沖縄美ら海水族館が日本一になった理由

By , 2016年7月21日 8:24 AM

沖縄美ら海水族館が日本一になった理由 (内田詮三著, 光文社新書)」を読み終えました。

著者がこれまで働いてきた水族館について、それらの経験を活かして美ら海水族館はどのように工夫されているか、水族館の意義はなにか、などの話がメインでしたが、私のツボを刺激する話が沢山載っていました。

まずは、イルカの治療の話。

治療には、抗菌剤や副腎皮質ステロイド剤なども使っていた。イルカの場合は、特に呼吸器系の疾患が多い。体温や血沈値の上昇、白血球値から感染症が明らかになると、自分たちで抗菌薬やステロイドを投与していた。だが、こうした薬剤は両刃の剣で、起因菌が分からないで闇雲に打つと、回復するどころか悪化させてしまうこともある。抗菌剤で広範囲の菌を叩いたら、今度は感受性のない緑膿菌感染が出てしまい、これを叩くのに苦労したこともあった。(p. 99)

抗菌薬のイタチごっこはいけない、そのためには起因菌を想定し、培養を提出して治療しないといけないというのは、ヒトもイルカも同じだなぁと思いました。そして、イタチごっこで問題となる菌も当然ながら人間の場合と同じですね。

次は、ヒトの病院と連携してイルカやマナティーを治療した話。

 また、イルカを県立北部病院のレントゲン室に運び込んで、X線写真を撮ってもらったこともあった。イルカは呼吸器系の病気にかかりやすく、血液検査でどうやら肺炎にかかっている様子だったが、水族館でははっきりとは分からなかったのだ。

当時、人間を診る大病院で水族館の飼育動物の検査・診断を行い、治療に協力してもらうなどということは、通常では考えられないことだった。それでも私たちの無理なお願いを受け入れてくださり、協力が得られたのは、南国・沖縄のおおらかさのおかげといえるかもしれない。

県立北部病院とは、その後も疾病治療などに関する指導をお願いしたり、ときには緊急に必要な薬品を貸していただいたり、病理検査を依頼するなど、いろいろな面でご協力いただいた。そのなかでも特に記憶に残っているのは、マナティーの疾病治療にお力をお借りしたときのことだ。

沖縄記念公園水族館にメキシコ大統領から日本に寄贈されたマナティー (アメリカマナティー) がやって来たのは、1978年のことだった。オスは「ユカタン」、メスは「メヒコ」と名付けられ、沖縄国際海洋博覧会でジュゴンを展示した水槽を改修して、飼育を開始した。「メヒコ」は 1996年に死亡 (推定年齢 25歳) するまで 4回出産している。

その 2回目の出産 (1998年) のときだ。残念ながら新生児はわずか 8時間ほどで死んでしまったが、このとき母獣も産後の肥立ちが悪く、体調不良が続いた。いろいろと検査を行った結果、細菌感染症が見つかり、子宮内膜炎を発症していることが推測された。水族館では子宮洗浄を行ったり、筋肉注射・静脈注射で抗菌剤を投与したものの、太い血管をうまくとらえることができず、薬剤が効果的に効かない状態だった。体温は上昇し、餌も全く食べることができず、このままでは「メヒコ」の命が危ないというところまできていた。

そんなとき、この話を聞きつけた県立北部病院の石島英郎院長が協力を申し出てくださった。

病院ではすぐに「マナティー治療チーム」が血清され、小児科医の小堂欣弥医師を中心に産婦人科・内科・外科の医師 4人に加えて検査技師 1人、看護師 2人という、これ以上ないと思えぬほどの強力な体制で検査や治療に当たっていただけることになった。

あらためて詳しい検査を行った結果、炎症を抑えるために薬剤の腹腔内投与を行うことがきまった。薬剤を速やかにかつ効果的に体内に投与するにはこの方法が最良との判断だった。マナティーの体内をエコーで確認しながら、慎重に針を刺して大量の抗菌剤が投与された。5日間の腹腔内投与による治療が行われた結果、「メヒコ」の病状は劇的に改善し、すぐに元気になった。(p. 101-103)

病院と水族館の連携なんて、読んでいてワクワクしますね。

ちなみに、私が鯨やイルカに興味を持つようになったのは、小川鼎三先生の本を読んでからです。以前にブログで紹介したことがあります。

鯨の話

小川鼎三先生の本には、次のような内容が書かれています。

小川鼎三先生は三津の水族館でシャチを生きたままで飼育しているのを聞きつけた。水族館を訪れると明らかにシャチではないので、看板を書きかえるように経営者に忠告した。しかし、日本名を問われ当惑して「トゥルシオップス」という学名のまま答えておいた。後日、小川鼎三先生はトゥルシオップスの和名を「ハンドウイルカ」とする考えを発表した。(鯨の研究)

なんと、同じエピソードが本書にも描かれているのです。以下引用します。

日本で初めてイルカが飼育されたのは、1930年、静岡・三津で開業した中之島水族館 (現在の伊豆・三津シーパラダイス) だった。

当時、入り江を網で仕切った生け簀型のプールでバンドウイルカ (ハンドウイルカ) が飼育されていた。ところが、当初この水族館の看板には「シャチ」と書かれていたらしい。シャチが飼育されていると聞いて、脳比較解剖学の大家であり、日本の鯨学のパイオニアである小川鼎三博士 (写真 4-1) が三津へ足を運び、これがバンドウイルカであることを確認した。ところが当時はまだ和名がなかったことから、看板をその属名 (学名) である「トルシオップス (Tursiops)」に書き直させたという逸話が残っている (7年後、小川博士は『本邦産歯鯨目録』において、これをハンドウイルカとして正式に発表した)。 (p. 121)

この逸話は、鯨学の業界では有名なんですね。

また、本書の著者と小川鼎三先生は実際に交流があったようです。

私が “水族館屋” としての人生を歩むきっかけをつくってくださったといってもよいくらい大きな刺激を受けた、日本のイルカ・クジラ研究の権威である東京大学・西脇昌治教授、鯨類研究所の木村秀雄博士、さらには鯨類比較解剖学の大家である東京大学・小川鼎三教授などは、まさにそうした水族館の素晴らしき理解者であった。 (p. 202-203)

日本の鯨学のパイオニアから、最先端の研究が行われている美ら海水族館まで、一本の線がつながったように感じました。。

本書を読んで、小川鼎三先生の「鯨の話」を読んだ時のことを思い出し、鯨 (イルカを含む) 熱が再燃しました。夏休みは、美ら海水族館に行こうと思っています。その他、鯨類の展示された水族館にもちょくちょく行ってみようと思います。


最近の医学ニュース

By , 2016年7月20日 1:08 PM

最近出た医学論文や医学ニュースは、新聞を読む感覚でサラッとチェックだけしていますが、メモしておかないと忘れてしまうので、備忘録として記録しておきます。

United States Health Care Reform 

なんと、オバマ大統領が JAMAに投稿した論文。オバマケアで無保険者が減ったと言っています。一人で書いたとは思えないのになぜか単著論文で、かなりの部分貢献したと思われる人は、”Additional Contributions: I thank Matthew Fiedler, PhD, and Jeanne Lambrew, PhD, who assisted with planning, writing, and data analysis. I also thank Kristie Canegallo, MA; Katie Hill, BA; Cody Keenan, MPP; Jesse Lee, BA; and Shailagh Murray, MS, who assisted with editing the manuscript. All of the individuals who assisted with the preparation of the manuscript are employed by the Executive Office of the President.” と書かれています。計画者、書いた人、データ解析した人がちゃんといるみたいですね。また、COIに関しては、ホワイトハウスのサイトを見てくれとか、こっちも面白いです。友人と、「査読者が、プーチン、習近平、金正恩だったらどうする?」とか盛り上がりました。安倍総理が査読だと、そのままアクセプトされそうですね。トランプだったらどうなんでしょう (^^;

ちなみに、日本では天皇陛下が Akihitoの著者名で Science誌に投稿されています

(2016.7.21追記)

実は、オバマ大統領はこれまでも一流誌にたくさん論文を発表していたらしいです。

Association of Traumatic Brain Injury With Late-Life Neurodegenerative Conditions and Neuropathologic Findings

意識消失を伴う外傷性脳損傷は、Lewy小体の蓄積、パーキンソニズムとパーキンソン病のリスクと関連がありましたが、認知症、アルツハイマー病、老人斑、神経原線維変化とはありませんでした (先行研究ではアルツハイマー病との関連が指摘されています)。

なお、頭部外傷を繰り返すと chronic traumatic encephalopathy (CTE) を発症することは以前から問題視されており、ルー・ゲーリックも ALSではなくて CTEだったのではないかと言われています。こちらは、病理学的に TDP-43と tauが蓄積するようです。

頭部の外傷と神経変性疾患というテーマは、注目を集める分野となっているようです。

Traumatic brain injury history is associated with earlier age of onset of frontotemporal dementia

頭部外傷と前頭側頭葉変性症との関連を調べた研究。前頭側頭葉変性症を発症する 1年以上前に後遺症を伴わない外傷性意識消失のあった患者となかった患者を比較したところ、前者では症状出現が 2.8歳、診断が 3.2歳早かったとのことです。これだけで関連があるかどうかはなんとも言えないところでしょうが、頭部外傷と神経変性疾患の関連は本当に注目されてますね。

A Rare Cause of Myoclonus

ミオクローヌスと巣状分節性糸球体硬化症 (FGFS) を合併する action myoclonus renal failure syndrome (AMRFS) の症例。SCARB2変異が検出されたとのこと。FGFSと神経疾患の合併ですぐ思い出すのは、INF2変異を伴う Charcot-Marie-Tooth病です。昔、SNAP diagnosisしたことがあります。なぜ、FGFSが神経疾患を合併するのか、分子メカニズムはどうなっているんでしょうねぇ・・・。

Unmasking Alzheimer’s risk in young adults

最近の研究によると、アルツハイマー病のリスクを下げるために「色々なことができる」と考えられているようです。それは例えば、魚介類をきちんと摂取することだったり、きちんと運動や睡眠をとることだったりします。

Transplantation of spinal cord-derived neural stem cells for ALS: Analysis of phase 1 and 2 trials.

脊髄由来神経幹細胞の ALSに対する第1/2相試験の結果が発表されました。安全性は確認できましたが、残念ながら進行抑制効果は示されませんでした。間葉系幹細胞治療の方に期待したいです。

BrainStorm Announces Positive Top Line Results from the U.S. Phase 2 Study of NurOwn® in Patients with Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS)

ALSに対する間葉系幹細胞治療についてこれまで 2回ほど紹介してきました。

ALSに対する間葉系幹細胞治療がfast-track指定

間葉系幹細胞治療と ALS

ついに、2016年7月18日に第1/2相試験の結果が発表されたようです。記事によると、安全性と忍容性についての基準を達成し、 ALS-FRS-R rating scaleと CSF biomarkersで良い結果を示しました。

第三相試験がとても楽しみです。

Association of Environmental Toxins With Amyotrophic Lateral Sclerosis

ALSと環境汚染物質について調べたケースコントロール研究。Organochlorine
pesticides (OCPs), polychlorinated biphenyls (PCBs), brominated flame retardants
(BFRs) などの環境汚染物質の血中濃度をガスクロマトグラフィーで測定しました。その結果、ALS患者で OCP 2種類 (penthachlorobenzene; OR 2.21, cis-chlordane; OR 5.74), PCB 2種類 (PCB175; OR 1.81, PCB202; OR 2.11), BFR 1種類 (polybrominated diphenyl ether 47; OR 2.69) の血中濃度が有意に高いことがわかりました。環境汚染物質は、改善可能な ALSの危険因子かもしれないと著者らは述べています。

Meta-analysis of 375,000 individuals identifies 38 susceptibility loci for migraine

約 375000人 (患者 59674人, 対照 316078人) を対象としたメタアナリシスで、38個の遺伝子座に片頭痛リスクと関連した 44の SNPsが見つかりました。38個の遺伝子座のうち、28個は過去に報告されていなかったもので、1個は初めて Chromosome Xに同定されたものでした。引き続いてのコンピューター分析で、同定された遺伝子座は血管および平滑筋に発現している遺伝子が豊富であることがわかりました。このことは、片頭痛の血管説が優位であることと一致した結果でした。

2012年に紹介した論文と同じ雑誌に掲載されていますが、その研究と共通した著者の多い研究ですね。血管説とすると、以前から注目を集めている CSDはどう説明することになるのでしょうか。

Global and regional effects of potentially modifiable risk factors associated with acute stroke in 32 countries (INTERSTROKE): a case-control study

著者らは、脳卒中の 90%と関連する修正可能な 10個の危険因子を同定しました。この論文を紹介した CBS Newsの記事では、それぞれの危険因子を改善するとどのくらい脳卒中のリスクが下がるかをまとめています。

  • Blood pressure: 48 percent
  • Physical inactivity: 36 percent
  • Poor diet: 23 percent
  • Obesity: 19 percent
  • Smoking: 12 percent
  • Heart causes: 9 percent
  • Diabetes: 4 percent
  • Alcohol use: 6 percent
  • Stress: 6 percent
  • Lipids (blood fats): 27 percent

これらは、論文の figure 2, 3を抜き出したものですが、論文では地域別になっており、人種差がありそうなことがわかります。私は一般人向けの脳卒中予防の講演を頼まれているのですが、このようにまとめたものがあると、喋りやすいですね。

Figure 2: Multivariable analysis by region

Figure 2: Multivariable analysis by region

Figure 3: Multivariable analysis by region

Figure 3: Multivariable analysis by region

治らない病気を抱えながら、なお社会で人として生きるとは、いかなることであるのか 第1回 難治性疾患の患者として生きるということ

難病を抱えていらっしゃる方の書かれた文章です。素晴らしいので、是非読んでみてください。


高齢者の血圧,目標値は?

By , 2016年7月7日 10:07 PM

2016年5月20日のブログで、高齢者の血圧管理についての論文を紹介しました。

最近の医学ネタ

Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years

Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT) で高齢者のサブグループを調べた研究。糖尿病のない 75歳以上の高齢者において、収縮期血圧 140 mmHg未満よりも 120 mmHg未満で管理した方が、主要な心血管イベント、総死亡は減るようだ。

高齢者の降圧については凄く議論のある分野で、ガイドラインは下げ過ぎない方向に向かっていて、この研究だけでプラクティスを変えるようなことにはならなさそう。今回は時間がなくてアブストラクトしか見てないので、時間ができたら先行研究と比較吟味したいところ。

高齢者の血圧は厳格に下げた方が良いのかどうかは迷う所ですが、週間医学界新聞の連載が SPRINTのサブグループ解析の結果を含めてわかりやすくまとめてくれていました。

ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス [第4回]高齢者の血圧,目標値は?
✓ 降圧薬開始時は「Start Low and Go Slow」,血圧の下げ過ぎには注意が必要である。
✓ 高齢者では個々の病態に合わせた治療目標の設定が必要である。状況によっては150/90 mmHg未満程度を目安としても良いと考えられる。
✓ 立位血圧の測定を忘れずに。

●SPRINT研究は適応(患者の平均BMI>27)によって,積極的治療の効果だけでなく危険性の低さも示唆している。150/90 mmHg未満を目安にしつつ,非糖尿病かつ地域生活高齢者では,積極的治療の話し合いを心掛けている。(許 智栄/アドベンチストメディカルセンター)

●高齢者では血圧が低くなるほど心血管イベントリスクが増える(Jカーブ効果)。降圧目標上限のみでなく,下げ過ぎないよう調節したい。SPRINTは衝撃的だが,1 RCTにすぎず,絶対リスク減少率は1.6%(3年間の投薬で1000人のうち16人のみ恩恵あり)。(関口 健二/信州大病院)

高齢者の降圧は、基本的にあまり頑張りすぎなくてよいという話でしょうか。

あと、総合診療 2016年6月号の 454ページに、ポリファーマシーの原因となりうる prescribing cascadeの表があったので、高血圧に関連した部分を紹介しておきたいと思います。有名なものが多いですが、カルシウム拮抗薬の便秘症は結構盲点になりやすいですね。こういうことにならないように注意しないといけません。

総合診療 2016年 6月号 特集 “賢い処方”と“ナゾ処方”

・降圧薬, 利尿薬, 血管拡張薬, オピオイド, 鎮咳薬, NSAIDs→めまい→抗めまい薬, 制吐薬

・サイアザイド系利尿薬→高尿酸血症, 痛風→アロプリノール, コルヒチン

・ACE阻害薬→咳嗽→鎮咳薬, 抗菌薬

・カルシウム拮抗薬→便秘症→下剤

「総合診療」の “賢い処方”と“ナゾ処方” 特集はなかなか面白いのでお勧めです。中でも、忽那先生の「すなわち『経口カルバペネム』という存在そのものが ”清楚系 AV女優” のような矛盾を抱えている抗菌薬なのである」という表現 (P480) は、絶品ですね。ちなみに、このフレーズを読んだ私は「俺のお気に入りの○○たんは、清楚系だもん。矛盾なんかないもん。」というクレームを忽那先生につけたのでした (^^;


重症筋無力症と抗cortactin抗体

By , 2016年7月6日 6:06 PM

重症筋無力症 (MG) は、全身型の約 80%、眼筋型の約 50%で抗AChR抗体が陽性となり、全身型の約 5%で抗MuSK抗体が陽性となります。抗AChR抗体陰性の重症筋無力症を従来 sero-negative MGと呼んでいましたが、抗MuSK抗体が見つかってからは、抗AChR抗体と抗MuSK抗体の両方が陰性の重症筋無力症を double sero-negative MGと呼ぶようになりました。重症無力症には他にも抗LRP4抗体などが知られています。

2016年7月5日、JAMA Neurology誌に重症筋無力症における抗cortactin抗体についての論文が掲載されました。

Clinical Characteristics of Patients With Double-Seronegative Myasthenia Gravis and Antibodies to Cortactin

250名の重症筋無力症患者のうち、double sero-negative MGは 38名 (15.2%) でした。残りは、201名 (80.4%) は抗AChR抗体が陽性で、11名 (4.4%) は抗MuSK抗体が陽性でした。抗cortactin抗体は、sero-negative MG 38名中 9名 (23.7%), 抗AChR抗体陽性MG 201名中 19名 (9.5%) で検出された一方で、抗MuSK抗体陽性MGや正常コントロール群では全て陰性でした。抗 cortactin抗体陽性患者において、抗LRP4抗体や抗横紋筋抗体は全て陰性でした。

発症は、抗cortactin抗体陽性 double sero-negative MG 9人中 6名が眼筋型、3名が MGFA IIaで、眼筋型のうち 2名は後に全身型となりました。

抗cortactin抗体陽性患者でみると、double sero-negative MGでは抗AChR抗体陽性 MGに比べて軽症での発症が多く、最重症時に球症状が少ない傾向がありました (統計学的有意差あり)。また、抗cortactin抗体陽性患者のうち、double sero-negative MGは抗AChR抗体陽性 MGに比べて眼筋型が多い傾向にありましたが、統計学的な有意差はありませんでした。Double sero-negativeの眼筋型 MG患者 17名のうち、抗cortactin抗体陽性は 4名 (23.5%) でした。

なお、抗cortactin抗体は ELISAおよび Western blotで検出し、抗AChR抗体/抗 Musk/抗横紋筋抗体は通常の方法、抗LRP4抗体は cell-based assayで検出しました。

Cortactinは agrin/LRP4/MuSKの下流にあり、AChRの clusteringを促進する役割があるようです。

重症筋無力症と抗contactin抗体

重症筋無力症と抗contactin抗体

以前、double sero-negative MGでも、cell-based assayで調べると 38.1%で抗AChR抗体が検出できたという論文を紹介したことがありましたが、抗cortactin抗体が検出されることも結構あるんですね。重症筋無力症患者から抗cortactin抗体が検出されることは 2014年に既に報告されていたそうですが、勉強になりました。

問題は、こういう症例を疑ったときにどこで検査ができるかということです。抗LRP4抗体など測定してくださっている川棚医療センターなどで検査できるようにならないか、密かに期待しています。

神経疾患における自己抗体等の測定


ALSへのPerampanel

By , 2016年7月6日 5:46 PM

2014年10月26日のブログ記事で、私は次のように書きました。

ALSと陰性徴候

余談ですが、グルタミン酸受容体のなかで AMPA受容体と ALSの関係について最近多くの論文が発表されています。そんな中、2014年10月20日に、AMPA受容体拮抗薬 “Perampanel” が抗てんかん薬として FDAから承認されました。この薬が、ALSでの AMPA受容体が関与した細胞毒性を抑えてくれることはないのか・・・ふと思いました。論文検索してみても誰も研究していないみたいですし、何の根拠もない全くの妄想ですけれど・・・(^^; (開示すべき COIはありません)

なんと、東京大学神経内科らのグループが Perampanelを ALSのマウスモデルに使って有効性を示した論文が 2016年6月28日に発表されました。

The AMPA receptor antagonist perampanel robustly rescues amyotrophic lateral sclerosis (ALS) pathology in sporadic ALS model mice

俺って、センスあるじゃん」と、この論文の存在を知って嬉しくなりました。

ALSの進行、抗てんかん薬で抑制 東大、マウスで実験

瀬川茂子

2016年6月28日19時37分

全身の筋肉が衰えていく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の進行を抗てんかん薬の一種で止められる可能性を東京大などのグループがマウスの実験で示した。英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版で28日、発表した。

グループは、筋肉の運動神経細胞にカルシウムが過剰に流入して細胞死を起こすことがALSの進行にかかわることを動物実験で確認してきた。そこで、細胞へのカルシウム流入を抑える作用のある抗てんかん薬「ペランパネル」に注目した。

ALSに似た症状をもつように遺伝子操作したマウスに、90日間、この薬を与えた。薬を与えなかったマウスは、次第に運動神経の細胞死が起こったが、薬を与えたマウスでは細胞死が抑えられた。回し車に乗る運動能力や、ものをつかむ力も実験開始時の状態を保つことができたという。

グループの郭伸(かくしん)・国際医療福祉大特任教授(神経内科)は、既存薬なので安全性は確認されているとして、「医師主導の臨床試験を始めたい」としている。(瀬川茂子)

今後は臨床試験を予定しているようですが、すでに海外で承認されている抗てんかん薬なので、比較的やりやすいと思います。ALSの場合は、マウスで効いても人では効かない・・・ということの繰り返しなので、実際にどういう結果がでるかはやってみないとわかりません (・・・個人的には五分五分よりは分が悪いと思っています) が、良い結果を期待したいと思います。


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