを最小化することを最優先し、予防的な措置として販売の中止を決めた」(同社)としている。

なお、入れ歯安定剤で亜鉛を使用していない「新ポリグリップ無添加」「新ポリグリップS」「ポリグリップパウダー無添加」「ポリデント入れ歯安定剤」については、従来通り継続して販売する。今後、これら製品群には亜鉛を含んでいないことを、パッケージに表記していくという。

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