C9orf72を巡る最近の話

By , 2014年4月27日 11:23 AM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の原因遺伝子 C90rf72は 2011年に報告されました。原因が不明とされる ALSにおいて、家族性 ALS患者の46.4%, 孤発性 ALS患者の 21.0%に C9orf72のイントロン領域に GGGGCCの 6塩基反復配列の伸長が見られたという報告は、大きな反響を呼びました。ただし、この変異は日本人には少ないとされています。

C9orf72は ALSだけではなく、アルツハイマー病への関係も指摘されています。また、稀ながら、小脳失調症と関係があったという報告もあるようです。小脳失調症に関しては本邦から、NOP56遺伝子のイントロン領域での 6塩基反復配列伸長が運動ニューロン疾患を伴う小脳失調症で報告されていて、別の遺伝子ではあるものの、イントロン領域での 6塩基反復配列伸長という点が C9orf72と共通しているので興味深いです。さらに、C90rf72変異があってパーキンソニズムを呈することもあるようです。

さて、C9orf72変異を持つ一家系で、ALSと多系統萎縮症 (MSA) の患者がそれぞれみられたという論文を最近読みました。2014年 4月 14日の JAMA neurology誌です。

Multiple System Atrophy and Amyotrophic Lateral Sclerosis in a Family With Hexanucleotide Repeat Expansions in C9orf72 

このように、C9orf72の 6塩基反復配列伸長が様々な変性疾患で報告されるにつれ、C9orf72って何者なんだと疑問符が頭の中を渦巻きます。一つの遺伝子が、多くの変性疾患に関わっていると話がややこしいですね。

一つの変性疾患の原因遺伝子が、別の遺伝性疾患の原因遺伝子であることは他にもあり、例えば VCPは IBMPFD (inclusion body myopathy with Paget’s disease of bone and frontotemporal dementia) の原因遺伝子であると報告され、後に ALSの原因遺伝子でもあることがわかりました骨 Paget病の原因遺伝子である SQSTM1も、後に ALSの原因遺伝子として報告されました。また、DCTN1も Perry症候群の原因遺伝子でありながら、進行性核上性麻痺 (PSP) 様の表現型も示すことが報告されています。これら共通の遺伝子異常が報告された変性疾患には、共通する分子メカニズムがあるのでしょうか。今後の研究を見守りたいと思います。

余談ですが、MSAにおけるコエンザイムQ10合成酵素 COQ2の異常が 2013年に本邦から報告されているようです。Nature Newsの記事には、「コエンザイムQ10の大量投与による多系統萎縮症に対する臨床治験の実現に向けて準備を進めている」と書かれてあり、効果があると良いですね。

Post to Twitter


Leave a Reply

Panorama Theme by Themocracy