大規模出生コホート研究

By , 2015年2月28日 9:50 AM

イギリスでは、1946年以降大規模な出生コホート研究を繰り返し行って、政策に活かしています。以前、こうした大規模出生コホート研究の一つ、1970年コホートで興味深いデータを見ました。

How early can we predict future educational achievement?

Feinstein

Feinstein

生後 22ヶ月時に認知的発達指標を測定し、次の群を解析しました。

A: 好成績。親が裕福/高学歴。
B: 好成績。親が裕福/高学歴でない。
C: 低成績。親が裕福/高学歴。
D: 低成績。親が裕福/高学歴でない。

生後 22ヶ月の時点での認知的発達指標の点数は、A=B>C=Dですが、42ヶ月の時点では、明瞭に A>B>C>Dとなります。そして 76ヶ月頃 BとCがクロスし、10歳時には A>C>B>Dとなります。

後に行なわれた言語スコアを用いた研究 (Chapter 9 of Children in the 21st century: birth to age 5 by Blanden&Machin, The Policy Press, Bristol, 2010) でも似た傾向が確認されているそうです。

ピケティは、「資本収益率 (r) と経済成長率 (g) について g>rという関係がある。すなわち格差は拡大しやすい」という説を提唱して現在話題になっていますが、上記の出生コホート研究は、教育においても格差は拡大しやすいことを示していると言えるのかもしれません。

このように、出生コホート研究は色々と興味深い情報を与えてくれます。2015年2月24日の Nature Newsによると、イギリスはさらに 80000人規模の出生コホートを新たに行うそうです。さすがイギリスといったところです。

Wanted: 80,000 British babies for massive study


認知症と生きるということ

By , 2015年2月26日 7:09 PM

認知症と生きるということ (岩田誠著、日本評論社)」を読み終えました。

認知症について、症候や病理学的な内容の教科書は沢山あります。しかし、患者さんの個々の症状をどう捉えるか、どのように介護したらよいかを教えてくれる本はあまりありません。本書は豊富な実例を通してそれを教えてくれます。実際に認知症の患者さんと真摯に向かい合ってきた医師にしか書けない本だと思います。

実際に認知症の患者さんを介護されている方や、介護者にアドヴァイスする立場の医療従事者に、是非読んで頂きたい本です。


Neurological complications of cardiac surgery

By , 2015年2月24日 10:06 PM

心臓血管外科のある病院で働いていると、心臓手術の合併症としての脳梗塞に遭遇することがたまにあります。脳卒中自体は普段の診療で慣れていても、心臓手術に合併した脳卒中について勉強したことはありませんでした。2014年4月2日に Published onlineとなった Lancet neurologyの総説がよく纏まっています。

Neurological complications of cardiac surgery

・Management of perioperative risk for ischemic stroke

<Assessment of risk (stroke)>

周術期の脳卒中リスクは、①弁置換 (短期間のリスク) 大動脈弁 4.8%, 僧帽弁 8.8%, 複数弁 9.7%, ②CABG CABG単独 3.8%, CABG+弁手術 7.4%, CABG後脳卒中 1-5% (ただし糖尿病があると 5年間で 5.2%)

<Planning of interventions for coronary artery disease: CABG versus PCI>

CABGと PCIの合併症を比較した 3つの臨床試験がある。

①SYNTAX trial (3-vessel disease or left main disease): 脳卒中は CABG>PCI (drug-eluting stent), 心血管+脳血管イベントは PCI (drug-eluting stent)>CABG

②FREEDOM trial (diabetes and multivessel coronary disease): 脳卒中 CABG (5.2%)>PCI (2.4%),5年後のエンドポイントにおける死亡・脳卒中・心筋梗塞は PCI>CABG

③ASCENT study: 4年間の死亡率 PCI>CABG, 脳卒中は不明

→Meta-analysis: benefitは CABG>PCI, ただし個々の症例に応じて判断されるべき

<Off-pump surgery versus cardiopulmonary bypass>

手術 30日後の脳卒中や死亡は、on-pump=off-pump (systematic review)

そのほかいくつかの研究で、 stroke rate, neurocognitive outcome, composite outcome (mortality含む) で on-pumpと off-pumpの差はない。

→人工心肺そのものは stroke riskではない

<Pharmacological therapies to reduce risk>

心臓手術では、術前か術後 6ヶ月以内にアスピリンを開始するのが一般的。Revascularisationの 48時間以内にアスピリンを開始した場合、周術期の stroke riskは 2.6%→1.3%に低下する。

2013年の meta-analysisでは、CABGに対する statinの使用は、心房細動、病院滞在期間、stroke, 死亡を減少する (2012年の Cochrane reviewではstroke, 死亡は減少しない)。

→周術期の strokeと非神経的学的合併症を減らすためstatinを投与すべき (class 1, level A)

<Atrial fibrillation>

CABG後、約半数の患者に心房細動が起こる (術後 2日目が最も多い, 2011ACCF/AHA Guideline)。術前の心房細動は、術後早期と晩期の stroke riskとなる。術後心房細動は、術後晩期の stroke riskとなる。

心房細動予防には、posterior pericardiotomyや薬物治療などがある。β-blockerが class I, level Bであり、amiodaroneが第二選択である。Metoprorol, sotalol, magnesium, amiodarone, statin, atrial pacing, posterior pericardiotomyは全て心房細動を減らすが、strokeは減らさない。

その他、左心耳に対する様々な実験的アプローチが行なわれている。

<Occlusive cerebrovascular disease>

脳動脈硬化の合併は心臓手術患者の脳卒中リスクを上げる。頸動脈の 50-99%狭窄もしくは閉塞があると、周術期脳卒中リスクは 7.4%になる (meta-analysis)。そのうち、症候性もしくは頸動脈閉塞を除くと脳卒中リスクは 3.8%になる。

2011ACCF/AHA guidelineでは、頸動脈狭窄患者への術前の総合的評価 (class I, level C)、ハイリスク患者への頸動脈超音波検査 (class IIa, level C)、症候性頸動脈疾患患者に対する頸動脈及び冠動脈血行再建術の組み合わせ (class IIa, level C) を推奨している。脳卒中の既往がない両側高度狭窄、もしくは片側の高度狭窄と対側の閉塞がある無症候性患者は、頸動脈血行再建術を考慮されるかもしれない (class II, level C)。

<Aortic valve surgery>

経カテーテル的大動脈弁置換術と開胸大動脈弁置換術比較した PARTNER trialが行われた。死亡率は約25% (1 year), 35% (2 year) だった。

all TIA/stroke (2 year) 経カテーテル的大動脈弁置換術 11.2%, 開胸大動脈弁置換術 6.5%

only stroke (1 year) 経カテーテル的大動脈弁置換術 6.0%, 開胸大動脈弁置換術 3.2%

・Intraoperative management to minimize stroke

<Optimisation of blood pressure>

術中の平均動脈圧を 80 mmHg以上に保つと神経学的合併症の減らせるかもしれない。

<Intraoperative cerebral monitoring>

持続的に脳血流をモニタリングすることはできないので、さまざまなもので代用されている。脳波は広範にモニターできるが、局所の虚血を検出できないのと、術中の低体温の影響を受ける。脳波の他には、近赤外線分光法などの方法がある。

<Hypothermic versus normothermic cardiopulmonary>

人工心肺中の低体温療法による脳卒中予防効果は証明されていない。急速な復温は脳損傷のリスクになるかもしれないので、緩徐な復温が推奨される。

<Transoesophageal echocardiography and epiaortic ultrasound>

経大動脈壁エコーは、徒手触診法や経食道心臓超音波検査より動脈硬化の評価に有用である。経大動脈壁エコーは、大動脈のアテローマを検出する直感的方法として class II, level Bとされているが、神経学的予後を改善するかどうかの研究はほとんど行なわれていない。

<Neuraxial analgesia>

硬膜外麻酔は、心臓手術中の上室性不整脈や呼吸器合併症を減らすが、神経認知的合併症を減らさなかった (meta-analysis)。最も大きなRCTでは効果を示せなかった。結局、人工心肺中に高用量のヘパリンを用いる心臓手術では血腫形成のリスクもあり、稀にしか用いられない。

<Haemodilution and transfusion>

かつては輸血による合併症の防止の為、極端な術中血液希釈 (Hct<18%) が行なわれていたが、脳卒中や術後認知機能障害が増加したので一般的には行なわれなくなった。

TRACS trialでは、Hct 24%以上と 30%以上での神経学的合併症は有意差がなかった。胸部外科学会のガイドラインでは、人工心肺使用時ヘモグロビン 6 g/dl以上、術後ヘモグロビン 7 g/dl、臨床的な必要に応じて個別に調整して用いるように推奨している。

<Glycaemic control>

術中の高血糖は脳卒中を含む予後不良と相関する。ただし、術中の厳格な血糖コントロールが神経学的な予後を改善するわけではなく、低血糖や死亡率が増えるので、術中術後の血糖値はせいぜい 9.99 mmol/l以下で維持することが推奨される。

・Treatment of acute ischemic stroke in the perioperative setting

Strokeガイドラインは、大手術から 14日以内の全身性血栓溶解療法 (アルテプラーゼなど) を認めていない。

<Clot or embolus extraction>

血栓除去機器は、Merci Retriever, Penumbra System, Trevo, Provue Retriever, Solitaire Deviceが FDAから認可されている。これらの治療は発症から 8時間以内に遂行されなければならない。SWIFT trialの結果、Solitaire stent retrieverは helical Merci deviceよりも血栓除去や神経学的予後において優れていた。また、TREVO2 studyでは、Trevo Pro stentは Merci retrieverよりも再開通率が優れていた。Stent retriever deviceは helical deviceより優れているようだ。

血栓除去療法では全身麻酔が好んで用いられるが、急性期脳梗塞治療時の全身麻酔は予後悪化と関連している。これはおそらく脳還流低下 (収縮期血圧 140 mmHg未満) によるものかもしれない。

・Therapeutic hypothermia for global hypoxic-ischaemic cerebral injury

人工心肺や急性期脳梗塞での低体温療法では証明されていないが、院外心肺停止後での治療には強いエビデンスがある。多くの施設では深部体温 32-34℃, 24時間を目標にしている。33℃の低体温と 36℃での通常温管理では、死亡や神経学的予後に差がなかったとする研究もあるが、このような患者ではどちらの体温を選ぶにせよ体温管理が必要であり続けることははっきりしている。

・Neurocognitive complications: delirium and cognitive decline

周術期予後は改善されてきたが、幻覚や認知機能障害といった術後合併症はいまだに一般的にみられ、半数以上の患者に影響を与えうる。

<Postoperative delirium>

術後幻覚は、高齢、女性、低教育歴、認知機能スコア低値、高共存疾患指数の患者で起こりやすい。MMSEは、術後 2日目で著明に低下し、3~5日目に上昇してくる。最初の半年間でゆるやかに改善し、6~12ヶ月で安定する。術後幻覚のない患者は術後 1ヶ月以内に認知機能がベースラインに戻るが、術後幻覚があると 1年でももとに戻らない。術後幻覚は、死亡率上昇、認知機能低下、QOL低下と関係している。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬のリバスチグミンは、幻覚を予防せず、死亡率を上昇させた。精神安定剤による予防は有効である。リスペリドンは、亜症候性幻覚がはっきりとした幻覚になるのを抑制した。人工呼吸器患者へのプロポフォールも幻覚を減らす。

<Postoperative cognitive decline>

術後認知機能障害にはいくつかの議論がある。

  1. 異なった研究で異なったスコア閾値を用いている
  2. 術後認知機能障害というのは臨床診断ではなく、正式な高次脳機能検査をしないと診断できない。
  3. いくつかの研究では、手術を受けていないコントロール患者との比較がなされておらず、手術を受けなくても認知機能が落ちていた可能性がある。

<Mechanisms of neurocognitive injury>

遺伝子/タンパク質解析:CRP, P-selectinの遺伝子多型あり。APOE4の遺伝子多型は予測因子ではなかった。

髄液:S100β, tau, amyloid βとの関連がある

MRI:拡散強調像で多発微小塞栓がみられる。いわゆる無症候性脳卒中は 70%の患者にみられるが、これらの所見は臨床的脳卒中や認知機能低下と関連はなさそうである。心臓手術を別として、脳還流の低下と認知機能障害には関係があるようだ。

結構奥深い分野なのだなと思いました。心臓血管外科医と神経内科医の狭間の領域で、あまりお互いが手を出していない分野なのかもしれません。特に、術後の認知症の分野などは、まだ未知のことが多くあるように思います。


帰国

By , 2015年2月22日 7:08 PM

帰国しました。

ヒースロー空港でワークショップ担当者からメールが届き、ワークショップ参加自体は規則上できないにしても、それなりの便宜を図って貰えて、幸運なことに手ぶらで帰ることにはなりませんでした。

そしてロンドンでは、目的であったハンテリアン博物館に行くことができました。

行きの機内で恐らくノロウイルスと思われる発熱、腹痛に襲われたり、予約したバーミンガム行きの電車に乗れず、電車やバスを乗り継ぐことになったり、トラブルはありましたが、楽しい旅行でした。

いつになるかわかりませんが、また旅行記を書きたいと思います (既に 2年分溜めている・・・)。


ドタバタ Birmingham旅行の序

By , 2015年2月18日 3:30 AM

2015年2月19日、イギリスの Birminghamで行なわれるワークショップに参加するつもりでした。しかし、参加できない事態に陥っていることに、出発する日に気付きました。

経緯

①2015年1~3月に毎月やっているワークショップに 2014年11月に申し込む。

②担当者から「お前、日本から毎月来るのは大変だろう。1月分は受ける必要がない、2月分は受け付けた。出来るだけ少ない回数で済むように調整する。追って連絡する」とメール

③12月19日に問い合わせメールすると、「クリスマス/正月休暇に入るから、1月6日まで対応できない」と自動返信 (I work 3 days per week.  In addition, I shall be absent during the Christmas & New Year “shut-down”.  I shall next be in the office on Tuesday 6th January.)

④2015年1月20日に相手が「最近 “overseas visitor visa & credentials checking procedure” が導入されて、大学でワークショップを受けるための手続きに 3ヶ月かかる。だから今回は来るな。7月の連続 3日間にするか、オンラインにするか、選んでくれ」とメール→spam filterで気付かなかった上、spam box内のメールを全削除

⑤2月17日に私が「場所とか時間の詳細を教えてください」とメール

⑥相手が「1月20日にメールしているぞ。その時のメール内容について、PDFファイルを添付するよ」とメール→spam filterへ

⑦旅立つ直前になっても連絡がないので、焦って spam filterをチェックし、2月17日のメールに気付く。1月20日のメール内容も知る。

せっかく、航空券、ホテル、コンサートを予約しているので、旅行してこようと思います。どちらにしても、貰ったメールが 1月20日だったので、ワークショップ 1ヶ月前を過ぎていますから航空券を予約していました。

職場には、有給休暇を使う旨を伝えました (外来は全て閉じてありました)。もともと全額自腹の予定だったので、金銭的な問題もありません。

ということで、公用の旅行が急遽観光旅行に変わりました。

以下、旅程です。

2月18日 (水) 9時45分羽田空港発 BA008 → 2月18日 13時20分ヒースロー空港着 ヒースロー空港→Marylebone駅 (約1時間) 15時15分Marylebone駅発→17時2分 Birmingham Snow Hill着

2月19日 (木) ワークショップ Birmingham観光, コンサート

2月20日 (金) 11時10分Birmingham New Street駅発→12時34分London Euston駅着, ハンテリアン博物館, コンサート

2月21日 (土) Euston駅→ヒースロー空港 (約1時間) 12時55分ヒースロー空港発 BA005 → 2月22日 9時35分成田空港着

個人的には、ハンテリアン博物館が一番楽しみです。


Adult polyglucosan body disease

By , 2015年2月17日 5:48 AM

2014年2月9日の JAMA neurologyに adult polyglucosan body disease (APBD) の遺伝子について論文が掲載されていました。

Deep Intronic GBE1 Mutation in Manifesting Heterozygous Patients With Adult Polyglucosan Body Disease

APBDは 50歳以降に、脊髄障害や末梢神経障害に起因する進行性の錐体路性四肢麻痺、遠位優位の感覚障害、神経因性膀胱、歩行障害を呈する疾患である。多くの患者はアシュケナージ系ユダヤ人で、glycogen branching enzyme gene (GBE1) p.Y329Sのホモ接合変異がある。一部の患者では、p.Y329Sと p.L224Pのヘテロ接合変異を合併している。30%の患者では、p.Y329Sのヘテロ接合変異のみで発症する。なぜ、このヘテロ接合変異のみで発症するのか、著者らは遺伝学的検索を行った。

16名のヘテロ接合の APBD患者を調べたところ、全例でグリコーゲン分岐鎖酵素活性がホモ接合 APBD患者より低下していることがわかった。これは、正常なはずの対立遺伝子が機能していないことを示している。

著者らが GBE1の mRNAの解析を行ったところ、全ての患者に c.986A>Cのホモ接合変異があり、もう一方の対立遺伝子 (正常であるはずの対立遺伝子) では mRNAを完全に欠いていることがわかった。さらに詳しく調べると、その対立遺伝子のイントロン領域には GBE1-IVS15 + 5289_5297delGTGTGGTGGinsTGTTTTTTACATGACAGGT変異があり、これが遺伝子トラップを形成し、異所性の last exonを形成していることがわかった。このため、mRNA転写産物は exon16と 3’非翻訳領域が機能せず、異常な GBEをコードしてしまい、酵素活性が 18%から 8%に低下している。

今回の研究で、ヘテロ接合変異の患者が何故 APBDを発症するかわかり、ひと通り遺伝学的な説明がついたと言えます。この研究でもそうですが、神経疾患でイントロン領域というのはホットな分野ですね。ALSでの C9orf72とか、SCA36での NOP56とか、様々なことがわかってきています。

APBDはユダヤ人に多く、一生診ることのない疾患かもしれませんが、神経内科医の教養として知っておきたいと思います。臨床所見は、下記のブログがまとまっています。

Adult polyglucosan body disease という病気が、ある。

 


ピアノ

By , 2015年2月16日 8:47 AM

福島県への転居に向けて、物件を探しています。ところが楽器可の物件はほとんどありません。物件探しに支障が出てきたので、ピアノを処分することにしました。YAMAHAの UX100 (5338987) です。

ところが、このピアノは知人から「大事にしてくれそうな人に譲りたい」といって、安く売って頂いたものです。ピアノ業者に売って、行方がわからなくなってしまうことに抵抗がありました。

困っていたところ、この春結婚する馬券オヤジ氏が買ってくれると言ってくれました。夏頃に新居が建て上がったら置いてくれるそうです。

共立ラインサービスによる運送、保管の見積もりは下記となりました。東京から岡山県だと結構な運送料になりますが、事情が事情だけに仕方のないところです。それよりも、ピアノの行き先が決まってホッとしています。

運送料(お預り)          20,000
特殊作業料(9FEV)       3,000
保管料(4ヶ月分)         24,000
運送料(戻し)           65,000
消費税(8%)             8,960
合計               ¥120,960(税込)

発疹性の薬疹

By , 2015年2月15日 6:29 PM

神経内科医は、抗てんかん薬を良く使います。処方する時、頭の片隅をよぎるのは皮疹のことです。つい最近も、ゾニサミドで SJS-TEN (Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis) を発症した方を経験しました。

薬疹については勉強しておかないとと思っていたら、総合診療の研究会で、急性全身性発疹性膿疱症 (acute generalized exanthematous pustulosis; AGEP) について学ぶ機会がありました。その時に引用されていた New England Journal of Medicineの論文が素晴らしいと思ったので、読んでみました。

Exanthematous Drug Eruptions

・発疹性の薬疹 (Exanthematous Drug Eruptions) は、麻疹様 (morbilliform) や丘疹性 (maculopapular) 皮疹とも呼ばれ、多くの薬剤で初回使用の 1~5%の患者に起こる。ペニシリン、セファロスポリン、スルフォンアミドといった抗菌薬や、アロプリノールでは 1000人の新規投与で 50名、カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギンといった芳香族アミンの抗てんかん薬では 1000人の新規投与で 100人発症する。

・皮疹は、典型的には原因薬剤を投与した 4~21日に出現し、急速に拡大し、時に癒合する、左右対称性で、ピンク~紅色斑/丘疹である。

・HIV感染や骨髄抑制ではリスクが増す。また、ある種の感染症がリスクとなる場合があり、伝染性単核球症でアミノペニシリンを用いると、高率に皮疹が出現する。また、HLA alleleも関与しており、例えばカルバマゼピンでは HLA-A3101は丘疹性発疹のリスクを高めると言われている。

・似たような皮疹が出現する疾患に、麻疹、風疹、突発性発疹、感染性紅斑、伝染性単核球症、急性 GVHD, 急性 HIV, その他のウイルス性発疹がある (Table 1に鑑別のポイントあり)。

・原因薬剤を中止することが最も大事である。対症的に痒み止めを用いたり、強力なステロイド薬の塗布も有効かもしれない。SJS-TENでは、ステロイドやシクロスポリンの全身投与で死亡率が低下したという研究がある。

・臨床医が注意するべき重篤な皮膚反応には、粘膜浸潤、38.5℃以上の発熱、水疱形成、顔面の浮腫と紅斑、リンパ節腫脹が含まれる。

・SJS-TEN, AGEP, DRESS (drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms) は T細胞が介在する type IVの遅発性過敏反応である。

DRESS, SJS-TEN, AGEPを鑑別する表を最後に紹介しておきます。初回薬剤暴露から皮疹が出現するまでの間隔の目安として、DRESSは 14日以上、SJS-TENは 4~21日、AGEPは 3日以内なんですね。その他の鑑別点についても、勉強になりました。

 

Features of selected severe cutaneous adverse reactions to drugs

Features of selected severe cutaneous adverse reactions to drugs


Posterior Cortical Atrophy

By , 2015年2月14日 1:30 PM

Posterior Cortical Atrophy (PCA) は、私にとってある思い出の疾患です。というのも、初めて英語の紹介状を書いたのが、この疾患の患者さんだったからです。

英語の紹介状

最近の JAMA neurologyに、PCAの新規遺伝子変異が報告されました。 (2014.12.29 online published)。

Posterior Cortical Atrophy as an Extreme Phenotype of GRN Mutations

背景:PCAは、後頭葉視覚野、側頭後頭葉、両側頭頂葉が障害される、稀な神経変性症候群である。進行性の視覚や視覚運動の高度障害を呈する。背側路障害と腹側路障害のサブタイプがある。原因となる疾患はアルツハイマー病の亜型が多いが、レヴィー小体型認知症、皮質基底核変性症、プリオン病、皮質下グリオーシスも知られている。これまで、PSEN1, PRNP, IT15遺伝子の変異が報告されているが、遺伝学的な背景はよくわかっていない。

方法:症例は 58歳時に視力障害を発症した男性 (individual 004)。形態認知障害はあったが、色覚認知は正常であった。4年後、視覚認知障害優位であるものの、記憶障害も出現した。その後、アパシーや固執行動がみられるようになった。MRIでは、当初は後頭葉を中心とした萎縮が目立ったが、後には著明なびまん性脳萎縮がみられた。男性の兄弟の一人 (indivisual 005) は大脳皮質基底核症候群 (corticobasal syndrome) であり、片親はレヴィー小体型認知症だった (individual 001) (個人情報保護のため性別は伏せてある)。もう一人の親は非特異的な認知症だった。男性は、諸検査を経て、PCAと診断された。

結果:血清プログラニューリンは、患者男性 (individual 004) 29 μg/l, 兄弟の一人 (individual 005) 39 μg/l, 親 (individual 001) 47 μg/lだった (正常値 100~300 μg/l)。3名 (individual 001, 004, 005) ともheterozygous c.328C>T GRN変異があった。APOEは ε3/ε3であった。

考察:GRN変異は、前頭側頭葉変性症の広い範囲の表現型に関連がある。多くの変異キャリアは、行動型前頭側頭葉変性症 (visual variant)、進行性非流暢性失語症、大脳皮質基底核症候群、レヴィー小体型認知症類似の表現型を呈する。本症例はアルツハイマー病合併の可能性が除外できないが、ε4 alleを欠いたことから、GRN spectrumの表現型と考えられる。

結語:特に障害が脳の前方領域まで進行し認知症の家族歴があるような PCA症例では、GRN遺伝子を調べるべきである。

PCAの診療経験はそれほど多くないのですが、この論文のように進行が比較的早く、前方領域まで及ぶような症例を経験したときには、GRN遺伝子を調べてみようと思いました (もっと進行が早い時はプリオン病の鑑別も必要になってくると思います)。

こういう遺伝子関係の論文というのが直接臨床に役立つことは少ないのですが、知っておくと良いことが稀にあります。

数年前のことですが、末梢神経障害の患者さんが私の外来を受診し、病歴や身体所見から Charcot-Marie-Tooth病が強く疑われました。詳細不明ではあるものの腎臓病の既往があったので、初診のカルテに “Charcot-Marie-Tooth病 (INF2変異疑い)” と記載して精査としました。その後、腎臓病が実際には巣状分節性糸球体硬化症 (focal segmental glomerulosclerosis; FSGS) であったことが判明し、調べれば調べるほど INF2変異の Charcot-Marie-Tooth病のようであることがわかりました。この変異を初診で疑えたのは、下記の New England Journal of Medicine論文を読んで覚えていたからです。この時は、勉強していて良かったなと思いました。

INF2 Mutations in Charcot–Marie–Tooth Disease with Glomerulopathy (日本語版)

ちなみに、INF2変異を伴った Charcot-Marie-Tooth病に関しては既に日本国内から報告が出ているようです。

INF2 mutations in Charcot-Marie-Tooth disease complicated with focal segmental glomerulosclerosis.

その他に、INF2変異が同定された FSGSの国内報告があります。この症例で Charcot-Marie-Tooth病の合併がなかったか、興味があります。

フォルミンINF2変異が同定された腎移植希望の家族性巣状糸球体硬化症(FSGS)の1例


ワシントン・ナショナル・ギャラリー展

By , 2015年2月13日 5:35 AM

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」を見に、三菱一号館美術館に行ってきました。ヨンギント、モネ、ピサロ、シスレー、ブーダン、ルノワール、ドガ、マネ、セザンヌ、ゴッホ、ルドン、スーラ、コロー、モリゾ、フォラン、ロートレック、ラトゥール、ヴュイヤール、ゴーガン、ヴォロン、ボナールの絵が展示されていました。全部で 68点で、調度良い展示数でした。

印象に残ったのは、ルノワールの「髪を編む若い女性」や「クロード・モネ」、セザンヌの「愛の争い」、ゴッホの「オランダの花壇」などでした。

その他、「三菱一号館のコレクション」コーナーにあった、ドニの「純潔の春」が面白い作品でした。ドニが、自分の妻とパトロンであったショーソンの家族を描いた絵です。ショーソンといえば、ヴァイオリン弾きにとっては「詩曲」が有名ですね。ショーソンとドニは親交があり、ショーソン宅はドニの装飾がほどこされていたようです。

・Nathan Milstein plays Chausson’s Poème


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